大体一話完結くらいの闇鍋ファンタジー集   作:あほずらもぐら

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わざわざ異世界モノでやる内容じゃないとは思う、
でもやりたかったので投稿します。





男の世界

 

 

 

 

自治領の国境南部に位置する血飛沫荒野……

三年戦争でも屈指の激戦地だった事で知られる

この血塗られた土地も、現在は金鉱の発見や

鉄道の開通によって活気を取り戻していた……

 

 

帽子と鉄仮面を被り、黒いコートを羽織った男は

使い古した鞄から銀のハーモニカを取り出し、

主神教の讃美歌を演奏し始めた……隣では

大きな馬が主人を日差しから守るようにして

横たわり、楽しげに彼を見守っている。

 

 

『ブルルッ!』

 

 

「それは良いな……」

 

 

ズドォ!ズドォンッ!

 

 

彼は腰から八連装の回転式拳銃を引き抜き、

空中に向けて二発撃った……目の前を通過する

隊商の馬車を呼び止める為だ。

 

 

『おっと、新規のお客様のようだ!』

 

 

その商人は馬から降り、営業スマイルを浮かべて

鉄仮面の男に歩み寄る……目は笑っていない。

 

 

「馬が魔物に襲われて脚を痛めた……高い馬でな、

殺したくないので教会まで運んで欲しい。

どうしてもとは言わないが、やって頂けるなら

最低でも銀500……いや、700は出そう。」

 

 

銀貨700枚!商人の男は目を丸くした。

それだけ金があれば、この馬車を引く馬が三頭は

買えてしまうではないか……鉄仮面の男は

鞄を探り、銀貨の袋を商人に投げ渡した。

 

 

「取り敢えず前金として300枚差し上げよう。

残りは街の銀行で引き出す、それで構わないか?」

 

 

それを聞くや否や商人は馬を強引に台車に載せ、

高級ソファーが並ぶ特別室に男を連れ込んだ。

この部屋には彼の部下も含めて五人が座っているが

窮屈さはまるでない。

 

 

『ささ、どうぞ!この紳士にお茶を淹れてくれ!』

 

 

「いえ、お構いなく……賭けはお好きですか?

この辺りの方はゲームがお上手と聞いています、

お嫌でなければ一試合お願いしたいのですが。」

 

 

『ええ、何にしましょうか……ポーカー?

それともババ抜きにしますか?』

 

 

「いえ、ここはスリリングなものを一つ……」

 

 

鉄仮面の男は商人たちに一枚ずつ、真新しい

トランプのカードを配った。

 

 

「隣に見えないように裏返して下さい。」

 

 

鉄仮面の男が言った通り、彼らは自分に配られた

カードを裏返した……そのカードには……嗚呼、

彼らの顔写真と賞金額が印刷されている!

 

 

「ジョーカーを引いたな、貴様らの負けだ。」

 

 

『なんだと』

 

 

小間使いは叫ぶ暇もなく短刀で喉を刺され、

飛び出した護衛は首を折られて即死する!

馬を止めようとした御者が頭を射抜かれて死に、

パニックに陥った馬はサボテンにぶつかり転倒!

 

 

「逃すか!」

 

 

馬車から飛び出した商人を追う鉄仮面の男に

大柄な冒険者が立ち塞がり、大剣を構える!

 

 

『曲者め……この先へは行かせんぞ!』

 

 

「Bランクのドレッドエッジか、随分と派手な

副業に手を出しているようだな?」

 

 

『バレたか、どの道殺せば問題ねぇ!』

 

 

「お前如きに手間取っている暇はない……」

 

 

彼はホルスターから回転式拳銃を二挺抜くと

トリガーガードに通した指を支点にして

銃身を高速で回転させ、相手を挑発した。

 

 

『その時代遅れの骨董品で何が出来る!?

馬の骨が、そのまま砂漠に埋めてやるよ!!』

 

 

この世界の銃は魔法の発展が原因で完全に廃れ、

完全に過去のものとなっている。技術の向上で

高性能な弓やクロスボウが登場してからは

護身用としての価値も相当に薄れた。

 

 

「今のお前の発言には三つの誤りがある。」

 

 

『負け犬がよく吠えるな、さっさと死ねぇ!』

 

 

ドレッドエッジが大剣を振り回すと、飛ぶ斬撃が

砂を巻き上げながらガンマンに襲い掛かる!

 

 

「一つ、俺のコードネームはトゥームストーンだ。

馬の骨という呼び方は適切ではない……」

 

 

トゥームストーンと名乗る男は砂を纏った真空波を

二挺拳銃で全て撃ち落とし、リロードしながら

砂嵐の中心に飛び込む!

 

 

『そこだ!』

 

 

ドレッドエッジは防塵ゴーグルを装着している為、

砂嵐が原因で視界不良に悩まされる事はない。

素早い上段でトゥームストーンを仕留めにかかる!

 

 

ズバァンッ!

 

 

剣には確かな手応えがあり、鮮血が飛び散った。

だが次の瞬間、ドレッドエッジの首が投げ縄めいた

形状の鋼鉄製ワイヤーで締め付けられる!

先程飛んで来たのは仲間の小間使いの死体であり、

トゥームストーンは彼の側面を取っていたのだ!

 

 

『うぐぅ……!』

 

 

「二つ、俺はリボルバーだけで戦う訳じゃない。」

 

 

『ウギィンドグワァッヅァァッ!』

 

 

ドレッドエッジの指先から真空波が発射され、

強靭極まりない鋼鉄製のワイヤーが切断される!

並の冒険者なら首を落とされていただろうが、

目の前の男は武闘派の高ランク冒険者なのだ。

 

 

「まだ俺は砂漠に埋まっていないようだな。」

 

 

『グゾォ……ッ!』

 

 

二つの拳銃を器用にジャグリングしながら、

トゥームストーンは鉄仮面の奥で目を光らせる……

所作には余裕が見られるが、そこに油断はない。

 

 

『テメェ、もう楽に死ねると思うなよ……!』

 

 

「よく吠える負け犬だな、さっさと来い。」

 

 

ここで、ドレッドエッジの怒りが頂点に達した。

大剣に最大出力の風魔法を纏わせ、この一帯を

トゥームストーン諸共、丸ごと吹き飛して

溜まったストレスを解消する事を決意したのだ。

 

 

『ハハッ、ハハハッ、ハハハハハハハァ!!

もう終わりだ、積荷もテメェも、この砂漠もな!

俺が全部、一撃で叩き潰してやる!』

 

 

ドレッドエッジの言葉に嘘偽りは全く無かった。

彼の凄まじい気迫で辺りの砂や草が巻き上がり、

全身から緑色のオーラを放っている……

風圧のバリアで飛び道具を防ぎ、必殺の一撃を

叩き込んで致命傷を与えて殺す。

 

彼は今まで、何度もそうして強敵を破ったのだ。

 

 

 

「シュー……」

 

 

トゥームストーンは帽子を押さえながら構え、

毒蛇の威嚇によく似た恐ろしい呼吸音と共に

ドレッドエッジを正面から睨みつけた。

 

目の前をダンブルウィードが通り過ぎた瞬間、

ドレッドエッジが目にも留まらぬスピードで動き

トゥームストーンに斬り掛かる!

 

 

『イイィッ……ヤアァァァァァァッ!!』

 

 

トゥームストーンは一挺の拳銃を両手で構えると

トリガーを引いたまま撃鉄を滑るように上下させ、

0.1秒未満の速さで弾丸を一気に八連射する!

ファニングと呼ばれる射撃の技術だが、彼のそれは

冒険者の剣戟にも迫る音速の領域にあった。

 

 

 

ズドッ、ドォン!!

 

 

『死ねぇ!』

 

 

充分に間合いを詰めてから放った渾身の一撃……

仮に当たっていれば、トゥームストーンにも

無視出来ない大ダメージを与えていただろう。

だがそうはならなかった。

 

 

『うげ……!』

 

 

同じ箇所に八発もの銃弾を浴びた事により

ドレッドエッジの大剣はへし折れ、間合いが

およそ半分ほどに縮んでいたのだ……

無論、トゥームストーンは全くの無傷である。

 

 

ズドドドォッ!

 

 

集中が切れ、風圧のバリアが弱まった隙を突いて

両膝に二発ずつ弾丸が叩き込まれる。冒険者に

とって鉛玉を避けるのは容易い……しかし、

剣の重心が変わった事、必殺の一撃で精神力を

消耗していた事で接近を許してしまったのだ。

 

 

『ぎゃあッ……!』

 

 

うつ伏せに倒れ込むドレッドエッジの後頭部に

赤熱した銃口が突きつけられ、煙が上がる。

 

 

「三つ、この銃は最新技術と大金をつぎ込んで

作り上げたオーダーメイドだ、骨董品じゃない。」

 

 

『参った、降参だ……何でも話すから』

 

 

ズドォンッ!

 

 

ドレッドエッジは頭の中身を吐き出して死んだ。

トゥームストーンは赤く染まった銃身を眺めて

がっかりしたような溜め息を吐く。

 

 

「……これのようだな。」

 

 

トゥームストーンは靴に付着したピンクと赤の

半固形を砂で拭いながら、ばら撒かれた貨物の

一つにゆっくりと近づき、曲がった針金を

コンテナの鍵穴に突き刺して何度か動かす。

 

 

「開いた」

 

 

ピッキングが成功した瞬間、コンテナの中から

ボロ布を纏った10代前半の少年が飛び出し

手にした髪留めでトゥームストーンに襲い掛かる!

 

 

『ブチ殺してやる!!』

 

 

「落ち着け……と言っても無理な話ではあるな。

君には申し訳ないが、少し頭を冷やして貰おう。」

 

 

トゥームストーンは髪留めの刺突を瞬間移動めいた

不可解な速度で躱すと手首を掴んで投げ飛ばし、

地面に叩きつけて手錠をはめた。

 

 

「この辺りの先住者……ダークエルフだったか?」

 

 

『離せよ、このホモ野郎!』

 

 

「………成程」

 

 

彼は少年から離れると髪留めを拾って鞄にしまい、

手錠の鍵を目の前に落とした。

 

 

『あ!?何のつもりだよ!』

 

 

トゥームストーンは膝を砕かれ、頭部に風穴の空いた

ドレッドエッジの亡骸を少年に見せた。その次は

真っ二つになった小間使い、喉を射抜かれた御者を

少年に見せ、目の前で彼らの首を切断した。

 

 

「見ての通り、コイツらは死んだ。」

 

 

『うぅ……オエエエェェェェッ!』

 

 

少年は青白い何かが混ざった胃液をぶち撒ける……

目の前で人が死んだら、普通はこうなるのだ。

 

 

「……腹が減っても、変なものは食うなよ。

俺が軍隊にいた頃はそれで大勢死んだからな。」

 

 

『アンタ、いきなり何てモン見せるんだ……

殺すにしてもギロチンじゃなくて縛り首だろ!?

あと大人なら何食わされたか察しろ!』

 

 

「俺が子供の頃はまだ斬首刑が主流だった。」

 

 

『うぅ!今度は自分のゲロの臭いで吐きそうだ……

兄ちゃん、さっさとこの手錠外してくれよ!』

 

 

「分かった。」

 

 

彼は手錠の鍵を工具で切断し、少年を解放した。

 

 

「熱はないようだな。どこか痛む所はないか?」

 

 

『いや……アンタ何者?』

 

 

「トゥームストーン、探偵だ。」

 

 

彼は葡萄のジュースが入った水筒を開けると

積荷のクリスタルグラスに注いで自分が飲んだ後

別のグラスにもジュースを注ぎ、少年に渡した。

 

 

『あぁ……なんか悪いな、色々と。』

 

 

「気にするな。」

 

 

『トゥームストーンの旦那は誰を助けに来たんだ?

俺は身なし子だから目当ての人間じゃないだろ。』

 

 

「……依頼の詳細は明かさないようにしているが、

少なくとも君を見捨てる事はない。」

 

 

『俺にも何か手伝える事はないか?』

 

 

トゥームストーンは少年の目を睨むように覗き込み、

頬杖をついたまま押し黙った。

 

 

「……復讐をしたいようだな。」

 

 

『あぁそうだ、奴等には散々こき使われた!

今も酷い目に遭わされてる仲間が大勢いるんだ!

奴等のケツに火の矢を撃ち込んでやりたい!』

 

 

「よく言った、少し訓練をしよう。」

 

 

トゥームストーンはホルスターから拳銃を抜き、

撃鉄を起こした状態で少年に渡した。

 

 

「名前はあるか?聞いておきたい。」

 

 

『…………カウアだ。』

 

 

「カウア、復讐とは痛みが伴うものだが

真の男はその痛みすら力に変えてしまう……」

 

 

男はサボテンに激突して骨の折れた馬を引きずり、

モーガンの目の前に置いた。馬は抵抗せず、痛みに

耐えようと息を荒げるのみだ……

 

 

「君がいると分かっていたなら、御者を殺しは

しなかったのだが……馬でも問題ないだろう。

狩りをした事はあるか?」

 

 

『まだだ……俺は成人の儀を迎える前に捕まって、

ずっとカウボーイズの奴隷だった。』

 

 

馬はカウアの目をじっと見ている。

つぶらな目だったが、その感情は読めない……

ジェームズは熱い銃口を馬の頭蓋に向ける。

少年の額から、滝のように汗が滴り落ちる。

 

 

「物言わぬ獣で躊躇うようなら、復讐は諦めろ。

責めはしない……これは資質の問題だからな。」

 

 

『…………やってやる!』

 

 

彼は震える手をもう片方で握り、引き金を引いた。

 

 

ズドォン!

 

 

馬に弾が当たる事はなかった……馬に当たる直前に

トゥームストーンが撃ち落としたからだ。

 

 

「よくやった……最初のうちは勢い任せで良い、

だが今の葛藤を絶対に忘れない事だ。」

 

 

『あぁ、精霊に誓う。』

 

 

「これはまだ使えそうだな、良い馬車のようだ。」

 

 

彼は横転した馬車を蹴って立たせると傷ついた馬を

馬車の荷台に固定し、自分の馬を繋いで走らせた。

 

 

「近くの街で宿を探して休もう、何が食いたい?

あんな目に遭ったのだ……気を紛わす必要がある。」

 

 

トゥームストーンは空のグラスに葡萄のジュースを

満杯まで注いで目の前に置き、飲むように促した。

 

 

『唐辛子とハーブを使った料理なら何でも良い……

俺が生まれた村では良く食べてたんだ。

いい所だったんだが、アイツらに支配されてからは

無断での狩りや儀式も禁止されて……謀反も考えた

けど、鉄やミスリルの武器には刃が立たないよ。』

 

 

「この辺りも数年前までは未開の地だった。

激しい戦火で森が焼かれ、豊かな資源が見つかると

我々自治領の軍人は君達の迷惑を顧みず、この地を

支配しようと横暴を働いた……戦後は政治家達の

尽力によって軍は引き上げたが、今度は無法者の

カウボーイズ達が君達を虐げている。」

 

 

『待った!旦那は耳が尖ってないのに自治領の

軍隊に入って、同胞と戦ったのか?あそこは

エルフや蟲人、獣人が支配してるんじゃ……』

 

 

「お前のように家族を失った後、行くあてもなく

一人旅をしていた所を自治領の役人に拾われてな。

恩義もあるし、向こうはこちらを信頼していた。

誰かに裏切られるよりはマシな死に方だと思ったし

お陰で責任ある役職にもつけた。」

 

 

『じゃあどうして辞めたんだ?』

 

 

「国や都市同士での大きな争いが無くなって、軍は

力を蓄える時期に入った。仲間を率いる才もなく、

ただ強いだけの兵士というのは不要になったのだ。

復帰すべき時が来るのかも知れんが、今は違う。」

 

 

『難しい話だな……眠くなって来た。』

 

 

「到着まで時間がある、少し寝ておけ。」

 

 

彼は積荷から毛布を取り出し、カウアに渡した。

少年は安心した様子で目を閉じると、その意識を

いとも簡単に手放してしまった。

 

 

「サキュバスの睡眠毒、恐ろしい程の即効性だ。」

 

 

彼は客室の外に出て、右手で馬の手綱を握り……

ホルスターから拳銃を抜いた。

 

 

「やはり一筋縄では行かないか、カウボーイズ。」

 

 

複数人の無法者たちがトゥームストーン達の馬車に

接近している……リーダーらしき木の仮面を被った

黒い縦縞スーツの冒険者はかなりの手練れだろう。

 

 

『そこの鉄仮面、今すぐ武器を捨てて降伏しろ!

我がボスは貴様を無条件で幹部待遇にするとの事、

大人しく人質共々』

 

 

ズドォンッ!

 

 

冒険者の女が拡声器を持って降伏を促すが、

返って来たのは銃声である……彼女の隣にいた

無法者が眉間を撃ち抜かれて即死、落馬したのを

見て彼女は戦慄する。

 

 

(何だあの男は!?我々と奴の距離は少なくとも

300メートル以上……あの不安定な馬上から、

風向きまで把握して拳銃で正確な狙撃を……)

 

 

『スティールパイソン様、奴は一体!?』

 

 

『気を引き締めろ、あの男は只者ではない……

生け捕りにするのはやめだ、ここで倒す。

盾で飛び道具を防ぎながら接近し一気に叩け!』

 

 

『了解!』

 

 

スティールパイソンと呼ばれた冒険者は鞭を振るい

トゥームストーンの正確無比な射撃を弾き返すと、

弾丸の雨から味方を庇いつつ敵との距離を詰める!

 

 

「ゴールディ、先に街で待機しておけ。」

 

 

『ブルルルッ……!』

 

 

馬は大きく頷いて彼が馬車から飛び降りるのを

確認すると、一気に加速して街へと向かった。

 

 

「生きろよ、二人とも……」

 

 

トゥームストーンは背中に固定していた鉈を

抜き放つと同時に、無法者たちへ襲い掛かる!

 

 

『奴め……馬車の殿をするつもりで』

 

 

双眼鏡を覗き込んだまま無法者が叫ぶが、

トゥームストーンが飛ばした真空波によって

馬ごと叩き斬られ出血多量で昏倒!

スティールパイソンも鞭を振り回して敵に

鋭い反撃を見舞う!

 

 

『死ねぇ!』

 

 

振り下ろされる鋼の鞭は、鉄製の鎧兜程度なら

容易く両断してしまう程の硬度とスピードだ!

トゥームストーンは地面を転がって鞭を躱し、

無法者達の放つ魔法やクロスボウを避けながら

煙玉を地面に叩きつけて岩陰へ逃れる!

 

 

ズドォ、ドドォン!ズドォン!

 

 

三回に分けての素早いファニングが放たれ、

弾を受けた無法者達が次々と倒れていく……

 

 

『馬鹿め……そこだ!』

 

 

スティールパイソンの鋼鉄鞭が一直線に伸び、

巨岩を貫きながらトゥームストーンの肩を掠める!

致命傷は免れたが凄まじい衝撃で右肩が脱臼し、

大きく吹き飛ばされて深い切り傷を負った。

 

 

「……やるな。」

 

 

外れた肩の関節を無理矢理に戻し、赤熱する銃身で

裂傷を焼き潰しながらトゥームストーンが呟く。

 

 

『岩越しとはいえ、鉄魔法で強化された私の鞭でも

その程度のダメージで済むとはな……何者だ?』

 

 

「トゥームストーンだ。」

 

 

『ハッ!墓標に名前を刻む時に難儀しそうだな……

そうならんよう、ハゲワシの餌にしてやる。』

 

 

スティールパイソンは毒の入った瓶を放り投げ、

手にした鋼の鞭で打ちつけて叩き割る!

 

 

『踊れ!』

 

 

「……性格の悪い女とは踊らない事にしている。」

 

 

トゥームストーンは薙ぎ払うように振るわれる

鋼の乱打を跳躍して回避し、鞭を伸ばした

追撃の突きを鉈で弾いて敵に飛び掛かる!

 

 

「死ね」

 

 

『ちぃッ……!』

 

 

避けられない。

 

スティールパイソンがそう察した時には

既に手遅れだった……上空に蹴り上げられ、

反撃しようと鞭を構えるが無駄だ。

 

 

「シャオッ!」

 

 

下腹に踵落としを食らい、地面に墜落した

痛みで悶絶する間もなく鉈が振り下ろされる。

 

 

『ぐあぁぁッ!!』

 

 

左腕を斬り落とされ、スティールパイソンは

苦悶する。何とか急所は避ける事が出来たが、

このままでは敗北は必至……鉄魔法で血液中の

金属を固めて止血するが、かなりの劣勢だ。

 

 

『ここが命の張り所よなぁ!』

 

 

スティールパイソンは己を鼓舞するように絶叫し

地面ごとトゥームストーンを叩き斬った!

真空波を伴い、防御の上から敵をよろめかせる

渾身の一撃が命中しトゥームストーンが姿勢を

大きく崩す!

 

 

「貴様ほどの腕で、何故だ……?」

 

 

『お前は知らなくて良い、死んでくれ!!』

 

 

激しい乱打を受け、トゥームストーンの全身に

無数の切り傷が刻まれ、傷口から真っ黒な血が

大量に滲み出す。

 

 

「まぁ良い、裁くか否かはあの子が決める事だ。」

 

 

『うぅっ……!?』

 

 

トゥームストーンは鞭の嵐を突っ切って彼女の

目の前まで踏み込んでいた。彼は銃身で敵を

突き刺すように殴りつけ、引き金を引いて

スティールパイソンを吹き飛ばす。

 

 

ズッパァン!

 

 

『敵わんな……私の負けか。』

 

 

内臓に甚大な被害を負ったスティールパイソンは

激しく吐血し、膝をついて腰のダイナマイトに

点火しようとする……ここで自らの口を封じ、

あわよくば敵を道連れにする算段なのだ。

 

 

「馬鹿め、死んだら殺せないだろう……?」

 

 

しかし、トゥームストーンは敵を倒した程度で

気を抜くような男ではない……背中に下げた

ウーツ鋼のククリナイフを投げ、彼女の右腕を

峰で打ちつけて爆殺を阻止し、ダイナマイトを

地平線の向こうまで蹴り飛ばしてしまった。

 

 

「素早い判断だな、流石は西部有数の凶悪な

無法者集団……幹部も手練れが揃っている。」

 

 

『この私が、こうも手玉に取られるか……!』

 

 

この男は命乞いや騙し討ちに引っ掛かるような

ミスはしない……相当に人を殺し慣れた男だ。

彼女には分かる、分かってしまう……

 

 

『ハハハッ……やはり、殺すのか。』

 

 

「それは私が決める事ではない。」

 

 

トゥームストーンはリボルバーのグリップ部分で

スティールパイソンの後頭部を殴って気絶させ、

彼女を担ぎ上げて街へと走った。

 

 

 

 

 

ー1時間後ー

 

 

 

 

「さて、ここで落ち合う予定だが……」

 

 

トゥームストーンはハーモニカを演奏して

愛馬ゴールディの好きな曲を演奏する。

 

 

『イギーッヒヒヒヒヒン!』

 

 

「よし、カウアは馬車の中だな……

コイツも見張っておけ、悪いが頼んだぞ。」

 

 

トゥームストーンは縛り上げた敵の冒険者を

革袋に詰め、細い鎖で巻いて馬車に放り込む。

 

 

『ブルルルッ……』

 

 

ゴールディは首を縦に振り、トゥームストーンの

持っているサボテンの実を幾つか受け取ると

黄色い中心部だけを食べ、外側と種を吐き出した。

 

 

「首を換金して、少し飲んで来る。」

 

 

サボテンの実を齧るのに夢中になっている愛馬を

尻目に、男は街の中央へと歩き出した。

 

 

 

 

 

大衆酒場(サルーン)「ホワイトマンモス」ー

 

 

 

 

「お邪魔する……」

 

 

トゥームストーンはスイングドアを開け、

広々としたカウンターに腰掛ける……

 

 

『コーヒーは品切れだ……申し訳ない。』

 

 

スキンヘッドに赤銅色の眼鏡が特徴的な

壮年の店主が、水晶グラスを磨きながら呟いた。

 

 

「では瓶のミルクを二つ……」

 

 

『はいよ。』

 

 

店主はよく冷えたミルクの瓶を二本取り出し、

トゥームストーンの目の前に置いた。

 

 

「ありがとう……」

 

 

『おい坊や、店を間違えたようだな!』

 

 

『ガッハハハハハハ!違いねぇ!』

 

 

常連らしい客二人が彼を指差して嘲笑するが、

トゥームストーンは意に介さずミルクの瓶を開け

一息で飲み干した……

 

 

『おいガキ、何とか言ったらどうなんだ!?

兄貴が折角話しかけて下さったんだぞぉ?』

 

 

『おい、やめないか!済まないな兄さん、

コイツらのせいで』

 

 

「良いんだ、どの道もう帰る……」

 

 

彼は鉄貨をカウンターに数枚置いてサルーンを

後にしようと席を立つが、先ほどの二人組が

トゥームストーンを妨害する。

 

 

『毛無し猿のガキめ、この俺がカウボーイズの

幹部候補だと知っての狼藉かァッ!?』

 

 

「お前らが仮にSランク冒険者だろうが、

俺の知った事ではない……さっさと消えろ。」

 

 

『もう我慢ならん、殺してやる!』

 

 

男がナイフを振り上げた瞬間、彼の拳が唸り

倒れた男の顔がカウンターに押し付けられる。

トゥームストーンは拳銃を抜いて男の目の前で

撃鉄を起こし、何度かスピンさせた。

 

 

「口を開けろ、早くしないと撃つ」

 

 

男が渋々口を開けると彼はペンチを取り出して

男の金歯を二本抜いた後、更に前歯を五本抜いた。

 

 

『ひぎゃああぁぁぁっ!?』

 

 

「黙れ」

 

 

トゥームストーンは暴漢を空き瓶で殴りつけて

黙らせると、奪った金歯の大きさを確認して

小さい方を指で弾く。

 

 

「……お前もやるか?」

 

 

『ひぃ!?やらない、やらないぞ、俺は!』

 

 

トゥームストーンが睨みを効かせると

弟分らしい小柄な男は転びそうになりながら

仲間を置いてサルーンから逃げ出した。

 

 

「迷惑料だ、取っておいてくれ。」

 

 

トゥームストーンは引き抜いた金歯を拭うと、

布で包んで店主へ投げ渡した。

 

 

『こんな石コロがあの無法者共を呼び寄せた、

平和に暮らしていた皆を傷つける奴等をな。』

 

 

「………俺は、カウボーイズ(そいつら)を殺しに来た。」

 

 

『冗談はよせ!前にAランクの冒険者が返り討ちに

されて、奴等はギルドすら全く恐れなくなった……

兄さんが幾ら強くても、向こうは腕利きの用心棒を

何人も抱えてるんだ、勝てっこない!』

 

 

 

店の中に怒った蜂が入り込み、天井を飛び回って

トゥームストーンに狙いを定めた。

 

 

『危ないな、虫除けの草を持って来るよ。』

 

 

「成程、随分と高く買っているようだが……」

 

 

彼は周囲を飛び回る蜂を睨みつけると、蜂は

恐怖とストレスによって無傷のまま気絶した。

 

 

「奴等に”コレ”は出来るのか?」

 

 

店主は危うく腰を抜かしそうになったが、

この男は見境なく殺すような人間ではないと

思い直し、改めて彼の実力に感心した。

 

 

『無理だろうな……疑った詫びに一杯奢るよ。』

 

 

「ありがとう、ワインはあるだろうか?」

 

 

『あぁ、カウボーイズの奴等には出さないが、

兄さんなら違いが分かるかも知れない。』

 

 

店主は彫刻のような形状をした紫色の酒瓶を

カウンターの裏側から取り出し、青い中身を

大きめのグラスに注いだ。

 

 

「デミゴルゴア産の夜光苺の香り……

昔の仲間がよく食べていた、懐かしい。」

 

 

トゥームストーンは少し寂しそうに呟き、

時間をかけてグラスの中を空にした後

包帯に覆われた口元を歪めた。

 

 

「……ありがとう、美味かった。」

 

 

彼は静かにスイングドアを開け、

ホワイトマンモスの看板を眺めてから

その場を立ち去った。

 

 

 

ー30分後ー

 

 

 

トゥームストーンは憲兵隊の詰所で首を

金貨に替えた後、肉屋で塩豚とドライベリー

ペミカンを幾つか買うと雑貨屋へ向かい、

ここでも胡椒と唐辛子を二袋ずつ購入した後

野菜やパンを奪った積荷と交換した。

 

 

「カウアは……まだ寝ているだろうな。」

 

 

彼は通行の邪魔にならない荒野の真ん中で

枯れ木を集めて火を起こし、日傘の骨で

作られた焚き火台を組み立てて鍋を置く。

 

 

「……………」

 

 

彼は折り畳みの椅子に腰掛け、出汁汁と塩豚、

豆の缶詰、唐辛子、胡椒と臓物、トマト缶を

乱雑に鍋へ放り込む。

 

ナイフで素早くタマネギを刻み、

別の鍋で炒めた挽肉と一緒に数分待ってから

鍋に加え、チリソースで味を整える。

 

 

「……問題ないな。」

 

 

トゥームストーンは念入りに味見をした後

トウモロコシの入った固いパンを軽く炙り、

ブリキの皿に乗せると馬車の客室に入って

カウアを起こした。

 

 

「腹が減っただろう……夕餉にしないか?」

 

 

『……うん。』

 

 

カウアとトゥームストーン、ゴールディは

焚き火を囲んで食事を始めた。

 

 

「辛すぎないか?」

 

 

『大丈夫だって、俺辛いの好きだし!』

 

 

「それは良かった。」

 

 

トゥームストーンは使い終わった皿を砂で洗い、

ゴールディにタマネギを抜いた料理をあげた。

 

 

『あぁ美味かった……本当にありがとな!』

 

 

「日が沈めばカウボーイズ達が来るだろう、

今日は信頼のおける宿屋で早めに休むぞ。」

 

 

『おう!』

 

 

 

 

 

 

 

ー魔術道具店「バッズ・ネスト11号店」ー

 

 

 

トゥームストーンは窓のない黒鉄のドアを開け、

防音性に優れた竜の革袋にカウアを押し込むと

カウンターの呼び鈴を三回鳴らした。

 

 

 

『いらっしゃいませ。』

 

 

黒い覆面をした男性がトゥームストーンを出迎え、

胸のポケットから羊皮紙のメモ帳を取り出す。

 

 

「ロック鳥の羽ペンを半ダースと白いインクを。」

 

 

彼はそう言って、紋章が刻まれた指輪を見せた。

 

 

『……ご要望は?』

 

 

「嗅覚が鋭いのを一人お願いしたい……他は

そちらに任せるが、子供好きの方が良いな。」

 

 

トゥームストーンはカウアが着ていた襤褸と

研がれた翡翠の髪留め、体液の入った小瓶を

男性に渡す……

 

 

『えぇ、そのようです……これだけ揃っていれば

早くて半日で特定出来るでしょう。支払いは?』

 

 

「……コインで頼む。」

 

 

男は山羊の角が刻印されたコインを三枚置き、

チップとして鉄貨を一枚追加で支払った。

 

 

『他に必要なものはありますでしょうか?』

 

 

「投げ鉈を1ダースと、22口径弾を7箱くれ。

後は……マグネシウム粉末とスライムの包帯、

それから骨接ぎ液も二人分欲しい。」

 

 

『では会員価格で銀貨15枚になります。』

 

 

「ありがとう……部屋は空いているか?」

 

 

『えぇ、二人部屋はすぐにお通し出来ます。

ルームサービスを受けて頂くと割引になりますが

そちらは如何致しますか?』

 

 

「連れはまだ子供だ、遠慮しておくよ。」

 

 

『かしこまりました……では視聴室に。』

 

 

トゥームストーン達が魔法レコード視聴室の

扉を締め切って音楽を聴き始めたのを確認すると

男性はボタンを押し、エレベーターを起動した。

 

 

 

 

ブオォォォォォッ………チーン!

 

 

 

エレベーターから降りると、扉が三つ並んだ廊下が

彼らを出迎えた……トゥームストーンのすぐ隣を

二人組のサキュバスが通り過ぎる。

 

 

『キミがアウトキャスト君?』

 

 

「いや、俺はトゥームストーンだ。」

 

 

『ゴメンゴメン、人違いだったわ!』

 

 

「大丈夫だ、失礼する……」

 

 

互いに軽く会釈して別れると、トゥームストーンは

渡された13号室の鍵を開けて中に入った。

 

 

『もう出て良いか?』

 

 

「あぁ、よく頑張ったな……」

 

 

『ここが旦那の秘密基地って訳か?』

 

 

「まぁ……追手を撒くには最適な場所だ。」

 

 

『で、この革袋の中身は何よ?』

 

 

カウアはトゥームストーンが背負っている、

蠢く何かが入った革袋を指差した。

 

 

「今出すから安心しろ……」

 

 

彼が結び目を解いた瞬間、スティールパイソンが

息を荒げながら革袋の中から飛び出す。

 

 

『し、死ぬかと思った……!』

 

 

「やはり冒険者は頑丈だな。」

 

 

『くっ……殺せ!』

 

 

「そう焦るな、すぐに殺してやる。」

 

 

トゥームストーンはスティールパイソンの仮面を

剥ぎ取り、その素顔をカウアに見せる……

彼女の種族はカウアと同じダークエルフであり、

身体には南部の先住民族と同じ刺青があった。

 

 

「集落を守る為にカウボーイズに身売りし、

近隣の友好部族を苦しめていたという訳だ……

自分たちだけが助かろうとしたのだ、コイツは!」

 

 

トゥームストーンは折り畳みナイフをカウアに渡し、

手足を縛り付けたスティールパイソンを突き出して

本人の手で斬り殺せるようにした。

 

 

『少年、許しは請わない……好きにしろ。』

 

 

「どうだカウア……当の本人もこう言っているぞ?

それで殺す前に少し楽しんでも罰は当たるまい……

だからこそ、この場所を選んだのだ。」

 

 

『うぅ、俺は……』

 

 

「そうだ、お前がされた事をやり返したらどうだ?

こんなクズ、何しても咎める奴なんかいない!」

 

 

『もう俺は迷わない……俺は、復讐がしたい!』

 

 

カウアはナイフを握り……地面に投げ捨てた。

 

 

『旦那、これは復讐じゃねぇ!この姉ちゃんも

カウボーイズがいなければ裏切らなかった……

悪いのはカウボーイズだ!』

 

 

トゥームストーンはナイフが地面に落ちる前に

拾い上げると、カウアの目を睨んだ。

 

 

『大体、同じ被害者で争うなんておかしいぜ。

誰を殺すかは俺に選ばせろよな!』

 

 

「………では最後にテストをしよう。」

 

 

彼はリボルバーを素早く抜き放ち、一切の躊躇なく

撃鉄を起こして引き金に指をかけた。

 

 

「死ね」

 

 

『うわ、危ねぇ!』

 

 

ズドォンッ!

 

 

カウアはスティールパイソンを庇っていた……

彼女が憎くないと言えば嘘になるが、迷うなら

庇った方が良いと判断したのだ。

 

 

「……臆病者の言い逃れではないようだな。」

 

 

リボルバーは空砲だった。

トゥームストーンは飛び出したカウアを起こすと、

服を軽く叩いて埃を払う……

 

 

「試すような真似をしてすまなかった……だが

生半可な覚悟で復讐をすれば必ず後悔する、

お前を悲しませたくはなかった。」

 

 

『なぁ……旦那も誰かに復讐したのか?』

 

 

「……そうだ。」

 

 

『その事を後悔してる?』

 

 

「俺は、長年標的を追いかけて殺し続ける内に

いつしか復讐を永遠に続ける事を望んでいた……

全て終えた後、目的を失う覚悟がなかったのだ。

差し伸べられた手に気がつく事すらなく、

ただ支配して殺す事が目的になっていた。」

 

 

『俺は……覚悟が出来たのかな?

旦那みたいにずっと技を鍛えて来た訳でもないし

人を殺した事だって、一度もない……』

 

 

「お前はすでに全てを失う覚悟が出来ている。

覚悟を以て行った行動には、必ず結果が伴う……」

 

 

『勝てると思っているのか、カウボーイズに。』

 

 

スティールパイソンが絞り出すように声を上げる。

恐怖と希望が入り混じった声だった。

 

 

『支部に常駐する三幹部の中でも私は中位……

私と同等の相手があと二人もいる上、リーダーの

カウボーイは嘗てSランクとも渡り合った程の

手練れ……その実力は今も健在だ。』

 

 

「……やるしかあるまい。」

 

 

『仲間も無しに、殺されてしまうぞ!』

 

 

「俺の目の前にはAランク級の実力者が一人、

そしてお前の目の前にはそれを倒せる男が一人……

意味が分かるか?お前がしくじったのがバレるのも

時間の問題だ……俺たちと手を組め。」

 

 

『……せめて、先祖に誇れる死に方をするか!』

 

 

彼女はトゥームストーンが差し出した手を取り、

固く握手を交わした。

 

 

『む……!』

 

 

スティールパイソンは低く唸り、身震いした……

彼の手は獣の悪霊のように冷たく病んでおり、

ウェンディゴめいて禍々しい覇気が宿っている。

 

彼女は呪術師(シャーマン)の一族の長として

研鑽を積んで来た為、非常に第六感が強い。故に

トゥームストーンの内面に悍ましい何かを

感じずにはいられなかった。

 

 

 

「覗き過ぎだ……それ以上は井戸に落ちるぞ。」

 

 

『そうだな……すまなかった。』

 

 

「今日はもう遅い、早く寝るべきだ……

明日にでもカウボーイズの基地に攻め込む。」

 

 

 

 

ー翌日ー

 

 

 

『お待たせ致しました、約束のものです。』

 

 

トゥームストーンは代金を支払い、男性から地図を

受け取る……

 

 

「あぁ、今週はここにいるのか。」

 

 

『えぇ、我々の見立てでは近いうちに飛ぶ筈……

少数精鋭で迅速に決着をつけるべきでしょう。』

 

 

「ではそうさせて貰おう……助かった。」

 

 

『またのお越しを……』

 

 

トゥームストーンは竜の革袋を二つ引きずり、

バッズ・ネストを後にした。

 

 

『おかえり!』

 

 

青ざめた肌の巨大な馬が彼を出迎える。

 

 

「馬鹿者、人間の言葉で話すのはよせ……

特に治安の悪い所ではな。」

 

 

『うぅ……ごめん。』

 

 

「よし、朝飯を食いに行こう。」

 

 

トゥームストーンはゴールディの手綱を握り、

腹を足先でつついて素早く走らせた。

 

 

 

 

 

ー1時間後ー

 

 

 

「さて、地図ではこの辺りに奴等の大型拠点が

あるようだが……何か仕掛けがあるのか?」

 

 

『済まないが私にも分からん……カウボーイは

最高幹部にも秘密の隠れ場所を幾つか持っていて、

そこで議員や貴族のような太客を接待するのだ。』

 

 

「地下でオークションでもやっているのか……?

ともかく、簡単なチェックをしてみよう。」

 

 

『おい、迂闊な真似をしてはいけないぞ……!』

 

 

『何をするつもりだか知らないが、旦那の事だ……

きっとものすごい作戦を練ってるに違いな』

 

 

「少し離れておけ。」

 

 

トゥームストーンは上空100m近くまで跳躍し、

飛行機雲めいて激しい砂煙を巻き上げながら

地上に照準を定め、撃鉄を激しく上下させて

連続で発砲した!

 

 

 

竜の急襲(ドラグーンレイド)!」

 

 

彼がそう叫ぶや否や、弾丸が真っ赤な爆炎を纏い

着弾地点を火の海へと変える!

マグネシウムの発火現象と竜のブレス攻撃の原理を

高度に組み合わせた、最新の小型焼夷弾である!

 

真っ赤に焼けた地面に金属らしき性質を認めた

トゥームストーンは、更に空中で脚を突き出し......

 

 

ズドッ......ギャアァァァァンッ!!

 

 

小惑星の落下と見紛う程の威力で天井を蹴破り、

地下のアジトへ難なく侵入を果たしたのだ。

 

 

「……ビンゴ。」

 

 

『なんだ、あれ……隕石?』

 

 

『ともかく、トゥームストーン殿が強いのは確か!

我々もこの機に乗じて押し通るぞ!』

 

 

『あ、あぁ……旦那の足は引っ張れねぇ!』

 

 

 

『侵入者sy』

 

 

「黙れ」

 

 

トゥームストーンに蹴られたギャングの一人が

壁に叩きつけられ、赤い染みになった。

 

 

「この通路から別れて動く、何かあれば呼べ。」

 

 

騒ぎを聞きつけたギャングの腕を鉈で斬り飛ばし、

銃で脳天を撃ち抜きながら、トゥームストーンは

基地の奥へと向かってゆく。

 

 

「カウア、お前はスティールパイソンに同行し

出口を見つけ次第塞いで欲しい……俺は

カウボーイズの幹部を殺しに行く。」

 

 

『分かった!』

 

 

「行け、そして必ず生きて帰れ。」

 

 

向かって来るギャングの肝臓を抉り出し、

背後から迫る敵の頭を投げ鉈で叩き割る!

 

 

「クズの臭いがする……こちらだな。」

 

 

『本日最大の出物、デーモン族の少女だ!

歳は12歳、魔界国デミゴルゴア出身……

やや反抗的ですが、屈服させた時の表情は

皆さんの嗜虐心を大いに刺激致します!』

 

 

『金貨50枚で買おう……養子にしたい。』

 

 

裕福そうな体格の良い初老の男性が挙手し、

懐から金貨の袋を取り出した。

 

 

『素晴らしい!神父様、良い買いっぷりで』

 

 

ズギャオンッ!!

 

 

司会者が大量の鮮血と脳漿を撒き散らして斃れ、

富裕層らしき客の悲鳴が上がる。

 

 

「神に仕える者が、このような悪行を……

私には聖オイフェの啜り泣きが聞こえるぞ。」

 

 

『皆さん落ち着いて下さい、余興が増えただけ……

今から私が華麗なる殺戮ショーをお見せします、

どうか席に戻って下さい。』

 

 

天井が開き、長身痩躯のスーツを着た冒険者が

防弾ガラスのシャッターが降ると観客の拍手が

割れんばかりに鳴り響く……どうやら以前も

侵入者を返り討ちにした事があるようだ。

 

 

『失礼、申し遅れました……私めの名前は

レッドマジシャン……この競売会場の警備を

一任されている者です。』

 

 

レッドマジシャンの杖に取り付けられた宝玉が

真っ赤な火炎を纏い、魔法陣を映し出す。

 

 

「コードネームで能力が分かるのは三流だな。」

 

 

『面白い事を言う……お前が誰を怒らせたか、

徹底的に分からせてやる必要があるらしい!』

 

 

『ファイアボール・ジャグリング!』

 

 

火球はレッドマジシャンの周囲を回転した後、

ガトリング砲めいてトゥームストーンへ飛ぶ!

その速度は音速を凌駕する程であり、並の

冒険者であれば即座に蜂の巣と化す威力だ!

 

 

「成程、二流だったか。」

 

 

ズギャギャギャッ!!

 

 

発火する弾丸が火球のうち半分を撃ち落とし、

トゥームストーンはもう半分を飛び石代わりに

レッドマジシャンへ接近、鉈を振り下ろす!

 

 

『なっ……!?』

 

 

レッドマジシャンは重い鉈を杖で受け止めるが、

魔術に特化した詠唱杖だった為に体勢を崩す!

 

 

『ぐわ!』

 

 

脇腹に鋭い中段回し蹴りが突き刺さり、

大きく吹き飛ばされる!

 

 

『出て来い、マジックシールド!』

 

 

 

ズドォズドォズドォンッ!!

 

 

追撃に備えて半透明の防壁を幾つか出現させるが、

同一箇所に何度も銃弾を撃ち込まれ、防壁に

巨大な亀裂が走る!

 

 

「シャオォッ!!」

 

 

『馬鹿な……!?』

 

 

トゥームストーンは飛び蹴りでマジックシールドを

難なく破壊すると四つ脚の獣のような低姿勢で

大型ナイフを構え、すれ違い様に脇腹を斬り裂く!

 

 

『おい、レッドマジシャンが押されてるぞ!?』

 

 

観客席から再び悲鳴が上がる。

レッドマジシャンは以前もAランク冒険者を

返り討ちにした手練れであり、

地下闘技場でも高い順位を維持している……

そのような実力者が防戦一方に追い込まれ、

血を吐いて苦しんでいるというのか!?

 

 

 

『ぐっ……よくもやってくれたな!

その程度で俺がやられると思ったかぁッ!?』

 

 

レッドマジシャンは凄みながら振り返り、巨大な

火球をトゥームストーンに向けて発射する!

胴にウーツ鋼の板を巻いていた為、辛うじて

致命傷を免れていたのだ。その姿を見て、

観客席から黄色い歓声が上がる……

 

 

「手品師の名に恥じない人気者だな……

その調子で人体切断マジックもやって貰おうか?」

 

 

トゥームストーンは腰に下げた鉈の柄を握り、

その両目を金色に光らせた。

 

 

『……!』

 

 

彼の両目が発光した瞬間、レッドマジシャンは

反射的に幾つもの火球を放っていた。

今ここで攻撃しなければ死ぬ、そう悟ったのだ。

 

 

「良い判断だ……俺に挑んだ事を除いてだが。」

 

 

瞬間移動めいた奇妙なステップで火球を避け、

続けて放たれる火炎放射を蹴りの風圧で相殺し、

絶え間ない魔法攻撃の中を潜り抜けながら

徐々に必殺の間合いへ近付いてゆく。

 

 

『調子こいてるんじゃねぇぞ……!』

 

 

レッドマジシャンは地面に杖を突き立て、

部屋の両端に半ばプラズマ化した火柱を

幾つも発生させる……

 

 

『終わりだ!陽火球(サン・ファイアボルト)!』

 

 

トゥームストーンが身構えた次の瞬間、

レッドマジシャンが空中に描いた魔法陣から

煮えたぎる太陽めいた巨大な火球が現れ、

彼目掛けて一直線に迫る!

 

 

「コオォォォ……ッ」

 

 

彼は鉈を鞘から抜いて構え、異様な呼吸音を

発しながら自身の殺気を最大限に昂める。

 

 

斬這輪(キールハウリング)!」

 

 

トゥームストーンは一回転して斬撃を繰り出す!

鉈は小さな太陽を真っ二つに斬り裂き、更に

円形の黒い衝撃波がレッドマジシャンに飛ぶ!

 

 

『ギャアァァッ!!』

 

 

レッドマジシャンは断末魔と同時に上下に分かれ、

大量の血飛沫を上げて崩れ落ちた。

 

 

「…………………」

 

 

トゥームストーンはレッドマジシャンの脳天に

銃弾を叩き込んでトドメを刺すと、観客席を

守る防弾ガラスを飛び蹴りで叩き壊して

彼らに拳銃を向ける。

 

パニック状態になった客が我先にと出口へ殺到し、

貴族や富豪の私兵と思しき冒険者が一斉に構える。

 

 

「……数だけは揃っているな。」

 

 

トゥームストーンは血塗れの鉈を腕で拭い、

敵を威圧する。

 

 

「やれ」

 

 

鋼の鞭が閃き、切り裂かれた私兵達が一斉に

皮と肉を引きちぎられて転がる。

 

スティールパイソンが冒険者の首を片手に鞭を

構え、目の前の生き残りを打ち据えて殺した。

 

 

『こちらも一人仕留めた……気をつけろ、私が

敗れた時点でカウボーイは襲撃を見越して

護衛を増やしているようだ。三幹部とは別に

腕利きの傭兵や冒険者を何人も雇っていた。』

 

 

「やはり、一筋縄では行かないか。」

 

 

『カウボーイは強い……確実に倒したいなら、

二人で同時に奇襲を仕掛けるべきだろうな。』

 

 

「待て、向こうは襲撃に備えてトラップを

仕掛けている可能性がある……俺が先に様子を

見て、倒せるようなら一人で倒してしまおう。

お前は安全な場所で」

 

 

ズドンッ!

 

 

スティールパイソンが心臓を射抜かれ、血を吐いて

膝から崩れる……下手人は一切の殺気を漏らさず、

彼女が即死した事を察してトゥームストーンの

後頭部に銃を突きつけ、紫煙を吐き出した。

 

 

『ねぇ、ボクの仲間にならない?』

 

 

中性的な声が彼の右耳に響く……

茶色いコートと大型の革帽子を着用し、両手には

銀色に輝く無骨な自動拳銃を握った冒険者だ。

 

 

「それは命乞いか?カウボーイ。」

 

 

カウボーイと呼ばれた若い冒険者の脇腹に

鋭い痛みが走る。ガントレットから射出された

鉤爪が急所に刺さっていたらしく、彼は痛みと

激しい怒りに顔を歪め、舌舐めずりをした。

 

 

『残念だなぁ……じゃ、死んで♪』

 

 

トゥームストーンは彼が引き金を引く前に屈み、

ギリギリで銃弾を回避すると帽子を押さえながら

ゆっくりと立ち上がり、拳銃を抜き放つ。

 

 

「俺を殺してくれるのか?有難い事だ……」

 

 

次の瞬間、激しい格闘戦が展開される!

カウボーイは手にした大型の自動拳銃で肝臓を

突き、トゥームストーンが怯んだ隙を突いて

引き金を引き、ヘッドショットを狙う!

 

しかしトゥームストーンは首を逸らし、仮面で

銃弾を弾いて致命傷を回避!大型ナイフで

連続突きを繰り出し、更に銃撃で逃げ場を潰して

カウボーイを部屋の隅に追い詰めた!

 

 

『ハハハッ、まさか君もガンマンだとはねぇ!

だがオカルトじみた魔術師や冒険者に比べれば

随分と慣れたものだよ!』

 

 

カウボーイは残像が発生する程の亜光速で移動し

他方向から銃撃を放ってトゥームストーンを撹乱、

生じた隙に手榴弾を投げ込んで攻撃!

 

 

ズギャアンッ!

 

 

撃ち抜かれて爆発した手榴弾の爆風と破片を

隠れ蓑にカウボーイが接近し、タックルで

トゥームストーンを吹き飛ばす!

 

防弾ガラスを突き破って瓦礫の山にめり込んだ

トゥームストーンに自動拳銃を念入りに乱射し、

彼は自らの優勢を確信した。

 

 

「……やるな。」

 

 

『もう一度聞くよ……仲間になる気はない?』

 

 

「それは命乞いか?」

 

 

彼の真横で声がした。

 

コンマ2秒後、カウボーイは首を掴まれて地面に

叩きつけられた後、投げ飛ばされ壁にめり込んだ。

 

 

『え……』

 

 

「イヤァッ!!」

 

 

追撃のドロップキックが彼の右腕、その表皮を

無惨にも削り取り、地面に真っ赤な血が垂れる。

 

 

『痛たぁ……ッ!?』

 

 

返り血がべったりと付着した黒コートを身に纏い、

破れた帽子を被り直したトゥームストーンが

ゆっくりと顔を上げる。その白目は真っ赤に濁り、

歪んだ仮面から覗く肌は死人のように青白い。

 

 

『お前、まさか吸血k』

 

 

マガジン二つ分の銃弾を身体で浴びながら殆ど

動きが鈍らない怪物染みた耐久力と精神力、

そして異常な痩躯に見合わぬ高い身体能力……

蹴り飛ばされながら彼は分析する。

 

 

「今更気付いた所でもう遅い……!」

 

 

『それは……どうかなァ!?』

 

 

カウボーイは再び亜光速で移動し、敵の間合いを

すり抜けて至近距離まで踏み込む!

 

 

六連脚(ファニングシュート)!』

 

 

緑色の光を纏った脚でジャブめいた連撃を繰り出し

トゥームストーンを吹き飛ばした!

 

 

『耐え切れるかな?』

 

 

カウボーイは蹴りの反動で距離を引き離すと

銀の弾丸が込められたマガジンを装填し、

中距離から一方的に銃弾を叩き込む!

 

 

「コォォ……」

 

 

トゥームストーンは二挺のリボルバーを構え、

怪しげな呼吸で一瞬だけ関節を外して

親指の長さを二倍ほどに伸ばすと、片手で

撃鉄を激しく上下させて二つの銃口から

同時にファニングを放つ!

 

 

双龍の急襲(ヒュドラ・レイド)!」

 

 

片手で8発ずつ、合計16発の燃える弾丸が銀の弾を

焼き尽くした。溶けた聖銀がカーペットに垂れ、

黒い煙を上げている。

 

それだけではない……銀の弾幕を突破して来た

弾丸が壁や地面に着弾し、激しく燃え始めたのだ。

トゥームストーンは赤熱する銃身で傷口を焼き、

嘲笑うように牙を剥いて、何度か血を吐いた。

 

 

「この弾丸にはマグネシウム粉末を仕込んである、

燃焼温度は最大で5000度を上回るだろう。

それに比べて純銀の融点は約1000度が限界だ……

私が銀の対策をしていないとでも思ったか?」

 

 

『貴様……!』

 

 

狭い室内は戦いと炎によってオーブンのように

過熱し、濃い陽炎が発生している……

 

 

「俺はお前のように自分を無敵だと勘違いした

夢見がちなルーキーを数百と殺して来た……

この状況でお前に勝ち筋など存在しない。」

 

 

トゥームストーンは炎の中で崩れ落ちる柱を

カウボーイに向かって無造作に蹴り飛ばし、

怯んだ隙に火炎瓶を投げ、更に炎を広げる!

 

 

『ボクの宮殿が……やめろ!』

 

 

「腐った傷口は焼き潰すに限る。」

 

 

亜光速移動からの蹴りを大きく跳躍して回避、

そのままの姿勢でドロップキックを放つ!

 

 

『うぐぅ!?』

 

 

防御には成功するが吸血鬼の蹴りを受けて

大きく後退するカウボーイ!

トゥームストーンはすかさずタックルを繰り出し

カウボーイを大きく吹き飛ばした!

 

 

「火の海では増援も期待出来んな……ご自慢の

光速移動も満足に使えまい……」

 

 

『黙れよ、お前だって逃げ場はない筈だ!』

 

 

カウボーイはベルトから拳銃を引き抜いて構え

ズドンッ!

 

 

『え……?なんで、まだ引き金を』

 

 

突然の暴発に見舞われ、呆気に取られていると

鉤爪で脇腹が抉り取られる。

 

 

『ぐえぇ!?』

 

 

「呆れたな……弾というのは温めれば発射される。

今この部屋に常人を放り込めば蒸し焼きになるぞ?

コックオフも知らん尻の青いガキがこれほどの

組織を率いていたとは、全くお笑いだ。」

 

 

『クソォッ!』

 

 

カウボーイは緑色の光を拳に纏わせ、亜光速で

トゥームストーンに接近してスクリューブローを

打ち込むが、バックステップで回避されてしまい

強烈なカウンターを食らう!

 

 

「殴り合い……所謂ベアーナックルか。

良いだろう、男とは本来こういう生き物だ……」

 

 

『ア”ァ”ァ”ァ”ッ”!!』

 

 

半狂乱になって向かって来るカウボーイの拳を

狙い澄ましたジャブで逸らす!

 

 

「ラアァッ!」

 

 

更にレバーブローで相手の体幹を崩し、肘打ちで

右目を潰して怯ませ、顔面に頭突きを連打して

よろめいた相手の胸に跳び膝蹴りを叩き込み、

大きく吹き飛ばす!

 

 

『ぐぅ……う、うぅっ……!』

 

 

「逃げるつもりか、この外道!」

 

 

素早く起き上がり、背中を向けて逃げようと

もがくカウボーイを羽交い締めにして

トゥームストーンは水晶玉に叫ぶ!

 

 

「カウア、後3秒で廊下に飛び出す……その時が、カウボーイズ最期の瞬間だ!」

 

 

『ふざけるな!離せ!』

 

 

  3

 

 

「よく狙え……」

 

 

  2

 

 

『やめろ、やめろォ!!』

 

 

 

  1

 

 

「お前は、一人の男を殺すのだ。」

 

 

 

  0

 

 

 

『うおぉぉぉぉぉぉッ!!』

 

 

カウアは弓を携えて廊下から飛び出し、

家族を、仲間を奪った因縁の相手に向けて

サソリ毒を塗りたくった渾身の一矢を

全力で引き絞り、敵の心臓を一発で射抜いた。

 

 

『ボクが……こんな、モブキャラにぃぃ!!

メズマ様アァァァァァァッ!!』

 

 

目と口から血の噴水を垂れ流し、最期の瞬間に

恐ろしい呪詛と断末魔の絶叫を遺して、

長年先住部族を苦しめて来た男は息絶えた。

 

たった一人の、冒険者ですらない少年が放った

一撃によって、荒野に君臨する巨悪が斃れたのだ。

この事実は一帯を電撃のように駆け巡り、

ある者は狂喜乱舞し、ある者は頭を抱えて唸った。

 

 

 

 

 

 

 

ー10日後ー

 

 

 

 

一週間以上も休みなく行われた宴が終わり、

トゥームストーンは家路につこうとしていた。

彼の目の前には大勢のダークエルフ達と

家族を迎えに来たデーモン達が並んでいる……

 

 

『旅の方、もう少しお休みになられた方が

良いのでは?娘たちもきっと喜びます。』

 

 

「いえ、これ以上皆さんのお世話になっては

罰が当たるでしょう。」

 

 

権力者らしき仮面の人物が彼を引き留めるが、

トゥームストーンは構わず馬に乗り込んだ。

 

 

『旦那、行かないでくれ!せめて俺と姉ちゃんの

結婚式まで待ってくれよぉ!』

 

 

『そうだ、もう少し居ても罰なぞ当たらん!』

 

 

カウアと治療を受けたスティールパイソンが

走りながら彼に呼びかける。

 

 

「馬鹿者、依頼人をニヶ月も待たせろというのか?

また来てやるからそれまで辛抱しろ!」

 

 

『約束だからな!』

 

 

「………あぁ!」

 

 

トゥームストーンは仮面の下から覗く目を

少しだけ細め、村人たちに手を振った。

 

 

「メズマか……調べてみる価値は」

 

 

『ブルルルッ……今は、無粋!』

 

 

「……かもな。」

 

 

『美味しいもの食べに行かない?』

 

 

「そうだな、二又ニンジンを奢ってやる……

早く食いたかったらさっさと走れ。エルフが

後を追いかけて来る前にな!」

 

 

 

それを聞いたゴールディは鼻息を荒くして加速し、

トゥームストーンも身を屈めて手綱を握った。

 

 

 

 

 

 

ー完ー

 

 

 

 

 

 

 

キャラクター紹介

 

 

 

 コードネーム: トゥームストーン

 

 種族: 吸血鬼

 

 本名: 不明

 

 冒険者ランク: 無し 

 

 使用魔法: 無し

 

 所属クラン: 不明

 

 

 この世界では珍しい拳銃使いのはぐれ冒険者。

 その正体は謎に包まれているが、悪人ではない。

 魔法が使えず身長も低い為、嵩張らず連射出来る

 八連装の小口径リボルバー銃を愛用している。

 

 射撃のみならずカンフーと武器術も習得しており

 接近戦に持ち込まれても戦闘力は全く衰えない為、

 安易に距離を詰めた相手は地獄を見る事となる。

 

 ハーモニカが得意。

 

 

 

 

 コードネーム: カウボーイ

 

 種族: エルフ(転生者)

 

 本名: コージ・アームストロング

 

 冒険者ランク: 無し

 

 使用魔法: 光魔法

 

 所属クラン: カウボーイズ

 

 

 異世界からやって来た転生者の一人で、

 前世はFPSに没頭して過労死した引きこもり。

 射撃の腕前一本で裏社会の大物に成り上がった

 実力とカリスマの持ち主だが、ゲームでしか

 銃の扱いを学んでいなかった為、異常事態に

 咄嗟の判断が出来ず、カウアに殺害された。

 

 肉体強化系の光魔法を巧みに扱う事によって

 不得手な近距離を補い、格上の冒険者相手に

 善戦するなどかなりの実力者。

 

 異能は生産系のものであり、これによって

 自分が扱う銃弾や金品を大量に製造していた。

 

 

 

 

 カウア

 

 種族: ダークエルフ

 

 カウボーイズの横暴によって故郷を支配され、

 奴隷として売り飛ばされてしまった少年。

 

 

 

 スティールパイソン

 

 種族: ダークエルフ

 

 本名: ミテナ

 

 冒険者ランク: 無し

 

 少年魔法: 金属魔法

 

 所属クラン: カウボーイズ

 

 

 南部の先住者、ダークエルフ族の出身だが

 故郷を守るためにカウボーイと契約を交わし、

 彼の配下となった優秀な冒険者。

 

 鋼の鞭を金属魔法で自在に操り、蛇のように

 敵を狩り殺す他、本編では使用する機会が

 存在しなかったものの、鞭の先端に武器や

 砂鉄、スクラップを融合させてハンマー型の

 武器を作り出す事も出来る。

 

 

 




今回は戦闘描写を重視しましたが、何か要望や提案があれば気軽にどうぞ。前の話から半月以上も空いてしまってすいません、許して下さい、何でもしますから!(何でもするとは言ってない)
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