※SRPG Studio 製フリーゲーム の2次創作です。原作者様のツイッター等で「('◇' )うちの作品は二次創作もおっけーよ!」とのことなのでリメイク待てませんでした。原作よろしく、あらゆる名作のオマージュ(特に某戦略シミュレーションRPGの)が多め、かつ記号や顔文字または句読点の入れるべきところを意図的にスペースで空けることが文中にあるため、このような表現の苦手な方は、ご注意ください。
※この創作物は「」の前にキャラクターの名前を記し、ゲームでの会話ログなどにある文章送りを意識した改行(基本の会話が3行)をしてあります。また一部やりとりの表現を変えてあります。前章譚から作風を、ご参照ください。
※リアちゃんは前章譚には出ません。
その昔、ルエリア大陸では、
魔族と呼ばれるものたちの住む
異世界と交流を持ち、
いつしか強大な力を手にした
魔族の王を名乗るものと、
それの率いる魔王軍によって侵略され、
人類が恐怖と絶望に打ちひしがれた、
闇の時代があった。
しかし、これを終わらせた英雄がいた。
小さな島国ロリティアの王家が、
代々伝わる宝剣または降魔剣
【ロリティオン】を手にすると、
ルエリア大陸の結界を司る、
それぞれ、炎、地、水、風、光、と
名付けられた5つのクリスタルの力を借り、
神の祝福を受けた戦士たちとともに
魔王を打ち倒し、異世界の扉を封印して、
魔族との大戦を終わらせたのだ。
そうして、
いくつかの世代を超え――。
かつて異世界と交流していた名残から、
大陸に残された魔族の技術を用いて、
異世界の力を得ようとする悪しき人間が現れ、
ルエリア大陸は、
またも魔族の侵攻を受けた。
だが、ロリティオンと、
その使い手の血を継いだ、
ロリティアの王家は滅びていなかった。
ロリティアの王子ロンド=ローリスは、
降魔剣を手にルエリア大陸全土を巡ると、
魔族に征服を受けた諸外国を次々と解放し、
各国の盟友たちとともにクリスタルを集め、
魔王を打ち倒し、異世界の扉を再び、
封じ込めることに成功した。
この戦いから、半年あまりが過ぎ――。
王子を同盟軍の筆頭に選んだ
大陸の盟主エルンシス王国の姫が、
内戦を収めて女王に即位したことに続き、
ロンド王子もまた、
国王としての即位式となる
「降魔の儀」を持って、
大陸に、新たな秩序と
平和を築く担い手の一人として、
それに快く臨もうとした、
……その矢先のことだった。
「儀式の前に南の島でバカンスしよう」
王子は突如そう言って、ごく少数の
騎士団を連れて国を出て行ってしまった。
そして海上で、超でかい海賊船に襲われると、
王子たち一行はバカンスを諦め、とある島へと
上陸した、その賊らを討伐することにした。
旅の途中に盗まれた
宝剣ロリティオンを
奪還するために――。
前章譚
ロリティアナイツと暗黒の守護者
(名も無き孤島)
□Location
《名も無き孤島(ルエリア大陸外)》
うっそうとしたジャングルの生い茂る孤島。
鉄や鋼や銀で出来た石の塊のみならず、魔力を石に込めた魔鉱という素材が天然的に存在する。
住民は点在する遺跡を守りつつ、原始的な格好をしながら、狩猟や採集を中心に生活する。
島の奥地や海岸にはスライムやワーウルフ、オークやゴブリン、クラーケンやグリフォンといった魔物が住み着き、力を示した人間には自然界の摂理に則って従属する個体もいる。
海難のないほど穏やかな気候のためか、住民の多くは、おおらかな気風で部外者にも寛容(例外あり)だが、島を侵略し攻撃を仕掛ける者には種族に関係なく容赦のない団結力を示すことも。
住民の作る料理が一風変わって美味とのことで、大陸の方でも観光地として、その無名が知れ渡りつつある……?
■Point
[とある遺跡の出入り口前]
せんせんと流れる川に囲まれた低地には、森から首を伸ばしたように突出した、苔の生えた岩の遺跡があった。
その入口のあたりまで、空を飛ぶ一頭の翼竜が、地上でたむろする海賊たちを散らして、降りてくる。
てかてかでスキンヘッドの蛮族のような風貌をした半裸の男が、竜の背中から飛び降りてきた。巨体の肩には、身動きを取れずにいる青い長髪の女騎士が担がれ、じたばたしている。ぐるぐるに手足をロープで縛られ、砂や海水に汚れた布で目隠しをされていた。それを物ともしない大男は、降りて来い、と指で竜の背中に向けてジェスチャーした。
それは、ふわりと地面に降り立った。
対面から、左は黒で右は白と、くっきりと色の分かれたローブを身にまとった人間だ。顔の表面には仮面がついてある。これもやはり真っ二つに黒白で分かれ、口元には新月を下方に凹ませたような鋭利な微笑みがデザインされてある。涙袋が上に押し上げられた両目には、瞳のない弧が描かれていた。手袋から靴にいたるまで一切の素肌を表さないのは、相手に何一つ付け入る隙を持たせない用心深さを周囲に知らしめている。
遺跡から出てきた海賊たちの案内で、巨体は女を運び、遺跡へ入っていく。
黒白のローブは、しばらく仰いだ。
黒白
「クク……クハハッ……
クハハハハハハハハッ……!」
それから天を嗤った。
雑音とも呼べる、すりつぶしたような声を出しながら通路の奥へ消えていく。
黒衣の青年
「…………」
そんな奴を、遺跡の頂上に屹立した岩肌の影から、日差しを時折横切るドラゴンやグリフォンに気づかれないよう息を潜めた、黒い装束と鎧を身にまとった黒髪の青年が、注視するように見下ろしていた。
■Point
[遺跡の内部――財宝への道]
ここでは広い通路の横幅でさえ収まりきらないぐらい大きな氷の壁が門番のように道を塞いでいる。その傍に人影が四つあった。
隈や頬のたるみが目立つリーダーらしい男の前で、巨体は啖呵を切った。
ドンプリ
「イブリスのアニキい!
どうにかロリティアナイツを
撒いてきやしたぜ。
しかも、しんがりのついでに、
上等な女騎士も捕まえてきただあ」
青い長髪の女騎士
「離しなさいよ!」
ドンプリは女を地べたに、うつ伏せにして降ろした。
キャプテン・イブリス
「でかしたぜぇドンプリ!
女騎士とくりゃあ奴隷商に高値で……、
……ん? どっかで見た顔だな」
アニキと呼ばれた男は女騎士の目隠しを取ると、そのぎらついた両目を相手の黒い瞳に覗き込ませた。
青い長髪の女騎士
「うわ。やな顔。
なによ? お近づきになりたいの?
やめて~! 私に乱暴する気で……痛っ!」
からかった女騎士が頬を打たれた。
キャプテン・イブリス
「口の減らねえ小娘がよぉ!
てめえの素性なんざ知ったことか。
ともかく名前。そして海にいた理由も!」
青い長髪の女騎士
「本当に乱暴にしてくる奴が
あるかしら……まあいいわ。
私はロリティア王国の騎士イレーヌよ。
それ以外に話すことなんてないわね」
そっぽを向いたイレーヌにできることは、悪態を付くことだけだった。
『どうしようもない騎士団をしごくために従軍する女騎士。上司や部下といった立場すら物ともしない姿勢には、無能に陥りがちな騎士団さえ彼女の乱舞に激励される』
《性別:♀
イメージカラー:青とピンク
状況:祖国で小隊長への昇格を控える
外見:
しなやかな体躯と、睫の長い黒い瞳を持ち、海のように明るい青色の長髪をなびかせる。白いマントの表にはピンク色の制服を基調とし、上に黄色い甲冑を身に付けるも、軽やかな動きをするためか太ももを露出させている》
イレーヌ
(というか王子のバカンスに
付き合わされただけなんて間の抜けた話、
口が裂けても言えないわ)
キャプテン・イブリス
「そうかよそうかよ。素直で結構。
のこのこと俺達イブリース団の網に、
かかったことが運の尽きだったなァ!?
しかも……」
イブリスは側にある岩陰に隠していた、ある物を取り出すと、それに被さっていた細長い布を取っ払った。
中から剣が出てきた。鍔には小さな緑の宝玉を嵌めこみ、白い剣身には血管の浮き出たような刃文が金色に淡く輝き、焼き入れてできた波状とは異なる直角の紋様を複雑ながら均一に交差してある。それは形状の整った魔法陣を圧縮したように刻まれていた。
イレーヌ
「あー! ロリティオン!!
じゃあ、あんたが海賊のリーダーね?
でもって、ここが拠点で……」
宝剣ロリティオン――その光は弱々しく照り、すぐにも掻き消えそうだ。
キャプテン・イブリス
「そういうことだ。
こりゃあ高価なもんだから、
売ればいい金になるかもしれんなー?」
イレーヌ
「ねねっ、おにいさーん。
それ返してくれな~い? そしたら
私のイイトコ教えて、あ・げ・る♪
……痛ったぁ!?」
二度目で、両頬を打たれたことになった。
キャプテン・イブリス
「猫なでがキモっち悪いんだよぉ!
どんだけ肝っ玉据わってんだぁ!?
てめえのイイトコなんざ身代金だけだろ。
宝剣返して欲しけりゃ王子に国の財産、
全部俺らに譲るって約束させるこったな。
でもって、てめえは売り飛ばすがなァ!」
イレーヌ
「ひっどーい」
ドンプリ
「そんなことよりイブリスのアニキぃ、
前にイーグル・キャプテンが言ってたように
ほんとに、ここに財宝あんのかな?」
一回り体格の大きいはずのドンプリが恐縮としながら、自分の喉よりも背丈の低いイブリスに遠慮がちに訊いた。
キャプテン・イブリス
「あのボンクラの名前を出すんじゃねえ!
あいつが結局、見つけらんなかった、
この宝の地図に記された財宝の有りか……、
ここがその場所で、
この先にあるってのは間違いねえんだ。
今度は、きっと俺様が見つけだしてやる!」
イブリスの持つ、海水に汚れて黒ずんだ地図には、ルエリア大陸を構成する7つの国が描かれてある。地図の左下あたりに、この島の場所とされる赤い×印がつけられ、この遺跡をデザインしたのだろう下手くそなイラストも添えられてあった。
ドンプリ
「でも、そんなことしても
イーグル・キャプテンは
帰ってこねえだよ……」
キャプテン・イブリス
「俺がいるだろ問題ねえだろォ!?
皆にも、いつか分からせてやるさ。
この海賊団の一番が、だれなのかを!
そうすりゃ間抜けな先代を
いまだにひそかに慕っているヤツらも、
俺を認めざるを得ねえだろうしなァ……!?
はーっはっはっはっはっはっはっはっは!」
イレーヌ
「…………。
なんでこう分かりやすい悪人って、
いつも突然、意味なく一人で語って
高笑いし出すのかしら……発作?」
?
「ソノクライ ニ
シテオクンダ ナァ……」
ドンプリの後ろから、黒白のローブを着た人間が、ぬっと現れた。
イレーヌ
(ダッサ!
何その、くっきり割れた黒白の服。
しかも何この声……耳が痛むし!)
さっきまで目隠しをされていたイレーヌには、どんな人間が乗ってきたかまでは分かりかねていた。はじめて声を聞いて、より忌避した。
それは、ゆったりとしたトーンで落ち着いていたものの、喉の奥で反響させたような高い金切り声だった。ここにいる誰もが、男なのか女なのか想像しにくいほどだ。
イレーヌにとっては素性の底知れない違和感をダサいの一言で例えるしかなかった。
キャプテン・イブリス
「おおてめえ無事だったのかよ。どっかで、
声帯だけ潰れりゃよかったのになクソが。
まあ頼みどおり島まで運んできてやったぜ」
黒白
「私ガ クソ カ?
デハ貴様ノ場合ハ 目カ? 鼻カァ?」
キャプテン・イブリス
「うっせんだよォ!!!!!!!」
皆が、しんと静まった中、大声だけが遺跡全体に木霊した。
キャプテン・イブリス
「うぉっほん……あらためて訊くが黒白よ。
ここの財宝、普段は魔法で封印されてる、
ってのは、本当なんだろうな?」
古びた世界地図はイブリスに、ばしばしと叩かれている。
黒白
「ドウダロウ ナア?
シカシ ソノタメニ 私ハ イルノダカラ」
黒白が氷の壁と向かい合った。腕の袖から、するりと分厚い本が降りる。表紙は赤く装飾され、真ん中には光が爆発したような紋章を描いている。
キャプテン・イブリス
「ケッ。先代が見つけらんねえわけだ。
まあいい、封印を解いてくれんなら、
てめえにも山分けしてやるよ」
黒白
「ククク……
ソウナルコト 夢見ルガ イイ
デハ オサキニ……」
黒白が本を手前へ飾ると、辺りの温度が急激に上昇しだした。熱は黒白を起点に発せられ、強い突風が吹き荒れた。
ドンプリの巨体でさえよろめき、手足の縛られたイレーヌは肌の露出したところを摩擦させることで寝返りを堪えた。
イブリスは顔を防ぐように両腕を組み、前かがみになった。
キャプテン・イブリス
「熱っちぃ!? どこまでやる気だ!」
黒白はイブリスからの問いかけに、まるで無関心のまま魔法を唱えた。
黒白
「ファイアストーム」
本――魔道書の開かれたページの上に六芒星の青白い魔方陣が浮かび上がる。その真ん中で赤く火が灯ると、しだいに本から離れ、渦巻くように空気を取り込みだした。宙に浮いた高温の球は、だんだん人間の体格よりも高くなっては堅牢に佇んだ氷塊の内側へ、すり抜けるように侵入していく。炎の球体は殻に閉じ込められた卵黄のように、すっぽりと中央に嵌った。黒白が魔方陣をへし折るように魔道書を閉じてからだった。
瞬間、氷の壁は二、三度、点滅したあと、大爆発を起こした。
壁や通路に帯びていた熱気は消え、ひんやりとした空気が急速に流れ込み、氷だったものの破片が周囲に飛び散った。それはまるで白みのある火の粉のようだ。遺跡が崩れる様子はなく、破壊された冷たい壁の奥では、光を許さない漆黒が地下へ続く石の階段を挑戦者に出現させていた。
イレーヌ
(ちょ、破片が、痛っ!)
息苦しく伏せることしかできない状況でも、イレーヌは奇跡的に意識を保っていた。
イブリスもドンプリも吹っ飛ばされたのか地面に背中をつけているが、全身を火傷させたわけではない。
それどころか、とくに目立った傷も一切ない黒白は、だれにというわけでもなく三人の方へ振り返り、周囲を見下ろした。裏の顔では、いかなる表情をしているのか窺い知れないものの、仮面に刻まれた歪な笑みだけが、この支配下を無言に歓喜していた。
イブリスが肘をついて上半身だけ起こす。
キャプテン・イブリス
「お、おお……うちんとこの魔導士どもでも
どうにもできなかった氷の壁が……、
てめぇ……下級魔法なのに、どうやった?」
黒白
「フム……
貴様ニモ ワカルヨウニ 説明スルト……
トテモ 強イ ファイアストーム ダ……」
キャプテン・イブリス
「わかんねーよ……」
魔道書が黒白の袖の内へ自動的に収まる。その主人は脇目も振らず、開放された道を進みだした。玉砂利みたいに散らばった氷の破片が、足音に共鳴して来訪者を歓迎しているようだ。
黒白は階段を降りていく。
それを見届けてからイブリスは、よろよろと立ち上がり、焦げた埃を払ってドンプリを叩き起こした。
キャプテン・イブリス
「は……はっ!
きっしょい黒白のローブで
ぶりやがって。男爵気取りかぁ!?
両目両耳どころか全身にも悪いんだよ
あのクソ貴族もどきがよォ!」
イレーヌが芋虫のように這ってくる。顔は黒ずみ、埃にまみれ、鎧も一部分が砕かれ、服は破けるに留まったものの怪我を負っている。
イレーヌ
「ちょっともう最悪! ……ねえ?
あんな得体の知れない不気味な奴、
一人で行かせていいわけ!?
お宝、持ち逃げされちゃうんじゃないの?」
イレーヌの口元までロリティオンの刃先が迫った。
キャプテン・イブリス
「うっせえ! そんなこといって、
俺たちを遠ざける算段なんだろ?
その手にゃ乗らねえよ」
イレーヌ
「言ってる場合じゃあ……」
?
「キャプテン! はあ……、はぁ……、
イーグル・キャプテンは、いますか!?」
ドンプリ
「フェルデさんでねえかあ!」
聖職者の身なりをした金髪の女海賊が、ドンプリたちの来た通路から杖と本を両手に駆けつけた。
キャプテン・イブリス
「イーグルじゃねぇ! イブリスだ!!
どいつもこいつも、いいかげんに
覚えやがれクソが! で、どうしたよ!」
フェルデは汗を拭い、深呼吸してから答えた。
フェルデ
「ロロからの連絡です。
ロリティアナイツが、
すぐ近くに来てやがるようです」
イレーヌ
「え~! マジで~!」
にやつくイレーヌの様子は、わざとらしかった。
キャプテン・イブリス
「おいおいドンプリてめえどういうことだ!?
あいつらを
こいつを連れ去ってきたんじゃねえのか?」
イレーヌ
「うわー引くわー。辞書ないわけ?」
キャプテン・イブリス
「黙ってるォ!!」
ドンプリ
「へへぇ! …………」
ドンプリは気をつけをして、下唇をキュッと上に閉ざした。
キャプテン・イブリス
「違うだろ?」
イブリスはロリティオンの平たい部分でドンプリの頬を引っ叩いた。イブリスのセンスの悪い語彙に鼻で笑ったイレーヌも、ロリティオンを雑に扱われるのは気が気でなかった。ドンプリがイレーヌを指差し弁明した。
ドンプリ
「も、もちろん戦利品としてですぜ!
しんがりするとき、この女騎士が急に
俺の目の前で倒れたと思ったら、
王子の奴が、どうぞどうぞ、
ってんで、連れて来たんだ!」
キャプテン・イブリス
「ふざけんな! 明らかスパイじゃねえか!
でかしたどころか、しでかしやがって!
ここに剣があるの突き止められたろうが!」
イブリスは八つ当たりをするように、そばにあった大きな岩を蹴り、勢い余って仰け反った。
ドンプリ
「くそー、まんまと騙されちまったぞ!
こいつめ!」
イレーヌの下にドンプリの大きな足音が鳴りに来る。
イレーヌ
「ちょ、なによ! 何する気!?」
ドンプリ
「お前はもう用なしだ!
どこへでも行っちまえ!!」
イレーヌの手足を束縛したロープが解かれた。
イレーヌ
「うそ! 解放してくれるの!?
ありがと♪ あなたったら、いい人ね。
てやあ!!」
ドンプリ
「ひぎぃ!」
すかさず立ち上がってから放たれたイレーヌの蹴りに、ドンプリのむこうずねがやられた。足を抑えてうずくまるドンプリの頭に、さらにイブリスが拳を叩きつけた。
キャプテン・イブリス
「この海坊主がァ!
だからって手足を
解放するこたぁねえだろォ!」
イレーヌ
「おほほほほ。
ごめんあそばせ、ってところかしら。
それじゃ……これも返してもらうわ! よ!」
イレーヌはイブリスへ一気に詰め寄ると、腕を叩いて剣を手放させた。それを拾って離れてからイブリスたちに、あかんべーをすると光の差し込む方へ彼女は素早く駆けていった。
キャプテン・イブリス
「ちきしょう! ロリティオンが……!
フェルデ! なんで魔法を放たねえ!?」
フェルデ
「それはさっき言ったでしょう。
遺跡に満ちる力やばいんですから。
並のものでは魔力の調整もしにくいのです」
ここでは魔法も唱えられないフェルデは大の字になって仰向けになっていた。
キャプテン・イブリス
「あの黒白魔導士は、どでかいの、
やりやがったぜ!? ……それとてめぇ、
疲れてんの分かるが寝てんじゃねえ!」
魔道書を枕に、涅槃をするよう寝返りを打つフェルデに、ますますイブリスは憤慨したが、彼女は気にも留めないでいる。
フェルデ
「外では何も聴こえませんでしたが……。
となれば、やはり
使って逃げられる恐れがありますね。
持っていける財宝の量によりますが……」
キャプテン・イブリス
「ちっ、あんな魔法に怯えてなるか……!
ともかく急ぎ副キャプテンに伝えろ!
黒白が財宝を独り占めする前に、ぶっ殺せ!
海岸にいる皆も、まもなく集まってくる頃だ。
俺が皆に迎撃の準備をさせに行くからよ。
こうなりゃあとことん巻き上げてやらあ!」
しぶしぶ杖を使って起き上がったフェルデが、頭と足を押さえて涙目になるドンプリを看ている間、イブリスはイレーヌを見逃さないよう強烈に見開かれた眼光を維持しながら追いかけていった。
■Point
[とある遺跡の出入り口前]
イレーヌが外まで走ってきた。手には王国の家宝ロリティオンが取り戻されている。
イレーヌ
(いやー儲け儲け♪
王子が、また宝剣を盗まれたときは、
マジこいつやばいわ~、って
思ったけど海賊どもも大概よね……って!?)
イレーヌは入口近くにある石積みの影に隠れた。外では、ここへ連れて来られたときよりも海賊たちの数が多くなっていた。
その中で、薄汚いローブを身に付けた、どんよりとした魔導士風の男が、ナイフに舌なめずりをする盗賊に話しかける。
リトボント
「ぐふふ……、
遺跡の宝を守るのだ……。
ベディ……お前は村を襲いにいくのだ……」
ベディ
「いいねえ……! 村を壊滅的に粉砕するのは、
ほっかほかに炊き立てられていたお米を、
ぐしゃんぐしゃんにすすぎ直すようだぜぇ」
二人の間には、狼煙をあげるためのものか、木の枝が積み重なっている。
リトボント
「ナイフは仕舞ってるのだ……、
その口も閉じてるのだ……ぐふっ」
ナイフをしまった盗賊は颯爽と去ると、魔導士は咳き込みながら出入り口の方へ近づいてきた。
イレーヌ
(まずいわよ!)
イレーヌは見張りと遭遇しないよう息を殺した。魔導士は、うつむいていたためか気づくことはなかった。
イレーヌ
(こんなんじゃ逃げきれないわ。
一刻も早く、島から出た方がいいけど、
王子たちに会いに行けないことには……)
キャプテン・イブリス
「返しやがれ~? いい子だからよ~?」
イブリスの声と下品な足音が近付いてくる。
そんな中、ベディの一派が遺跡の近くにあった集落を滅茶苦茶に荒しまわりだした。住民は不在だったが獣の毛皮でできたテントのような建物は破壊され、石や木でできた道具や鉱石が盗まれていく。
だれが立ち入っても、もう訪問はできないだろう。
イブリスがリトボントに、にたにたと薄ら笑いを浮かべに来る。
キャプテン・イブリス
「よお。ベディは派手だなリトボント。
俺たちゃ絶好調だよなァ?
そういうわけだから狼煙をあげてくれや」
リトボント
「ぐふっ、ぐふっ、
気分は悪いはずなのに……」
キャプテン・イブリス
「てめえの調子なんざ聞いてねえんだよォ!
見張りのくせに小娘一人も見つけらんねえ、
そのうえ魔導士が魔法で中毒ってかァ!?
明日クビにすんぜ」
リトボント
「分かりましたよ! ……ぐふっ」
赤い本を開いたリトボントは、部下たちに集めさせた木の枝を火種にファイアストームを唱えた。本に浮かび上がる魔方陣から火炎が放射される。黒白と似たような挙動だったものの、威力は比べ物にならず、遺跡の中で覚えたような威圧感がイブリスを戦慄させることはなかった。
キャプテン・イブリス
「ちっ。あれとこれとじゃ、えれぇ違いだぜ」
イブリスはリトボントにも伝わるぐらい大げさに落胆した。
得体のしれない魔導士のことなど露知らず、立ち昇る狼煙に海賊たちは一斉に喚きだした。
イレーヌは余計、逃げづらくなり、遺跡へ引き返すのを余儀なくされた。
イレーヌ
(もう! ロリティアナイツ!
何ちんたらしてんのよ!
このままじゃ他の集落どころか私まで……)
ロリティオンを捧げ持ちながら祈った時だった。
イレーヌ
(って、キター!!)
イレーヌの呼びかけにロリティオンが応えてか、はるか視線の先にある森の影から、ぞろぞろと集団の影が現れた。
■Point
[遺跡の外――川向こうにある平地]
ここに5人の男たちを率いる1人の若者がいる。
その少年
ロリティア王国にある騎士団の中でも選りすぐりのものたちが、奪われた宝剣と囚われた女騎士を奪還するため、日の光がよく差し込む湿っぽい草地の上に馳せ参じた!
王子
「じいや! やっと着いたのか。
あれが僕のロリティオンとイレーヌが
持ち運ばれた、っていわれる遺跡?」
じいや
「そのことについては、
もうじき原住民の大将ドーク殿が
お見えになりますから、お話下さい」
王子
「わかった。待とう。
海賊どもが僕たちのことを知れば、
イレーヌを引き合いに出てくるだろうしな」
王子は自信ありげに不敵な笑みを浮かべていた。
『ロリティアにあるローリス王家の唯一の嫡男にして宝剣ロリティオンを継承した王子。大の音痴かつ幼女が大好きということでロリコンだと噂されるが、いずれも本人は否定』
《性別:♂
イメージカラー:黒と青
状況:国王に即位する【降魔の儀】を控える
外見:
大陸では珍しい黒髪で、双眸には青空のような色が澄んでいる。背には深緋色のマントをなびかせ、ベルトを着けた黒茶色のズボンに突っ込んだ青い肌着は、灰色のコートで包まれている。一見パッとしない見た目も王子自身のバリエーション豊富な表情の変化により、明るくも暗くも彩る》
ロンド
「それにしても海賊どもめ!
せっかくのバカンスだったのに僕の宝剣を
かすめとって行くなんて絶対に許せない!」
じいや
「おっしゃる通りで!」
じいやは白馬の上で腕を組みながら、真顔で迷いなく豪語した。
『じいや。王子が赤ん坊だった頃からの付き人。国には先代の王のときから仕える。暴走する王子のストッパーの役目があるにもかかわらず、だいたい王子に同調するばかりで甘い』
《性別:♂
イメージカラー:銀と灰紫
状況:腰が弱い そろそろ引退ではと噂される
外見:
灰紫色の鎧に包まれ、逆立たせた髪から逆三角に垂れた顎髭まで銀色に染まり、面長にある重そうな瞼と引き締まった頬骨からは歴戦の戦士だった名残が垣間見られる。歳ではあるものの皺は目立たず、腰さえ衰えていなければ中年と老人の境を行き来できるかもしれない》
ロンド
「そういうわけでフラム。
ロリティオンかイレーヌが出てきたら
号令よろしく」
王子は騎馬に乗る一人の兵士の膝に手を置いた。
その兵士は怒るわけでもなく、ただ口を、あんぐりとさせ驚愕し、それから声を浴びせた。
フラム
「いやいやいや王子!
その前に、どうしてイレーヌさん一人に
あんな無茶な真似をさせたんです?
ここまで我慢に我慢を重ねましたが、
いくら連中に交渉させるためとはいえ、
十分な相談もなしにこの采配は早計ですよ!」
顔色から血の気が引くほどに、青年は戸惑っているようだった。
『生真面目で気苦労も多い世話焼きな青年。普段は敬語だが、国や騎士団を思えば、ときどき口調が荒くなる。靴にこだわりを持つも私服のセンスはいまいちで、王子の奇行をはじめ騎士団をまとめるたびに胃に穴が開きかける』
《性別:♂
イメージカラー:茶と赤
状況:聖騎士の位を頂くのを控えている
外見:
人によっては女々しそうと思われることもある中性的な容姿で、赤い瞳に赤みがかった茶髪と制服を身につける。上には灰色の甲冑と、喉から肩にかけて後ろへ広げた黒いマントを装着し、明るい赤茶の盾を黒い手袋に有する》
王子は腕を組むと納得したように頷いた。
しかし、こう答えた。
ロンド
「フラム。僕は一度、見てみたかったんだ」
フラム
「なにをです?」
ロンド
「我が精鋭ロリティアナイツの女騎士が、
華麗に敵を出し抜いて活躍するところをな!」
王子には勝算でもあるのかハキハキと答えた。
アーバイン
「王子!
漫画や同人誌の読みすぎですな。
わしも楽しませていただきました」
アーバインの表情は変わらない。
フラム
「……ケビン、これは、
いったい、どういうことだ?
イレーヌさんは、こんな王子と騎士団から、
仕事を任されたのか?」
呆気にとられるフラムに訊ねられた青年は、ほくそ笑みながら気楽そうにしていた。
ケビン
「まあまあ。そう失望なさんな。
イレーヌさんが、やる気満々だったから、
剣と奴さんらを見失わずに済んでるんだぜ」
『遊び人気質で女たらし。しかし女性への礼儀と尊敬は絶対に怠らない。競馬や旅行やバーのためなら仕事には全力で向き合い、いかなる死亡フラグを匂わせる発言をしても、この男の前では無効化される。近々、結婚の噂も』
《性別:♂
イメージカラー:緑
状況:もとは聖騎士だが鎧を脱ぎ休暇中
外見:
おかっぱな緑髪の下には、シャープな顎に薄くも整えられた眉と柔らかな眼差しを持つ。黒い手袋で持つ深緑色に表面を塗装した鎧と盾が、着痩せする体格を大きく見せつける》
ケビン
「しかもスタイルは抜群の美人!
気だてのいい彼女のことだ、今頃、
海賊どもを手篭めにしているかもよ?」
フラム
「てめえケビン!
そんなのんきなことを言っていていいのか!?
はやく、どうにかしないと、
またロリティアナイツの、
どうしようもない経歴が追加されてしまう」
フラムの顔色には怒りと困惑が交差している。
ロンド
「そう頭を抱えるな。
いつだって歴史はロマンだよフラム。
じいやも、そうは思わないか?」
アーバイン
「おっしゃる通りで!」
ロンド
「でもって囚われの女性を
王子と騎士団が、かっこよく
助けにいくのは王道だろう!?」
ケビン
「同感です!」
アーバイン
「おっしゃる通りで!」
フラム
「くっ、ダメだ、こいつら……。
レイン! ポルトン!
私たちだけでも急ぎましょう!」
フラムは身長の差に大きな開きのある二人へ問うた。
レイン
「は……はわわ/// い、イレーヌさんが、
あの遺跡で海賊たちに……いったい何を、
あんなことやこんなことされて……」
フラム
「レ イ ン ?」
レイン
「ハッ……! フラムさん! 笑顔が怖いです!
僕は、ただイレーヌさんが心配で……」
小柄な方の少年は、赤面と焦りの混じった顔を両手で隠しながら必死に否定した。
『恥ずかしがり屋でも好奇心旺盛で悪者を退治するヒーローに憧れる。ロリティアナイツ最年少にして屈指のムッツリどスケベで魔物にも詳しい。二度の戦争を乗り切った実績により、どんな年少よりもスピード昇進を果たしている』
《性別:♂
イメージカラー:緑と橙
状況:祖国で小隊長を務める
外見:
髪はケビンよりも明るい緑でアホ毛があり背も低く童顔。少女に間違えられるときも、なくはない。あまり鎧を着こなさない制服でも緑を強調し、瞳の色と一緒な橙色の首巻からは健康的な鎖骨を覗かせる》
ポルトン
「そうだお! レインの言うとおりだお!
イレーヌさんなら大丈夫だお!」
フラム
「……それはいいんですが、なんで、
ここへ来てから食べてばかりのお前に、
豪語できるんですかねえ……?」
ポルトン
「だって、おいらも彼女を信じきって、
この島の人たちから、すっかり食事を、
もてなされちゃったからだお……///」
地面に鳴り響く重厚な音は、この男の足にかかる重みに度々呻いているようだった。
『大飯食らい。名誉や地位よりも五度の飯。体重は120kg超え。出自は、そこそこお金持ちのお坊ちゃんで、語尾に「お」がつき間抜けな感じを出すも、たくさんの人にも、お腹いっぱいになってもらいたく牧場経営を夢見る』
《性別:♂
イメージカラー:紫
状況:祖国で小隊長を務める
外見:
人によっては小動物のような親しみやすさを感じさせる丸顔で、健康に気をつけてか、もっちり素肌で清潔感が保たれている。耳にかからないぐらいの暗い紫の短髪で、はちきれんばかりの大きな鎧でさえ全身の隅々を覆えない》
レイン
「そうだねポルトン。手篭めにしても
手篭めにされても、いったい、
どんな感じなんだろう……もみもみ」
ポルトン
「レイン くすぐったいお!」
レインは、照れくさそうにしているポルトンの、ぽってりとしたお腹を、いかがわしい妄想をしながら、まさぐった。
感触が、女体のソレに似ているのではないかという妄想である。
フラム
「て、てて、てめえらっ……」
フラムの唇は、わなわなと震えていた。
?
「悪いな。どいてくれんか」
レイン
「あ、ごめんなさい」
レインとポルトンの間を遮って、面の渋い老人が森の奥地からやってきた。広い額と白い髭で覆った顔は日焼けしたように濃い。
ドーク大将
「おおこれはロリティアの皆の衆。
久方ぶりだな。
海賊どもは、あらかた追い払った。
あとは、この辺一帯と、
あの遺跡ひとつを残すのみだ」
ロンド
「え!? もう、やっつけたのか?
いつのまに、そんな力を……」
ドーク大将
「我々も力を蓄えていたからな。
以前、賊の討伐を手伝ってくれたように、
お前たちに頼りっぱなしにはできない。
まあ、せっかくの見せ場だろうから、
遺跡と剣の奪還と娘の救出は、お前達
ロリティアナイツに、おまかせしよう。
……どうした赤い御人。
なぜ泣いている?」
フラム
「い、いえ……! やっと……やっと、
まともに話が進みそうですから!!」
フラムが滝のように涙を流す横で、アーバインが槍を立てた。腰に負担がかからないようにしてか、若干もぞもぞとしている。
アーバイン
「王子! このわしに命じてください。
海賊どもなど敵ではありません。
一気に、けちらしてみせましょう」
ドーク大将
「しかし、あなたの顔色を見ていると
いくら戦っても、たくましくは
なれないと思われるが……」
フラム
「ええ! ええ! おっしゃる通りで!」
アーバイン
「それ、わしの常套k……」
フラム
「アーバイン殿!
さきほど腰痛が治まったばかりでしょう。
無闇に前へ出てはなりませんいやマジで」
アーバイン
「だがケビンよ。
戦で死ねるなら、本望ともいう……」
ケビン
「おじいちゃん。
フラムは、そっちです。
そっちの赤い方。俺は緑です」
アーバイン
「なーんての。冗談じゃよフラム」
ケビン
「あはは。
こっち向いてんのに、だれに言ってんだか」
フラム
「お願いです。もう心臓に悪いです。
マジで介護は、うんざりです。私たちとて
新兵ではないのですから、お任せください」
ロンド
「だけど遺跡の周囲には川が流れているし、
橋までには、かなり遠回りになりそうだぞ!
もたもたできないし、どうすればいい?」
ドーク大将
「そのことなら、この者に任せよ。
お前の出番だ! 出て来い!」
ドークは口笛を鳴らして、空に大手を振った。日差しの強い大空から、翼を生やし鋭い口ばしを持った魔獣の影が横切り、やがて騎士団の前まで降りてきた。
アーバイン
「グリフォンが一騎とんできましたぞ!」
ケビン
「この面子に飛兵と来れば……、
かわいこちゃんか!?」
わくわくするケビンのことはさておいて、グリフォンの騎手が槍を天にかざして自己紹介した。
モンス
「よっ おれ もんす!」
野生児だった。
『おそらく十代にも満たない野生児。すっとぼけた表情に一切の変化がないのは、モンスターから生きのびるために集中力を研ぎ澄ました動植物の本能に擬態した結果かもしれない。それでも信頼を寄せた友には、たとえ異国の人間でも家族以上の強い結びつきを、ことあるごとに期待する』
《性別:♂
イメージカラー:金と茶
状況:孤島で平和に暮らす部族の少年
外見:
あどけない丸みのある子供らしい顔付きでは、尖った鼻に点のような丸い瞳による、のっぺりとした個性が際立つ。雲のようにふかふかした金色の短髪を飾り、茶色い布切れを一枚羽織る》
ケビン
「…………」
アーバイン
「見慣れん顔じゃ。はじめてみるな」
フラム
「ああ、あなたたちは知らないんでしたっけ。
以前漂着したとき力になってくれたんですよ。
頼りになる少年ですよ。あなたたちより多分」
ロンド
「ひさしぶりだなモンス。僕は王子だよ」
王子はグリフォンに乗るモンスに握手を求めて手を上へ伸ばした。
モンス
「俺、思うんだ……」
ロンド
「何を?」
モンス
「どんなに長く離れ離れになってても、
ロリティアナイツなら
前みたいに、また一緒に戦えるって……」
ロンド
「そうだな……」
モンス
「…………」
ロンド
「…………」
モンスはグリフォンの口ばしに通した手綱を両手で掴んだままにいた。
モンス
「おまえらここに住ま……」
ロンド
「すまないな! 僕はメディちゃんと
平和で優雅でエクセレントな暮らしで
ロリティアの城に住む予定だから!」
王子は、いつまでたっても握手されない手で、お呼びでないといったように振った。
モンス
「めでぃたん……そっか。
めでぃたんが元気にしてるなら、それで
良いんだ。教えてくれてありがとな王子」
モンスは空を見上げ、王子より達観していた。
ロンド
「え、あ、うん、どういたしまして。
なんだよ、やりづらいな……。
大人気ないこっちが恥ずかしくなる」
中途半端な礼儀に王子は困惑した。
ドーク大将
「品のないことするな王子。
歩兵ならモンスの乗るグリフォンに
担いでもらえば海でも山でも越えられるぞ。
また無理をしたくないなら、
やや遠回りになるが、
騎馬兵に乗っけてもらって、
一気に迂回するのもありだろう。
自分に合った戦い方を選ぶんだぞ」
ドークは、すらすらと助言した。
ポルトン
「朝ごはんをがっつり食べた
おいらのお腹でも運べるのかお!?」
モンス
「朝飯前だぜ!」
レイン
「はえー、すっごい……もみもみ」
ポルトン
「レイン くすぐったいお!」
フラム
「はいはいはい! ともかくこれで進軍に
悩むこともないですね! では急ぎましょう!
もたもたしていたらイレーヌさんの命が!」
怒り気味にフラムが両手で叩き、皆の意識を遺跡に向けさせた時だった。
イレーヌ
「ちょっとーーー!
いつまで遊んでんのよーーー!!
真面目にやりなさいよねーーー!!」
しびれを切らしたイレーヌが影から飛び出し、川向こうにいる騎士団のところまで叫んだ。
キャプテン・イブリス
「てめぇ! そこにいやがったか!
中で、おとなしくしてろ!」
イレーヌ
「やだー! けだものったら!!
まだ、近よらないでー! 私、こまっちゃう」
キャプテン・イブリス
「待てゴルァ!!」
イレーヌは、掴みかかろうとするイブリスから軽く身を翻すと自分から遺跡の中へ戻っていった。
近くにいた部下から斧を無理やり取ったイブリスは、リトボントたちの呆れた表情を背にイレーヌの後を追っていった。
フラム
「……………………」
ロンド
「イレーヌからの合図が出たぞ! フラム!
音頭を取ってくれ! ……フラム?」
フラム
「すみません王子。
ちょっと一服してきます。
すこしばかり待っててください」
そう真顔で言ったフラムは川辺まで行くと、馬から降りて懐からパイプを取り出した。石を打つような音が鳴ってから、川の方へ向いた彼の周りに紫煙が立ち昇った。気を遣ってくれたのか、煙が王子たちに吹いてくることはなかった。
ロンド
「何やってるんだフラム……、
やる気あるのか???????」
アーバイン
「王子。騎士というものは、
胃に穴が開きかけたときにこそ、
一服が必要なのですぞ」
ロンド
「僕も一服してみようかな」
王子は間を作った人差し指と中指を唇に押したり引いたりした。
ケビン
「立派な王様になったらね」
フラム
「すぅー、ぱぁー……。
あ、どうぞ、つづけてください」
やがて落ち着いた様子で輪に戻ってきた。
王子は、やっと真剣な表情をして声を張り上げた。
ロンド
「よし! 皆いいか! 僕を守れ!
どんな手段を使ってでも僕を守れ!
このロリティオンに誓うんだ!!」
ローリス王家に代々伝わる宝剣ロリティオンのようなものが王子の腰から引き抜かれると天に掲げられた。
フラム
「え!? なんでロリティオンが二本も?」
ロンド
「あ、これ? 僕の手製。
昔、工作の時間に作ったんだ。
よく似てるだろ?」
フラム
「…………」
ロンド
「では、これより
最高で最強の作戦で遺跡を制圧する!
はいフラム!!」
騒ぎに気づいた海賊たちは、すでに陣を張っていた。
騎士団は布陣を整え、それぞれ一部を除き、鋼で出来た槍や弓を構えると次々に告げた。
フラムの激励が周囲に轟く!
フラム
「……そうですね。賊というのは、
いかなる時も救いようがありませんよね……。
全軍ー……、迎撃態勢を取れーっ……」
ケビンの槍が風を切る!
ケビン
「はあー、なんでよりによってイレーヌさんだけ
いないんだ。ああは言っても、こんな華のない
男臭い軍団で戦うとか参るぜまったく」
レインの弓が弦を音高く張る!
レイン
「あ、あの! 勇気を出して囚われの女性を
救いだした暁には、あ、愛のあるアレとか、
ききき、きす期待していいんですか!?」
ポルトンの鎧が甲高くジャングルに響く!
ポルトン
「魚のキスなら大歓迎だお!
愛と勇気よりも、まずは食べ物だお!!」
モンスのグリフォンが嘶く!
モンス
「俺。思うんだ……俺達、
これからも最高のコンビネーションで
戦えるんじゃないかって……」
アーバインの騎馬が主人の腰を労わって嘶きを堪える!
アーバイン
「貴様ら、やはり、たるんどるな!?
若造どもめ。こうなったら、わし一人でも
やってやるぞ! うおおおおおおお!!
グキッ……
こ……腰がぁぁぁぁぁぁ……」
見守るドークが感想を述べた。
ドーク大将
「こんなんで、ほんとうに救えるのか?」
フラム
「救いようがないのは、
こっちのほうだったみたいですね」
フラムは、いかなる凡人にも見られ難いような清々しくキリッとした表情のまま言いのけた。
ドーク大将
「え……お前さんは、
ロリティアナイツの人では?」
フラム
「ほんとはもう聖騎士なんですよ。
将来、私の泣きさけぶ顔が見えるようです!
( ゚∀゚) アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \ / \」
ドークは、フラムによる満面の笑みとは裏腹な心中を察すると、思わずたじろぎ同情した。
ドーク大将
「おお……ロリティアナイツ。
賊を払えるまでは
何とかもちこたえてくれ。
……死ぬなよ!」
ドークはモンスとロリティアナイツを残し、この湿地帯を後にした。
ロンドとアーバイン、フラムとケビン、レインとポルトンに原住民のモンスを加え、いざ7人の男たちによる女騎士イレーヌとロリティオンの奪還作戦が今、始まろうとした。