ロストマンのセイリング・デイ(王直→ホーミング 番外編)   作:アズマケイ

97 / 105
魚人を庇った罪

オトヒメとネプチューン王の目の中に絶望の色がうつろう。顔から希望の色が蒸発していく。

云い知れぬ失望の色が、彼らの表情を横切った。

 

ネプチューン王は興奮して紫色の唇をわななかせる。

 

「ミョスガルド聖を処刑するつもりなのか、世界政府は……、いや、神の騎士団は……しかも罪状は魚人を庇ったからだとは……、そんなばかな」

 

「私を助けるために海賊のお二人に命じたのならまだわかります、殺人未遂ですもの......でも、そんな、私を庇ったからなんて」

 

「まるでずっと狙っていたかのような罪状でしょう?私刑ですよこれは」

 

「ミョスガルドは私が全ての責任を取ると言っていたが......なんたる......」

 

拳から血が流れるんじゃないかというくらい爪を食い込ませるネプチューン王である。結局ホーミングの人智を超えた見聞色はほとんど当たってしまった。むしろアラバスタのコブラ王の暗殺という想定外の世界の損失を招いてしまった。

 

戦争の火種はばら撒かれた。あとはどう回収するだけかという態度でホーミングは2人の様子をうかがっている。

 

「どこまで天竜人は......!!もしわしがホーミングを止めていたらミョスガルドまで暗殺されていたんじゃもん、なんたる......なんたる苛烈な差別意識!なんたるDへの憎悪!怖気が走るじゃもん」

 

オトヒメが失神しやしないか、ヒヤヒヤしながら兵士たちは見守っていたが、かろうじてオトヒメはいうのだ。

 

「......カームベルトを航行する真っ黒な船の警戒をしらほし達にアマゾンリリーに知らせに行かせてよかった。世界会議に行かせなくてよかった......もしかしたら、しらほし達が奴隷にされたかもしれないもの。無敵奴隷になってしまったくまさんは、本当に強かったから」

 

「たしかに、しらほしは大きいから格好の的じゃもん」

 

オトヒメは憂い顔のままためいきをついた。

 

「もし、ミョスガルド聖が処刑されてしまったら......リュウグウ王国も危なかったでしょうね」

 

「ミョスガルド聖が行方不明な以上、どうとでも主張できますからね、やつらは。未回収のチップを無効にして私のように人間にして署名を実質無効にすることもできる。そうなればかの予言は成就しますね、リュウグウ王国の崩壊は。麦わら帽子をもつのはなにもジョイボーイだけではない、イム側ももっている。できうる限りの防衛を固めてください。助けるには助かりたい意思がなければ可能性は0になるんですよ、コブラ王のようにね」

 

「......ホーミングさんは、ずっとこれがみえていたの?」

 

「コブラ王以外は大体的中しましたね」

 

「あなたですら助けられなかったのね......コブラ王......」

 

「ミョスガルドについては見聞色がなくても予想はついていましたよ、オトヒメ様。なにせ放置していれば彼は取り調べの結果、十字架に磔となって処刑されるところだった。その彼を裁いたのは神の騎士団最高司令官に君臨する天竜人フィガーランド・ガーリング聖。 魚人をゴミと認識し,かばう奴は…それ以下だと豪語するような男だ。ゴッドバレーのあの天竜人ですよ、おふたりとも。覚えがあるでしょう?」

 

38年前の忘れかけていた悪夢を口にしたホーミングに、ネプチューン王もオトヒメも唾を飲んだ。

 

「あの男か......!」

 

ネプチューン王は唸るように低い声で名を呼ぶ。オトヒメはなんてこととばかりにため息をついたまま、首を振った。

 

オトヒメの夢である「人間と魚人島の和平&魚人族らの地上への移住」を踏みにじるような発言と罪状であやうくミョスガルドはその生涯は幕を閉じることになったのだ。

 

そしてミョスガルド聖の死亡すれば、オトヒメらが集めた地上移住のための署名も(当人が死亡した為)無かった事にされてしまう可能性がある。

 

それでいて、ホーミングの見聞色によれば、この処刑のことが世界に報じられることはなかったという。閉鎖的な空間であるマリージョア内のミョスガルドの死はいくらでも偽装が利くため、このままオトヒメとミョスガルドの頑張りは完全になかったことにされてしまう。あるいは今は意識が変わったから署名を無効にするとミョスガルドの偽物が手紙で偽装工作すら可能となる。

 

なんとも悍ましい話である。

 

「私としては処刑未遂として堂々と喧伝すればいいと思っているんですがね」

 

「それだけはやめてほしいもん、ホーミング」

 

「私達だけの秘密にしましょう、ホーミングさん」

 

「......やれやれ、お優しいことだ。いつまでも隠し通せるわけではありませんからね、お二人とも」

 

「それでも、それでも、私はまだ世界は変われると信じているんです」

 

「ホーミングのおかげでノアを動かすにしても、慎重にやらないとウラヌス、あるいはプルトンで狙われることがわかったじゃもん。感謝するもん」

 

「ではリュウグウ王国は引き続き水面下で対応をしていきましょうか。いよいよオペオペで不老の兵士をつくる段階まできましたからね、候補者を見繕っておいてください」

 

「わかったじゃもん」

 

「ありがとうございます、ホーミングさん。もししらほしがこの事実が知れ渡れば、古代兵器ポセイドンとしての力を反世界政府側として使ってしまうかもしれません。そうなれば、世界政府は本当に取り返しがつかなくなってしまいます、私達はあくまでも穏便な落とし所が欲しいんです」

 

ホーミングは苦笑いしながら、わかりました、とうなずいた。

 

現在、白ひげ海賊団はいよいよ戦争が現実味を帯びてきたため、広大なナワバリの住人たちを空島に移住させる計画を実行に移しているため、リュウグウ王国はナワバリのままだが、ホーミングの庇護が強まっているのだ。

 

とはいえ、戦争屋としての仕事で忙しくなってきたホーミングがいつもいるわけではないため、実質麦わら一味のナワバリとなっている。仮に世界政府が魚人島に攻撃すればルフィやジンベエを始めとする麦わらの一味、ひいては麦わら大船団、つづいてロックスとの衝突は避けられないだろう。

 

今までならそれはただの陰謀論にすぎなかったが、今回の世界会議で明らかに世界政府側の動きが変わったことだけはネプチューン王もオトヒメも感じているだけに、ホーミングの活動をいよいよ止めることはできなくなった。

 

なにせ今の世界政府は明らかに古代兵器を実用化させ、反政府戦力を徹底的に終わらせるために動いているため、なにをしかけてくるのかわからないのだ。恐ろしい話である。

 

「あの、ホーミングさん、ミョスガルドさんはどちらに?」

 

「ああ、申し訳ありません。本当は連れて来たかったんですが、世界経済新聞に神の騎士団が取り締まり中だと飛ばし記事が出てしまいましてね。心配している者達があとをたたないから、匿先を今考えているところなんですよ、もはやこの世界に安全地帯など存在しないわけですからね。お会いしたいなら私の船にどうぞ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。