ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
「これをみろ」
不機嫌なミホークが投げつけてきたのは、世界経済新聞だ。四皇赤髪海賊団とその地位奪還を狙う金獅子との戦争が続いている。主な舞台であるエルバフは島落としや海水の猛獣達に襲われ甚大な被害がでているが、陥落していないだけマシというレベルだ。エルバフ以外は耐えられないだろう。逆を言えば、金獅子が赤髪海賊団のほかのシマにいかせない、赤髪海賊団は他に行けないこう着状態である。たまに空島バロンターミナルに金獅子が遊びに行くから、それが束の間の休憩状態だとある。
「あァ、足が飛んじまったのか。また全盛期で決着つかなくなっちまったな、鷹の目」
「よりによってあの男がするとは......」
あの男とはもちろん20年前に新世界から姿を消したと思ったら、弱小の海で仲間を集めはじめ、ある時いきなり片腕をなくして帰ってきたライバルのことである。仲間集めを始めた時点で決闘がおざなりになり、ミホークは七武海入りを決めるくらいには見損なったと意気消沈していたのだ。ミホークはあんまり海賊ごっこをするライバルが好きじゃなかった。
なにがあったのか知らないが23年もたってかつてを取り戻したみたいに精力的に四皇をするようになった。剣士としてのライバルにしか興味がなかったミホークにはそれはどうでも良かった。
海賊同士の決闘への横槍は両者からの攻撃を喰らうのは暗黙の了解だ。ミホークは海賊狩りのゾロの師匠をしなければならず、匿っている都合上、七武海の肩書きは外せない。つまり動けないのだ。なにもなければ参戦できたはずなのだ。よほど悔しかったのか、新聞は持ち込まれた時点で、かなりぐしゃぐしゃになっていた。
クロコダイルは麦わら一味の海賊狩りのゾロに心底同情した。最強をかけて剣士の戦いを至高としてきたミホークにとって、弟子であるゾロは最後の希望になってしまった。またしごきが加速するだろう。
そういうお前はどうなんだと無言でミホークに新聞の反対側を突きつけられたクロコダイルは笑った。インペルダウンの陥落時にあの黒ひげすら勧誘をやめたのか、活動を再開した合体野郎が暴れている記事がでていた。
合体野郎はクロコダイルと決闘の勝負がつかなかったライバルだ。ロジャーの処刑執行を知った後は自身の目標を果たせなかった苦悩と失意からさらに激しく暴れ回るようになっていた。ロジャーがなんのために大海賊時代を始めたのか、てんで理解していなかったのだ、船に乗っていたくせに。
失望したクロコダイルは七武海入りの手土産に謀略を巡らせてライバルに引導を渡してやったのだ。クロコダイルの目指す海賊王に合体野郎は1番遠い存在に成り下がっていた。
あのとき指揮したのはセンゴク大将だったから、クロコダイルの七武海入りからアラバスタの謀略が麦わら一味に破綻されるまで、クロコダイルの陰謀は誰にもバレなかったのだ。
インペルダウンに投獄された合体野郎はようやく全てを悟ったはずだ。だからインペルタウンLEVEL6で再会したとき、脱獄したら真っ先に殺してやると宣告をうけている。
合体野郎は20年間一人黙々と極限の集中力で体を鍛え続け、またロジャーを超えるための答えを模索していたようだ。そして四皇や海軍大将など全ての強者を殺し、世界最強の「海賊王」になることを決意したらしい。あいかわらずなにもわかってないライバルにクロコダイルは失笑を禁じ得なかった。さっそく海軍の大将を誘き出すためにかつてミホークがしていたみたいに、片っ端から海軍の船を襲っているようだ。
だから隠れ蓑が必要になり、クロコダイルはここにいる。
「おれが動くのは1年後だ。麦わらが動くと世界が動くからな、クロスギルドはそこで一気に軌道にのせる」
「おれは決めたぞ、クロコダイル。貴様の勧誘にのってやる。1年後に七武海がどうなろうがおれは抜ける。そうすればシッケアールにはいられなくなるからな、新たな拠点が欲しくなる。こんな屈辱3度目はゴメンだ、四皇にも興味はない。すぐに動けるならどこでもいい」
「クハハハ、そいつはいい。海賊狩りまで剣士として脱落しちゃたまらねえってか」
「それはそこまでの男だったということだ。問題はあの男からおれに師事してきたことにある。なのに脱落されたら、おれはおれ自身が夢を打ち砕くに等しい悪行だ。おれの矜持の問題だ」
「なにも知らねえんだろう、海賊狩りは?災難だなぁ、クハハハ」
クロコダイルは笑った。
世界経済新聞とそれ以外の新聞を比べればクロコダイルは世界政府が七武海廃止の裏工作に出ているのは気づいている。ルーキー時代から振り回されてきたロックスかぶれが阻止に動いているのは予想できる。かつて七武海にいた頃知り合った、革命軍に理由を教えずに兵器になったくまをみれば、奪還に動き出すのは自明の理。
さすがにロックス連中が手を組んでいて、カイドウが世界会議で皆殺しを企んでいるまでは知らないが、四皇のうちカイドウとマムが同盟を結んだから、なにかしら仕掛けてくるだろうと考えていた。まさに標榜する暴力の世界に王手がかかっているのだから。
七武海が存続するか、否かにかかわらずミホークがのってくれるなら、こんなにいい巡り合わせはない。
クロスギルドは組織の活動内容から、非常に革新的なゲームチェンジャーとして多くの衝撃を与えるだろう。
問題は。
「鷹の目じゃねーか、なんかようか?」
最果ての地のログポースが実在するのか聞かれて、あったけどロジャー船長に言われて海に捨てたのは間違いないと昔話を終えてかえってきたバギーである。その時のいざこざに関わった連中の名前を聞かれて洗いざらい話した。あとから血統因子で調べる気だろうか。ドフラミンゴなに企んでるんだろうなあと思いつつ、バギーは意味深に沈黙する2名に嫌な予感がしたのか釘をさした。
「ただでさえワニちゃん庇ってんだ。ふたりで結託して変なことすんじゃねーぞ、おれまで剥奪されるだろうが。......いやなんで黙ってんだ、てめーら!なんか言えよ、こえーよ!!」