ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
人外じみた見聞色をもつ者は代々壊れないため人の心がわからない。だから、手伝ってやれ。それがおれ達の仕事だからな。
アプーは先代からそう言われて育った。本来なら王直とアプーの間にはもうひと世代入り、王直は引退する時期なのだが、仏のセンゴクにスパイにされたため抹殺された。だから王直とアプーの年齢差は祖父と孫くらい離れている。代々空間に漂う近隣の人物の思考傍受の方向で発現することが多い。例に漏れず一番優れていたため年功序列を無視して王直と同じように若くして就任したアプーは、王直の指示でずっと動いてきた。
あるとき、海の底みたいに静かな男があらわれた。おかげでいちいち確認しなければどちらが今いるかわからない。そんな面倒ごともあった。しかし、マリンフォードの頂上戦争で魂となったワプワプは自殺未遂しかけたもうひとりに取り憑いてひとつになった。
立場を変えなければわからないこともある、と苦々しい顔でいっていたが、悪魔の実のことを完全に理解しているとそんな芸当もできるのかと思ったものだ。月の民の血統因子まで遡るとは思わなかった。恐るべきは受け継がれる意思なのか、人の夢なのか、時代のうねりなのか。人は亡霊というが、万物の起源は愛なんだから仕方ない。言葉すらなかった時代、覇気しかなかった時代。諜報という立場ゆえに見聞殺しの祖となった一族だ。
アプーはオンエア海賊団船長としてシャボンディ諸島で「11人の超新星」と呼ばれるルーキーの一人として諜報活動を開始した。ゴッドバレーには悪いが医者以外に自由が生まれたのはほんとうに感謝している。
2年後の今は「最悪の世代」に名を連ねており、四皇“百獣のカイドウ”率いる百獣海賊団のクイーンの部隊にいる。百獣海賊団の一員で、総督百獣のカイドウを支える3人の最高幹部「大看板」の一角。 「災害」と称される程の怪物で、同じ大看板のキングと共に20年以上前から百獣海賊団に所属している実力者にしてMADSから移動してきた科学者だ。
特に「カラクリ武器」や「病原体(ウイルス)」作りを主な任務としている。看守長や副看守長たちが使う「疫災弾(エキサイトだん)」も彼の作品である。
全盛期のまま痩せている男はアプーをみるなり笑った。王直の諜報部隊だと気づいているクイーンはこの30年の成果を話してくれた。真っ先にワノ国のおでんにカイドウ達と啖呵を切ったそうだ。
さっさと感染者から「抗体」を見つけ、そこから薬を作れ。失われた最強のサムライを支えた最強の医療チームを再興させろ。この800年間お前たちが鎖国して世界の環境の縮図を作り上げてまで作り上げようとしたあらゆる薬をつくるにはまず病がなければつくれない。その全てを取り仕切っていた、全てを継承している黒炭家当主最後の生き残りは医者として帰還する気はないそうだ。お前たちのせいで黒炭の医者になれそうな人材が22年後に生まれてくるとリュウグウ王国の占い師が教えてくれた。やっと8歳になる女の子しかいないんだ。
死の商人として支援してやるから、さっさと治験体になれ。時間がないんだ。お前たちが開国を200年も遅らせたせいで大戦はもう終わってるんだ。
おかげでニカでジョイボーイの医者がマリージョアで待ってるはずの患者のところに届くまで命が尽きてしまった。最強のサムライになれないばかりにジョイボーイもサムライも死んだんだ。お前たちが失われた劇薬、笑いを失う代わりに最強になれるドーピング剤も、それを使うのに必要な踏み倒す薬も用意できなかったばっかりに!!
世界政府に先を越されてもうルナーリアはひとりしかいない。しかもニカはお前たちが信じられなくなったからルナーリアはもう嫌だそうだ。友達をうしなうのは嫌だそうだ。人間を選んだぞ。そうだ、劇薬も薬も用意できなければ、新しいニカはいよいよ失望して笑うしかなくなるぞ。 しなばもろともだそうだ!
あげくの果てに医者になるべき男をカゲカゲに選ばせてリューマを蘇生させて今代最強のサムライの礎になるようなマネさせやがって!!おかげで今代のニカは人間だし、ジョイボーイだ。サムライも人間だ。神はもう死んだと思え。薬だけつくればいいなんて楽をさせると思うか!!こっちはゴッドバレーを世界政府に滅ぼされたんだぞ、ずっと人質にとられてるフィガーランドをつかって!!リューマの家系まで人質にとられて医者の家系を弾圧するシステムまでつくりやがったんだ!
ウミット海運が医療部門と最後の天才くれは先生、MADS総出で協力してやるから、さっさと劇薬も薬もつくれ!!キビキビの能力者が生まれてくるまでにどっちもつくれ!!神に頼るな!!
「アッパッパッパッパ!!そいつはすげえな!?ゲッコー・モリアは最強のカゲカゲ使いだな!!オラッチ、テンションあがってきたぞ!!こりゃあ失望しきったニカ達がテンションあがるような曲つくらなきゃなんねえな!さいわい、ヨミヨミがルンバー海賊団の音楽家甦らせてくれたから作曲だけでいい。ソウルキングになってまでジャンル違いだろうに無理させちまってわりいな、50年も待たせちまったんだ、最強のアガる曲をつくらなきゃな!!」
アプーの一族はこの200年間の潜伏生活で廃れてしまいかけていた、作詞、作曲家として生まれて来れた逸材である。
「二つ言っとく おれは冗談が大嫌いだ。間違い無いんだな?」
「当たり前だろ、何年待たせてると思ってんだ」
「待たせちまってるからな!」
「─── そしてもう一つ…......おれはここにいていいのだろうか?話を聞く限り、とんでもない使命でもって、ウルージ達と動いていたようだが......」
シャボンディでアプーが真っ先に同盟をもちかけたバジル・ホーキンスはおののいていた。ホーキンス海賊団船長。タロットカード占いが得意であり自身の占い結果に相当な自信を持っているためか大将黄猿と遭遇したときも自分に死相が出てないということで特に焦るといったことはしていなかった逸材だ。
クイーンはうなずいた。
「大事な仕事があるんだよ。ドレスローザ守ってくれてる天竜人とワノ国出身の奴隷のハーフの天夜叉が世界政府の傀儡として変わってくれたSWORDの隊長を殺せって命令うけてんだ。しかも本人は動けないよう念入りに海賊万博の主催の護衛にされちまってる。最果ての地にいくエターナルポースだあ!?そんなもん海賊王目指してる奴らの怒りをかうに決まってんじゃねえか!どうあがいてもおれ達を巨悪の道しか歩ませねえつもりらしい。だから、お前のタロットは必要なんだよ、ホーキンス」
「ああ、そういうことか。ドレークのことだ、絶望のあまりにおれにすがってくるだろうな。実際は死ぬことはないが、やつは実質世界政府の目同然だ。生存確率を親切に教えてあげなければいいのか......俺はうそが嫌いなんだが」
「安心しろ、元駄馬のロシナンテが動いてくれる。やつはナギナギの天才だからな」