ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
「おそい!!」
あの日、ハチノスに命からがら帰還したカタクリは王直につかみかかった。
「なんですぐ来てくれなかったんだよ!いつもみたいに助けてくれよ、守ってくれるんじゃなかったのかよ!!カイドウは見つからないし、父さんもみつからない!にいさんも、ねえさんもだ!みんな死んだ!やけ死んだんだ!大丈夫だっていったのに、なんで船が半壊するまで炎がここまで届くんだよ!!アンタが肝心なときに動かないからだ!!なんだよ、未来なんて見えても肝心な時に役に立たないんだな!?」
「カタクリ!やめな!アタシ達は船で待ってたじゃないか、なにもみてないアタシらにできることなんてないよ」
「でもっ......でもぉ......!!」
今にも死にそうな顔をしているキャプテンジョンをカタクリは睨みつけた。
「アンタのせいだ!アンタのスケスケの力が破られるから!弱いから!戦えないくらい弱いから悪いんだ!そしたら怖くなって覇気で勘付かれて包囲された軍艦に患者も医者も皆殺しにされずにすんだんだ!!」
「タカクリッ!!」
リンリンは本気でぶんなぐった。
「誰もみな…死にたくて死ぬわけじゃない。大抵の死は不本意なものだ。あのまま立ち向かったところで何になるって?こんなにちいさいクソガキが?相手は火拳だ、逃げ切れたのが奇跡さ。
誰も攻めやしないさ。世界政府の本気を思い知る良い機会になったじゃないか」
「......せんせ......」
「暮端(くれは)にするよ、今日からね。酷い事するもんだよ。非加盟国や海賊を治療した医者も犯罪者扱いした途端にこれだ。弾圧して、追放して、やっとできたゴッドバレーもろとも焼き討ちか......。差し伸べる手を振り払うことなんざできるわけないだろうに、わたしらは医者だよ」
「......」
カタクリは泣き出した。
「あたしの前から患者が消えるときはね、治るか死ぬかだ。殺されるなんてあってたまるか......。いいかい、カタクリ。この世に万病に効く薬なんてモンはありゃしないんだ。だから医者がいるんだよ。いいかい、優しいだけじゃ人は救えないんだ。医者じゃないのに人の命を救いたきゃ、それなりの知識と実力を身につけな。腕っぷしがなけりゃ、結局誰一人救えないんだよ」
結局のところ、ゴッドバレーにいた医者のうち、生き残ったのは全身に斧・剣・槍・モーニングスターなどのフル武装で追いかけ、更にそれらを投げつけることができる彼女くらいだった。
「エッエッエッ、えらい湿っぽいじゃねえか!笑え!おれはしめっぽいのは嫌いなんだ、火薬が腐っちまうからな!でもおれは撃たねえ!なぜか?世界政府と同じ存在になりさがっちまうからだ!」
カタクリ達は反射的にくれはの後ろに隠れた。ヒルルクが現れたのだ。あんな大虐殺の中やけど一つどころか、服までそのまま平然と現れた男はにいっと笑った。
「海賊が死ぬのは海賊旗がやぶられたときと忘れられた時だって相場が決まってんだ!海賊旗は、海賊として船の乗組員を同定するために掲げられた旗。ジョリー・ロジャーは海賊たちは敵を怯えさせたり、降伏しないと危害を加えると言うメッセージを相手に伝えるためにつかうんだ。つまり、海賊が掲げるドクロってのは、『不可能を可能にするマーク』なんだよ。だから世界政府は怖がってんだ。上等じゃねえか、なあ?」
「ドクロに桜吹雪」という海賊旗をひろげたヒルルクは笑った。
「あ、アンタいつのまに!?」
「エッエッエ、世紀の大泥棒ヒルルク様をなめるなよ!」
「科学者やめて泥棒しなよ、あんた」
「断る!生きてる時にやりたいことはやるし、欲しいもんはぜんぶ盗むって決めてんだ!ゴッドバレーにきてよかった。またやりたいことがふえちまったからな」
今だにごうごうと燃えているであろうゴッドバレー。上陸できたのは2年後だった。生き残った者達総出で墓をつくった。墓参りは毎年減っていった。あまりに陰惨な事件だ、壊れていく者達がふえていった。ロックスは特にひどかった。キャプテンキッドが突然発狂して自殺しようとして、みんなでとめに入ったら、王直が死なせてやれと執拗なまでに撃ち殺すくらいには酷かった。みんな、だんだん来なくなった。七武海に入ることで墓守の道を選んだモリア以外はみんなこなくなった。モリアはビブルカードをくれなかった。
ゴッドバレーは世界最大の海賊船だった。元は太陽信仰をかかげる西の海にあった島だが、ひょうたん島のように巨大な浮き島となった。 基本は偉大なる航路“魔の三角地帯”に停泊し、通りかかる海賊等を救っては、全財産の半分を奪う辻斬りみたいな医者だった。
生き残った者達は思うのだ。なにかおかしい。
元々西の海の島なので記録指針が反応しない"ゴースト島(アイランド)"。 だからゴッドバレー。そういうことだった。ジーベックは世界政府のエージェントとして潜入するつもりだったが、裏切ってデービーバックファイトの数時間後には全てを暴露し、むしろ世界政府に復讐したかったが、バレたのだ。Dとつながる者達しかいないはずなのにバレたのだ。
ガープではない。やめてくれと必死にとめていたし、センゴクはなにもしらないはずだ。
やはり裏切り者は。
「フィガーランドッ!!火の魅力に取り憑かれたやがったか!?世界政府に取り込まれやがったか、裏切り者が!!だから赤はダメなんだ!!」
みんなの内心に燻っていた偏見が一気に爆発した瞬間だった。いくら事件の被害者であるロックスとロジャーがフィガーランドは200年前の失敗で人質なんだと説明して回ってもダメだった。おなじ船の中でも赤髪がいるとピリピリするほどだった。本人も嫌がってスキンヘッドにするか、髪を染めた。フィガーランドは裏切り者だけど、赤じゃないなら許す。そんな理不尽が罷り通るようになっていった。
おかげでシャンクスに渡すべき指輪は、本人が断固拒否しているために、皮肉にも本当の裏切り者であるセンゴクのところに残ったままだ。
シャンクスすら思うのだ。太陽信仰してる忌み名文化でど直球なメラメラや赤はダメだ、恐れ多い。