王子は手製の
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― よーしフラム! あらためて 僕たちの目標は? ―
フラム(P:ランスナイト W:スティアルランス)
― 遺跡を制圧して ロリティオンを取り戻すことです ―
ケビン(P:ランスナイト W:ジャベリン)
― イレーヌさんもな! ―
フラム(P:ランスナイト W:スティアルランス)
― 敵将のイブリスを倒して ロリティオンを取り戻すことです ―
ケビン(P:ランスナイト W:ジャベリン)
― …………
あたりには草木や根が息吹き、木々が葉を、さざめかせている。
それに紛れて複数の人影が、殺意を忍ばせる。
そいつら――海賊たちの多くは斧を持ち、傭兵は剣を、中には弓を持っているものもいる。
騎士の正装は、王子たちにとって相手を牽制させられるとともに警戒心を強めさせる効果があるのだろう。
敵には荒々しく突貫してくるものもいれば、その場で動かず、攻め入る隙を窺うものもいた。
まず王子たちは向かってくるものを、できるだけ一人ずつ相手することにした。
敵の狙いは王子である。王子が倒れさえしなければ、騎士団は火の中でも水の中でも日中戦えることだろう。
とりあえず王子は腰を痛めたアーバインを相談役につけ、護衛にフラムとケビンを傍においた。
海賊が斧を振るいに、やってくる。王子がアーバインの助言どおりに、ある男を前線に立たせた。敵の攻撃は、その鉄壁に跳ね返された。
イブリース団(E:パイレーツ W:ブロンズアクス)
― なんだこいつ!? か 硬ぇ! ―
ポルトン(P:アーマーナイト W:ブロンズランス)
― たくさん食べておいて よかったお! これを食らうお! ―
イブリース団(E:パイレーツ W:ブロンズアクス)
― おそいんだよお! ―
ポルトンを前衛にすれば、並大抵の攻撃は受け止められた。
しかし、いちじるしく遅さの目立つ彼では敵に攻撃を中々当てられない。
王子たちは木々の陰に隠れられるところまで下がった。
ジャングルには巨体が一人たたずんでいるため、敵には、ほとんどポルトンしか見えていない。
海賊が二人、三人とポルトンの鎧を破壊しようと夢中になり時々よろめいた。
レイン(P:アーチャー W:ブロンズボウ)
― やれる! ―
木陰にいるレインがポルトンの背後から次々と弓を射、海賊たちを怯ませる。その隙を突いてポルトンが槍を横へ振り払い、敵を散らした。
ポルトン(P:アーマーナイト W:ブロンズランス)
― レイン! あいかわらず頼りになるお! ―
レイン(P:アーチャー W:ブロンズボウ)
― こっちこそ! でもポルトン あんまり無理するなよ ―
目の前にポルトンの巨体があっても、わずかな隙間から射る弓の名手がレインだ。
イブリース団(E:パイレーツ W:ブロンズアクス)
― やれやれ こいつは人海戦術かなあ 野郎ども! ―
獣の鳴き声のごとき荒々しい足音が、ぞろぞろと近づいてくる。
ポルトンの巨体なら、複数の敵を一挙に相手取るぐらいわけはなかった。
前衛のポルトン、後衛のレインとで、おたがいに支援を得ながら、足場の悪い道に敵を誘き寄せつつ、しっかりと連携して一人ずつ薙ぎ払い、これを繰り返した。
とはいえ守りに強いポルトンとて、何度も攻撃を食らいつづければ、いずれは倒れる。
しかも遺跡のある陸地から川をまたいで、直接、王子の首を狙おうとするものたちもいた。
アーバインは腰に、ひいひい呻いている。
王子が、事前に彼から学んだとおり、モンスに指示を出した。
グリフォンが川にいる海賊たちへ甲高い鳴き声で牽制した。
騎手のモンスが空から迎撃しにいく。
モンス(P:ビーストテイマー W:スレンダースピア)
― 俺 思うんだ…… 川にいたら足元を掬われるんじゃねえかって ―
イブリース団(E:パイレーツ W:ハンドアクス)
― なめんな! ―
陸地よりも川に浸かっているほうが動きにくい。そのため海賊には斧を投げてくるものもいた。
モンスのグリフォンに一度は当たった。しかし翼は折れず縦横無尽に飛びかい、敵を、かく乱しつづけた。
武器とて振りかぶるよりは投げるほうが精度は低くなりがちだ。
モンスは野生の勘を発揮してか、海賊の腕が低いことを見切ると、ひょいひょい避けられた。しかし、たまに当たった。
この戦い方は安定しないため危険だ。
モンスは、確実に倒せそうな相手のみを優先に対処した。
討ち漏れた海賊たちが王子とアーバインのもとまで忍び寄ってきた。
ポルトンとレインは前線で敵の大群を食い止めている。
フラムとケビンの出番だ。
ケビンは得意の槍投げで
イブリース団(E:パイレーツ W:ブロンズアクス)
― てめえ! この卑怯もの! 近づけや! ―
ケビン(P:ランスナイト W:ジャベリン)
― 駆け引きに 卑怯も ないのさ! ―
命中こそ、あまりしないものの十分、援護にはなるだろう。当たれば御の字のギャンブラーらしいケビンの戦い方だ。
海賊たちがケビンの攻撃に手間取るうちに、フラムが一団に突撃した。
リーチの長い槍では、重みのある斧には弾き返されやすいという。
しかしフラムは卓越した腕前で、相性の悪さを物ともせず、ケビンの投槍に足止めを食らった敵の隙を確実に突き、一発一発を念入りに当てていった。
ブロンズよりもスティアルと名の付く武器の方が強力なこともあり、二人のコンビネーションに、数で勝っていたはずの敵は翻弄されっぱなしだった。
モンスによる川での陽動で、陸地に上がる頃には、傷を負ったり疲れてたりしたこともある。
フラムとケビンも、ときどき攻撃を当てられたものの、その勢いを落とすことはなかった。
海賊たちは次々と薙ぎ払われていった。
イブリース団(E:パイレーツ W:ブロンズアクス)
― なぜ お前には 当たらねえ!? ―
フラム(P:ランスナイト W:スティアルランス)
― 同期ですから ―
フラムにケビンの投槍が当たることはなかった。上陸した敵は全員倒れた。
数が多かったので、速さと立ち回りに優れても、それなりに二人も傷ついていた。
それでもケビンはフラムに、お疲れさん、とハンドサインにウィンクもすると、それにフラムは、雑魚でしたね、と敵の弱さに、ほくそ笑む余裕を持ってケビンに応えた。
そうしているうちに、ポルトンとレインが敵の猛攻に圧されだした。
ただちにフラムとケビンが騎兵らしく駆けつけ二人を担ぎ、戦線から距離を取らせた。
レイン(P:アーチャー W:ブロンズボウ)
― すみません! ―
フラム(P:ランスナイト W:スティアルランス)
― 十分 持ちこたえられたほうです ―
ケビン(P:ランスナイト W:ジャベリン)
― お前さん 痩せたほうがいいぜ 担げてるほうが奇跡だ ―
ポルトン(P:アーマーナイト W:ブロンズランス)
― お馬さん! ごめんお! ―
モンス(P:ビーストテイマー W:スレンダースピア)
― 川の方は 殲滅してきたぜ! ―
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― よくやった皆! あとは僕たちに任せろ! じいや! ―
アーバイン(P:パラディン W:シルヴァーランス)
― わし復活! いざ出陣じゃあ ―
白馬の聖騎士アーバインは、王子の介抱により、すっかり腰の調子を取り戻せていた。
アーバインは王子を背に乗せた。
前方にはポルトンの壁さえも退けた海賊たちが、何十人と武器を握りしめながら押し寄せてくる。
そこへ威圧をかけるように、アーバインが騎馬をけたたましく嘶かせてから、駆けぬけていった。
イブリース団(E:マーシナリー W:ブロンズソード)
― どうした!? 王子を狙え! ―
イブリース団(E:ハンター W:ブロンズボウ)
― 矢が弾かれちまう……届かねえんだよお! ―
アーバイン(P:パラディン W:シルヴァーランス)
― この不届き者どもがぁ! うおおおお! ―
アーバインは何十といる海賊を相手に、たった独り、騎馬を体当たりのごとく飛び跳ねさせては、縦横無尽に槍を右方、左方へと振る舞った。
スティアルよりも遥かに強力なシルヴァーでさえ一太刀振るえれば十分なところ、さながら無双と呼べる目まぐるしい勢いには、彼の猛攻を止められるものはおらず、あまりの暴れ馬ぶりには地面から数秒間、足をつけられない海賊たちもいた。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― いいぞー! じいやー! とべとべー! ―
アーバイン(P:パラディン W:シルヴァーランス)
― 王子ー! 幼き日の あなたと遊んだ たかいたかいを思い出しますぞー! ―
アーバインの通った道には嵐が通り過ぎ去ったように、多くの海賊たちと手放された武器が砂埃にまみれて放置された。
一人の強力な兵が多くの敵を一騎当千のごとく薙ぎ払うのは、ルエリア大陸の世界観では、よく見られる光景だ。
ケビン(P:ランスナイト W:ジャベリン)
― おいおい あの人だけ
ポルトンを運ぶケビンに、レインを担いだフラム、王子のいる空を巡回するモンスも、二人の後を追う形で警護を務めたものの出る幕がなかった。一陣を突破したら、あっという間に橋の入口まで歩いて数分もかからないぐらいの距離を詰めることができた。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― 皆も じいやのように 一人で十体 ノルマにしよう! な! ―
フラム(P:ランスナイト W:スティアルランス)
― ばか! 王子 余所見しては! ―
王子が後ろにいるフラムたちに余裕こいていた時だった。
王子の頭部めがけて横から投げ斧が飛んできた。
激突した王子は落馬し、身体を二転三転と強く打ちつけた。
跳ね返る斧が赤い飛沫を散らし、王子の顔や手足を、おびただしく頭から流れる血で紅に染め上げる。
さすがのロリティアナイツも立ち止まらずにはいられなかった。
アーバイン(P:パラディン W:シルヴァーランス)
― 王子ーっ!? グキッ ―
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― 頭さわさわ…… ぎょえーっ! ―
フラム(P:ランスナイト W:スティアルランス)
― ぎょえーっ じゃねえよ! 若干 余裕ありますね!? ―
王子は手に付着した血にショックを受けていた。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― だ だだ だれだ! ここ こ この僕にー!! ―
もうろうとする意識から、やっと捻り出された王子の言葉に応えてか、攻撃を仕掛けた本人が草の音を掻き分けて木陰から躍り出た。
VS:ロロ(B:ネイビー W:ハンドアックス)
『ああ……イーグル・キャプテン、
あなたは今どこにいるのか……それは、
ともかくあなたたちに負けっこないわ!』
髪の色がピンクで、両目の色が異なった女海賊だ。
彼女に続き、ほかにも次々と森から現れた海賊の一団に、いつのまにか騎士団は取り囲まれた。
レインとポルトンに頼まれ、フラムとケビンは担いでいた二人を降ろしたが、それで状況が好転するわけではない。
王子はモンスに顔を見やって空への避難を暗に求めたが、彼の指差す方角には弓兵が複数いた。グリフォンやドラゴンは弓に弱い。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― えーっと これは なんで こうなるんだろう なあ海賊ども 僕らは助かりそうかな ―
ロロ(B:ネイビー W:スティアルアクス)
― 話は後だ 皆! やっちまえー! ―
ロロが大声を張り上げたと同時に、海賊たちが一斉に飛び掛った。
王子も高らかに喉を鳴らした。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― 皆! 僕を守れ! ―
モンス(P:ビーストテイマー W:スレンダースピア)
― おお 王子 死ぬなよ ―
騎士団は海賊に揉みくちゃにされた。
簡単に敗れるような騎士団ではなかったが、海賊たちからの斧と剣と弓に無傷でいられるはずもなく、乱暴な小競り合いとなった。
イブリース団(E:シーフ W:ダガー)
― ぐはあああああああ ―
イブリース団(E:マーシナリー W:ブロンズソード)
― お前ら まだまだ 出るぞ! ―
いくら倒しても沸き出るように増援は現れる。
槍で薙ぎ払い、弓で撃ち、戦闘不能にさせた海賊たちを多くするたびに、騎士団の装着した鎧もボロボロになっていく。
フラム(P:ランスナイト W:スティアルランス)
― うわあああ この乱戦! もう戦略とか作戦なんて 結局テキトーなんですね!? ―
ケビン(P:ランスナイト W:ジャベリン)
― あんな かっこつけた見せ場作っといて これかよ! けど ただじゃ死ねねえ! ―
レイン(P:アーチャー W:ブロンズボウ)
― 囲まれましたー! 助けて! ―
ポルトン(P:アーマーナイト W:ブロンズランス)
― レイン! レインは おいらが守るお! ―
アーバイン(P:パラディン W:no item)
― 王子…… あなたにお仕えできて 悔いのない一生でしたぞ…… ―
ポルトンは打たれ弱いレインを傷つかないよう担ぎ、攻撃を一身に引き受けた。
フラムとケビンは、腰を痛めて身動きの取れないアーバインをサポートするように立ち回った。
王子はモンスのグリフォンに乗り込み、この困難を打破する糸口を模索した。
モンス(P:ビーストテイマー W:スレンダースピア)
― 俺 思うんだ…… リーダーさえやっちまえば 増援も止まるんじゃねえかって ―
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― それもそうだ! 皆は敵を引きつけてくれている 僕が やるしか…… って 危ないモンス! ―
イブリース団(E:ハンター W:ブロンズボウ)
― ひゃっはー! いい天気だぜー! ―
海賊が天高くいるモンスに次々と弓を放った。
しかし野生の勘が働いたか、モンスは何度も回避しては持ち替えたジャベリンを放った。
餌を目がけて捕えにくる鳥のような速さに、敵は弓を落としてドミノ倒しになった。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― すげえやモンスーん! 君に弱点らしい弱点は ないのか? ―
モンス(P:ビーストテイマー W:ジャベリン)
― あったら今日には死んでるぜ! んじゃ王子 くたばり底ないの生命力で 頑張ってこいよ ―
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― うわあー! こんな高所で降ろすなー! ―
グリフォンが宙返りし、王子が地面に叩き落される。
それと同時にモンスのグリフォンも不時着に近い形で体を引きずるように降り立った。
いろいろと限界が来ていたようだ。
ロロが何事かと振り返ると、砂ぼこりに塗れた王子が尻餅をつけて頭を撫でるように痛がっているのが目に飛び込んできた。
ロロ(B:ネイビー W:スティアルアクス)
― あいつ 不死身か!? あんな傷だらけになりながら…… まあいい 貴様が王子だな? おとなしく降伏しろ! そうすれば命だけは ―
ここまで仲間たちに守られてきた王子は、どうにかリーダー格のロロの下まで辿り付けた。身体を起こし、服についた汚れを軽く払い、ごしごしと両目を拭ってから、首をぶるぶると振って血を乾かし、レイピアを構えた。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― 海賊のクズめ! 僕が成敗してやる! ―
フラム(P:ランスナイト W:スティアルランス)
― お 王子! まさか自ら敵と!? ―
遠くにいるフラムたちに、単身、戦おうとすることを気づかれる。
しかし助けを求めている場合ではない。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― 皆が僕のために傷ついているんだ 僕だって やればできるというところ見せてやる! ―
王子とロロが戦闘を始めた。
王子のレイピアはロロを押しやるように前へ突く。
ロロは押されつつも斧の持ち手を盾に、金切り音を鳴らしながら着実に防いだ。
王子が一瞬やつれる。
ロロは斧を横に振りかぶると、王子の手元からレイピアを弾き飛ばした。
ロロ(B:ネイビー W:スティアルアクス)
― この前の借り! ―
ロンド(P:ロード W:no item)
― うわあアクション武器なしパターンだ! ―
横へ縦へ俊敏に王子の胴体を払いにくるロロの斧に、王子は、しゃがんだり横っ飛びをしたりバク転をしたり勢いをつけて前転したりして、お腹の皮膚を切られたこと以外、急所は免れ続けた。
ケビン(P:ランスナイト W:ジャベリン)
― だから王子!
ロンド(P:ロード W:no item)
― 言ってる場合かー! 僕には
フラム(P:ランスナイト W:スティアルランス)
― てめえら! 聞き慣れねえ用語での与太話は やめろ! うおっ ―
フラムたちは、剣や斧や弓を振るう海賊に手こずり、ツッコミのできる暇さえあまりないものの、そのうち陣形を組み直し、少しずつ冷静に海賊を処理していった。
一人でも倒れれば、すぐに戦況は悪化するほどだったので、一つ一つの手数を慎重に指揮しなければならない。
敵を倒し続けるだけなら難しくはなかったが、やりすぎると雪崩れるように敵からの攻撃を受けとめることになる。
そうなれば生きのび続けながら最後には倒されるという状況に陥るので、この増援を止められるかどうかは王子にかかっていた。
ロロ(B:ネイビー W:スティアルアクス)
― おのれ! うろちょろと…… しまった! 背を! ―
攻防の末に、王子はスライディングしてロロの背中を取った。
ロロが振り返る。
王子はついでに掴んだ砂をロロの顔面にかけ、全力で背を向け疾走した。
そして遠くに飛ばされたレイピアを拾い、途中道を阻む敵に対しては回転斬りをすることで二人か三人を振り払うと、お尻を叩いてロロを挑発し、そのまま遺跡に繋がる橋まで直行した。
ほかの海賊に邪魔されず一騎打ちに持ち込むためだ。
ロロ(B:ネイビー W:ハンドアックス)
― 目えええええ! 逃がすかあ! ―
やっと目元を拭えたかと思えば、あんまりな王子の態度に憤慨したロロは、ハンドアックスに持ち換えると王子の方まで強く投げつけた。
そこへ腰を痛めたままのアーバインが割り込む。
アーバイン(P:パラディン W:no item)
― おおおおおお不肖アーバイン 腰は折れても心は折れぬぅぅぅ ―
ろくに武器を持てずとも、もがくアーバインの意地に王子への攻撃は防がれた。彼の騎馬は制御されずに森の奥へと進んでいく。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― じいや!? ―
アーバインによる空元気な大声には王子も木陰に潜んで足を止めた。
ロロ(B:ネイビー W:スティアルアクス)
― ええい邪魔な! やはり直接! ―
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― 待ってくれ! まずは じいやが! ちょっと止まろう 話し合えないk あっ ―
あらゆる状況に気を取られるうちに王子は転倒した。
地面に密集する木の根が両足を引っかけ、王子の全身を痛ませる。
ロロは、ここぞとばかりに直ちに近くまで来、王子めがけて大ジャンプした。
ロロ(B:ネイビー W:スティアルアクス)
― ここで お覚悟だー! ―
空まで見上がった王子の視界に、もう一本の斧を振り下ろしにくるロロの姿が入ってきた。
王子は重くなりつつある身体を、どうにか横へ寝返らせた。
地面を揺らすほどの大きな音が王子の鼓膜に響いた。
ロロ(B:ネイビー W:スティアルアクス)
― しまった!? ぬけない ―
ロロは木の根に嵌まり込んだ斧を引き抜けずにいた。
寝たまま王子は、わずかに身体を浮かすと、軽やかに脚を円に描いてロロの足元へ蹴りこんだ。
バランスの崩れた彼女は頭を打ちつけた。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― 思い知ったか! 伊達に 憲兵の手で培われた 逃げ足じゃないから ―
寝転がる王子は、肘をついて拳に頬を置き、くつろいだような姿勢で、片足を四十五度に上げたり下げたりした。
ロロ(B:ネイビー W:no item)
― なにこの ムカつく!? 貴様ごときに私が……! いてて! ―
痛みによるものか王子の奇天烈な動きに悩んでいるのか、ロロは両手で頭を抱え、どうにか立ち上がる。
しかし斧を構え直したときには、すでに先に立ち上がっていた王子が、すれ違うようにロロの胴体にレイピアを切り込んでいった。
必殺の一撃だ!
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― ふう まだ やる気かい? ―
王子は自分の額を掻いて、いつのまにか乾いていた血の付着を確認したあと、ちょっと指で、こねくり回してから、ごしごしとズボンで拭いた。
よろめくロロが血を垂らしながら、王子に指差し、叫んだ。
END:ロロ(B:ネイビー W:no item)
『キー! またしても……、
イーグル・キャプテンさえいれば!
こんな、わけのわからん奴に~……!!』
致命傷を負ってしまったロロは、その場で倒れ、戦闘不能になった。
それを見届けた王子も、緊張感から解放されてか、どっと痛みが蘇ってきた腹部を抑えて、真後ろに倒れそうになる。
ロンド(P:ロード W:レイピア)
― ぐう 切られた痛みが も 持ってくれ僕の意識 じいやは…… 皆も無事か? ―
そこへ寸前で、アーバインが支えに来た。
アーバイン(P:パラディン W:no item)
― 王子ぃ じいやはここですぅぅ 皆も武運に恵まれたようですぞぉぉぉ ―
アーバインの呻き声と腰を叩く音に、王子は安堵した。
フラムたちも後に続き、駆けつける。
ロロ率いる海賊たちは、ロリティアナイツの手で、すっかり蹴散らされていた。
王子たちは今、橋の手前にいる。目標の遺跡も目の前にある。
まだまだ海賊が潜んでいると危惧した王子は一旦、皆を休ませるため進軍を中断し、ロリティオンのついでにイレーヌのことも心配しつつ、できるかぎり早く臨めるよう準備を急いだ。
■Point
[橋の周辺――木陰]
王子は木にもたれかかるように座り込んだ。手当てするのはフラムだ。
フラム
「王子! ……今日も
生きのびられそうですか?」
フラムは王子を気にかけつつも素直に喜べずにいた。主君が単身で敵と戦うことは極めて危ないことだからだ。王子の声は震えていて視線も中々合わない。
ロンド
「あああ当たり前だろ。ルエリア大陸じゃ、
よほどの致命傷を負わないかぎり、
僕たちのフィジカルは劣らないんだああ。
あーいてててーっ、お腹いたいよー」
王子のお腹に疲労感が集中した。
フラム
「頭じゃなく、お腹なんですか?
……勇者じゃあるまいに、あんな
アクロバティックな動きするからですよ」
ケビン
「王子……ロード・オブ・ザ・クラウンの
読みすぎだって。王族は生きのびるのが仕事、
騎士道なら俺たちで十分なんですから」
ケビンはアーバインの介抱をしていた。
王子は、おどけてみるものの歯を食いしばったような表情で強張ったままにある。フラムに持ち合わせの小道具で治療されているものの、お腹だけでなく、ちょっとでも頭や腕に触れられると、冷や汗を垂らし、ときどき小刻みに揺れることもあった。
ロンド
「僕は主人公……、
お前たちの主人で、公子なんだぞ……」
フラム
「はいはい……、強がらなくっていいんですよ。
こんな応急処置では気休めでしかないですが。
……どうか御身お大事に。
だれか!
元々バカンスの予定だったためか、わずかな備品のみで騎士団は、やり繰りしていた。
ポルトン
「持ってないお……レイン、
その髪の毛、薬草になれないかお?」
レイン
「なれねーよ!
……それは、ともかく、
さっきは助かったよ。ありがとうポルトン」
あまり傷つかずに済んだレインは、自分を守ってくれたポルトンの手当てをしていた。
ポルトン
「騎士団に入ったときからの友達だお!
当たり前で……、
ってレイン、何するんだお!」
レインはポルトンのお腹を叩いた。ぼよよんと揺れ、寂しげになるポルトンとは対照的にレインの表情は険しかった。
レイン
「甘ったれちゃだめだよポルトン。
こんな立派にも育った体格なんだ。
僕を思ってくれるのは嬉しいけど……、
僕との思い出だけじゃなく、
王子や皆を守るために、
これを働かせてくれなきゃ……もみもみ」
ポルトン
「レイン くすぐったいお!」
ポルトンは、すぐに機嫌をよくした。
フラム
「おやレイン。言いましたね?
では国に帰ったら、きちんと部下たちにも
示しをつけられますよね。今度視察しますよ」
レイン
「や、やめてください……。
いじめないでください……」
フラム
「は? だれがです?」
笑顔を崩さないフラムに、涙目になったレインは、しぼるような小声で応えた。
グリフォンの羽を繕い、ほか大木に繋いだ三頭の馬を世話するモンスが、草や根の開けた土の道に指を差した。
モンス
「王子、この先を進んだところに
集落が二つあるぞ。俺、思うんだ……何か、
貰えるかもしれねえ。訪ねてきたらどうだ?」
王子たちは、よく目を凝らしたものの、海賊の気配は感じられなかった。住民と事情を話せるなら、物資を恵んでくれるかもしれない。
ロンド
「集落? つまり村のことだな!
よかったレインの髪を食べずに済みそうだ。
けど僕だけ、ここで休んでちゃダメ?」
王子たちは人が物資を恵んでくれそうな場所を村と呼ぶことがあった。
フラム
「村への訪問と拠点の制圧は王子の務めです。
ここの集落に用があるなら道草食ってないで、
すぐ戻ってきて下さいね」
手当てを終える頃には、フラムの表情は真面目そうに戻されていた。務めが大体、王子の役割なのは要人とあらば話が早いからだろう。この孤島で、それが通じるのかは二人とも考えていない。
ロンド
「御身お大事にって言ったくせに……」
ロンドは落ち込みながら、フラムの目を覗き込んだ。
フラムも自らの強い意思が伝わってくれるよう王子に見つめ返した。
フラム
「心配されないぐらい強くあってほしい、
という話です。
務めをサボっていい理由にはなりませんよ。
道なら私たちが作ってゆきますから……」
フラムは視線を逸らした。表情も厳めしく、地面に置かれた拳が強く握られている。
ロンド
「フラム……怒ってるのか? なんで?」
フラム
「いいえ……不甲斐ない話です。
いまだに、あなたに剣を握らせるなど……」
フラムは、異世界から来た魔王軍と戦うため王子とともに従軍したことを振り返っていた。平和になった世界では、王家の繁栄のためにも、降りかかる火の粉を王子に率先して払ってほしくなかったからだ。ケビンの言ったように、騎士道を務まりきれない己の未熟さに反省せずにいられなかった。
ロンド
「はあ? つれないこと言うなよ。
僕だって半年前の戦争で、
一緒に戦った仲間なんだぞ」
王子は怒りや呆れや心配よりも純粋な疑問しか抱かないでいるようだった。そのことがまたフラムの決意を煩わしくした。
フラム
「そういうことでは……、
いえ、そういうことにしましょう。
どうせ、もうじき……」
ロンド
「? 変な奴だな。まあいいや。
おかげで大分、動きやすくなってきたよ。
ありがとな」
フラムの一時的な介抱により、王子の身体も大分、楽になってきた。とはいえ時々、歯を食いしばるような痛みが、腹部をはじめ頭にも重く圧し掛かった。
王子は背伸びしてから身体を起こすと、片足で膝を曲げ、両腕を前後に動かして走る物真似を、気の張り詰めたフラムに茶化すよう見せ付けた。無視された。
ケビン
「やれやれ。おじいちゃん大丈夫ですかい?
もう御年だってのに……いや、むしろ
俺たちが、まだまだって話なのかねえ……」
四つんばいになっていたアーバインはケビンに腰をさすられていた。ケビンの顔には笑みがこぼれていたものの、どこか哀愁を漂わせている。
アーバイン
「まったくもってその通りじゃ!
王子の聖騎士を今後も務められるのは、
わしのほかには グキッ おらぬぅぅぅ……」
ケビン
「ははは……。
こんなことなら聖騎士の鎧、
まだ彼女に預けるんじゃなかったな」
目を瞑るケビンの微笑みには、パートナーとの将来のこととか彼女の作る料理の香りといった思い出に浸っている。食卓を想像したところで口元を手で隠し、だれにも見えないぐらいの苦笑いをしたが、拭った頃には、また明るく彩られていた。
ロンド
「じいや……。
ちょっと無理をさせすぎたな。
皆も、お疲れ。まだまだだな僕も……」
ケビンは、その微笑みを王子に分けた。
ケビン
「お気になさらず。
こんなもん俺たちからすれば、
チュートリアルみたいなもんですよ」
ロンド
「と言いますと?」
ケビン
「次期国王陛下を導く、
宮廷騎士団としての前章!
……って感じですかねえ?」
ロンド
「うっしゃ。これからも頼んだぞ。
僕の
ここに一つしかないのが、全てだからな」
王子は誇らしげに自分の胸を、とんと親指で小突いた。
ケビンは笑顔で手をピストルの形にし、王子の胸を射抜くようなハンドサインで返した。
ブラックジョークに対しガード、ガードとのたまう王子に、フラムは王子と横並びに歩み寄り、二人へ交互に視線を向けた。
フラム
「……さっきから、なんの話です?
本来の意味とは別な……何かの俗語ですか?」
王子は、わざとらしく驚愕した。
ロンド
「フラム。まさか同人誌を知らないのか!?」
フラム
「だ か ら、なんなんだよ同人誌って!?
世界観に合わなそうな、聞きなれない
用語でたら全部それのせいですかよ!?」
ケビン
「若者向けのコンテンツだよ。楽しいぞ!
女の子もメロメロさ。トレンドなのさ」
ケビンは澄ました表情で目を輝かせている。
フラム
「いかん……。
まるで教育が足りていない……こいつら」
ロンド
「まあその辺の話はイレーヌにでも聞いてくれ。
さーて、と、敵は近くにいないようだし、
僕ちょっと村に行って来るよ。じゃあね~」
フラム
「あ。王子! 気をつけてくださいね!?
頭とか! 特に、どうかした頭とか!!」
王子は傷ついたお腹を片手で抑えながらも、もう片方の手で、いってきま~す、と元気よさそうに手を振りながら叫ぶと、道へ一人、先走っていった。
アーバインが王子のいる方角へ匍匐するのでケビンがなだめ、レインとポルトンとモンスが暢気に手を振り返したのでフラムは軽く教育した。
キャプテン・イブリスとの決戦に向けて、王子は皆を落ち着かせている間、集落で即席の補給を募ることにした。
■Point
[集落1]
前に島を訪れたときもそうだったが、集落の風景は平原や木々、洞窟や海辺といった環境に係わらなければ、家の数や形は、どこでも特に代わり映えしない。ここには先進的な文明の痕跡は一切なく、大陸の大都市のようにレンガの積まれた民家や石畳で舗装された道といったものはない、自然と共生している集落のようだ。
ルエリア大陸には、ただちに傷を癒したり病気を治したりできる、身体に良い天然の資産がある。
王子は即時的に回復できる、物資――アイテムを求めて日当たりのいい集落の中を、うろちょろしだした。
ロンド
「う~。村村~。
今、アイテムを求めて全力疾走している
僕は、この物語の主人公を務める、
ごく一般的なロリティアの王子。
強いて違うところをあげるとすれば、
小さくて素直な女の子が好きってとこかナ?
名前はロンド=ローリス。
そんなわけで、
この集落に、やってきたのだ」
王子である自分が何のためにここまで遠征しているのか、自分自身に言い聞かせながら王子は走った。今のところ人の姿は見られない。そんなふうに、ぼけーっとしていたところ、合間を縫うように印象的なものが王子の目に飛び込んでくる。
ロンド
「ふと見ると、
ベンチに一人の男が座っていた」
未開拓の島で場違いなベンチに座る男がいる。蒼い服を着こなしつつも、大胸筋からヘソまでをはだけさせたガタイのいい男だ。あきらかにこの島の住民ではない。
王子は釘付けになった。
男は、おもむろに胸もとをゴソゴソすると、それを王子に差し出した。
ボルクス
「いらないか?」
ロンド
「うほっ! いい漢方薬」
王子はボルクスから
『逆三角形の魅力を尊び、鍛え抜かれた身体を好む男。貧しい出自の反動により培われた筋肉から溢れ出るフェロモンには、周囲の男たちも奮い立たされずにはいられない』
《性別:♂
イメージカラー:青と肌色
状況:被災地での建築や商船での操縦を営む
外見:
素顔の表面には芸術的な彫りの深さが際立ち、逆台形とも呼べる優美な顎のラインを持つ。きめ細かな太い眉の下に備えられた両目には、黒漆を濡らしたような呂色が塗られていた。あけすけに曝された上半身に流れる枝分かれした河川のごとき影は、腰まで垂れ流した白い毛革のファーを取り付けた青い服に重ねられながら、具体化した漢の覚悟――筋肉を、より濃い墨の色で持ち上げるように表現してある。野太く色気のある声に加え、白い袖で包まれた二の腕から生えた前腕には光が照りつき、健康的に浮かび上がる血管を反射することで、この男のテクニシャンたる所以を強調しているようだ。髪は紺色》
ロンド
「ありがとう! これで再起を図れるぞ」
ボルクス
「その様子だと相当、我慢してたみたいだな。
ボルクスは、なめらかに揺れ動かした指で、自ら露出させたヘソのあたりを撫でている。
お腹を摩る王子の状況は一目で看破されたようだ。
王子は一歩後ずさった。
ロンド
「あ。そういうのはいいんで。
強引なセリフは嫌いなんで。
ここに来たのも回復するためだから」
ボルクス
「もう怪我しちまったのかい?
……いいこと思いついた。王子、
俺の座ってるところで小ベンチしろ」
ロンド
「小ベンチってなんだ!?
小休憩のことか!?」
ボルクス
「きっといい気持ちだぜ。
ほら遠慮しないで入ってみろよ。
俺のもといたスペースに」
ボルクスは、ゆるりと立ち上がる。生温かな湿気がベンチから逃れていく。
ロンド
「自分の座っていたところに座らせて、
回復させるなんて、なんて人だろう」
王子の顔は引きつっていた。
ボルクス
「感心するのはいいからさ。
そんな調子だと王子による治まりが
間々ならないと思うんだよな」
王子に歩み寄る。暖かな向かい風が王子の耳たぶを横切った。
ロンド
「ああいいんだよ僕まだ王子だし。
国を治めるには、まだまだ至らない
ことばかりだし怪我の一つぐらい大目に」
王子は苦笑いしながら早口になった。
ボルクス
「うれしくないこと言うじゃないの。
王なら故郷! 王子には将来、
民を、とことん喜ばせてくれないとな」
ロンド
「うわあ!」
王子はボルクスに抱きかかえられて移動させられた。
ボルクス
「どうしたい」
ロンド
(無理やり担がれて尻餅の湿ったベンチに)
「は、入られました……」
ボルクス
「ああ……出る頃には全回復だ」
ボルクスは王子の隣に座ると、ゆったりと抱き寄せるように、縮こまった王子の肩に腕を回してきた。
ロンド
「うわアッー!」
王子の傷と疲労が、瞬く間に癒されていく。
■Point
[橋の周辺――騎士団のいるところ]
王子は、やつれた顔で皆のところへ戻ってきた。
アーバイン
「王子!
なんて、お優しい御方だ。
じいやは嬉しく思いますぞ……」
ケビン
「おおっ! すっかり回復なさって。
どんなサービスしてもらったんです?」
うきうきとケビンが歩み寄るので王子は訴えた。
ロンド
「ベンチに座ってるだけで傷が一瞬で
回復するわけないだろ!!
バカなの? むっしゃむっしゃ」
ケビン
「え。唐突に何食って何いってんの
この王子……」
フラム
「うわあああ王子とうとう道草を食うを
現実にしたんですか……なんて、おぞましい」
アーバイン
「フラム! ケビン!
王子の正論に異論があるのか!?」
フラム &ケビン
「あるに決まってま……「せん!!」
フラム
「…………」
王子は沢山の
ポルトン
「いくら、お腹を空かしてても、
葉っぱは遠慮だお……」
ロンド
「
皆も使え! 僕だけヤなんだよ!!」
レイン
「こ、これが
なんか、じめってるよお……、それと
村を訪れるたびに怒るのやめてくれよ……」
ロンド
「あんなのは例外だし
ついでにいえば論外だ。次にイかすよ」
アーバイン
「そのイキですぞ王子!」
フラム
「最低だ……、最悪のチュートリアルだ……」
モンス
(こいつあ面倒みきれねーぜ!)
イイ思いのできるわけでもない大怪我に弱い男たちは、7人分の