ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

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黒炭と忌み名(原作時空)

「......とまあ、歴史の本文の番人としての私はここまでとして、だ。おれが黒炭の血を引くのはわかったろう、おでん。なんでおれがここまで怒ってるかわかるだろう?ワノ国の偉人をいってみろ」

 

おでんは冷や汗をかきながらリューマだと話した。

 

今から400年前、偉大なる航路「新世界」に位置するワノ国・鈴後という地域の出身であるリューマはキングの異名を持つ大剣豪であり、竜(ドラゴン)にも勝利。これが後世に「竜斬り伝説」として伝えられることとなった。

 

享年47、病で亡くなったといわれている。誕生日は11月6日、好物はカレー。ワノ国の英雄と称えられた侍で、当時「黄金の国」として知られたワノ国に攻め入る敵を次々と打ち破って"ワノ国に侍あり"という評判を広め、「空を飛ぶ竜を斬り落とした」という逸話を持つ。

 

そう、竜は空を飛ぶのだ。だから切り殺していい。龍はダメなのだ。雲を掴んで登る神聖なものだから。残念ながら外界ではどちらもドラゴンになってしまう。

 

「だから竜はダメで龍はいい、か。気に入らねえが教育はキチンとできてんだなァ......なんでくだらねえことで差別しやがるんだ、おでん......。なんで霜月リューマの墓守が黒炭だといわねえ。明らかに黒炭の一件は世界政府の内部工作じゃねえか、アホンダラ!!ちがうってならいよいよワノ国は変わらなきゃならねえぞ!これだから嫌いなんだワノ国はァっ!!ワノ国最古参の忠臣迫害しやがってなに考えてやがる!!だから黒炭は怒り心頭に発するどころじゃねえんだ、歴史の本文の番人の役割放り出すくらいやけ起こすんだばかやろう!!!おれは知らんからな、先代からは助けてやってくれといわれたがもう知らん!そもそもおまえは生まれてくるのが遅すぎるんだ!しかもジョイボーイが生まれてくること考えたらはやすぎる!!なに考えてんだ、アホ!!!」

 

「だから黒炭の迫害の件はなんとかするといってるだろう、王直!」

 

「どうせ墓守は忌むべきものとかいう風評そのままにしてたんだろう?鈴後だけは守れよ、黒炭一族だけは守れよ、おでん。霜月リューマの墓守の血を、霜月一族のあと故郷を守る末裔の血をワノ国の民が自ら途絶えさせたら末代まで祟ってやるからな。もしお前が止められなかったら、もう無理だ。世界政府から今なおサムライの名声によって守られておきながら、そいつの故郷にいる人間を平然と迫害する。カイドウが墓を攻撃しても、海賊に盗まれても放置する。先祖への畏怖と敬意を中途半端に忘れたワノ国なんざ敬愛する龍を再現できるウオウオの実の能力者と、リューマの異名であるキングの手で滅びるべきだ。おれはカイドウの支援をやめんからな、そのつもりでいろ。外敵がいないと変われないってんなら、おまえの国はそういう国だ」

 

北の大地「鈴後」はスズゴではない、リンゴと読む。かつては屈強で名高き「霜月一族」が治めていた地だ。リンゴなのは、ワノ国がサムライによって守られていたころの名残だ。かつての大名は、剣の達人「霜月牛マル」。常に相棒である狛狐の「オニ丸」と二人連れであったという。鈴後の民は生まれると刀を送られる風習があった。刀と共に生き、死ねばそれを墓標とする。寒い気候ゆえ桶に埋葬した遺体が数百年腐らない。それが鈴後の風習「常世の墓」。そのせいで墓荒らしが絶えないことでも知られている。

 

黒炭が守っていた場所でもある。それがおでんの祖父の代にお家騒動により迫害の対象になるのだ。世界政府の内部工作か、ワノ国の風土的にどうしようもない迫害なのかはしらないが、私としては前者であってほしい。後者だといよいよ受け継がない意志をもつ者が黒炭に生まれないと救いようがなくなってしまう。

 

前の世界だと大海賊時代到来後すぐにワノ国の現状に失望したのか、たまたまか、形骸化してるなら有効活用してやろうとモリアがリューマの死体と国宝を持ち去った。400年前に死んだリューマの遺体の保存状態はいいのだ。肉体が腐敗や白骨化していなかったのは、冷凍保存されていたからだ。カゲカゲの実をあれだけ使いこなせる男だ、そういう遺体の扱いがうまい一族の出なのかもしれない。18年前、カイドウの手により滅びたから、13年前にオニ丸が墓荒らしからその土地を守り続けて来たとしても、私はどうでもよかったのだ。なにをいまさら。

 

ついでにいうなら、ロッキーポートであったフレバンスの生き残りのDは命の恩人の求めるDはこれでいいのかわからないと本音を吐露していた。

 

だから、忌み名は、おれの国やワノ国といった漢字圏における呼称だと教えてやった。外海だと理解できない概念だろう。おれの国では本来は口に出すことがはばかられることを意味する動詞であると。可哀想に緊張していたのを覚えている。

 

ちがう、そうじゃない。古代に貴人や死者を本名で呼ぶことを避ける習慣があったことから、転じて人の実名・本名のことを指すようになったんだ。

 

忌み名で呼びかけることは親や主君などのみに許され、それ以外の人間が忌み名で呼びかけることは極めて無礼であると考えられた。その名残だ。

 

これはある人物の本名はその人物の霊的な人格と強く結びついたものであり、その名を口にするとその霊的人格を支配することができると考えられたためでだ。

 

おまえが忌むべき存在だからじゃない。

 

特に王族の忌み名は厳重に避けられ、公文書にも一切使われず、同じ字を使った臣下や地名・官職名は改名させられたり、漢字の末画を欠かせるなどのあらゆる手段を用いて使われないようにした。

 

今の世界がDを弾圧するのは、そういう歴史があったからで、それを知りたいなら海賊王を目指すしかない。この世に意味のない名前なんてない。おまえが医者の家系だったなら、フレバンスにいた一族ならきっと意味があったはずだと教えた。

 

あのあとどうなったのか、気になるといえば気になる。

 

 

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