ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

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ウラエウス

「ホーミングさん、聞いてよ!アタシ達、コブラ王に庇われて、命からがらルルシアに潜伏したと思ったら、死にかけたのよーう!!でも安心して!ちゃーんと電伝虫ちゃんはワポル王が回収してモルガンズに渡ったわ!」

 

能力を使うまもなく、ひたすら逃げの一途を辿ったにもかかわらず、ベンサムとサボは満身創痍だった。彼ら曰く、五老星もイムも能力者で、コブラ王が庇ってくれなければ、今頃自分達も死んでいただろうとのこと。

 

サボは五老星を皆殺しにするつもりで侵入した先でコブラ王と五老星、イムの異様な対面現場を目撃した。

 

ベンサムはコブラ王の替え玉として潜入するはずが本人が忽然と姿を消したため、必死で探している最中、虚の王座の惨劇を目撃することになってしまったという。

 

800年前、歴史の本文を世界中にばら撒いたのは最初の20人であるネフェルタリ・D・リリィ。そう、彼らが全ての始まりなのだ。さすがにそれはホーミングもドラゴンも知らなかったようで、2人は目を丸くした。その末裔であるはずのDの一族はその由来すら忘れて自ら名乗っているあたり、イムからすれば意味を忘れた抜け殻ゆえに処刑対象たりえないという。

 

ただし、ニカとして覚醒したモンキー・D・ルフィと、世界の真実に気づいたゴール・D・ロジャーは別。

 

イムすら知りえなかったあたり、800年間、ネフェルタリ家は歴史の本文を世界各地にばら撒く大失態を犯したという意味で裏切り者だった。実は巨大な王国のDの一族の王族だったか、感化されて意思を継ぐものとなったリリィ。二重の裏切り者か、感化されて土壇場でスパイになったか、ただの失敗か。800年越しの真相解明のためにイムはコブラ王に問いかけ、問答のうちにリリィは正真正銘の裏切り者と確定し、激情したイムにコブラ王は処刑された。

 

五老星はしらばっくれてそのままコブラ王を送り返す腹づもりだったようだが、イムはそうではなかった。空白の100年、D、そしてリリィの名を口にした時点で、イムはコブラ王を生かして返す気は微塵もなかったようだという。

 

ウミット海運の医療支援により、不治の病の割に元気そうだったコブラ王だが、頭の中では最期の晴れ舞台のつもりで世界会議に臨むつもりだったようだ。

 

ホーミングは肩をすくめた。人を救うには、その人が助かりたいという意思がなければその難易度は倍以上に跳ね上がる。どのみち無理だったのだ。腹心であるチャカにもペルにも告げずに単身世界政府に挑む覚悟を決めた男を誰も止めることなどできないに違いない。

 

コブラ王にとって想定外だったのは、イムにとってリリィと生き写しと思われるほど母親似のビビが路傍の石ではなく、飼いたいくらいには手元におきたい存在ということだろうか。はじめからわかっていたなら、ここまでの行動にはうつさなかったはずだ。

 

さいわい、ビビ王女はイムに飼われる運命をワポル王との駆け落ちをキンデレラに醜聞として垂れ流されるのも構わずCP0の魔の手から逃れてともにモルガンズの元に逃れた。

 

「ルルシア抹殺事件について、どう思う、ホーミング。イワのいうとおり、イムが古代からオペオペにより不老だとして、ルルシアに古代兵器が使われたとする。なんで今使った?なんで今まで使わなかったと思う?」

 

「マザーフレイム、といっていますね」

 

ホーミングはベンサムが回収してくれたダイヤルを再生しながら私見を述べる。

 

「私の故郷で一回、ゴッドバレーで二回、ツキミ博士のからくり島で三回、空島ビルカ......これは先にゴロゴロで滅ぼされましたが四回、そして空島ワフルドで五回。ここから16年間、古代兵器ウラヌスと思われる兵器は使われていません。弾丸がなくなったか、動力源が尽きたと私は考えています。だから 20年前にMADSを買収してまでペガバンクを囲い、再現させたのではないですかね?」

 

「だが、明らかな兵器は......」

 

「フレイム、火、母なる火、明らかに人工的に作られた太陽じゃないですか。電気で動くはずの古代兵器を火を動力源にすることで再現してしまったんでしょう。太陽光を自在に操ることができれば、ウェザーエッグよりも大規模な天気変動が行えますからね」

 

「太陽を作ることが可能なのか!?」

 

「少なくても30年以上前に理論上可能だとツキミ博士が論文を発表してますね。ただでさえ、ベガパンクは溢れ出る発明のアイデアに時代がついてこないことを嘆いていましたから。私の長年の支援で冬島の暖房が完成し、永久機関のヒントを得た。ベガパンクが全世界にエネルギーが行き渡る世界を叶えるべく頑張っているのは知っているでしょう、ドラゴン。世界政府がなんといったか想像に難くありませんよ。ウェザーエッグでは金がかかる。もっと自由に天気を変えることができればみんな幸せになるのに、母なる太陽さえ作れたらどんなにいいか、とかね」

 

あくまでも私の予想ですが、とホーミングは断りを入れる。

 

「今、加盟国の反乱に投入されてる新型兵器パシフィスタ、セラフィム、ご存知ですよね?ベガパンクですら、火をもって再現するしかないんですよ、かつての神を」

 

セラフィム、それは「改造人間の技術」「人間の巨大化」「悪魔の実の複製」「血統因子」「ルナーリア族の耐久実験」など、これまでの物語で描写されていた「ベガパンクの研究成果の集大成」といえる代物だ。

 

白い髪・褐色の肌・黒い翼・背中の炎といったルナーリア族の特徴を持ち、王下七武海の面々によく似た容姿の子どもたち。成長途上と思われるが、その体格は既に大人並みかそれ以上。従来のパシフィスタと同じく「PX-〇」と製造ナンバーが刻印されている。

 

戦況を優位に運ぶべく自己判断できる最低限のわずかな「人格」を有している。 そのためそれぞれの意思で自ら行動することもある。ただしそれゆえ命令権を持った人物の予期せぬ行動をとることもある。

 

基本的には仏頂面で表情を変えることはあるが寡黙。命令を受けた際には「りょうかい!」と応じる。

 

「その名の由来は熾天使なんですがご存じですか?ある宗教において、「熾」は「火が盛んに燃える」の意で神への愛と情熱で体が燃えていることを表すそうです。ただ、古代は飛ぶ蛇を指しました。完全再現じゃないんですよ。本来は稲妻の精であり、六枚の翼を持つ蛇の姿をして炎の様に飛んだといわれています」

 

そもそも熾天使のセラフィムの源流は古代アラバスタにある。やっぱりなにものも「無」からは生まれない。セラフィムにも、モデルとなるものがある。それが古代アラバスタのウラエウスだとホーミングはいう。

 

古代アラバスタ人は蛇には瞼がなく決して眼を閉じることがないと考えていた。蛇は決して警戒を怠ることなく、従って理想的な番人であると考えられた。コブラは、致死の猛毒を持っており、エジプトでは蛇の中でも最も恐れられていたため、番人に最適だとされた。

 

コブラは伝統的にウラエウスと呼ばれ、ファラオの額に装飾として飾られたり、神殿や遺跡などの上に一列に並べて奉られたりして、番人の役割を果たした。

 

エジプトに棲息するアスプコブラが鎌首を持ち上げた様子を様式化したもので、古代エジプトの主権、王権、神性の象徴である。

 

「だからアラバスタの国旗は太陽なんでしょう、ベガパンクがどこまで知っているかしりませんがね。今思えば、Dの源流がアラバスタなのは当然なのかもしれませんね」

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