ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
イワンコフは革命軍がまた予定にない流血革命を起こしたという記事が書いてある世界経済新聞をホーミングに叩きつけようとして避けられていた。
「待ってよ!これはどういうこっちゃブル!?どーせヴァナタの仕業でしょう、ホーミング!!同志達を急進派に鞍替えさせるのやめてっていってんでしょーがヒーハー!!」
「革命ならいくつも派閥があっていいでしょう、イワンコフ」
「よくなーンナ!」
「そもそもあなた達が次の世界会議で過半数以上の国を革命騒ぎに巻き込んで陥落させれば、非加盟国に転落する国も出る。それどころじゃない国も出る。そうなれば決議にも影響がでる。世界政府もそれどころじゃなくなる。そうなれば合法的にオトヒメ様の悲願が叶うのに聞いてくれないからそうなるんですよ」
「ドラゴンがどんな気持ちで今の革命軍に鞍替えすることにしたのか、ヴァナタしってんでしょうが!なにいってんの、正気?受け入れられるわけないでしょ!!本性隠す必要なくなったからってぶっちゃけすぎてヴァターシ、ヴァナタが怖いわ!!ヒーハー!!!」
「新時代はなんであれ自分の権利を主張したきゃ命がけになるしかないんだ。そうしたんだ、私が」
「ヴァナタねえ」
「なに、過激過ぎれば過ぎるほど、正気に戻る奴らも出てくる。その方があなたたちもやりやすいでしょう。穏健派のくせに革命なんて言葉を使うから勘違いする奴らが現れるんだ。革命という言葉にたくさんの幅を持たせすぎているんだ、あなたたちは。人も多過ぎる。いずれ意図しない形で暴走するのが目に見えてる。だから私達はかつて失敗したんだ。得意分野が違うんだからそれぞれがやればいい。遅れて申し訳ないとすら思うんだ、私は」
「だからってね、ヴァナタ。うちの同志達勧誘を地獄の道に勧誘するのはやめて欲しいわヒーハー!!!そっちはそっちで勝手にやってちょうだいよ!つーかさっきのおっそろしい作戦実行する気じゃないでしょうね、ホーミング?やめなさーい?ヴァターシ達の作戦台無しになるでしょーが、ただでさえ世界政府が一緒くたにしたがってんだから!真正面からかち合うんだから、互いに落とし所つけなきゃなんないんだから、ちゃんと事前調整しなさいよヒーハー!!!」
「なにやら誤解しているようですが、私が指導している者達はちゃんとロックスの旗をかかげていますよ。機密情報だから規制にひっかかって新聞に載らないだけだ」
「全然よくないわよ、ヴァナタ!!愉快犯じゃないの!」
「私は思想犯ロックスかぶれのホーミングらしいですからね。世界政府のレッテルにしたがってやってるんだ、文句を言われる筋合いはないですね。それにいつもしているように、事前に調整のないものは違いますよ。だからこの記事は私は無関係です」
「ほんとー?八幡大菩薩の旗に誓ッチャブル?」
「もちろん」
「ふむー、じゃあ世界政府の裏工作に乗っちゃったか、闇のシンジゲートの別勢力のいざこざを飛ばし記事ってとこ?」
「そうでしょうね、おそらくは」
「はー、やだやだめんどくさい。だから金儲けのために戦争起こす奴らはほんと嫌いなのよ。ヴァターシ達の活動の足どんだけ引っ張る気なんだか。どーせヴァナタもどさくさに紛れて稼いでるんでしょ?やんなっちゃう」
イワンコフは心底軽蔑しているという顔をしてホーミングをみる。イワンコフは思想犯としてのホーミングしかしらない。それはホーミングもなのでお互い様だった。ホーミングの本懐を理解しているのはドラゴンだけだ。
イワンコフは「血統・種族・性別などの先天的な資質で人が差別されてはいけない」と心の底から信じている理想家だ。世界政府に対しては差別的な社会構造を人為的に作り出していることから敵対的であり、ゆえに革命軍に参加している。
見た目や思想は少々トリッキーだが、経験・知識はとても豊富な実力者。 一国の女王でありながら革命軍の軍司令官でもあるという相当な責任を背負う立場でもある。 ハイテンションでフザケた言動とは裏腹に、指導者として的確な判断力も持っており、冷静に状況を分析し慎重に行動する。
ゆえに思想的によく似ていながら、行動が正反対のため、イワンコフはホーミングが嫌いではないが好きでもなかった。事前に調整したり作戦を事前に通告したりする誠意だけはかっていた。オトヒメ様の悲願を叶えるためにここまでやらかすのだと嘘をいえる男はこの世にひとりだけだとイワンコフは思っている。かわいそうなオトヒメ様だ。こんな男に祭り上げられて。
というかドラゴンはなんでこの男をそこまで買っているのか理解できないでいる。
イワンコフは12年以上前から革命軍の一員として行動しており、幹部として多くの者から慕われている。
総司令官ドラゴンとも気兼ねなく交流する間柄だが、本人が周囲に自身の生い立ちについて明言することがなかったためか、彼の本名含む詳しい経歴については知らなかった。ただ、彼がよく東の海の方角を向きながら黄昏れていることから東の海の出身ではないかと推察していた。
そのため、後に知り合ったモンキー・D・ルフィがドラゴンのことを「父ちゃん」と呼んだ際には飛び退いて岩壁にメリ込むほど驚愕し、その常人離れした生命力と土壇場の強運、同じ東の海出身などからそれが真実だと察し、彼に協力する決断を下している。
また、同じくルフィがポートガス・D・エースのことを「兄ちゃん」と呼んでいたことから、当初はエースもドラゴンの息子だと勘違いしていた。 ホーミングの息子じゃなくて海賊王の息子だと聞いて本気でよかったと思っていた。
Mr.2ボン・クレーことベンサムは予てよりイワンコフのことを尊敬しており、エース救出に協力したのもルフィへの友情だけでなく、牢獄に囚われているイワンコフを助け出すことも理由の一つであった。
ルフィを介してこのことを伝えられたイワンコフは「可愛いところがある」と好印象を懐き、疲弊して倒れた彼にもテンションホルモンを施している。
「で、何のよう?まさかニューカマーになりにきた?大歓迎よ、その根性叩き直してあげるわ、ヒーハー!!!」
「違いますよ、こちらにベンサムは来ていませんか?」
「あの子に何のよう?場合によってはただじゃおかないわよ?」
「うちの自慢の息子の失脚を狙う奴らを牽制するのに力を貸してほしくてですね」
「なによ、それならそうと先にいいなさい。ヴァナタが思想犯に堕ちるきっかけだけは同情してんのよ、ヴァターシ」
イワンコフはカマバッカ王国で免許皆伝したあと、ベンサムはバギーズデリバリーにいると教えてやった。
「ありがとうございます、イワンコフ。ところで彼は?」
「今修行中なのよ」
そこにはウォーターセブンであったことがある青年が束の間の休憩とばかりに、主に心が瀕死の状態でタバコを吸っていた。
ここは『偉大なる航路』の前半に位置するモモイロ島を中心とする王国、カマバッカ王国。このたびエンポリオ・イワンコフが治めているが、革命軍幹部という立場上国を空けていることも多いので、"彼"は長らく「女王・永久欠番」という位置付けだった。しかし、このたび王政復古したばかりだ。インペルダウンから帰還したのだ。
シャボンディ諸島でバーソロミュー・くまに敗北した麦わらの一味、黒足のサンジはここへ飛ばされた。当然ながら、女好きのサンジにとっては「地獄(※本人談)」であり、必死で逃げようとするも逃げきれず捕まり、一時はオカマライフを過ごすハメになった(なおそうして脚力が鍛えられた結果、月歩を体得した)。
サンジはイワンコフからの情報と新聞のルフィのメッセージを知り、ここで2年間修業をすることを誓う。
そんなカマバッカ王国、名前通りのオカマだらけの国であり、ダヨーンをより酷くしたような顔ぶれが揃っている。動物までも青髭があり、そこはかとなくカマっぽい。
こういう島なので誰が呼んだか第2の女ヶ島。しかしこっちはオカマしかいないので、当然女など皆無。同様に女ゼロの大所帯はバラティエもあったが、海賊顔負けの荒くれコックが集うあちらに対して濃ゆいオカマばっかりなので絵面がスゴイ。
こんな具合でギャグにしか見えないものの、実はニューカマー拳法一派の総本山という側面があり、住民はほぼ全員が拳法家(ニューカマー拳法使い)で並みの海兵や海賊を上回る戦闘力を有する。
特にイワンコフの直弟子たる99人の師範代クラスに至っては、黒足のサンジと互角以上に渡り合う実力者揃いという武闘派の集団でもある。
サンジの蹴りが脳天に直撃しても「効かな~い」と一顧だにせず襲い掛かった。
また、ニューカマー拳法が健康法としても優れた一面を有することに加え、オカマたちの「魅力あるオカマである」ことに対する並々ならぬ拘りと矜持から、美容・健康の文化も非常に発達しており、こと地元料理の完成度に関しては一流コックのサンジも驚愕するレベル。
「料理は体作りの基礎」という考えに感銘を受けたサンジはレシピを請うが、秘伝のレシピをおいそれと伝授してもらえるはずもなく……。
イワンコフから「新人類拳法師範99人に勝利し、レシピを奪ってみろ」という条件を提示され、男をかけてバトルに明け暮れるのであった。
「なるほど」
ホーミングにようやく気づいたサンジが真っ青になった。あわあわしている。一時的な狂気のせいで彼は自己防衛のあまり今半端に女装しており、あやうくニューカマーになりかけていたのだ。
「大丈夫、私がここにきたことを言わなければ、誰にもいいませんよ」
あわてて着替えるサンジにホーミングはいう。あからさまにホッとした様子でげっそりとしていた。
「もし言ったら、東の海にも噂が届くでしょうから覚悟しておくように。一応、私は天夜叉に捕縛された身なのでね」
その意味を理解したサンジは深くふかくうなずいたのだった。
「ところで、こちらの国に脱獄犯は何人いますか?情報収集しているので交換しましょう、情報を。なにがほしいですか?」
「そうねえ、あの子になにさせるか教えてなさーい」
「なに、最悪の事態に備えて、マネマネを活用してもらうかもしれないだけですよ」
「そんなにやばいの、アラバスタ?」
「世界で一番発言権がある国だ、狙われない方がおかしいでしょうに」