ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

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ロードポーネグリフ

「いやあ、すまんね。そこに座って、自由にしてくれるか。各方面からリュウグウ王国のロードポーネグリフについて、うつすか否か、非常に極端な意見が寄せられていてね。まあ、当然といえば当然だが。私としては歴史の本文の継承者としてきみに託すべきだと思う。だが、おれとしては頑張れば平等な世界を目前に控えた今、わがままになってもいいんじゃないかと思っている。少し、昔話をしようか」

 

そういって王直、あるいはホーミングは話し始めた。

 

私はエルバフに危害を加えたリンリンは好きじゃないが、あの日、ソルソルの能力者になった海賊としてのリンリンは好きだった。シュトロイゼンが本人に教えないことを条件にロックスとしてうまくやっていくために教えてくれた食い患いに心底感謝しているのだ。

 

あの日、ほかの子供達もろともマザーカルメルごと食ってくれなかったら、歴史の本文の継承者達の努力の全てが世界政府に露呈するところだった。

 

今だにマザーカルメルを偉人だと信じているエルバフに言わないだけで、大犯罪者なのは間違いない。私にとっては、と言わなければならないがね。私のような世界政府嫌いには、世界政府と繋がりがある人間がエルバフに孤児院をつくるということ自体が嫌なんだ。なんでもかんでも陰謀にみえてしまって、善行を素直に認めることができない。私みたいなやつらからはマザーカルメルは山姥なのさ。

 

マザーカルメルの名は裏社会でよく知られていたから、ずっと警戒していた。

 

世界政府・海軍とパイプを持ち、秘密裏に孤児を将来の海兵・サイファーポール諜報部員候補として人身売買をしていた人買いであり、裏社会では「山姥」の異名で知られていた。

 

50年に渡り子供を売ってきた経験を持ち、37年前の巨兵海賊団処刑の一件も、歴史の本文を継承するエルバフに潜り込むための海軍との一芝居に過ぎなかった。 後から知ったとき、あいかわらずだと世界政府のやり方には虫唾が走ったものだ。

 

「羊の家」の子供達を育て、器量のいい孤児を2年に1度、世界政府や海軍に売りつけていたのだった(子供達には一切気づかれていない)。

 

孤児は足がつかないため諜報部員にうってつけであり、更には彼女が人間と巨人族の間に交流・人脈を築いたおかげで巨人初の海兵も誕生するきっかけをつくっている。 さいわい、マザーカルメルの一件があったから、海軍を志す者達にエルバフにいる歴史の本文の継承者達は口を閉ざしている。

 

将来は大将・元帥クラスになれる稀大な資質を持ったリンリンをきちんと教育した上で、政府の役人に対し高く売りつける事を目論んでおり、彼女をかばったのもこのためである。リンリンを売り飛ばした後は足を洗って引退を考えていたらしい。当然この事実をリンリンが知ることはなかった。

 

それは子どもたちを海軍に引き渡す日だったという。

 

ほんとうに危なかった。なんのために非加盟国に転落してまで、真実に口を閉ざしてきたと思ってるんだと思った。

 

それから時が流れた。大海賊時代到来から2年後、ルージュが死に、エースが生まれた。その日、オハラはバスターコールで滅亡した。

 

私としては裏切り者だが、おれとしては平等の活路ともいうべきサウロ中将が、古代兵器復活に繋がるという理由から調査は世界的に死罪と扱われる“歴史の本文(ポーネグリフ)”の研究に取り組んでいた学者達を検挙して回っており、その過程でロビンの母であったニコ・オルビアを捕らえた。

 

しかし、部下達が戦えない相手を一方的に実力行使で殲滅していたことと、彼女達は別に兵器を求めていなかったことを知り、世界政府に疑問を感じるようになる。

 

「おめェ 本当に兵器が欲しいのか」

 

「憐れな人達…!! 意志もなく…私達を裁くのね………!! 法律を疑いもせず 兵器阻止と口を揃えて…………!!」

 

「あなた達は 知りもしない過去に ただ怯えてるだけじゃないっ!!」

 

調査団の資料を引き出し、オハラの学者達は本格的に歴史の本文の研究に取り組んでいた。それを政府は突き止め、バスターコールで彼らを葬り去る様に海軍を動かす。

 

サウロもその作戦の現場指揮官に命じられるが、学者達はあくまで歴史研究に懸命なだけで、そんな無力な相手に対し、この方針は度が過ぎないかと問い詰める。しかしセンゴクに、 「政府を疑う気か… 黙って従え!!」 と一蹴されてしまう。

 

政府の体制や海軍の正義への不信感が募っていった彼はついて行けないと感じ、オハラの者達を庇う事を選ぶ。オルビアを解放し共に脱走、彼女を故郷への警告に向かわせ追手を食い止めるも、海に投げ出されオハラまで流れ着いた。

 

サウロはそこで幼い頃のロビンに助けられ、彼女が能力者である事や煙たがられている立場を一切気にせず意気投合する。しかしここがオハラだという事を知ると顔色を変え、ロビンにこの島に海軍の軍艦が押し押せ、総攻撃を仕掛けてくるからすぐに逃げ出すよう言い出した。

 

その後、実際に当時の海軍本部大将センゴクの指令により出撃したクザン、サカズキら本部中将5名が率いる海軍の艦隊がオハラに攻め寄せ、同地の考古学者と歴史資料を島ごと全て消し去るためバスターコールによる大規模砲撃を開始した。

 

オハラの学者達はそれに屈しようとせず、人類にとって尊い研究を守ろうと最後まで足掻く。サウロは同志達と共に最期の瞬間までの抵抗を選んだオルビアにロビンを島から脱出させるのを頼まれ、オルビア達の生き様を称えながら連れ出す。

 

追い着かれたクザンにこの殲滅行為を正義と言えるのかと訴えながら、さらに直後に関係ないはずの島民達も、学者が逃げ込む可能性があるという理由でサカズキに抹殺されたことでヒートアップし、遂に全面的に戦うことになる。

 

ロビンを守る為に奮闘した末、追い詰められるもロビンを庇い続け、海に出ればいつか共に生きて守ろうとしてくれる仲間にきっと会えると激励しながらクザンに凍結された。

 

「走るんだで 思い切り!!! 島内におったら命はねえ…!!! とにかく…ワシのイカダで海へ出ろ!!」

 

「よく聞け ロビン… 今は一人だけどもよ…………!! いつか必ず“仲間”に会えるでよ!!!」

 

「海は広いんだで…………いつか必ず!!! お前を守ってくれる“仲間”が現れる!!! この世に生まれて一人ぼっちなんて事は 絶対にないんだで!!!!」

 

「どこかの海で…必ず待っとる 仲間に会いに行け!!!ロビン!!!!」

 

「そいつらと…… 共に… 生きろ!!!」

 

徹底的に遂行する正義の恐ろしさと、親友がロビンを最後まで守り抜いた行為を見たクザンはその意志を尊重。ロビンが生きた先がどうなるか、サウロの選択は良い結果を生むのかどうか確かめる為、敢えて島から脱出させた。

 

「前の世界も、今の世界も、私もおれも動かなかった。平等の活路だからおれとしては当然だが、なぜ私がロビンを見逃したか、わかるかね?」

 

衣食足りて礼節を知るという言葉がある。

 

この言葉の意味は、衣(着るもの)や食(食べるもの)が満たされて、人間は礼節(礼儀や節度)をわきまえる事が出来るという意味だ。

 

逆を言えば、いくら礼儀や節度をわきまえるように言っても、着るものや、食べるもの、すなわち、経済的なものが満たされていなければ、わきまえる事は出来ないという意味でもある。

 

三日三晩食事をせずに、礼儀や作法を求めても食べることのほうが先にたち、「いただきます」もそこそこにご飯をかきこむ姿が容易に浮かぶ。

 

また、食うか食わずの毎日を過ごしている人や、着るものもままならない人に、いくら礼儀だ何だといっても無駄だ。

 

要は衣食が足りる事、満たされる事で、人間は礼儀や節度をわきまえる事が出来るという教えだ。

 

まず持って経済的な充実が大事になると言うことだ。

 

だから私は商人を志した。おれはまだ子供でいたかったが。

 

だから、衣食住が満たされているのに、礼節をわきまえないやつが、私もおれも世界で一番嫌いなんだ。

 

すくなくても、オハラの考古学者たちはそうだった。

 

ティーチが海の王になるっていうから見過ごしていたが、考古学が1番嫌いなんだ。

 

あらためてみると、ツキミ博士並みの特異点に思えてならない。異物だ。このうえなく。真実に口を閉ざすには理由があるのに理解しないで暴こうとするからこうなる。ベガパンクに言わせれば学者のサガらしいが。

 

歴史の本文はワノ国の光月家のもつ文字の技術だ。万象の声が聞ける者、あるいは番人に届けることを前提にして構築されたシステム。それを潰したい世界政府。単純な対立構造だ。それを前提にロジャーは大海賊時代をはじめた。

 

しかし、その2年後にオハラが誰でも理解できる文字という形で翻訳してしまった。大前提が破綻する大事件だ。世界政府は慌てたはずだ。今までは万象の声が聞ける者や番人がいる国地域を潰せばよかったのに、訳文をもつ、あるいは考古学を学ぶ者達と繋がりをもつ者まで世界の真実に気づいてしまう可能性があがった。

 

オハラは急ぎすぎたのだ。世界を変えたいあまりに、誰にも相談しないで先に世界政府に交渉を持ちかけてしまった。冒険家だったクローバー博士は弾圧されなかったから。世界政府がどれだけ本気になったらおそろしいか、知らなかったのだ。

 

だからおれはロジャーは好きだが大海賊時代をはじめた海賊王としてのロジャーは嫌いなのだ。あの言葉がクローバーを焚き付けたのは間違いなかった。それか交流があったのか。ベガパンクやドラゴンがクローバー博士と交流があった時点でオハラの革命は防げなかっただろう現実を目にしたから真実に口を閉ざすために殺すのは諦めたのだ。

 

月の民がどう意図を持って青い星に持ち込んだのかはわからないが、少なくてもジャヤでは悪魔の実は先祖の魂と願いをもって生まれてくる神聖なるものだった。それを欲しいからという理由だけで黄金と共に略奪し、独占し、海の秘宝を独占して何百年になるのか。

 

でもそのおかげで、今こうして、誰もが海賊王になれる世界が到来しつつある。

 

だから私はオハラの悲劇を放置したんだよ。ベガパンク博士から、クローバー博士がどんな男か聞いた私がどんなに殺したいと思ったか、今のきみならわかるだろう?どんな少女かわかったから見逃したにすぎないんだ。彼女なら歴史の本文に敬意を持って接してくれるはずだからね。ウォーターセブンで私としても、おれとしても、判断は間違っていなかったと信じている。砂の王に肩入れするのは想定外だが。

 

「さて、話を戻そうか。わかっているとは思うが、きみが誰かは調べがついている。正直に話してくれるか。きみはどこのだれでなんのためにロードポーネグリフを移したい?それによってきみへの対応やロードポーネグリフをどうするか、考えようと思うんだがね」

 

火の傷の男は口を開いた。

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