――あるところに 宝を 集めるのが 大好きな
王さまがいました
王様は 異国の宝が 大好き
うわさを 聞きつけて ある日 東の国から 商人が
やってきました
商人は 4つの宝を 王さまの前に 並べました
ならべられたのは ウツワ ツルギ モッカン
そして……マガタマ
めずらしい宝を 目にした 王さまは 飛びあがって 大喜び
たくさんの金貨を 商人に 与え 4つの宝を
ゆずってもらいました
王さまが 宝を 手にいれた その夜……
王さまの城は 災いが ふりかかり 一夜にして
壊れてしまったとさ――
「その妬み、いただくぞ」
おとぎ話は「本当にあったこと」だった。
4つの宝は長年に渡り様々な人間の負の感情を纏っていた。
かつてパルデアを収めていた王の欲望にあてられ、遂にポケモンの姿となって飛び出したのだ。
「燃えろ、燃えるがいい、全て燃えてしまえ」
独裁的であったが王の権力により栄えていたパルデア帝国は、樹木に閉じ込められ、氷雪に押しつぶされ、地割れに飲み込まれ……
そして業火に包まれた。
「パルデアの王を始め愚かな人間どもよ、わらわがポケモンとして誕生したのはお前達のお陰じゃ、感謝の炎を受け取るがいい」
その口調や空中で足を組みながら、独特の高笑いをする姿に、全く感謝の念を感じない。
炎を具現化させた色彩を持つ派手な着物を纏い、雨も降っていない真夜中に傘をさす外観は、それこそたった10歳か、11歳程度の少女にすぎない。
が、彼女は数多の呪いを宿した異国の宝、4つの内の1つ、勾玉から生まれ出たポケモン。
炎纏いし妬みの化身、かつての人々は「イーユイ」と呼び畏怖の対象とし恐れていた。
「おおっ! 同胞達よ! ミヨホホ、全くその通りじゃなぁ! 人間の愚かさには笑いが止まらぬというものじゃ! どれ、パルデアを完全に崩壊させたら次はどの国を滅ぼすとするかのう? 逃げ惑うあやつらを眺めながら語らうとするか? ミョホホ♪」
宙に浮かぶ少女の元へ集ってきたのは、ウツワ、ツルギ、モッカン。
少女が「同胞」と、唯一対等の関係として見ている3つの宝は、すぐにポケモンの姿へ変化し大いに笑いあった。
もっと欲しい、恐怖の感情が。
まだ足りない、憎しみの感情が。
満たされてみたい、恨みの感情で。
「あの愚か者どもの妬みこそが、わらわの力となっているのじゃ」
ポケモンと化し災いを振りまく4つの宝、いや呪物への恐怖。
家や家族を奪った呪物への憎しみ。
呪物を欲望と大金に任せ、購入してしまったパルデア王への恨み。
「人間、お前は〝何故自分が? あいつは助かるのに自分は何で殺されるんだ?〟と思っておるな」
災いの勾玉、イーユイの少女は逃げ惑う者達の中から、気まぐれに選別し、その者達だけをスルーした。
選別されなかった者達はごく自然に、当たり前に抱くのは「何故自分なんだ……」という妬みの感情。
「簡単じゃよ、理由などわらわがより強い妬みを力に変換したいから! それだけに過ぎんわ愚かな人間め! ミョホホホホッ!」
妬みを抱いた人間達は炎の中へ〝還って〟逝った。
「火難だと思い諦めるがよいぞ、見逃してやった人間もじきにわらわの糧となるのじゃ、あの世で再会したら仲良く喧嘩すれば良かろうよ」
4つの宝はポケモンとなってから、好き放題に暴れまわり災いを振りまいていた。
自分達が誕生したのは人間が原因、全ては人間の招いた過ちだと喜び、あざ笑いながら国を崩壊させていった。
彼女達が糧としている感情を持つ人間を駒として扱い、限りない豪遊をしながらまた気まぐれで駒達を還していた。
この世の終わりだろう、国民の一人が嘆きながらも妬みの炎に包まれ、炎がイーユイの元へと吸収されていく。
「あぁ、いいぞっ♪ パルデアだけでこれだけの妬みが手に入るのじゃ、のぉ同胞達? そろそろこの国も飽きたであろう? 他国も攻め落としに行かぬか?」
もはや国民の数など僅かしか残されていなかった。
確かにパルデアは間もなく終わるが、国一つを沈めた程度で満足する4匹ではなかった。
ウツワも、ツルギも、モッカンも、口々に賛同する。
最後に残された数少ない国民、その全てを葬ってやるのが「礼儀」だと、4匹は行動を開始した――
「――ホッ、ホッ、ホッ……災いの宝よ、貴様らは少々お痛が過ぎるようじゃのぉ」
……パルデア上空に発生した巨大な渦、何事かと4匹は戦闘体勢となり迎え撃とうとしたが――
「なんじゃあ! あの鎖はっ!」
イーユイが叫ぶ、同胞達が次々と鎖を巻きつけられ封印を施されているのだから。
信じられない光景を目撃したイーユイは逃げる、逃げる、生まれて間もないがよもや、自分が逃げ出すことになるなど天地がひっくり返ってもありえない、筈であった。
「はぁ……はぁ……はぁ……わらわが背を向けて逃げているっ……ありえぬ、あってはならぬっ……」
イーユイは恐怖を初めて抱いた。
自分、そして同胞である宝に勝てる者など存在しないと思っていたのだから。
イーユイ達災いのポケモンは圧倒的な力を秘めており、パルデア国民から各々の感情を吸収し、さらに力を増していたが――
「自分よりも上の存在に追い詰められる、どうじゃ? 災いの勾玉よ? 貴様らがパルデア国民に植え付けていた感情を、今まさに貴様が抱く気分はどうなのじゃ」
「お前は! お前達は何なのじゃ!? わらわをどうしようというのじゃっ!!」
一人のポケモン使いである青年、隣には錫杖を持った少女の姿をしたポケモン。
青年はパルデアの危機に駆けつけた、高名な使いである、それはまだいい、共に行動をしているポケモンこそがイーユイ達の誤算であったのだ。
〝自分達よりも上の存在〟
「なぁに、最近の余は慈悲深いのでな、殺すまではせんよ。すこ~し、ホンの2000年くらいこの地へ封印するだけじゃ、反省期間としては充分であろう?」
「くだらぬ事をっ!! わらわを封印など出来る訳がないであろうっ!!」
悪意に満ちた波動、あくのはどう。
地獄の業火、れんごく。
4つの宝から誕生した、彼女達だけが使える破滅的な災厄を巻き起こす、カタストロフィ。
どれもパルデア国や人々を蹂躙してきた技であるが、どれだけ放とうと謎のポケモンは影の双翼で青年を守り、本人は全くのノーガードであるというのに、傷の一つも付けられなかった。
「ホッホッホッ、認めざるを得ないであろう? 貴様がどれほど強い力を内包してようとな、神には勝てぬ、抗えぬ、よい勉強になったであろう」
イーユイは言葉も出なかった。
何でもいいから助かりたかった、誕生経緯から4つの宝はどれも自意識過剰で傍若無人、自分達こそが生物の頂点だと信じて止まなかった。
「だがこれが現実じゃよ、貴様らは世の中を舐め過ぎたんじゃ、それではの災いの勾玉、イーユイであったか? 封印の祠の中で反省するがよいぞ♪」
「おっ、のっ、れぇぇっ! えええええええっ!! わらわはお前を必ず殺すっ!! 殺してやるぞおおおうあああああっ!!!」
パルデアの各地に封印の楔を打ち込まれ、封印の鎖で四肢を捕縛されたイーユイは、閉じ込められる間際に声を聞いたのだった。
「余を殺すのか? ホッホッホッ! 生きながらとっくに死んでおるわ! 残念であったな! もし封印が解けられても反省の色がないようじゃったら、余は何度でも貴様らを封印するつもりじゃからな?」
威厳ある台詞とは裏腹に、神である彼女の肉体はあまりにも幼かった。
「余はギラティナ、破れた世界の主にしてシンオウ三龍の一角じゃ、覚えておくがよい、ホッホッホッホッホッ~~~~~~~!」
神-ギラティナの笑みの直後、イーユイの世界は暗闇よりも黒い世界一色となった。
刻は流れ2000年後、もしかしたら2000年とちょっと後。
各所に災いの爪痕が残るも、パルデア地方は蘇った。
4つの宝は「おとぎ話」と伝えられており、信じる者は変わり者扱いされてしまう、実に平和な世の中となっている。
「レホール先生の話によれば、この祠の中に災いのポケモンが……みんな、準備はいいかな?」
「ハイ、ワタシは問題ございまセン。いつでも迎え撃てマス」
「オッケーだよマスター! マスターこそ〝アレ〟はポケットに入れてる? どうにもならなくなる前に、すぐ投げるんだよ?」
北二番エリア、みだれづきの滝が流れ出る険しい山岳の頂上内に、かつて8本の聖なる杭と鎖により、祠へと封印された災厄のポケモンは2000年以上も、眠りについている。
眠りから呼び覚まそうとしている少年と、少年が使役するポケモン達が祠の周りを囲んでいる。
最初こそ歴史担当教師、レホールが語る「おとぎ話」を流し聞きしていた程度であったが、伝承を探っていく中で徐々に「おとぎ話」と片づけられない真実であるのだと、少年、アムトは確信するに至った。
そして目の前には封印の施されていた祠がある、杭を全て抜き終わったので、祠の中に潜んでいる災いの一角のゲットを試みているのだ。
「祠の蓋を開けるぞ!」
アムトが特にメインとして扱っている、二匹のポケモンが前衛で、残りのポケモン達はやや後方で臨戦態勢となりながら、祠から飛び出して来た災厄の姿を目撃する。
「………………………………ミョ?」
寝ていた。
「2000年以上も封印されていたから、寝ていても不思議じゃないか。チャンスだぞみんな!」
寝息を立てている着物の少女には、揃いも揃って皆がコケそうなリアクションを取ったが、最初から眠り状態でのバトルはトレーナー側からすれば、実に好都合なのだ。
「ハッ! わらわは外界へ出たのか!? なんじゃなんじゃっ!? どうなったのじゃ!? まるで状況が理解できぬぞ!?」
2000年ぶりの日の光に外界の空気、2000年も刻を止められていた少女はパニックに陥っている。
祠の中で只管ギラティナへ対する妬みを呟いていたが、あまりにも封印されている期間が長すぎた。
いつしか妬むことすらも虚しくなってしまったのか、寝て起きては、やる事が無いのでまた寝る、それだけを行い時間を消費していた。
「うおっ、よく見たらめちゃくちゃ可愛いぞあの子……でも油断しちゃだめだよな、災いの勾玉-イーユイなんだから!」
「誰じゃお前は! ……人間の男……あの男よりも若いが男だとっ……ッ! うッ、うああああああッッ!! 妬ましいッ! ああっ、寝起きじゃったが戻って来たぞ、わらわを閉じ込めた忌々しいポケモン! そして人間の男ッ! 許さぬ……ッ、血祭りじゃあ……ッ! あの世へすら昇らせてやらぬわァァッ!!」
イーユイという災いのポケモンは、どんなに恐ろしい姿をしているのかと身構えていたが……あまりにも可愛らしかった。
燃える炎のグラデーションを纏うツインテール、金魚と炎を模した着物の膝丈は異常に短く、校則違反のミニスカートと化している。
コンビとなるのが黒のニーハイソックスだ、2000年も前にニーハイの概念があったのかは分からないが、アムト達の目には紛れもないニーハイとして映っている。
おまけに片足のみ鎖のガーターベルトを付けており、かなりセクシーな装いだ。
「何よりも……」
長らく封印されていた怒りにより、咆哮するイーユイ少女と向かい合うアムト。
彼は〝とある事件〟からパルデア地方を救った一人、ジムバッヂも全て所有しており、アカデミーでも優秀な生徒として殿堂入りされているトレーナー。
だがまだ16歳である、女性に最も興味のある年頃の少年に過ぎない。
(何よりも……おっきい! おっぱいデッカ!)
イーユイの少女は怒った顔ですら可愛らしいが、それよりもアムトはイーユイ少女の胸部を凝視していた。それはもう特性のおみとおしよりも、ずっと凝視している。
彼女の着物は袖が分離しており、着物なのに脇が露出されている。
小さな身体であるのに、胸部は不釣り合いなほどの巨乳で、伝説のポケモンとしての威圧感や存在感を、胸だけで主張している。
さらに間違いなく封印された時に巻かれたのであろう、聖なる鎖が胸部にも巻きついているので余計に強調されている、スケベっぷりだ。
残念ながら(?)彼女はさらしを巻いているので、横から生乳を楽に拝むことは叶わないのだが、さらしがあっても零れ落ち、ハミ出そうな程の巨乳なのでエロいのだ。
そんな思いがけないロリ巨乳イーユイは、片手をアムト達に向け指先、掌から禍々しく輝く炎を出現――
「むっ? わらわの炎はこの程度の規模ではないのだが」
まぁいいと、先制攻撃にしては強烈過ぎるであろう、災いポケモンの専用技であるカタストロフィを、アムトと手持ちポケモンらへと降り注がせる。
カタストロフィは、つのドリルやじわれと同じ一撃必殺技だ。
操れる負の感情は災いの4匹でそれぞれ異なる、妬みを司るイーユイのカタストロフィに飲み込まれた瞬間、対象の妬みが増幅され身体が持ちこたえられる「容量」をオーバーさせてしまい、廃人にさせる最悪の技だ。
そう、〝2000年前は〟そういう効果だった。
「なんて強烈な技なんだっ!」
「ハイ、ワタシ達の体力がソロッテ半分ケズられてしまいマシタ」
「悪タイプのいかりのまえば? これだけでやられる事はないだろうけど、回復する手間がかかっちゃうから次は避けないとね!」
「?????????」
おかしい、人間もポケモンもカタストロフィに飲み込まれれば、確実に仕留められた筈なのに何故かアムトらは倒れてもいない。
イーユイは困惑する、自らの象徴ともすべき技があまりにも弱体化しており、それどころかれんごく、ねっぷう、あくのはどうなど、持ち得る技の全てが2000年前とは、威力も範囲もまるっきり違うのだから。
「まさかっ! わらわの力は長年の封印で弱りきっておるのかっ!!」
そのまさか、である。
ブレードを携えたメイドのようなポケモンにも、前髪で片目を隠しているポケモンにも、悉くイーユイが放つ技が当たらないわ、楽に耐えられるわ。
「返せっ! わらわの力を返すがいいっ!!」
「そんなこと言われてもっ!? レホール先生の言ってた通りだ! 封印で相当イーユイは弱ってる! Ai、みねうちだ!」
「ご承知致すのデス、ワタシのご主人サマ」
かつての自分とはかけ離れた戦闘力、技を使っては困惑していたイーユイは「自分が相当弱体化している」と、歯軋りをしながらも認めざるを得なかった。
いくら伝説、いくら災厄のポケモンでも長年の封印により、彼女はレベル1にまで下がってしまっている。
カタストロフィはダメージこそ与えられるが、最大体力の半分まで、それだけで対象がやられる心配は絶対にない。
他の技は普通に避けられるし耐えられている、危機感を持ったイーユイの懐へ潜り込んだのは、ブレードを携えたメイドポケモンだった。
「あいたぁぁ!」
「申し訳ゴザイマセン、文句はご主人サマに言ってクダサイマセ」
シルバーメタリックのボディに、マゼンタカラーの入ったブレードが映える、彼女(彼?)の繰り出したみねうちにより、イーユイの体力は一気に1にまで追いやられた。
みねうちはバトル用の技ではない、捕獲用の技である。つまり――
「マスター! 今だよ!」
前方に垂れ下がった鶏冠-前髪、背に翼を生やした制服少女がチャンスであると、マスターであるアムトへ叫んだ。
何が起きてもいいようにと、アムトはポケットにマスターボールを忍ばせていたが、驚くほど簡単にイーユイの体力を残り僅かに出来たので、他のボールでも捕獲できるかもしれない。
大量に用意しておいたボールの中から、紅白のボールを取り出しすぐにイーユイへと投げつけた。
「いっ……けえぇぇぇ!! 捕まれええぇぇぇえっ!!」
「ハッ………………………………」
――アムトが投げた軌道は正確に、イーユイを狙いボールは開いた。
ボールの中へ吸い込まれたイーユイは、当然抵抗する。
ボールは何度も何度も揺れた、時間にして10分は経過していた、これだけの抵抗は類を見ないのでアムト達は、固唾を飲み見守る事しか出来なかったが、永遠と思わせるだけの緊張も走っていた。
……やがて太陽が沈み始めた頃に、観念したのか、それともボールの中で疲れてしまったのか、ボールは静止し中央の開閉スイッチも、点滅を止めた。
パルデアが誇る優秀なトレーナー、アムトは見事に災厄が一匹、イーユイをゲットしたのだ。
「わらわが人間如きの……手下になってしまったというのかああああああああああああ」
支配する立場から、支配される立場になってしまったイーユイ。
彼女はこれからどうするのか……何処かで反転神の笑い声が聞こえた気はするが、恐らく空耳であろう、多分。
イーユイちゃんのイラストがありますが、封印前は鎖や頭の杭などはありません。
R18にならない程度にイチャラブしていくつもりです。
自分のTwitter見てたら、今作の情報とか分かるかも?