ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

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ロシナンテとクザン

「あのゼファー先生が海導歌わなくなるんだ、えらいことになったなと思ったわけよ」

 

SWORD最初で最後の顔合わせの後、ロシナンテに退役すると思っていたから驚いたと声をかけられたクザンはそういって椅子をひいて座り直した。

 

「まあ、ガープさんの血が流れなければいくら歪みあっていても平和、その犠牲を踏み越えて前に行くしかない、人は過去には戻れないってさすがは海軍の英雄だと思うわ。ついていける人の方がすくないけど。そこにドジっ子ロシーがおれに愚痴りながらついてくわけでしょ。一番弟子の後継者たちにその苦労背負わないようフォローしながらイロハまで叩きこんで。うーん、まだいっかと思って」

 

「え、おれですか?」

 

「それだけじゃないけどさ、辞表出しにいったら話する手間省けたってSWORDの任務表渡されちゃってさあ。準備よすぎない?建前すらくれなかったよ」

 

クザンは苦笑いしている。

 

ロシナンテは南の海で22年前にバテリラで妊婦皆殺し事件がおきた時点で辟易していたが、当時はクザンに叱られた。20代にして中将の地位にあり、若手ではずば抜けてるあたりガープに憧れてるだけあると思ったものだ。当時は『燃え上がる正義』を掲げて割とハキハキした態度で職務を実行していた。

 

その2年後に起こったオハラへのバスターコールは、クザンの人生を変えてしまうほどの大事件だった。親友サウロが命懸けで守り通したロビンが20年目にしてようやく麦わら一味という永住の地を手に入れた。それは同時に海軍そのものへの忠誠が希薄になっていたクザンが海軍をやめる可能性を高めていた。むしろ今までよく我慢できたものだとロシナンテは思う。ガープ中将を慕う時点でだいたいの海兵は海軍への忠誠度は0だ。

 

いくら完膚なきまでに海軍が叩きのめされたためサカヅキが後継者に指名されたとしてもだ。オハラの事件から互いの正義が全く合わなかった男が元帥に座るのに、建前を得る機会がなくSWORD誘われたからと言って入るとは思わなかった。

 

「センゴクさんなら、普通後任はおれかボルサリーノにするでしょ。それがサカヅキになったんだ。センゴクさんのスタンスに1番近いのおれ達だし。でもそうはならなかった。ああ、やばいんだなと思ったのはある」

 

「ストロングワールドの再来だっていってましたね、誰か」

 

「嫌な新時代だよ。サカヅキのいう新時代は、ホーミングが現れる前の北の闇を知る世代じゃないと絶対にわからないおぞましい世界だ。ロックスの再来ともいうけど。おれは南の海の孤児だ。しかもガープさんに憧れて入ったから同期とはいえ浮いてる。サカヅキ慕う奴らの方が大半だ。元帥になるのは無理だなこの情勢だとって悟ったよ」

 

「大丈夫ですか?クザン先輩」

 

「理解者がカイドウんとこにいる後輩にだけはいわれたくないよ」

 

「クザン先輩はこの世にいないじゃないですか。父さんにはセンゴクさんがいる。サカヅキ元帥にはボルサリーノさんがいる。でも先輩は」

 

「まあな......初めての挫折がオハラだったから、そのままきちゃったとこあるね」

 

「なんかあったら、コビーもそうなる気がして怖いんですよ、おれ」

 

「ぶっちゃけすぎだろ、なにいっても心配そうな顔したら許されると思うなよ」

 

「いたい!」

 

「心配なのはこっちだよ。海軍にいるから身の安全が保障されてるのに辞職しろっておれに死ねってことですか?見捨てられたんですか、うわーんって大号泣したのはどこの誰だよ。勢いのままホーミングにまで電伝虫しちゃって」

 

「いや、だって、普通そうとしか考えられないじゃないですか」

 

「あの人は奔放というか、いいたいことだけ言って無茶振りするのがいつものことだろ。こっちの精神状態ガン無視だから、タイミングによっては最悪になるだけだってこと忘れるとか相当追い詰められてたでしょ、ロシナンテ」

 

「まあ、はい......」

 

「そっちが退役してドフラミンゴのとこいった方がよくないか?」

 

「その説は本当にありがとうございました。まだやれます、ほんと無理になったら逃げます」

 

「大丈夫か?」

 

「今逃げたら、いよいよ一生兄上や父上に庇われながら生きていくしかなくなるんで。それだけは嫌なんです」

 

「ならいいけど」

 

クザンはそういいながら、息を吐いた。

 

「ロシナンテはどう思う。この新世界の海の向こうに、ワンピースがあるから海賊が生まれるのか、海賊がいるからワンピースがあるのか? 夢が先か、人が先か?」

 

「そりゃ人でしょ。国も海軍も海賊も結局は人なんだ。人がいないと夢は生まれない。それもたくさん。おれみたいなやつもいる。そんなことがいえるのは恵まれた奴らだけだ」

 

「そうなるよな......。大海賊時代しかしらない世代は海賊が夢を追えば、温かな幸せや、愛する者を失う人々の涙が流れる時もある。どうすりゃいいのよ、答えなんてあるのかよ?なんて生ぬるいことを考える。それがよっぽど嫌だったんだろうな、ホーミングは」

 

「そうですね。父上は非加盟国と商売と家族のことしか考えてないですから」

 

「歴史の本文の価値が暴露されて到来した新時代がこれだけ弱者に優しくない世界だとは思わなかった。これを考古学者達は承知の上で解き明かしたんだ。その先に海賊王が現れるってなら、おれは行く末を見届けようと思う。しかしその先は、どうすればいいのか分からねえ」

 

「おれもです」

 

「麦わらのルフィは、その信念に従って、数多の敵とぶつかってゆくんだろ。俺はそいつの答えを見なきゃならん。サウロが繋いだその先をな」

 

次の日、クザンは潜入調査のため、表向きは退役した。どこに潜入しているのかは、いまだに中間報告が入らないため、謎のままだ。

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