ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
あの非加盟国からハチノスに移住するためにハバン船が外海にでたときのことを思い出す。しんがりの船に乗っていた当時、まだ私は見習いで、船長で育ての親だった男がDだった。歴史の本文を持っていた。彼がいつも話してくれた頃よりも私は詳しくなれている。この30年間でビルカ文明と歴史の本文の訳文を見る機会に恵まれた。
800年前に現在の「世界政府」が樹立されたが、それ以前の100年間は「空白の100年」と呼ばれ、語られぬ歴史としてスッポリ抜け落ちている。現在ではその100年に何が起こったかを調べる事すら禁じられている。
この「空白の100年」に存在したといわれる「ある巨大な王国」。歴史の本文を読み解くと浮かび上がる王国がある。かつて強大な力を誇ったが、今はもう跡形もない。その王国の情報は執拗なまでに掻き消されており、その王国の人々はその「思想」を未来へ託そうと、歴史の本文に真実を刻んだ。
歴史の本文に古代文字を刻んだのはワノ国の「光月家」。世界政府にとって彼らの「存在」と「思想」こそが脅威。オハラのクローバー博士が王国の名を口に出そうとした瞬間に撃たれ、バスターコールに沈んだという。
歴史の本文を残した者達には「敵」がいた。空白の100年とは世界政府に揉み消された不都合な歴史未来島エッグヘッドや今はなきからくり島の様な高い文明を誇る。
「ある巨大な王国=“Dの一族”の王国」である可能性が高いと思われる。つまり、住んでいたのは“Dの一族”だろう。現在では少数になってしまった“Dの一族”だが、それでも世界政府・天竜人はその名が世間に広まることを危惧している。そして世界政府による「空白の100年」についての執拗なまでの揉み消しと情報操作。それを800年経った今でも続けているという事実。
巨大な王国が戦争を始めたのが900年前。その後100年間の空白(戦争期間)を経た800年前、王国が敗北。そして現在、空白の100年から800年経ち、巨大な戦いが再び始まることが示唆されている。
ロジャーたちがラフテルにて20年以上先のことを知れたのは、古代兵器が復活するのが800年周期であることを知ったからだろう。そこで、25年後は自分達の全盛期を過ぎているから次の世代に託したのではないかと私はふんでいる。
つまり、過去何度も800年周期で古代兵器を用いた戦争が行われてきたのではないか。だから、戦争が始まれば誰かがプルトンを使うために開国をすることになる。おでんやトキは、その時カイドウは破れるはずだと予言できた。だから、今なお必死に戦い続けている。
800年周期で古代兵器が復活する。そしてそれを用いた100年も続く巨大な戦争が勃発。勝者が次の800年間、世界を支配する。そんな歴史が繰り返され続けてきた。
私は「ある巨大な王国」は、月の民が空島を経由して、青海で建国した多民族国家だったんだろうと考えている。宗教としては太陽十字。
今の天竜人の先祖たちに滅亡させられて、その時に天竜人たちによって作られた国が世界政府。 「ある巨大な王国」には生き残りがいて、それを逃がす手助けをしたのが「ネフェルタリ家」だから彼らは五老星に未だに裏切り者の一族と言われているのではないか。
そして、逃げた生き残りたちは共通の先祖をもつ空島・和の国に逃げ延びた。和の国に逃げた人たちにより歴史の本文が作られ、その内容は 何故王国を追われたのかを記した「歴史を紡いだもの」。いつか王国へ帰るための「失われた王国への行き方」 。自分たちが敗れた世界政府を倒すための「対抗手段(古代兵器)」 。その3つを記した。
歴史の本分を同じ場所に保管すると歴史や兵器が奪われる可能性があるので、それらを和の国に逃れた「ある巨大な王国の生き残り」と、自分たちを助けてくれて信頼のできる「ネフェルタリ家」に歴史の本文を渡し世界に散り散りになった。
王国の生き残りの一部は「ミンク族」としてゾウに、他の生き残りは「Dの一族」として世界のあちこちに歴史の本文ともに姿を消した。だから現在もDの一族は世界のあちこちに点在しており、世界政府に狙われる可能性を考えた一部の一家はローの一家のように忌み名として「D」を隠して姿を潜めた者たちもいた。
一方で、月からこの星にきたとき、青海におりず「空島」に定住した者達もいた。彼らは逃げ延びた者たちを匿った。彼らは独自に歴史を紡ぎ王国への帰る手段も持ち合わせており、その空島こそエネルの故郷である今はなき空島「ビルカ」である。
彼らは失われた王国の都市の生き残りとビルカから来た民が力を合わせて誇りをもって生き、そのビルカから来た民という言葉が時代とともに変わり、空島「ビルカ」の民へと意味合いが変わっていった。
私達は知っているのだ。滅ぼされる前の空島ビルカを知っているから。空島という環境のおかげで数百年も世界政府に狙われることもなく生きてきたが、そのせいか彼らは伝承に固執して他の全てを忘れていた。理解できるのはおそらくエネルだけだった。
私は価値を理解できた。歴史もきちんと伝聞されており、失われた王国の事もそこへの帰り方もきちんと残っていた。だからそれを聞いて育ったエネルはそれらを実行しようとしたのだろう。
空島ビルカで「ある巨大な王国」へ帰るために国宝を奪った。それこそが「箱舟マクシム」の設計図と国宝のゴロゴロの実。
つまり失われた王国の場所も真実も知っていたエネルが行こうとしていた「限りない大地=フェアリーヴァース」こそが「ある巨大な王国」の名前である。
つまり「ある巨大な王国」とは国の名前が「フェアリーヴァース」都市の名前が「ビルカ」であり、その場所がエネルが月に向かって「神のいるべき場所に帰る」と言っていた事から「ある巨大な王国」は月にあると思われる。
ちなみに「箱舟マクシム」は一見ゴロゴロの実を持っているエネルしか動かせないようにも思えるが、 私の宇宙船のように電気を使える「ミンク族」や電気を扱う魚人であれば複数人いれば動かせる。もともとのビルカには電気を動力として動かせる物が沢山あったと思われる。
これは「ミンク族」が電気を使える点を見るとゴロゴロの実を持っていなくとも彼らなら普通に動かせるので、 もともと「ミンク族」が古代都市ビルカにいたと推測できる。
電気を作るものがなくなったから、この星に来たのだ。
この世界にも大規模ではないが、電気をつくることはできる。ただ、偉大なる航路では磁場がおかしいため、蓄電することができない。だから私達は改良したサンダーダイヤルや他ダイヤルを駆使して電気に変換することで代用している。
ベガパンクにもビルカ文明のすべてを渡したが、いまだに完成には至っていない。ビルカ文明では、永久的に電気を生成し、蓄電することができるそれを《太陽》と呼んで信仰していた。
元々は月で運用されていたモノだろう。ベガパンク曰く、月には全く太陽の光が当たらない場所がある。それが月の裏側というのは正確ではないが、ずっと暗い場所というのがあるらしい。
その為に月の民は人工太陽を作り出していたんじゃないか。月の民は人工太陽のエネルギーを電気に変換していたんじゃないか。古代兵器ウラヌスというのは太陽の恵みを与えてくれる。それはまるで陽樹イブの様に。しかし使い方によれば世界を滅ぼすほどのチカラを出せる。そういったモノなのかもしれない。
私としてはもう完成していると考えている。人工的な《太陽》こそが古代兵器ウラヌスではないか。200年前に聖地マリージョアを襲った謎のロボットは、《太陽》を奪還するためにやってきたが、力尽きたのではないだろうか。
世界政府の三大機関の一つであるエニエス・ロビーには夜がない。延々と太陽の光が差し込む。あそこにウラヌスがあるのかもしれない。なにせエニエス・ロビーにあるのは裁判所。つまり裁きがくだされる場所だ。
しかも、島の周囲に大きな穴が空いている。もしかすると、あれは古代兵器ウラヌスによる攻撃の痕跡だったりするのかもしれない。エニエス・ロビーの歴史は800年もある。あそこにも空白の100年に何かあったのかもしれない。
古代兵器ウラヌスが人工《太陽》なら、エニエス・ロビーの様に晴れた昼間になっていなくては説明がつかない。
あの日のことは思い出したくないが、曇っていたことは覚えている。
これは膨大なエネルギーをどう使うかで変わると考えている。そのエネルギーで広範囲を照らすか、あるいは集中させるか。兵器目的で使うなら集中させて光を降らせる。
その代わり昼にはならない。これで説明できるかどうか。わかるのは謎の攻撃の直前、明らかに光を発していた。その後、16本にも見える光線が島に降り掛かった。そして、私の生まれ故郷は跡形もなく消えた。あれが古代兵器ウラヌスなのだとしたら、なぜ彼は逃げなかったのか。なぜ私だけを先頭の船に転移させたのか。今だにわからないでいる。
彼なら私をかかえて転移できたはずなのに。おかげであの国最期のDの血は途絶え、私はDではないのに頭目が拾ってきた跡取りだからと移住者全員から満場一致で指名されてしまったのだ。勘弁してほしかった。まだ子供でいさせてほしかった。
嫌がる私に代々頭目が食べるはずのワプワプの実を闇のシンジゲートから見つけ出した彼らは差し出してきたのだ。その瞬間に、私は知りたくもなかった彼の死を知ったわけだ。あの時食べたワプワプの味は忘れることはないだろう。あの日、私は子供であることができなくなった。15のときだ。
ただ“D”の名の付く者を“Dの一族”とするなら、巨人族であるサウロもいる事になる。“Dの一族”とは、種族間の隔たりのない一族?“Dの意志”を持つ者なら、誰でも“Dの一族”になれるのか?それとも王国が多民族国家だったのか?
私もDになれるなら、彼のいうことは正しかったということになる。Dの意思は血は関係ないと笑ってくれた彼が嘘をついていたとは思いたくないから、そうであって欲しいものだ。
なにせ、彼はそういって、あの国にあった歴史の本文を託して死んだのだ。私がハチノスを守りたい理由がここにある。
あれから王直として、ホーミングとして生きてきた。
「イールはどっちだと思う?あの日から答えは出たか?オハラの説が正しいと思うか?」
あの日、私と共に神をみた男は肩をすくめた。
「わからない......王国が負けて、連合国が世界政府になったんじゃないかと思っていた。でも、あそこには神がいた」
「そうなんだよ。だから私も今だにわからないでいる。なぜ天竜人の頂点である五老星をおくことで世界の王を作らないと誓った玉座に人影があったんだ?なんで彼らは平伏してた?あそこは誓いの間だ。あの光景が目を焼き付いて離れない。無数の剣が突き刺してあるせいで、まるで王国側に連合国が負けて降伏してるようにしか見えなかった。まさか、王国が勝ったんじゃないか?古代兵器を奪取することで追い詰めたが、古代兵器ウラヌスを奪えず負けたんじゃないか?そう思えてならないんだ」
「だが......連合国が負けたなら、なぜ王国側が消されたような痕跡を残す必要があるんだ、船長」
「そうなんだよ......だから、私はそこから先に進めないでいるんだ」