ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
今から12年前、ギルド・テゾーロが29歳のときだ。ドンキホーテ海賊団が主催したドレスローザオークションの目玉商品がゴルゴルの実であると耳にした為に、それに目を付けて犯罪者達を唆し、巧妙な策で人を動かして会場に火を放つことで、何百人もの死者を出しながらもその混乱に紛れてゴルゴルの実を手にしたことで能力者となる。
しかし、その被害の甚大さに激怒したドフラミンゴが即日犯人を特定した(監視カメラの電伝虫や血統因子をまだテゾーロは知らなかった)。七武海の権限を使ってドレスローザだけでなく世界政府にかけあい国際指名手配。匿った国は加盟国だろうが非加盟国だろうが許さない。あらゆる手段でドフラミンゴファミリーの牛耳る表裏のシンジゲートから追放すると有言実行。ついでに少しでもテゾーロに関係した組織に厳罰にし、圧力をかけた。海軍とウミット海運においかけまわされたテゾーロは、1週間以内に捕縛された。
そして、ドレスローザのヴィオラ王女のギロギロの力で記憶を全て抜かれたテゾーロは、ドフラミンゴにいわれたのだ。
「つくづく運のねえ男だ。おれ達がドレスローザを拠点にして初めての死刑囚、しかもおれのシマでの初めての大犯罪者がおまえだ、ギルド・テゾーロ。まだドレスローザ側と調整中の時期にきやがって。自分の愚かさを恨むんだな」
ドフラミンゴファミリーのシマを荒らした奴らはドレスローザ側の裁判を経てから刑罰がくだされる。もちろんテゾーロは死刑囚になった。そこからまだ決まっていなかったので、どうしたらいいかの第一号になってしまったのだ。
あまり思い出したくない日々ではある。ホビホビの実でおもちゃにされ、世界から存在を忘れられたことがある。闘技場で死ぬんじゃないかという頻度で戦い続けたこともある。
とりあえず、下手をしたら奴隷時代よりきつかったのは、死んだ人間を甦らせる花だった。リリー・カーネーションという花が肩にのせられた。本来はオマツリ島の固有種で、人間を生贄にすることで死者を復活させることができる「死と再生の花」。リリーの力で甦った人間の頭には双葉がついている。リリーが長い間生贄を食べていないと甦らせた人間は体調不良に陥る。
普段は可愛らしい姿をしているが、真の姿はとても醜悪。テゾーロの肩に乗っているのが本体で、島の頂上にある巨大な管のような器官で生贄を食べる。この器官が大ダメージを受けると、数え切れないほどの無数の矢に分裂するちなみにこの矢は全てテゾーロが意のままに操れたため、ゴルゴルと合わせて確実な強さはえられた。
ただ、天国に召されていたはずのステラを無理やり蘇生させたため、変わり果てたテゾーロをみたステラの目は死んでいた。そこでテゾーロは知ることになるのだ。風の噂でステラが亡くなったと聞いたテゾーロはそれを金がなかったせいだ、『金がないから彼女は不幸のうちに死んだんだ』と思い込んでいた。
しかし、ステラは実は笑顔で死んでいた。なぜなら、彼女は奴隷の身でありながらとても金には代えられない愛情をある男からもらったからだ。それを天竜人がわざとテゾーロに嘘を教えていたのだ。それを本人から教えられた。
「もしお前が悪事で金を稼ぎ続けていれば、ステラをすぐに自由にできたな。その代わり今のステラみたいになるが」
ドフラミンゴの言葉にテゾーロは崩れ落ちた。テゾーロは再起不能寸前までおいつめられ、ステラは穏やかな死を選んだ。テゾーロはその日2度最愛の人を殺した。死刑囚だから死ぬのが刑罰なテゾーロは、普通の生活を送るはめになる。
そして、ある日のこと。ドフラミンゴに世界経済新聞を渡された。
「てめえの過去をすっぱ抜きやがった。まだ恩赦なんて決めてねえのにな」
ドフラミンゴは笑っていたから嘘だとすぐにわかった。世界中にテゾーロは元奴隷だとバレてしまった。ドレスローザの国民から悲劇の主人公だと認識される羽目になったテゾーロは、恩赦という形でドフラミンゴファミリーに入ることになる。傘下から抜けたら国際指名手配犯に逆戻りで、またステラを酷い目にあわせてしまう。もはやテゾーロは足抜けする気力は残っていなかった。これが王下七武海天夜叉ドフラミンゴだった。
ほんとうに本当に恐ろしい男だ。そのせいで今だにテゾーロはドフラミンゴと会う時緊張してしまう。ドフラミンゴがウミット海運が古巣のマフィア気質な海賊なのは知っていたが、普通ならその場で射殺されなかったのは、テゾーロにまだ利用価値があるからなのは明らかだった。仲間殺しの禁をはじめ、かなり厳格な血の掟を定めていたのは聞いたことがあったが、テゾーロはよりによってその中でも特に重いやつをやらかしたらしい。身内に手を出されることを1番嫌う、海賊にしてはかなり身内に甘い人間だと知ったのはその後のことだった。
「親善にもらったビルカの黄金でマキシムもどきでも作ろうかと思ってたのに、めんどくせぇことしやがって。電気伝導がいいまとまった鉱物なんて滅多にねえんだぞ。市場に出したら暴落するから迂闊に出せねえってのに。なんでゴルゴルの実は死刑囚なんか選んだんだ」
どうやらゴルゴルの実ありきの儲け話がご破産になりかけたら、テゾーロが適性があることに気づいて苦肉の策なのだと気づいた。
テゾーロはいきなりとんでもない量の黄金を渡され、儲け話を考えさせられる変則的な入団試験をうけた。その結果、数年後にはタナカやダイスを仲間にいれ、ドンキホーテファミリーの傘下として戦力的にも申し分ない程の戦力を得る。商売仲間として利用する方が価値があると判断したドフラミンゴから協定を持ちかけられ、それに乗ることで世界政府や裏社会とのパイプを繋ぐ事に成功する。
ドフラミンゴファミリーの庇護下に入り、闇の興業を発展させて部下も増えていき、35歳の頃には「ラッキーガール」バカラと出会ったことであらゆる事が自分の思い通りに運ぶようになり、5年前(36歳)には巨艦「グラン・テゾーロ」を完成させ、現在に至る。
ただし、新世界の人間達にラキラキの能力は覇気で無効になるため、あくまでも一般人向けの使い道ではある。
倍に増えた黄金はそのマキシムというものを動かす動力として電気を起こす装置に使われる。なんて贅沢なと思ったが、ドフラミンゴ曰く発案者がいる空島には鉱物がないから苦肉の策らしい。世界は広い。金の価値がまるで違う国がまだまだあるようだ。気づけば世界の20%の黄金を持つといわれるまでになっていたが、実際に黄金として使われているのは何%なんだろうか。
忘れた頃に鷹の目の餌食になる以外は元奴隷の黄金帝は特に不満はなくなっていた。
「テゾーロ、おまえの力で金脈ついでには探れねえのか、 偉大なる航路のイカれた磁場の原因は」
「なんでそんなことが知りたいんだ、ドフラミンゴ?何千年、何万年前からの常識だろ?島の磁場がおかしいから天候や海流がおかしくなるんだ」
「そりゃそうだが......」
その先がいえないのか、ドフラミンゴはしばしの沈黙のあとなんでもねえと返してきた。
「興行で航海するついでに金脈がありそうな場所に探りはいれるが、磁場とかかわりありそうな場所かどうかはわからないぞ」
「怪しいとこさえ見つかればいい、そっから先はホーミングかおれが調べるからな」
「人堕ちまで動くのか?かなりでかい儲け話だな」
「ああ、見つかれば面白いことがわかる。ついでに海底に沈んだ輸送船に運よく航海日誌あたりが見つかればいうことねえんだがな」
「......まさか黄金都市の交易を調べてるのか」
「あたりまえだろ。昔ジャヤにあったのはわかっても、それだけじゃ意味ねえだろうが。各地の遺跡からインゴットあたりを調べてんだよ。かぼちゃだけ広まったわけじゃねえはずだ。文化の発信源がわかれば、失われた技術とかあるかもしれねえからな」
マキシムを思い出す。ほんとうに恐ろしい男だとテゾーロは思う。
「そうだ、ついでなんだが、テゾーロ。今度、このイベント開催することになったから、目を通しておけ。かなり大規模になる予定だ」
「ほんとに随分と大きなイベントだな」
分厚い企画書だ。ドフラミンゴはつまらなさそうにぼやいた。
「上からの指示だ」