ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
バハンの王直、あるいは人堕ちホーミング様
すべてはゴッドバレーで死ぬ定めだったおれとバギーが宝箱に入れられて、海軍の英雄ガープ中将と海賊、しかも敵対するはずのロックス海賊団のあなたとエドワード・ニューゲートとロジャー船長のプレゼント交換から始まりました。海賊は宝箱をもちかえる習性があることを利用し、どんな想いでおれとバギーの両親があなた達に託したのかは、あの日、ロジャー船長とエドワード・ニューゲートから聞きました。
リュウグウ王国のシャーリーの預言を思い出したおれは、あなたが無責任な約束のために責任をおう必要はないと止めてくれたのに、ロジャー船長への恩に報いるべく覚悟を決めたことを昨日のことのように思い出すことができます。
長い長い葛藤の旅でした。ジョイボーイになれる悪魔の実を知るためにフィガーランドだと嘘をついて世界政府に近づき、ニカを知り、サイファーポールの船を襲撃し、エースがいるフーシャ村に届ける。海の王はこうあるべきだと教える大海賊を練習する日々でした。
あなたがいうように、エースが普通に生まれてこれたらエースは海の王になれたでしょう。みんなそのために準備をしてきました、バギーをのぞいて。
オハラが全てをかえました。本当の意味で世界をひっくり返しました。ただのレッテルだったはずの世界で一番自由なのが海賊王が、名実ともに海の王と海賊王をイコールにしてしまったのです。万物の声をきけなくてもなれるとあなたはいいましたが、おれはやっぱり怖くて食べることはできませんでした。
ルーツがわからないおれが食べてもジョイボーイしか海の王になれないかもしれない恐怖がチラついて無理でした。バギーのおかげで悪魔の実はどんなものかわかりましたが、泳げなくなったバギーを助けてきたおれはその恐怖をよく知るおれは無理でした。おれのせいでバギーは能力者になったからなおさら。おれだけ抜け駆けするのはダメだと思いました。
あなたのいうように悪魔の実が能力者を選ぶならエースをゴムゴムの実が選ぶはずだから。
なにせ海の王の手がかりは覇王色を持って生まれてくる、万物の声がきける、あるいはウオウオの実を食べている、という今は存在すらあやうい希少な種族の血を引くというあってないような手がかりしかありません。おれはロジャー船長がいっていたおれはしなねえという言葉を信じるなら本当にエースがよかった。それなら諦めがついた。
しかし、ルージュさんもあなたのいうように残念な結果、おれにとってはロジャー船長には悪いですが奇跡がおきて2年後に生まれてきて、オハラの革命が起こりました。ロジャー船長にとってエースやアンがそれだけ大切な名前だとしても諦めていた夢が叶うかもしれない奇跡の連続でした。
あなたがいうように、やはり王は自然に生まれてくるんですね。
あなたが世界に失望しているのは知っています。滅ぼしたいくらい。でもおれはまだ世界を信じています。信じざるをえなくなりました。どんなにイカれたこの世界にもまだ奇跡は起こるのだとあなたにだけは伝えたかった。ルフィが教えてくれました。おれも海賊王になれるんだってことを。だからおれはエースじゃなくてルフィに麦わら帽子を託しました。ロジャー船長には悪いですがそれくらいは許して欲しいと思いました。
あなたならさっさと取りに行け腰抜けといったでしょうが、おれは数秒先の未来しか見えません。あなたみたいに16年も先はみえません。だから信じられないんです。ルフィがジョイボーイになるまで。
でもルフィがゴムゴムの実を食べたのはロジャー船長の生まれた海である東の海だったのはやはり運命を感じたのは、やはり20年前に訪れた東の海にあるゲッコー諸島の片隅にある村。そう、ゲッコー・モリアの苗字が使われているあの諸島に隠れ里のように存在するうちの優秀な狙撃手ヤソップの生まれ故郷であり、のちに麦わらの一味の最初の船ゴーイングメリー号が作られた場所です。
モリアは西の海生まれですが、スリラーバークが西の幽霊島なのはやはりそういうことですよね?あなたがドフラミンゴに伝えて匿っているのは想像にかたくありません。
シロップ村はほんとうにのどかな気候の島で、南北に一つづつ入り江がありそこから船が出入りする場所でした。まるでどこからでも敵から攻められても狙撃することができます。800年の歴史を感じました。見聞色に秀でた者が生まれてくることが前提の村で、実際ヤソップはそういうやつでした。
ヤソップから一回断られたとき、おれは確信がありました。やはり3年後にいってあの海賊旗をかかげてヤソップに目的を告げたらあっさり了承してくれました。勇敢なる海の戦士、ほんとうにいい言葉だと思います。
おれはシロップ村みたいな場所を目指して3年かけて回りながら仲間を集めました。フーシャ村でおれはようやく運命と出会いました。ロジャー船長の叶えられなかった夢の果てを彼が口にしたとき、おれは失われた海賊を教えてやりたいと思いました。
もう海賊はうたいません。ビンクスの酒を歌いません。それくらいミーハーばかりが跋扈するこの世界はあなたが嫌い抜いた世界だと思います。だから彼にだけはあなたが好きな海賊を教えたつもりです。海賊はうたいます。宴をします。かつて世界がふたたびひとつになることを夢みた誰かが歌ったように。世界で1番自由なのは海賊、バハンのような男達だったのだと。
ウォーターセブンであえた彼はどうでしたか。あなたに希望をとどけてくれたでしょうか。また夢を見せてくれそうなジョイボーイでしょうか。おれはまた夢をみせてくれそうだと思ったから腕を失ってまで彼を守りました。彼はおれを命の恩人だといいましたがとんでもありません。夢を見せてくれたのは彼の方です。あきらめきれなくさせたのも彼です。だからおれは彼にかけたい。きっとあなたにとってはローなんでしょうけど。......もしかして黒ひげやキッドだったりしませんよね?黒ひげは世界政府から抹殺命令が出てるし、キッドはおれが気に入らないんですけど。
おれがフィガーランドの末裔かどうかわからないにもかかわらず、麦わら帽子とゴムゴムの実を託す王を探す矛盾だらけの旅をおえ、彼がマリンフォード頂上戦争で名をとどろかせるまで、エドワード・ニューゲートと共に伝説として時代を停滞させる義理を果たしてくれてありがとうございました。これから20年も無駄にした時間を取り戻すために動き出します。今だからいいます。あなたのいうとおり、世界で一番ロジャーに憧れ、海賊王になりたいのはおれでした。
PS
金獅子とぶつからないまま四皇の座に座ったことに対するロックスの怒りはよくわかりました。頑張って名実ともに四皇になります。海賊王にもなります。カイドウには渡しません。
シャンクスより
「......ゴムゴムの実、まさかただの悪魔の実じゃねえのか?......なるほど。ほんとはエース用に準備してたのを食ったのが麦わらのルフィか。いい度胸だ、クソガキ。今に見てろ。おれの息子や夢見せてくれそうなキャプテンの名を継ぐ男を殺そうってんなら、娘殺されても文句いうんじゃねえぞ、てめえ」