ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

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電気狩り

ワフルド島の固有種であるボーボー鳥の卵とこんにゃく、だいこんが入っていて、ダシはボーボー鳥の肉が使われている。非常にシンプルなおでんこそが、かつて存在していた世界で一番うまいおでん屋のレシピである。このレシピがワノ国に伝わる秘伝のレシピだというんだから、相当昔の話なのは間違いない。

 

なにせ、ワノ国は800年間鎖国しているし、ワフルド島は元空島だ。今でこそ活気を取り戻しているが、バロンターミナルが廃墟の空島だった時代を知るドフラミンゴにとっては、空島とワノ国が繋がっていた時代の証だ。

 

しかも、そのおでん屋の倅がイニシエ海賊団として名を残している、世界の三分の一の黄金を手にしたというウーナンだ。確かめることができた時点で全ては伝説ではなく実在したということになる。

 

ワノ国にウーナンの末裔がいるかは不明だが、このレシピが人質にとられるだけで百獣海賊団との決着を必死でサムライ達が頑張ってるわけだ。キングと呼ばれたサムライがいたように、イニシエ海賊団はワノ国にとって特別なのかもしれない。

 

そんなことを思いつつ、レシピを再現するよう命じたとドフラミンゴファミリーのおかかえのコックから味見を求められる。

 

美味しそうな匂いにつられてハートの海賊団達がじっとこちらをみていることに気づいたドフラミンゴは振る舞ってやれと命じた。歓声が上がる。

 

こいつらは北極近くの北の海生まれだ。食べたことない味がするだろうから、その反応から試行錯誤した方が感性が早まるかもしれない。3年ほど幼少期にからくり島にいたことがあるドフラミンゴは、ワノ国の文化になれていて舌も覚えているから、味見役には向かないかもしれない。ふとそんなことを思ったのだ。

 

「おい、ベポ。おまえはいいのか?毛の生えた生き物がダシに使われてるが」

 

「え、おれ?あんまり気にしたことないからいいや!」

 

「そんなもんか?それともホーミングんとこのミンク族達が気にしてるだけか?」

 

「ベポは6歳から北の海にいただろ、ドフラミンゴ。訛りも無いし、普通じゃ無いのか?」

 

「いや、それ以下の元密航者が隊長やってるあの黒ウサギと黒ヒョウだ。まあ、食えるんならどっちでもいいが」

 

「いただきまーす」

 

「ワノ国の料理?」

 

「そうだが、失伝しちまったようだ。これはレシピから再現試みてるところだ」

 

「こんなに美味しいのに?もったいない」

 

「ワフルド島が空から落とされたから無理もねえがな。まさか大地が海底に沈まないとは誰も思わなかったんだろう」

 

「落ちたのか、空島が!?」

 

「唯一の生き残りがいうんだから間違いねえ」

 

ドフラミンゴは味見する気はないのか、新聞を広げて読んでいる。50社分はなかなかに時間がとられるのだ。

 

その日、ライジン島と呼ばれた島が、世界政府に徴用されて地図の上から消滅したとある。

 

一年中雷が降るとんでもない島であり、ゴロゴロの実の覚醒者のせいだともっぱらの噂で、長らくウミット海運のシマとして知られていたライジン島は、かつて存在していた偉大なる航路新世界にあった島である。ウミット海運のババアがサンダーダイヤルのついた傘を売っていることで知られていた。

 

世界政府とウミット海運の取り合いはすさまじいものがあった。初めこそ、ウミット海運が先に動いた。フワフワの実でライジン島ごと浮かばせて、そのまま高度一万メートルまで打ち上げ、雲の上に乗せて植木鉢のように囲う計画が進んでいたのだ。そうなればビブルカードがなければ完全に近づくことすら出来なくなるはずだった。

 

しかし、海軍大将まで出てきて海軍が止めようとしたのだ。その結果、フワフワの実vsズシズシの実の大戦争になってしまい、ライジン島目掛けて隕石が投下。ライジン島は真っ二つになり、片方が空に残り、もう片方が海に落ちた。

 

世界政府がなぜ今更ライジン島を欲しがったのかは不明だが、一度は空に浮かんだライジン島は浮島になった。幽霊じまの誕生である。

 

世界政府はそれを利用して、スリラーバークのように南の海の技術を使って真っ黒な船に変えてしまった。その不気味な船はカームベルトを航行するようになった。動力変換のやり方は不明だが、ライジン島の雷だという。

 

そのため、3つある指針のうち、ライジン島を今指してもログが貯まるだけだからアタリの島の残骸が広がるばかりだそうだ。さすがに雷がなくなったライジン島には、ウミット海運も世界政府も興味がないらしい。

 

「なんか、おれの賞金額あがってない?キャプテン」

 

「たしかに。雷といい、ミンク族といい、世界政府はなにを考えてるんだろうな?」

 

ロー達が読んでいる世界経済新聞によれば、ロギア系の能力者を徴兵するか、敵対的なら殺してでも能力を欲しがっているようだ。

 

「電気狩りだな」

 

ドフラミンゴがぽつりとつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

「さあて、リク王。バギーの野郎がクロコダイルとミホークと結託して本性を現しやがったがどうする?これで実質七武海は崩壊したわけだが。ドレスローザとの協定はまだ4年あるから急ぎはしねえが。てめーの一存で決まることを忘れんじゃねえぞ。おれは手を切るってなら一向に構わねえが。おれ達とかかわりがあると世界政府や他の加盟国に睨まれちまうかもしれねえがどうする」

 

ドフラミンゴにそう問われたリク王は、今年の世界会議を経てから決断したいと判断を先送りしている。だから、リク王が無事帰還できるよう随伴戦力としてドフラミンゴはコラサンを派遣するつもりでいる。すぐに判断を問えるように階段の段取りだけは先に済ませておいて、天竜人の傀儡としての仕事をするつもりだった。

 

「最終決定ではないが......ドレスローザとしては、正直このまま、君たちに随伴戦力としていてほしいと思っている。協定の更新は4年後だから慎重に判断したいんだが」

 

「ほう?なんでだ?」

 

「今、私は疑心暗鬼になっているのかもしれないが......。闇のシンジゲートに組み込まれている自覚はある。あるが、そのおかげで事前にわかることも沢山ある。周りの国が四皇カイドウとの戦争に持ち堪えられているのも、きみ達がいるからなのは事実だろう」

 

「まあそうだな、NEWMADSの毒ガス兵器が世界会議でばら撒かれるかもしれないって情報の活用の仕方はお前たち次第だ」

 

「きみ達がいなくなり、最新の情報が手に入らなくなるのが恐ろしくてならないんだ。私はこの国を守らなければならない。君たちと違って逃げられないし、逃げたいと思ったことなど一度もないからな」

 

「フッフッフ、王族ってのはそういうもんか?理解できねえ思考回路だ。一番やべえ時に逃げるべきなのは王族だろうよ、血が絶えたら終わりだぞ。国の回し方がわからねえ奴が王になったら、悲劇しか生まねえだろうに」

 

「それでもだよ」

 

ドフラミンゴはちらりと窓の向こうの空を見た。ドレスローザにしてはめずらしい曇天が広がっている。天気は下り坂、ぐずついた空模様とハレダスの天気予報はいっていたはずだ。

 

雲は次々に南に向けて空を吹き流されていた。どれだけたくさん流されても、あとからあとから雲は現れてきた。遥か北方の地にそれらの雲を無尽蔵に供給する源があるに違いない。

 

頑なに心を決めた人々が、灰色の厚い制服に身を包んで、そこで朝から晩までただ黙々と雲を作り続けているのだ。蜂が蜜を作り、蜘蛛が巣を作り、戦争が寡婦を作るように。

 

「今年の世界会議は荒れるらしいからなァ、死ぬんじゃねえぞリク王」

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