ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

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王直とニューゲート(原作時空)

この世界にはスフィンクスという生物がいる。正しい表記は「SPHINX」。 海底大監獄インペルダウンの「レベル2 猛獣地獄」に牢番として放し飼いにされている巨大な人面のライオンで、上半身と前足に羽毛が生えているのが特徴。飛ぶこともできる。

 

囚人たちがヒマ潰しとして単語を覚えさせて遊んでいるが、なぜかそのほとんどは麺類。 そのため食べ物(主に麺類)の単語ばっかり喋る。 レベル2の猛獣たちのリーダー格だが、レベル5に放し飼いにされている「軍隊ウルフ」はこのスフィンクスすら食べてしまうほどの狂暴さだという。

 

このスフィンクスには穏やかな個体がおり、偉大なる航路の後半"新世界"にある村にはそれゆえにスフィンクスと名付けられた。かつては世界政府加盟国が世界貴族に払う「天上金」すら払えないほど貧しい非加盟国だった。

 

ここで孤児として育った四皇"白ひげ"エドワード・ニューゲートが村をつくり、子供の頃は腕っ節で財宝を独り占めしていたが、海賊となっていつの頃からか「家族」に憧れるようになり、知己はすでにいなくとも生まれ故郷とそこで暮らす人々の助けとなるようにと財宝を密かに故郷へ送り続けている経緯を持つ。

 

今に至るまで海賊稼業で得た自身の取り分をすべて送っている。そう、すべてだ。幼少期に海に出て海賊になってからも故郷を気にかけ、自分が故郷に作った小さな村に生涯自分の宝を貢いでいるのだ。ロックス海賊団の船員として活動するずっと前ね若い頃から「家族」を欲しており、財宝よりも憧れていた。白ひげは金に困っていた。

 

ジーベックの船員になったのは仕送りのために儲け話に乗ったのか、あるいは故郷が滅びた原因である世界政府への復讐心もあったのかもしれない。少なくても、この時点でのニューゲートには自覚がなかった。

 

「よく調べやがったな、ここまで」

 

「ハチノスの頭目なめんじゃねえよ。おまえらが繁華街でどんなふうに過ごしてんのかなんてお見通しだ。まして、定期的に故郷に船だしてるとなりゃ。なるほどね。だから見かけによらずケチで人に酒を奢ってくれたこともねえし、むしろ欲しがるしってなるわけか。スフィンクスか......国名か?」

 

「それはわからねえ。おれが生まれたときには、誰も知らなかったからな。インペルダウンにいるってのは初めて聞いた。よく知ってるな」

 

「昔取った杵柄ってやつだ、おれが頼んでもねえのに許してくれってスパイに志願してくる官僚どもが教えてくれるのさ。許すわけねえのにな」

 

「マリンフォードの事件は知ってる。気持ちはわかるぜ、おれだって船員は家族みたいなもんだ。それなのに後継者にしたいくらい可愛がってた15の子供なんだろ?おれだってするさ」

 

「そりゃどうも。スフィンクスについてだが、おまえの国から無理やり連れてこられてんだろうよ。そりゃあ凶暴にもなるさ、可哀想に。故郷から無理やり連れてこられて、生涯インペルダウンじゃあな。加盟国になるにはまだ足りなかったみてえだか」

 

「......そういう経緯だったのか?」

 

「しらん。ただ、スフィンクスがいる国ってのは初めて聞いたからな、おれはそう思っただけだ。真相は世界政府のおえらいさんに聞かねえとわからねえさ。あの子をスパイにした仏のセンゴクだって、上司に命令されたに過ぎねえからな。西の海生まれで、いずれ元帥の椅子に座るような家柄の男だ、物分かりがよくないとダメだろうからな」

 

「よく知ってるな」

 

「相手を判断するには、よく知るところから始めないといけないしな。特におれは見聞色の精度を少しでも上げるために情報収集をかかさないようにしてんだ。敵を知るには味方からっていうだろ?嫌なこともあったろうに教えてくれてありがとうな」

 

「いや、ここにも、話がわかる奴がいると思って安心したとこだ。この紙の書き方はどうかと思うがな。相手への思いやりってやつがねえ。商人ってのも仁義ってやつは忘れちゃダメだろう、嫌味か?」

 

「いや?」

 

心底不思議そうにしている男を見て、そのチグハグさに気づいたニューゲートは、これはだめだ本気でわかってねえと気づいて、懇切丁寧になにがダメなのか教えてやった。訂正しすぎて紙は真っ赤になった。

 

「......」

 

「どうした、王直。おれは間違ったことは言っちゃいねえからな、あやまらねえぞ」

 

「いや、アンタのおかげで見聞色の精度がよくなったみたいだ。時々人は意味のわからない非効率なことをするから困ってたんだ。そういうことだったのか、教えてくれてありがとう。助かった」

 

「お、おう。宇宙人みてえなやつだな、おまえ。そんなんだからウミットに負けたんだろ」

 

「..................かもしれねえな......」

 

「自覚なかったのかよ!?」

 

「いや、今まではそれで問題なかったからな。交渉ごとや人と関わるのは部下に任せりゃよかったし、おれだけでやる仕事は別にある」

 

「取り繕うのはうまそうだもんな......出会ったばっかのおれですらヒヤッとするんだ、そりゃあ怖いって思うやつもいるだろうに。よっぽどその見聞色が大事な仕事なんだな、アンタが頭目をするってのは」

 

「まあな。しかし、今更なんだが、ニューゲート。いくら金に困ったからって、おれ達がやるのは海賊じゃねえ。テロリストのそれだ。大丈夫なのか?明らかに浮いてるぞ、おまえ」

 

「正直もう後悔してるとこはある。今更乗り掛かった船だから降りはしねえが。なんだあのチームワークの無さは。しょっちゅう殺し合いしやがって。おれの船は仲間殺しを禁忌にすると今決めたとこだ」

 

「あっはっは、そりゃいい。船員が家族ってならその方がいいな。いい海賊になりそうだ。しかしそれをおれ達に求めるのは無理だろ、求められてんのは強さだ。人のしたにつくようなやつなんざ誰も求めてねえみたいだからな、ロッキーは。おかげでこの有様だがおれは好きだぜ。テロリストが弱くちゃ話にならんからな」

 

「ジーベックがアンタに真っ先に声かけた理由だけはわかる、テロやりたいならアンタがいなくちゃ始まらないな」

 

「だろう?おまえは嫌いだろうがおれは好きだぜ、この海賊団。なにせ部下達を逃がすための時間稼ぎをしなくてもいい。こんなに頭空っぽにして戦える船は後にも先にもねえだろうさ。なにせ強い奴らしかいねえからな。いっちゃわるいが、守らなくてもいいってのは気楽でいいもんだ。おれは15から守らなきゃならねえやつらがいたんでね、こんなに楽しい船は初めてなんだ」

 

「あー......アンタが頭目なのにジーベックの儲け話に乗ったのはそれもあるのか。よく部下達が許したもんだと思ってたが......アンタの方が若えパターンか」

 

「そうだ、バハンの血の掟ってのは、頭目のおれすら逆らえねえ絶対的な規律だからな。この船にいる間だけはおれは自由なんだよ」

 

「いろんな奴らがいるもんだ」

 

「世界は広いだろう?広いついでに教えてやろうか。スフィンクスってのは、もともと楽園にあるアラバスタあたりの古くからの神話によると再生・復活の神だそうだ。王の偉大さを現す神聖な存在って話だが、古くから争ってる国では怪物みたいだな。子供をさらう怪物であり、戦いにおいての死を見守る存在で、高い知性を持っており、謎解きやゲームを好むらしい。朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足。これは何かってな」

 

「......人間か?人間は赤ん坊の時には四足で這い回り、成長すると二足で歩き、老年になると杖をつくから三足になる」

 

「そうそう、さすがだな。本来ならそんなに知性が高いはずのスフィンクスが、この世界だとせいぜい麺類の単語しか話せねえんだぞ。こんなにひでえ話があるか?ニューゲート」

 

「..................そいつはひでえ話だな、ほんとに」

 

「そういう世界なんだよ、知性があるやつばかりがひでー目に遭う」

 

王直の目が狂気じみていたのを目の当たりにして、ニューゲートは、いつかこいつがそれを抑えきれなくなったら、完全なる化け物になる前に殺してやるのが慈悲だなと思った。今もそう思っている。

 

「ロッキーのいう儲け話考えたら、お前の欲しい金はかなり先になっちまうんだよな。そうだ、これからこの紙みてーに訂正してくれるか。おれも正直金には困ってるがジーベックの船に乗ったのはそっちはハナから期待しちゃいねえ。やってくれたら金払ってやる」

 

「そいつはいいな、さっそくなんだがこの店の支払い頼めるか」

 

「少しは遠慮しろ。さすがのおれもそれが図々しいってやつなのはわかるぞ、ニューゲート」

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