ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
ウミット海運に儲け話を持ち込んだ次の日には、おれは久しぶりに偉大なる航路新世界にやってきた。深層海流を使って信じられないくらい効率的に移動できた。その先で、おれはからくり島にやってきた。
たくさんのロボットに囲まれた。父上がいってた感情もある、覇気も使える、戦える、完全自立型のロボットがたくさんいた。身構えたがロボット達は世間知らずなのか、あっさり受け入れてくれた。父上がイベル賞を見て、一度会いたいと雑誌を渡したからだろうか。ロボットの中から一体だけ出てきた。スペーシー中尉と名乗ったロボットは申し訳なさそうにいうのだ。
「ツキミ博士は、お月見をしていたら、月が爆破されて驚いて喉に餅を詰まらせて、ううう」
すでにツキミ博士は死んでいた。葬儀はすませたそうだ。墓参りから始まった。わざわざ生花まで買いに戻るついでにだんごをお供えしてか、ロボット達にばら撒いた。
「......火じゃない」
「父上?」
「......これはすごいことだよ、ドフィ。この世界は火が動力源だ。電気もあるが偉大なる航路は島々が特殊な磁場の関係で充電ができない。だからどうしても火が必要なんだ」
「なにがそんなにすごいんだ?」
「イベル博士が死の商人と蔑まれたように、火で便利になろうとすると、どうしても兵器への転用が可能になるだろう。私はそれで構わないがね、構わない人間の方が少ない。時に加盟国は」
「......」
「電気か......こんな高度な技術がありながら、なぜろくに電気が使えない星にきたんだ、月の民は?」
父上はいつになく饒舌になっていた。
「ワノ国の武器や防具をつけているようだが、君たちのお父様はどんな人だったのかな?」
「お月見するのに一人は寂しいから、仲間が欲しかったといっていたでアリマス!」
「仲間......人類じゃダメだったようだね」
「?」
「いや、なんでもないよ。ハレダス博士とはお友達かな?」
「ハイでアリマス!初めはよく遊びに来られたのですが、最近来られないでアリマス。寂しいでアリマス。ビルカの研究を始めてから来なくなったでアリマス」
「ビルカ......ハレダス博士の故郷だね」
「空島ビルカを研究するうちに、ビルカに行かなくなったでアリマス」
「そうか。空島はだいたいが貧乏だからね。鈍すれば貧するとはいうが、ここまで酷いのか......世界政府の支配から逃れられる安全地帯だと思っていたが、そういうリスクもあるのか。考えたことがなかったな。どおりでハレダス博士がビルカを飛び出してウェザリアをつくろうと考えるわけだ、なるほど」
父上はカラクリ島が気に入ったようで拠点にするといいだした。おれはあんまり好きじゃなかった。靴を脱いだり、箸をつかったり、知らない習慣があったからだ。ワノ国の習慣らしい。そのうち慣れるよ、と父上は笑った。ロボット達はツキミ博士が子供として育てていたようで、自分達を本気でツキミ博士の子供だと信じていた。
「ツキミ博士のご両親の影響か、あるいは個人的な趣味かな?月見なんて風習あるのはワノ国か......いや、まてよ。逆か?月の民にとっては月が故郷だから......」
父上はまた本棚がある研究室に向かってしまう。いつもそうだ、出どころ不明の知識を披露したかと思うと、いきなりいなくなってしまう。
「......父上?」
横開きのふすまというやつを開けようとして、とめた。あの日みたいに父上がないてる。
「......ハレダス博士みたいな人が月の王ならよかったのにな」
誰かに語りかけるように泣いてる父上が一番おれは苦手だった。いつもそうだ。こうなると父上は目の前にいる全ての向こうにいない誰かをみている。家族ですらそうだ。
「技術をこんなにも平和に使えるんだ、月の民の末裔は。科学者は。兵士だってそうだ。教育さえ届けばこんなにも平和な。いや、愛か?わからないな、おれには一番理解できない感情だ。青い星はどうみえたろうな。おれも嫌いになりそうだ、ツキミ博士。アンタに会わなくてよかった、会えたら、いよいよおれはこの世界が嫌いになりそうだ」
嗚咽が聞こえなくなるまで、おれはずっと待ってた。泣きたいのはこっちだ。なにが愛は一番理解できない感情だよ。おれ達が寝たふりしてるとき、頭撫でたり、笑ったり、今の父上なりに父上やろうと頑張ってたこと知ってるんだからな。それがいきなりああなったから、おれはなんでか知りたくてついてきたのに、父上は教えちゃくれないんだ。なにが私みたいな男が父上でごめんなだ、そういう意味でいったんじゃねえのに、なんで伝わらないんだよ。
しばらくして、父上は研究室からでてきた。ウミット海運に儲け話をもって帰るため、スペーシー中尉に宇宙船に電気を使える奴を乗せるべきだと思う。用意してやるから代わりに宇宙船をもうひとつ作ってほしい。あとこの研究室を譲り受けたいと交渉していた。スペーシー中尉も大好きな父親の研究室のその後を心配していたようで、あっさりOKがでた。
「ドフィは世界を壊したいっていってたが、具体的にはどうしたいんだい?」
「え?今からつくる宇宙船?てやつじゃダメなのか?こんなにすごいならできるんじゃ?」
「できるだろうが、時間がかかっていけないね」
「そこまで効率求めるのかよ」
「宇宙船には電気が足りない。電気が使える種族を船員にするか、なにかしらの生き物、植物に頼らなきゃならない。彼らがいいやつだったらご機嫌取りが大変だ。補給考えたらダメだな。私も国を1つ滅ぼすのに1年かかるんだ。加盟国だけで170もある。死んでしまうよ」
「言われてみればそうかも.....。待ってくれよ、父上。いつもでかすぎるんだよ、話が。それに飛びすぎ。それになんかやけに現実的だし」
父上は笑っていた。
「誰思い出して笑ってんだよ、父上。それはアンタの嫌いな礼節をわきまえない失礼なことにははいらないのか?」
「ああ、ごめん、ついね。たしかに失礼なことだ、すまない」
この先一生繰り返すことになるやり取りではあるが、父上はだれを思い出していたのか、しることになるのは30年も後の話だ。