ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編) 作:アズマケイ
あばれすばーれす
Avs S
Avarves S
varves 年縞
言霊信仰が支配するこの世界に存在する全ての書物は検閲され、世界政府の都合がいいように名付けられる運命にある。
たとえばこのおれの好きな本。南の海にかつて実在したおれの母方の先祖を含む偉大なる冒険家達の話をまとめたBrag Men(自慢話)。この前にfiction romanceとつけられてしまうと、事実に基づいて作られているのではなくて、架空のストーリーや登場人物が出てくる物語や本のことで、小説の一つの分野とみんな信じこんでしまう。意訳するとBrag Men(うそつき達)となってしまう。
じいさんに聞いたら、偉大なる航路にはすべて実在する島や街、あるいは文化だった。ルイ・アーノート。誕生日は12月20日、出身地は偉大なる航路の世界に名の知れた探検家で「ブラッグメン(自慢話をする男達、世界政府がいうにはうそつき達)」という冒険記の著者。リトルガーデンを発見し、命名した張本人である。きっと偉大なる航路の誰もが本当のことだと受け入れるから、東の海みたいな田舎で馬鹿にされてもどうでもいいんだろう。抵抗のあとがない。うそつきノーランドなんて絵本にまでなっているせいで、ずっと末裔は馬鹿にされてるってじいさんは怒ってる。
ロックス時代に知り合ったサミュエルは海賊のプリンスって名前がつくくらいイケメンで女ったらしだったけど。ノーランドは嘘つきじゃないって証明する前に嵐に巻き込まれて死んだらしい。空島ウェザリアの天気予報はあくまで予報だ、天性の気象予報士でもない限り絶対はない。
世界経済新聞には、四皇赤髪のシャンクスが世界政府の輸送船を襲撃し、ゴムゴムの実を強奪したとある。金獅子のシキはエッドウォーの海戦で空島ウェザリアとウミット海運、じいさん、とうさん達に倒された。赤髪のシャンクスとは直接たたかってない。なのに平然と称号をつけたり、はずしたりする。世間はまさか戦ったことすらないとは思わないから受け入れてしまう。これが世界の仕組みだ。今日から赤髪のシャンクスは四皇だ。自分達の称号だと思ってる大海賊ロックスが許すかどうかはわからないけど。
言霊信仰に抗うには知識が必要だ。だから、おれは、たくさん本を読んだ。西の海にあったオハラはおれが生まれた年に、歴史の本文を研究してた罪で、 バスターコールで抹殺された。いよいよ世界政府は、おれ達を言霊信仰でも支配下におこうとしている。
「エース、アンタ、海兵になるのかい?」
「じいさんにはナイショだけど、絶対に嫌だ。フィガーランドになりたくない。あれだけすごい功績あげて、航海して、測量してるのに、大将になったらあんなことするんだろ?じいさんもそうだ。あんなに尊敬できるのに、天竜人に抵抗するには中将でいるしかないなんて」
「はァ......世間を知るとそうなるってのに、なんでわからないのかねえ、ガープさんは」
「ドラゴンさんが海兵にならないから、おれになって欲しいんだ、きっと」
「ゴッドバレーはたった36年前だってのにな。海軍に焼き殺された師匠の忘形見を海兵だなんて、頭イカれてる。ロシナンテはわかるよ、天竜人でDだなんてバレたら海兵になるしかない。でもエースは......うーん、海兵のがいいかもな」
「本気でいってるのか?」
「フーシャ村にいきゃわかるさ」
「......本気でいってるのか?海兵がずっと、おれ、探してるのに?サイファーポールか、エージェントかもしれないけど」
「あー、ごめん。口滑った」
「おれだっていってみたいよ、フーシャ村。絶対安全だ、太陽信仰の教徒しかいない。でも怖くていけやしない」
「赤髪海賊団はずっときてるのにねえ、難しいもんだ」
四皇赤髪海賊団がシマだと主張しているのに、平然とダダンのアジトやフーシャ村をうろついてるやつがいる。ヒグマっていってるけど、じいさん曰く正体不明の盗賊の統領がいる。今の手配書とWANTEDの字体が違う。普通の手配書みたいにDEAD OR ALIVE(生死問わず)がない。下の文字は潰れて読めないくらい古い。何十年前の手配書なんだって話だ。赤髪海賊団が航海にでた途端にフーシャ村じゃなくてダダンのアジトを毎日のように浸入してくるくせに。じいさんが帰ってくると忽然と姿を消すんだ。怪しまないわけがない。しかも56人も殺してるくせに《二つ名》がない。賞金額だって低すぎる。そんなのこの世界で人権がない非加盟国の人間か、おれ達みたいなDを殺して回ってる奴だって相場が決まってるんだ。どうみても怪しいじゃないか。
おれはダダンのつくる熊鍋も食材のツキノワグマもすきだけど、ヒグマは嫌いなんだ。あいつは火を恐れないって本にあったから。それにヒグマは本当に幻の熊だ。ハンターがハンター人生で1度でも会うことが出来れば凄いと言われてる。その中でひくまを狩る事が出来たハンターは神と言われるくらい捕獲をするのが難しいクマだ。しかもワノ国にしかいない。
今日はどうしようかな、冒険記を読むか、サボと遊びに行くか。そんなことを考えていた矢先だった。
「カーリー・ダダンさんのアジトってのはここか!?」
知らない男が飛び込んできたものだから、おれはとっさに逃げようとした。ダダン達はおれを庇うように前に出る。
「待ってくれ、待ってくれ!おれは、赤髪海賊団のライムジュース!ミンク族の血が入ってる!」
四皇・赤髪のシャンクス率いる赤髪海賊団の幹部で具体的な役職はいわなかったが、戦闘員だろうか。赤髪海賊団のシンボル・左目に赤い三本の傷があるドクロが描かれた黒いニット帽をかぶっている。さらにサングラス、色素の薄い長い金髪が特徴。グローブをつけている。
ライムジュースは戦闘では電撃を纏った棒を武器として戦う。空を駆け、空中から強力な一撃を浴びせる。穏やかそうな男は、なんとかおれ達の信用を勝ち得ようとわざわざ戦闘スタイルを暴露してきた。なんならホーミングさんに連絡してくれてもいいから、までいわれたら、おれ達は一安心した。その名前は驕ることが絶対に許されない名前だ。嘘がバレた瞬間に赤髪海賊団はウミット海運の血の掟により抹殺対象になる。
「確かに宝箱には厳重に鍵をかけてたし、船長は肌身にさず持ち歩いてた。おれも見た!なのにひとりでにあいて、ルフィ......ガープさんの孫のDに食われにいったんだ!!」
おれ達はさすがに意味がわからなくて固まってしまった。
ライムジュースも混乱しているみたいで、つっかえつっかえ、話してくれた。じいさんの孫で海兵にされる運命ながら海賊に憧れる少年ルフィは、シャンクスの航海への同行をせがんでは断られる日々を送っていた。
シャンクス達が滞在する村の酒場に、ヒグマという山賊が現れる。酒を買いに来たという彼等だが、その日の酒はシャンクス達に全て出してしまっていた。店の酒を買い尽くしてしまった事を詫び、栓の空いていない酒瓶を差し出すシャンクス。だがそれを不服としたヒグマは、瓶を叩き割りシャンクスに酒を浴びせかけ、立ち去って行った。
「別に怒る程の事じゃない」と大笑いするシャンクス。あんな事をされて笑っているなんて、と腹を立てながら、ルフィは傍に置かれていた果実に齧りつく。しかし、それを見たシャンクスが血相を変え、ルフィに詰め寄った。
その果実の正体は“ゴムゴムの実”。食べれば全身ゴム人間となる能力と引き換えに、海に嫌われ泳げない身体となってしまう、“悪魔の実”と呼ばれる果実だったのだ。
みんな、おれをみた。ぽろっと涙が出た。10年まるまる無駄になってしまった。ゴムゴムが王族の直径とはいえただの人間をずっとやってきたモンキー家のルフィを選ぶってことは、海の王に海の王をやってほしくないってことだ。世界政府からずっと逃げ続けたゴムゴムなんだ、きっと意思表示だ。
200年前の失敗が許せないんだなと思った。もう嫌なんだなと思った。そろそろ終わらせたいんだ。......なにを?今までのおれ達の戦いについに決着をつけにいくってこと?それとも、失望したからみなばもろともってこと?わからない。みんな、わからないって顔をしている。前代未聞だ。
「......おれ、王様やらなくていいのか」
「!」
「じゃあ、なんの実になるんだろう?メラメラか?おれにみんなを焼き殺せっていってるのか?ゴッドバレーは、逆らえなかったんじゃ」
「エース!!」
ダダンが抱きしめてくれた。
まるで予知したタイミングでホーミングさんから手紙が届いた。全てに絶望して焼身自殺なんてくだらないことするくらいなら、今度こそ世界をひっくり返す儲け話があるから、その導火線に手を挙げろ。失敗したら好きに死ねと書いてあった。無茶苦茶な内容だった。でも、なんだかできそうな感じがした。問題は10年も待たなきゃいけないってことだ。強くなるなら何でもいいって書いてあった。どうしようかな。いきなり降ってわいてきた自由におれはやっとわらえるようになっていた。
それよりヒグマがおれを狙いにこなくなったのが心配だ。ルフィは大丈夫だろうか。