ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
16年前ドンキホーテ・ホーミングの陳謝からトンタッタ族とドレスローザ王朝、ドンキホーテ一族の公的な関係は復活した。
トンタッタ族はドレスローザに先住していた種族という訳ではなく、かつては自国にない資源を求め世界を放浪していた。
だが900年前、先代王朝であるドンキホーテ王朝に「資源と安全の保障」を約束する条約を提案され、これを承諾してドレスローザに住み着くようになる。
しかし、条約の実態はトンタッタ族に強制労働を強いるもので、以後、ドンキホーテ一族が聖地マリージョアに移住するまでの100年間、トンタッタ族は奴隷としてドレスローザの繁栄を影で支える存在となった。
それを謝罪したのだ。
弟子の七武海天夜叉ドフラミンゴが人工悪魔の実の育成を狙い、四皇カイドウに狙われていると密書を送ったのが始まりな時点で好感はあったため、スムーズに行われた。
陳謝に至る経緯はこうだ。
33年前、ドンキホーテ・ホーミングは当時13歳にして才女と誉れ高かったオトヒメの嘆願書を読んで改心した。
彼女は魚人に対する差別を政治的な面から解決して人間との共存を目指して、今なお活動を続けているリュウグウ王国の人魚姫だ。今なお魚人島民達にリュウグウ王国の海上移設に賛同する署名をするよう王国中で運動を展開している。元の自己犠牲も厭わず他者を助けようとする精神から国民に非常に愛される人物である。
夫はリュウグウ王国国王のネプチューンで、娘は“人魚姫”と呼ばれるリュウグウ王国王女しらほしと年子の姉がいる。また、息子フカボシ、リュウボシ、マンボシはリュウグウ王国の王子であり、同時に同王国軍の三強として国を守っており、姉はしらほしの護衛として知られている。
探検家にしてタイヨウの海賊団の初代船長フィッシャー・タイガーとは、 方法は違えど魚人差別撤廃に尽力した人物として並び称されている。
公的にはホーミング一家はオトヒメ様に感化されて、自ら望んで北の海の非加盟国に降ろされ、人間としての生活を始めたことになっている。誰も信じてやしないが。どうみてもオトヒメ様の署名をしたために、世界政府に見せしめにあって非加盟国に降ろされたとしか考えられなかった。
そこからホーミングは非加盟国を滅ぼし、ウミット海運を世界の海運会社に成長させ、弟子のドフラミンゴが巨大なシンジゲートを確立。その影響力を背景に、実質リュウグウ王国の後ろ盾となってきた。
元天竜人として、たとえ古い法律が呪縛だとしても、それを撤廃するなり、抵触しないよう解釈を広げて活動すべきだと助言した。
200年前からリュウグウ王国の政治的立場は実は非常に不安定なのだ。
公的には200年前に世界政府がいきなり魚人と人魚を魚ではなく種族であると世界中に認めて、差別を撤廃する。奴隷は禁止にする。いきなり非加盟国から加盟国にすると発表したからだ。しかも50しかない世界会議で発言権がある国にするとまでいいだした。その前になぜか1国地図の上から抹殺されたが誰も見て見ぬふりをしたため、今となっては知るものはない。
当然、まだ撤廃直後の差別全盛期のその年の世界会議に一度だけ出席したリュウグウ王国側の感じた不信感は根強く、それきりになっていた。
それはよくない、とホーミングはいったのだ。リュウグウ王国は恨まれている。非加盟国はもちろん、世界政府加盟国のうち世界会議に出られない120の国にも、発言権が認められているのに現れない49の国にも恨まれている。もっている権利がどんなにこの世界で大切なものか自覚すべきだ。まして、署名活動を世界会議を飛び越していきなり天竜人にもらうのもよくない。
たとえ奴隷解放が失敗したのだとしても、棚からぼたもちだとしても、勝ち得た権利は使わなくては。
ホーミングは200年前の世界政府の意図に気づいていた。
200年前すでにドレスローザとリュウグウ王国の交流はあった。なにせ200年前トンタッタ族が住むグリーンビットにはなにかを守るように闘魚が住みつき、人間は近づけなくなった。ゆえに世界政府は近寄れなくなっている。ハーフの子供がよくいる。ホーミングは、その意味に気づいていながら、100年も奴隷にして本当に申し訳なかったと謝罪した。
当時のドンキホーテ一族は人間の国であるドレスローザを世界政府における発言権のある加盟国にすることで頭がいっぱいだった。人間として小人族への差別がそうさせた。申し訳なかった。長年の戦争の最中は良き友だったはずなのに、共通の敵がいなくなるとすぐこれだ。
200年前、グリーンビットには900年前の巨大な王国の遺産である伝説の巨人のロボットが眠っており、ある日偶然雷が落ちた。もしくは電気が使える誰かが先導してドレスローザとリュウグウ王国を繋げたのか、ジョイボーイか人魚姫だけがロボットを動かせたから巨大な王国の末裔が黒幕にいたかもしれないが、記録が残っておらず、世界政府が認めないからわからない。
どのみち電気切れで停止していただけのロボットは、プログラミングされた思想により900年たっても奴隷制度が撤廃されない怒りを覚えた。物理的にレッドラインを登り、聖地マリージョアを襲撃しようとするが力尽き、フィッシャータイガーの偉業はなしえなかった。今はベガパンクの元にあるロボットだが、どこから現れ、何をしようとしたのか、誰にもわからない有様だ、可哀想に。
全てを知る世界政府はこう考えた。ドレスローザとリュウグウ王国の交流はその建国経緯から当然であり、ドンキホーテ一族の天竜人入りにより世界会議で発言権がある加盟国のドレスローザ側からの提案でリュウグウ王国を加盟国にしようと画策しているに違いない。世界政府が近づけないドレスローザにあるはずの伝説の巨人が襲撃に来たのだから間違いない。第二、第三の襲撃があってはならない。ならば物理的に発言権がある加盟国の空きをつくってリュウグウ王国を入れるしかない。予防線を張らなくては。ドンキホーテ一族がいる関係でアラバスタと同じくらい発言権があるドレスローザ以外の国にしなくては。
天竜人の生活に慣れきって歴史を忘れたドンキホーテ一族から、またバカなことを言い出すやつが現れたから非加盟国におろそう。海賊が出たら、ちょうどいいから全てを破壊させてしまえ。聖マリージョアにいるドンキホーテ一族の地位が低くなれば自動的にドレスローザの発言権も弱くなる。そもそもドレスローザが世界政府加盟国で世界会議で発言権があるのは、ドンキホーテ一族がドレスローザの国譲りをしたのが根拠であり、ドンキホーテ一族が天竜人だからなのだから。ドンキホーテ一族がドレスローザに帰ってきたら世界会議の発言権的に非常にめんどくさいことになるが。
ここにトンタッタ族の英雄の悲劇をドフラミンゴが伝えるのだ。ドレスローザ側がどうとらえたのかはいうまでもないだろう。
「世界の仕組みは複雑で難しいことばかりですが、わかってしまえばこんなにも簡単なんですよ。今の私には電気を提供できます。グリーンビットに案内していただけませんか?もしかしたら、まだ奴隷解放を願うロボットがまだいるかもしれませんのでね」