ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
とある島でロックスの海賊団は船が盗まれてしまった。血統因子を狂わせる狂気じみた研究をしていると噂の十字架のような髪型が特徴なDr.ヒルルクという男を訪ねた矢先だった。近辺の海域を荒らしているトランプ海賊団が犯人ではないかと指摘される。一味は彼らが根城にしているねじまき島に向かうが、ジーベックはリンリン、シュトロイゼン、シキ、王直と次々と仲間達がさらわれていく。
なお、キャプテンジョンはサミュエルと意気投合して全然違うところにいた。
「なにが犯人だ!てめえじゃねえか、ヒルルク!!」
ジーベックが叫んだ。
「ステューシー、おりろ」
「いやよ、ニューゲートも泥棒しましょうよ。お金に困ってるんでしょう?」
ロックス一味から視線が向くが、ニューゲートは露骨に目を逸らした。実は故郷に金を貢いでいるため、今はステューシーが思っているような金持ちではないと知っている王直と金獅子は爆笑している。
たしかにロックスに入る前のニューゲートは金銀財宝と見るや腕っぷしで横取りするような男だったが母を助けるためだった。医者にみせたかったのだ。ゴッドバレーには財産の半分だしたならばどんなに貧乏でも助けてくれる医者がいると聞いたことがあったから。問題は場所だった。
移動するから場所がわからない。ビブルカードが前提になる。なにせ世界政府に真正面から喧嘩を売るようなことをしているのだから当然だ。暴れることしかしらない仁義を知らない若造に手を貸してやる者がいるわけもなく、母は死んだ。
全てを知ったのは、ロックスに入り、王直に聞いてからだ。新世界は仁義を知らない奴ほど冷遇されるやつはいない。
この日から、可愛い妹分を寝取られた
冤罪を主張するヒルルクと、人のものが欲しくなるハイエナみたいな性癖の海賊のプリンスことサミュエルとニューゲートとステューシーの歪な関係ははじまった。
ちなみにサミュエルは北の海にあるノーティス生まれだ。美形の海賊かつ悪の海賊であるが、人種差別をせず彼の船ではどんな種族も平等に仲間として扱われていた。当然、略奪や人身売買も平気で行っていたが、一方で無意味な拷問や殺戮を行うことは少なく約束は守る主義でサミュエルは奴隷船「ウイーダ号」(後に自らの主船となる)を奪った際も、ウィーダ号だけを奪って乗組員達は自分の乗っていた船に乗せ無傷で返したとされる逸話がある。
海賊家業の絶頂期に暴風雨に襲われウイーダ号は沈没し、消息を絶っている。ロックス一味はちょっとしんみりした。
のちに大泥棒と呼ばれることになるヒルルクは、本懐とは別に行うロックス一味としての儲け話にひつようなものをいつもいつも横取りするのだ。いくら妹分の泥棒ねこのステューシーが一味のニューゲートに惚れたからって嫌がらせばかりするのだ。ステューシーは居候だ。航海士でもない限りのせない。
ヒルルクの嫌がらせはひどいなんてもんじゃなかった。ジーベックの船の煙突から不法侵入し、ジーベック達を呼ぼうとしたリンリンの毎年変わる夫を麻酔銃で撃ち抜いて昏倒させ、金を払うから見逃してくれとイタズラを拒む夫に注射して泡を吹かせ(カエルのエキス入り)、びっくりしたリンリンの子供を泣かせる。可哀想にとトカゲの目玉を使用して容態を悪化させる。善人であるリンリンの夫や子供からはお宝を取らないが、海賊からは普通に盗む上にジーベックの船から横取りしたあげく、燃やしておいて逆に文句を言う。
「腕のある泥棒ほど怖いものはこの世にないでしょ」
ロックス一味の居候ステューシーはいつも自慢げに笑っていた。かえれとニューゲートは死にそうな顔をしていた。金獅子と王直は爆笑していた。
ヒルルクは頼まれたら有償で泥棒をする、優しくも厳しいがたしかな泥棒の技術と知識を持つ男だった。実はヒルルク、MADSに憧れて科学者になりたかったが、金と場所がないから集めている非常にタチが悪い泥棒だった。ロックス一味は儲け話のためによくそういう場所にいくから標的にされていたのだ。
ステューシーは居候はおりろといわれたが、リヴァース・マウンテンにてつむじ風のエリックを倒してからは、いわれなくなった。エリックは悪魔の実「カマカマの実」の能力者(自在に鎌鼬を発生させ攻撃することができる能力)である。シキをも苦戦させるくらいのなかなかレベルの高い賞金稼ぎでもある。
そんな彼をステューシー不意打ちでリヴァース・マウンテンの運河に突き落として勝利を収めた。そんな彼を倒したことは(倒し方は置いておくとしても)ある意味大金星と言える。
悪魔の実の能力者が単独で水に落ちてしまった場合、自力の遊泳ができなくなる上身体が水に浮かなくなるため助かる見込みは限りなく0に近い。ましてや船で山を駆け登るという常識外れが通用するリヴァース・マウンテンの運河である。
エリックの生存は絶望的と言えるだろう。
状況が状況ではあるし、エリックは性格も言動も悪党そのものである。
そんなある日のこと。
本懐のためにピリピリしているジーベックにヒルルクはいうのだ。ゴッドバレーが桜をあしらった髑髏マークだから気に入っていて、いつか盗んでやるんだと張り切っていた。さすがにロックス一味全員でとめた。ゴッドバレーは海賊や非加盟国の大事な場所だ。手を出したら殺される。
そしたら、ヒルルクはいうのだ。
「実はおれ、不治の病なんだ」
さすがに人間不信を極めているジーベックも船に乗せたのだ。そして、一行はゴッドバレーに向かうことになる。このときはルナーリアと天竜人だけ抹殺する予定だった。