ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
あばれすばーれす
Avs S
Avarves S
varves 年縞
フーシャ村は世界政府に禁じられている太陽信仰の村だ。そのためゴア王国から離れて隠れてつくられている。古代社会の宗教において、太陽を全知全能の神としたり、太陽に子を授ける能力があると信じたりして、崇拝の対象とする信仰。 かつて世界各地の神話・習俗に見られたが、世界政府が禁じている900年から800年前の空白の100年でなにかしたらしい。そのせいでバレたらあらゆる手段で抹殺される。太陽は信仰の対象だから直視してはいけない。言霊信仰もあるから忌み名という文化が生まれた。口にすると支配されるから口にしてはいけないという考え方からきている。
「それだけならよかったんだが......」
じいさんは苦悩を滲ませたような顔をして息を吐いた。
「今回も無事でよかった、エース。大丈夫か」
「大丈夫じゃねえよ......今日もきたよ......」
怯え切ったおれをみて、じいさんは抱きしめてくれた。ぐしゃぐしゃに撫でてくれた。でも恐怖から体がぬけてくれない。
おれは生まれたときから見るタイプの見聞色だけはできた。できないと殺されるから。ダダン達じゃない盗賊が平然と入ってきて、あたりを物色して、あちこちひっかきまわして、舌打ちしてからかえるのだ。毎回隠れる場所を変えないとダメだった。
おれはポートガス・D・エース。あるいはゴール・D・エース。400年前までいたはずの世界で一番自由だったはずの冒険家と冒険家になりたかったのに、Dがバレて世界政府から海賊王っていう二つ名を押し付けられたせいで、海賊王しかできなくなった父を持つ。
何で知っているか。おれが生まれた南の海バテリラで2年間も助けてくれた人がいる。ドンキホーテ・ホーミング。この人はワノ国にルーツがある人と結婚したいから奴隷という形だけど引き取り、生まれたふたりは天竜人なのにDになった。見た目はワノ国じゃないからわからなかったらしい。でも、おれ達Dは笑うのだ。太陽みたいに笑うのだ。みんなそう。だから穏やかな人ばかりだ。
でも、この世界の神は笑わない。天竜人という末裔にとっては、世界を笑いであふれさせたおれ達は、Dの夜叉なのだ。だからふたりとも神の天敵みたいだと笑うたびに鉄仮面をつけて監禁されて、病気だから人間になりたいといったら北の海の非加盟国に下された。あんまりだ。バレてないのにこの仕打ち。
すごいと思うのは、ホーミングさんの奥さんはモルガンズで働いていて、ホーミングさんはウミット海運という世界で一番有名なマフィアがやってる運輸会社の右腕をしてる。上はドフラミンゴ、七武海の海賊だ。下はガープさんが引き取って海兵になった。天竜人でDだから、じいさんはナギナギという実をあげて、15まで匿ったらしい。
「おれもナギナギほしい......」
「すまんなあ、エース。悪魔の実は世界にひとつしかない」
「......しってる」
悪魔の実は世界に1つだけ、そこには悪魔がすんでいて取り憑くといわれている。おれ達からいわせれば、海の秘宝だ。900年前までは先祖代々受け継がれていて、当主だけが食べることができた。前の当主の魂が黄泉の国から帰ってきてくれて、今の当主の魂に宿る。そしてすべてをひきつぐのだ。教えてくれるのだ。
それが今や1億ベリーで世界中にばら撒かれ、おれ達はこうやって身をかくしながらくらす羽目になっていた。太陽を信仰するから火葬はダメなんだけど、東の海な暖かいから病気になると知ってるD......36年前までは医者として世界中でかくれていた名残なのか、国の名前なのか、口にしてはいけないからもう誰もわからないけど、火葬は黙認されていた。
でも、みんな、火が嫌いだ。だから風車がたくさんある。水力に頼る。ワノ国の文化が入り混じった生活様式は、たしかにゴア王国からは浮いていた。恐れ多いし、みんないう。太陽を敬うのに、その力で迫害される。焼き殺される。貼り付けにされて焼き殺される。だから絶対にここが太陽信仰の村だとバレちゃいけない。だから、ここは、フーシャ村なのだ。
900年前に、この世界のどこかにあったはずのおれ達の国は、その火で一瞬で滅ぼされたらしい。
「お前さんはゴムゴムを食べることになっとるからな」
なでるてはいつも優しかった。黄泉から帰ってきてくれる誰かがおれを選ぶって生まれるずっと昔に予言があったらしい。ゴムゴムの実。太陽信仰で大切にされてるグリーンダフトの青い星のいいかた。800年前に滅ぼされたおれ達の国最期の王様の魂がずっと世界政府から逃げ続けていて、ようやくおれのところにやってくる。
おれは海の王というやつになるらしい。海賊王って二つ名をつけられたそれ、じいさんも知らない理由で父さんがなりたかったけど、できなかった王様の名前だ。
ぜんぶ、手元のトーンダイヤルが教えてくれた。ホーミングさんが空にある島から海で養殖をはじめて、世界中の人が使ってるエネルギーだ。おかげでおれ達はいよいよ火をつかうのは料理だけになった。
「こんなことなら......いや、ホーミングとの約束を破るわけにはいかん。まさか天竜人は人間なのか?いや、そんなはず......ならどうしてわしらは......。だが、あそこにいなければあんなこと......」
900年間、おれ達太陽十字教徒、特にDといういみなを持つ者達は弾圧されてきた。おれ達は神を直視してはいけない、名を読んではいけない、恐れ多いからだ。言霊信仰があるから神を支配してしまうし、支配されてしまう。
じいさんはためいきをついた。
「エース、赤髪のシャンクスがくる」
「......フィガーランドの」
「そういうんじゃない。生まれた子はみんな海の子だ」
「......でも、ドラゴンさんは。じいさんも」
「......火は怖いな、あれだけ立派な人でも魅入られるんだ」
36年前、Dを含めたどんな種族の海賊達や非加盟国も分け隔てなく辻斬りみたいにして治療してくれる海の境目を完全に無視して移動ができる神の島があった。ゴッドバレー。ある日、バレて、とうさん達やロックス、じいさんをのぞいて。非加盟国出身の医学関係者、患者が全員ある海軍大将に焼き殺された。軍艦に取り囲まれて皆殺しにされた。世界政府はぜんぶロックスのせいにした。世界で一番自由な本物の海賊は新世界にいるべき大海賊だって二つ名をつけられて新世界から出られなくなった。
命名したのもゴッドバレーの首謀者も赤髪だったから、みんな嫌いになった。大将、火拳のフィガーランド。Dの裏切り者、これからやってくる赤髪のシャンクスの父親だ。
過去のことは過去のことだといって片付けてしまえば、それによって、我々は未来をも放棄してしまうことになる(ウィンストン・チャーチル)
過去を単に過ぎ去った時間と認識するのは誤りだ。過去は未来に通じている。つまり、未来に過去は活かすことができるのである。過去から反省点を学ぶのは、活かし方の最たる例だ。また、過去の流れから、未来への対処法を推測することもできるだろう。いづれにせよ、過去を考えない姿勢は、明るい未来を捨てることを意味するのだ。