ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
南の海にある非加盟国にて。
百獣海賊団ジャックはセンゴクに言い放った。
「……はっきり言っとこう…!! “侍”がいれば攻撃はやめる!! いねェのは…“罪”だ!!!もう一つ言っとこう!! おれァ 破壊が好きだ!どっちがいい?海軍の道を選んだてめえだけは許さねえからなセンゴク!!」
それをいわれてしまうと、いくらセンゴクでも唸りながら手を出せなくなってしまう。これが四皇、あるいは準四皇。国や世界政府、海軍が信じられないために、自らの力で闇側から秩序をつくりあげようとした今はなきジーベック(船)を失ったロックス海賊団の末裔、本物の海賊達だ。
ゴッドバレーのあの日、別の世界でいうなら国境なき医師団の走りをしていたある島をメラメラの将校が滅ぼしたのだ。古代兵器ウラヌスと勘違いされるような謀略と暴力によって、ロックス海賊団もロジャー海賊団も逃げるしかなかった。ジーベックという世界の王になるべき男だけが死んだ。ジーベックは世界政府のエージェントで、ロックス海賊団に任務を暴露して7年間も任務遂行をしていた罪で抹殺された。ロックスに罪を着せたメラメラの実の男の部下はガープといった。その栄誉を賜り海軍の英雄になったガープは、師匠を殺した男から、師匠の忘形見を海軍に入れろと言われた。
皮肉にもガープは海軍の英雄となることで、ようやく自由を手に入れた。
ゴッドバレーが消えたその日からガープもセンゴクも苦悩していた。
百獣海賊団の最高幹部大看板・マンモス号船長。 四皇“百獣のカイドウ”を支える3人の「災害」と称される腹心の一人。
ロックスの見習いをしていたカイドウから聞いていた黒炭家の境遇は百獣海賊団のワノ国への心象を最悪にしていた。かつて温暖な気候のワノ国の風土病が絶えず、放置されていた墓に火葬の風習を持ち込んだ墓守にして医者の一族を苛烈な迫害にさらしたからだ。聞けば200年の環境の変化で常世の墓となる冷凍保存と土葬、どちらもカゲカゲが前提だが、そちらを導入したにもかかわらず、すでに一族はワノ国を去るか追われていたため形骸化しているあたり、なにもかわっていないのだ。
またお家騒動か。ひぐらし達が頭を抱えていたとカイドウから聞いたジャックは覚えている。ワノ国いちの医者の一族は、なにかあるとすぐ迫害の対象になるのだ。迷信からだったり、誤解からだったり。あげくの果てに今度は男児が産まれないからって主治医のせいにするのだ。その腕を見込んでもりたててくれた光月家が、今まで庇っていてくれたはずの最大の後ろ盾が、最悪の形で裏切ったのだ。挙げ句の果てに最後の医者の一族である黒炭に切腹を命じて正義の味方が湧き出して、いよいよ黒炭の迫害は苛烈さを増し、ひぐらし達は仇討ちを胸にひめながら旅立った。医者を追い出した一族の末路は誰もがわかっている。わからないのは鎖国中のワノ国だけだ。
百獣海賊団はとある島を支配していた。センゴクの生まれ故郷だ。住人を強制労働させていると疑われていた。強制労働施設はその見た目から『悪魔の塔』と呼ばれたが、実際は(天国の階段)と呼ばれている。 非加盟国生まれの彼らは遊園地を知らないのだ。見よう見まねの遊園地だったが、センゴクの孫は喜んでいた。少女はメダカといった。百獣海賊団に憧れ、ワノ国の鎧をきて遊んでいた。百獣海賊団は非加盟国には優しかった。
ちなみにイッショウはメダカの父親だ。のちに世界政府に徴用されることになる。
ちなみに天国の階段とは、人の心には永遠に消し去ることができない愛が存在する。その愛は天国でしか存在しないと信じられたため、人は天国に昇る階段を探し続ける。そう教えてくれた名医の言葉であるという。
「メラメラの前任者の遺体を見つけたから届けてやったぞ、大目付仏のセンゴク。たくさんの患者を救った功績で大将になった裏切り者が。この豪華な指輪、覚えてるかガープに聞いてこい。こんなことでもなきゃ、てめえんとけには会いにすらきたくねえんだよ!!」
かつてのライバルの叫びを理解できる者は、当事者達しかいないから、SWORDはいつもナギナギが発動しっぱなしだ。
ロックス海賊団壊滅後、彼らを待っていたのは地獄だった。ロックスがあのゴッドバレーを滅ぼしたのだ。じゃあ明日からは誰にみてもらえばいい?世界政府の苛烈極まる所業をみた加盟国は口を閉ざし、彼らを助けてくれたのは、結局のところ昔の杵柄だった。
ハチノスを拠点にするうちはよかった。非加盟国を拠点にするときにゴッドバレーでロックスが医者を皆殺しにしたせいで世界は医者不足に陥っていた。失伝が起きた。たくさん死んだ。事情を知る新世界から彼らは出られなくなった。外に出られ無くなったのだ。
世界で一番自由なのは海賊なのに、好き勝手できなくなった。事情をしるドラム王国とリュウグウ王国、まだ余裕がある非加盟国は助けてくれたが、ドラム王国は加盟国だから秘密裏だし、リュウグウ王国は古い法律が人間への輸血を禁じているからできない。最先端の医療から爪弾きにされた彼らは、結局のところ、傘下や部下達のために医者を欲しがるようになる。不自然に若い医者がすわるようになるか、科学者がそれを代用した。
時代をへるとゴッドバレー自体が存在を忘れ去られ、最強のロックス海賊団という名前だけが残るようになる。ロックス海賊団の彼らの二つ名は意味が真逆に捉えられるようになってしまい、仁義とかけはなれていると王直がバハンと名乗らなくなったように、名乗りを止める者がでてきた。賞金首の二つ名がとってかわった。
それぞれが儲け話をするとき、つながりができていく。世界政府にも海軍にも頼れないなら自分達でしなきゃならなくなる。そして闇のシンジゲートが出来上がり始めたころ。
きっかり五年後だった。
ロックスに感化されたオトヒメの革命の火はマリージョアにまで届いていたらしく、人堕ちホーミングがウミット海運という運輸革命を起こして、奴隷制度を改善し始める。ビンクスの酒、あるいは海の王に関係ある国とつながりをもつ。なによりも金さえ払えばなんでも運んでくれた。医者でも医療品でもなんでもだ。儲け話にはすぐ応じてくれた。
「実は私、ロックスにかぶれてまして」
オトヒメはゴッドバレーの機密を書いて直訴したのだとロックスは勘違いしたが、儲け話を持ちかけられて30年というながすぎる水面下での行動となることになる。