ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

60 / 105
生存確認

その日、エースとルフィの修行はめずらしく休みになった。

 

数週間前から世界経済新聞を広げたまま難しい顔をしていたレイリーは、ずっと浮かない顔をしていた。天に向かって願を掛けたり、奇跡よ、起きろ!みたいな顔をして過ごしていた。

 

心から祈った。正確な祈りの言葉こそ持たなかったけれど、彼の心はかたちのない祈りを宙に紡ぎ出していた。しかし届かなかったようだ。

 

エースは聞いたが、レイリーは亡くなった者に対する思慕も、音のない鐘をたたくようなもので、相手からの反応がないと寂しいものだと笑うだけだった。

 

一瞬、黙祷するように目をつむり、その新聞を火に焚べていた。

 

「灼熱のバギーニは古馴染みでね、ホーミングが始めた新しい奴隷システムに2番目に深く関わっていた男だった。天夜叉の医療体制でもダメだったなら仕方ないな、これも運命だろう」

 

「マグマのおっさん死んだのか?」

 

「ああ、きみに力を貸してくれた彼だ、ルフィくん。死んだよ、部下達も全滅だそうだ。私たち世代の大海賊がオークション会場に襲撃にきてね。新しい大将のアラマキ......緑牛が仇をうってくれたようだが、残念だ」

 

ルフィはエースに大将達との大乱闘前に力を貸してくれたことを話した。ルフィとエースはレイリーに習って黙祷した。

 

今日届いた世界経済新聞を広げたレイリーはドレスローザで悪魔の実を景品にした闘技場の記事を見せてくれた。

 

「天夜叉がグツグツの実を景品にするとは思わなかった。新しい警備体制に幹部を使わないつもりみたいだな。この記事で私は彼の死が確定したと知ったわけだ。悪魔の実の能力者はひとりだけだ、例外はあるが......天夜叉は部下の悪魔の実の量産はしてないはずだからね」

 

真横にはその理由が書いてある。

 

ウミット海運他様々な企業がスポンサーで七武海の千両道化のバギーが新たなビジネスを始めたようだ。ウミット海運の血の掟による処刑を免れた海賊や犯罪組織が独自に賞金をかけられ、生死問わず(3割の値切りなしでとデカデカと書いてある)宝箱で支払うという。

 

文字が読めない海賊にもわかりやすいシステムである。情報が欲しければウミット海運まで問い合わせしてくれれば情報料を支払えば提供するという。

 

持ち込みは首以上であればなんでもいい。偽装工作が発覚したら儲け話に邪魔をしたとみなしてウミット海運の処刑対象になる。いけどりにできたら別途宝箱で支払うという。ハチノスで行われている処刑対象達がいかに逃走するかの賭け事に回されるそうだ。

 

「賞金稼ぎ達は迷いそうだな、新時代は」

 

賞金稼ぎ達は、文字通り、賞金首をとらえて懸賞金をもらうことで生活している人達のことだ。

偉大なる航路グランドライン・新世界には強豪海賊にも引けを取らない賞金稼ぎも多く、中には能力者も存在する。

 

ただし賞金稼ぎの多くは傭兵のような扱いで、世界政府には所属していない。犯罪者を捕まえて引き渡す行為は別に犯罪じゃないからだ。

 

なお、指名手配書の大半は「DEAD OR ALIVE生死問わず」表記になっているが、世界政府は他の海賊への見せしめとして公開処刑を望むため、引き渡す際にその賞金首が死んでいたら貰える額は3割下がってしまう。

 

シャボンディ諸島には海賊が集結すること・ドフラミンゴ運営による人身売買所があることもあり、鉄仮面のデュバルのような人攫い屋兼賞金稼ぎが多数いる。ドフラミンゴ達が牛耳るようになってからは、あまりの待遇の落差から「海軍に売られるくらいなら、奴隷にしてくれ」という逆転現象が起きている。レイリーのようにわざと奴隷になりたがる奴らもいて手を焼いている。

 

どうやらバギーは、そういった訳アリの相手に代わって倒した賞金首の引き渡しを行い、仲介料をせしめて生計を立てる仲介業者的な賞金稼ぎをみて、ビジネスを思いついたようだ。七武海がやれば全ては合法化される。

 

かなり画期的なシステムだ。なにせ賞金稼ぎ達はこだわりもなく、また名乗ることもなく、野望の過程として賞金首狩りを繰り返した末に、

所属する団体のダーティー度合いで以前なら「賞金首狩り」に相当する活動でも危険行為とみなされ、自分も賞金首になってしまう問題をかかえていた。

 

単独では賞金稼ぎとして活動不可能になる例もある事から、 システム上金額や保身に囚われず強者喰いを行う“流浪の強者”であっても「超一流の賞金稼ぎ」が発生しにくい。

 

或いは気質上賞金首狩りとはあまり関係ない場面で満足や挫折などを経て引退するか、海賊等のより気性に合ったものに職しているとも考えられる。

 

若しくはそうなる前に海軍がスカウトないし徴兵している可能性もある。

 

実際、赤髪のシャンクスや百獣のカイドウら四皇は40億ベリー越えだが、非現実的な額をかけられるだけあって、たとえ海軍の最高戦力をぶつけたとしても命の保証はない怪物揃いである。 特に逮捕に出向く様子も見られず野放しにされているのが何よりの証拠。

 

超一流の賞金稼ぎでも彼らを狙うよりは、4000万ベリー代の海賊100人くらいを狩り続けた方がより安全かつ確実である事は言うまでもない。

 

ただ、賞金稼ぎの勢力が強すぎるとそこら辺の海賊に町を襲わせて大被害を出し、懸賞金アップ、狩って懸賞金貰うのマッチポンプが横行した。主に王直がやっていた手口である。

 

そのため賞金稼ぎ達の立場は常に不安定だった。

 

世界政府が四皇を賞金首にするのは、「あくまで犯罪者で俺達が体制側」っていうアピールのためだ。世界政府は軍事力はともかく世論に対する影響力はどの四皇よりも圧倒的に上だからこそ、一国の女王であるビックマムを「敵国の指導者」ではなく「犯罪者」ということにしたり、一般人にとってはいいことをしている白ひげ海賊団も「世間の嫌われ者」にしたりすることができていた。

 

マリンフォードでその独占は崩壊している。次は賞金首制度に揺さぶりをかけてきた形だろうか。

 

「ふふふ、ホーミング、自分がやってたことをバギーに教えたな?にしてはシステム面がやたら手が込んでるが......誰かいるのか?」

 

笑っているレイリーの横でルフィとエースはグツグツの実を新しく手にした青年の写真を見て固まる。

 

「おや、どうしたんだい、ふたりとも」

 

固まっていた弟子が揃ってブワッと二人とも大粒の涙を流し始めたため、レイリーはびっくりして思わず立ち上がる。

 

「いぎでるどおもっでながっだがらあ!!」

 

「いや、だから、誰がだい?」

 

「おれもだよ!あのどぎじんだどおもっでだ!だがらわずれないように刺青じだのに!!」

 

「二人ともどうした、大丈夫か?」

 

うわーん、と二人とも大泣きし始めてしまい、レイリーはひたすら慰める羽目になったのだった。

 

そして、根気強く聞き出した結果、なんと革命家の穏健派であるガープの息子にしてルフィの父親であるドラゴンの一番弟子サボが二人の兄弟盃を交わしたお兄ちゃんであることが判明したのである。サボのことを長年培ってきた人脈から知っていたレイリーは弟子二人からなんで黙ってたんだと理不尽すぎる追及を受ける羽目になってしまい、誤解を解くべくサボについて色々情報提供する羽目になった。

 

二人が修行中やってきたジンベエからネプチューン王を通じてロックス連中の不穏な動きとホーミングの目的を聞いたばかりである。シャクヤクが情報を完全に握りつぶしていた。きっちり30年分になる。他の女に現を抜かしたり、博打にあけくれたり、弟子の修行でほったらかしにしてきた罰よとシャクヤクから笑われたのは記憶に新しい。

 

「どうしよう、ルフィ。おれ、死んだと思ってたから刺青に×入れちゃってたよ。今から消せねえかな。ああでも今の手配書にもめっちゃ載ってるよ、なんて謝ったら」

 

「お、おれも知らなかったよ、生きてたのか!?だって、だってあれは、なあ!?」

 

「うれしいけど!うれしいけど!なんで教えてくれなかったんだよ、サボー!!」

 

「生きてたならおしえてくれよー!!」

 

まさか記憶喪失だったなんて知るわけもない二人は、とりあえずいつか会えることを夢みて、束の間の休暇を楽しむことにしたのだった。

 

「ローって入るのか?」

 

「トラ男はトラ男だろ?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。