ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
血統因子を狂わせることができる因子が秘宝には必ず含まれている。
これが私が出した結論だった。
パイロブロインは核になる物質をくっつけると固まる性質がある。雲に人が乗れるくらい強固だ。これはあらゆるものを異常発達させる特殊な成分である。海と呼ばれるものにだいたい含まれている。
これをなんの対策もしないで生物にいれるとどうなるか。異常発達する代わりにはやく寿命を縮めてしまう。
リュウグウ王国とアラバスタにある秘宝は、それを強化したものだ。
豪水は強化する代わりに寿命を縮める。豪水を飲むと目をギラギラとさせてパワーがみなぎってきて、更にパワーアップを見せ、血管は太く浮き上がり、装着して驚くほどのパワーアップが期待できるとされるが、数分の命となってしまう。実際に豪水を飲んでクロコダイルに挑もうとしたツメゲリ部隊は、一時的に力を漲らせはしたものの、数分で力尽きてしまった。
ESは強化するために老化する。エネルギーステロイドを大量に服用すると、使用者全員が杖なしでは立っていられないほどに年をとってしまう。エネルギーステロイドを服用してしまった者には、こういう未来が待ち受けている。
どちらもオペオペの実による不老の兵士に使うよう説明したが、おそらくあれは月のように資源を使い果たしてしまった時の最終手段だ。あれさえ希釈に希釈を重ねて使えば、あるいは血統因子を取り出して複製して使う技術さえつかえば、少なくても参考にするだけでいい。世界政府みたいに研究室を作って科学者に復元させればいいのだ。原料は青い星に腐るほどあるし、なんなら複製するクローン技術を駆使すれば最低限で済む。よほど資源の枯渇に懲りたとみえる。月から青い星みたいに移住しなくてもいいように万全の体制をとっている。肝心の化学を世界政府が独占してしまったために失われた巨大な王国の大いなる遺産だ。世界政府や四皇に取られる前に儲け話を持ちかけたから、おそらく外に出ることはないはずだ。
悪魔の実は人外の力を与えるが水に浸かると動けなくなる。これはわかりやすかった。パイロブロインで異常発達する環境でなぜか何も育たない人類の安全圏を保証する代わりに毒性を持つダフトグリーンに含まれるダフト病の症状だ。
ダフトグリーンは動物たちが嫌う特殊な臭いを発する樹木だ。危険な動物を近づけなくさせるが、臭いの粒子には強い毒性があり、人が多く吸い込むと、体に緑の斑点ができて体が動かなくなる「ダフト」という病気になるのだ。
青い星だとダフトグリーンをなんと呼ぶか。ゴムと呼ぶ。赤髪のシャンクスの手紙によれば、ゴムゴムの実は正式名称がニカというらしい。
ロックスの噂と悪魔の実をバラバラしか知らない赤髪が勘違いするのも無理はない勘違いだ。たしかに私達ロックス海賊団は結果として最強の海賊団となったが目的は世界を合法的に変えるための一時的な世界の王を目指しただけで、海の王も海賊王も目指したわけじゃない。冒険家、政治家、その護衛団、いいかえるならそれだった。世界政府がレッテルをはったが。
王を選ぶ旅路と書いてあったから、ジーベックが巨大な王国の王に相応しいとカイドウに渡したウオウオの実並に、海の王に相応しい力なんだろう。
ルナーリアはカイドウをジョイボーイと呼んでいたが、ウオウオの実にしろ、ゴムゴムの実にしろ、たしかに月の民にとっては崇拝すべき神だ。月で使っていた電気を扱えるゴロゴロの実とあわせて。
そこにあらゆる環境に適応できる生まれながらの異常体質、パイプロピレンを入れても寿命を縮めない、それこそ豪水やESを服用しても効果を踏み倒せるルナーリアみたいな種族がいたらどうなるか。王族たりえるか、戦士たりえるか。人間と明らかに生態が違う魚人や人魚、電気が扱えるミンク族はどうなるか。労働力か、それとも兵士か。そして、翼を生やした者達は科学者かなにかか。
ミンク族はワノ国と繋がりがあるから廃れたであろう古い法律が長年迫害されたために皮肉にも残っているリュウグウ王国がある。人間に輸血してはいけない古い法律があるがなんのためか。魚人も人魚もその形質にランダム性があり、誰と交わろうが強固に残り続ける血統因子がある。これが月の民が巨大な王国時代につくられた法律ならどうか。
巨大な王国は悪魔の実を作り出した科学力を持つ国だ。その危険性もわかっていたはずだ。悪魔の実の能力者に迂闊に輸血してランダム性を加えてしまい、もし打ち消したはずのパイロブロインの寿命を縮める代わりに強化する作用が発現したら下手をしたら死んでしまう。寿命を縮めないで一生能力を使うために研究したら海に嫌われる作用しかデメリットをこれ以上打ち消せなかったのだ。
「だからな、イール。1万年前から月の民は来てる以上、人類との混血はかなり進んでいたはずだ。だからわからない、空白の百年がなんなのか。ただ、結果はわかる。私達ロックスが38年前にルナーリアをキング以外滅ぼした。月の民は1万メートルの空島に逃げた。ワノ国とミンク族は空島を作り、鎖国して見張をした。お前達は1万メートル海底にいて今なお迫害されている。立場が逆だったのか、外交問題かはわからないが。だから、マリンフォードで瀕死の麦わらのルフィの輸血剤が足りないからジンベエが提供したのも、エースにウミット海運の魚人用の輸血剤を全部使ったのも仕方ない。どうしようもない時はある。だから納得しなくていいから理解しろ。戦場では医者が法だ」
「......」
私はかたをすくめた。
「私としては、チョッパーのヒトヒトの原種でわかったことの方が恐ろしいよ」
「?」
「前例がないと悪魔の実ですら自分がどう能力を使えばいいかわからない、万能細胞みたいなものだ。なんでもできるが中途半端なんだ。麦わらはいい、だいたい予想できる。だがエースはどうだ。前の能力者の魂を引き継ぐんだぞ、覚醒したらどうなるかはそいつがどんなやつか調べないとわからない」
「......それは、こわいな」
「調べてみようか、さすがに土壇場になって最悪の事態は嫌だからな。ジーベックでたくさんだ」