オレンジとグレープ。
二つの果物を紋章にした創立805年の私立学園。
パルデアの都市、テーブルシティにそびえ立ち、学園都市としてエリアゼロに並ぶ最大の名所にもなっている。
そんな学園に二人の新入生がやって来た、一日限りの、であるが。
「ねぇねぇ……私の制服姿、どうかな……?」
「人間! わらわはどんな服でも似合うであろう? 褒めろ讃えろ拝めひれ伏せ! ミョホホホッ!」
災厄の二匹を是非見たい!
イーユイを捕獲したと報告してから、歴史担当教師のレホールがウザいくらいの量のメールを毎日送り付けて来るので、そろそろ行かざるを得なくなったのである。
あの教師は何をしでかすか分からず、探究心が限界突破したら学園も生徒も放り出して、何処かへ出かけでしまうなどの行為を頻繁にしている、問題教師でもある。
良いところも多いのだが、それ以上に奇行が目立つので校長の悩みの種だ、なんでクビにならないかは不明だ。
クビにした方が面倒な事になりそうだから、教師という首輪をつけて学園が管理している、と噂されている。
どうせ学園に顔を出すのならば、一日だけでも体験入学して貰いたいなと、イーユイ姉妹を連れて来たのだ。
「二人とも似合ってるよ!」
アムトも久々にアカデミーの制服を着用している。
学園指定の制服の種類は非常に多く、制服のベースが残れば改造も可能と大らか過ぎる規則がある。
(似合う、けど……やっぱり胸が……特注サイズじゃないと入らないけど、間に合わなかったの……許してね)
カザナは普段からブレザーの制服だが、実はアカデミーの制服を改造したものである。
それも憧れの先輩ポケモンがブレザーを着ているから、意識をしたものらしい。
では、気になる災厄姉妹の制服と言うと――
「やった……♪ 制服も可愛いよね、これからも色々なお洋服着てみるね♪ アムトくんに全部見て貰いたいな♪」
くるりと身体を一回転、激短スカートがふわっと浮かび上がるから、アムトはとっさに視線を下げる。
周りにいるのがイツメンだけで良かった、ありえない程に短くしたスカートからは、黒の紐パン(しかもTバック)が3秒も見えてしまっていたのだから。
その短さは校則違反だろう、アムトは指摘したくても出来なかった、ちなみにギリギリセーフだったりするので、校則違反になるには全裸にならなくてはならない。
「フンッ、似合うのは当たり前じゃ、わらわはどんな服でも似合うのじゃ!」
シャルルはエッヘンと、腰に手を当てて胸を張る。
これまた妹に対抗するかの如く、バカみたいに短いスカートである……短すぎて、歩くだけで紅い紐が見えたり見えなかったりする。
メイユィはセーラー服がベース、シャルルはブレザーがベースだ。
それぞれオレンジのスカーフ、紫のリボンがおっぱいの影響で水平になってしまい、常にテーブルへおっぱいを乗せている状態と等しく、カタパルトみたいになっている。
乳カーテン化も果たしているので丈が足りず、おへそまで見えてしまっている。
お肉が乗ったムチムチのニーソックス、お肉が足りてないほっそりニーソックス、超ミニ丈との組み合わせは凶悪だが二人は普通に着こなしているだけだ。
胸が大きすぎるあまり、色々な箇所の丈がとにかく足りない、足りなくなってしまう。
学園にはまだ精通もしていないであろう、年齢一桁の少年も在校しているが、「目覚めさせて」しまわないかも不安である。
「ううっ、苦しいのぉ……少し開くぞ」
「私も……我慢してたけどやっぱり、んっ!」
二人してブラウスのボタンは全部付け(させられて)ていたが、やっぱり苦しかったようでボタンを次々に開放させてしまう。
まぁ、今外さなくても先にボタンが音を上げていただろうが。
シャルルは中心からボタンを3つ、メイユィは真上と真下のボタンを外し、圧迫感が多少軽減された……のはいいが。
「……二人とも、それでナニかを挟んだりとか、ナニかを入れたりしないでね、絶対」
物凄く如何わしい行為をする恰好にしか見えないので、アムトは忠告に忠告を重ねるが肝心の部分はボカすしかないので、イーユイ姉妹はクエスチョンマークである。
「お前はこの服を着ないのか?」
五人の中で唯一、学園指定の制服でない者……Aiである。
「ハイ、ワタシはメイドですので」
振り返ってもメイド服以外のAiを見た記憶がない。
彼女の部屋のクローゼットにはメイド服以外が収納されていない。
風呂上りもメイド服、寝る時もメイド服、まるでメイド服と一体化してしまっているのか?
「一体化しているのナラバ、ワタシは常にゼンラと言う事になるのでしょうカ?」
「いや、それは分からないけど……偶には他の服を着たっていいのに」
「ワタシはご主人サマのメイドさんですので」
制服姿の生徒達を暖かい目つきで眺めながらも、彼女はそこだけは譲らないようだ。
「ウッ……………………………………ヒョォォォォオオオオオッオオオオオッおおおおお~~~~ぉぉッッ~~~~♡♡♡♡」
例の教師、レホールへと早速イーユイ姉妹を見て貰うのだが……
おおよそ教師、いや、人間とは思えぬ奇声を学園中に轟かせながら、股を両手で抑えてアヘり笑いながら接近してくる女。
彼女は未来に関する話題は興味がない、だが古代の事となるとクールさが微塵も無くなって、ハイテンションになってしまう性格なのは周知されているが……
「災厄が一つ! いや二つ! 災いの勾玉ぁぁぁっああああっ~~~~んっ♡♡ お母さん初めて見ちゃったよぉんっ!! 生きている内にホンモノと出会えちゃうなんてマジでウッヒョオオオオオ~~~~ッッ♡♡」
「なんじゃコイツはっ! 離せっ! 燃やすぞっ!! 燃やしても近づいてくるぞっ! なんじゃお前っ~~!!」
「……アムトくん、この人って結構ヤバい感じなのかな? 厄はとり憑いていないんだけど……」
二人を抱きしめようとし逃げられ、涎を垂らしながらギン目で二人を追っては二人に逃げられる。
シャルルは人生で三度目の「逃げ」になったが、よもやこんなくだらない事で背を向けるとは、祠に封印されていた2000年間でも予想は出来なかったし、出来る筈がない。
「コライドンさんを見た時でも、ここまでハゲシクはなかったですヨネ」
「他の古代パラドックスポケモンを一通り見た時だって、こんな酷くはなかったよ……先生が古代ポケモンよりも獰猛になっちゃってるじゃん」
楽園事件を解決した際に、Ai以外のパラドックスポケモンも一通り保護する事になったが、未来のポケモンには一切の関心がなく、古代のポケモンを見せたら暴走モンスターと化していたレホール。
彼女はパルデアに封印された災いの宝を探し出して、封印を解こうともしていた危険な女である。
校長から止められていたが、アムトを上手くそそのかせて調査を頼んでいた、本当に災いの宝を捕まえてくるとまでは思っていなかったらしい。
「災いの勾玉は二つあったのかっ!? みがわりでも何でもないぞっ! 隠されていた古文書に乗っていたりするのかっ!? こんな事実は恐らく誰も知らなかった筈だっ! パルデアの歴史に亀裂が入った大事件だぞこれはっ!!」
メイユィが生まれた過程までは話していないので、「実は勾玉は二つ(8つ)ありました」という事にしている。
四つん這いになって高速で這う女教師など、他の生徒やポケモンには絶対に見せられない。校長にバレたら流石に檻の中である。
「アムトぉ! 譲ってくれとまでは言わんが定期的に私に見せに来い! この二人の経過観察は貴様に任せるが、ンッヒョッヒョヒョヒョッ!! 貴様でも分析しきれない場所を隅から隅までたっっっっぷりっ! 私が調べ上げてやるからなっ!! 分かったなっ!!」
(おい人間っ! アイツにわらわの炎が効かんのはどんな理屈だっ!? 不死身なのかアイツは!)
(アムトくん……私あの人あんまり好きじゃないかも……ダメなのに……負の感情が生まれちゃうよ……)
シャルルは最初からこうなると分かっていたが、陽なエネルギーが99%を占めるメイユィにまで、苦言を呈されるのは相当である。
それでいて相手との力量差を弁えて、自分では従えられないと自覚があるから、より面倒なのだ。
「もうヨロシイでしょうか、レホール先生?」
「ふぅ……………………ああ、今日のところはもういいぞ、ご苦労だったなアムト」
未来のポケモンであるAiが声をかければ、自然とレホールの暴走状態も解かれていき、賢者タイムの如く顔つきでクールに去っていく。
「先生の部屋はここなんだけど……あの人から出てってどうするんだろ」
突っ込み足りないが、今日は歴史の授業はお休みの筈なのでトイレにでも行くのだろうか?
Aiには嫌な役回りを任せてしまうが、彼女は稼働してから数ヶ月、でも大人なので自ら引き受けてくれている。
「教室に行ってみよっか?」
最大の関門はクリアしたので、残りの時間は学園生活を楽しんで貰いたいのが、アムトの計らいである。
授業を受ける、とまではいかないが学園を見て回るくらいなら、シャルルも賛成してくれるだろう。
「うん! 私に何かあったらアムトくん……守ってくれる?」
「つまらなくなったら途中で帰るぞ、もうあの女のような怪物はいないんじゃろうなぁ……? 安心できんから人間、わらわから離れるでないぞ」
シャルルは渋々とした感じだが、制服は気に入ってくれたらしく「学生食堂がある」と聞き、瞳を輝かせていたので途中で帰る事はなさそうだ。
別に大食いではないが、和洋折衷を胃袋で学ぼうとし始めたのは、マスターとしても悪い傾向ではない。
ただ、つまみ食いや盗み食いが多いのはシャルルらしいが……やらすのは間違いないので、やっぱり一緒に行動した方が安全だ。
「んっ!」
「んしょっ……」
イーユイ姉妹に挟まれたアムトは、動きづらそうに自分の教室へと歩き出す。
右には99cmを、左には104cmを、学園でも一番と二番にデカいおっぱいの持ち主は、未だにレベル1だが伝説のポケモンだ。
「うお! アムト久しぶ……オイッ!? その子達が噂の災厄ポケモンかよっ! うっ……おっぱいデッカ……」
「か、可愛い……右の子は美しくて左の子は尽くしてくれそうで……頼むアムトぉ! 俺のポケモンと交換してくれ! 足りなければ俺の身体でも支払うからっ!」
「なぁアムト……お触りってアリか? マジで何でもするから1分! 1分だけでいいからその子達のアレやコレやを解析させてくれぇ~~!!」
パルデアの英雄が、久しぶりに学園に戻って来た。
クラスメイトは言わずもがな、在校生も教師達全員も彼を心待ちにしていた。
アムトだけでもちょっとしたお祭り騒ぎなのに、災厄ポケモンと伝承に語られる存在を二匹も連れているのだから、何百人もの生徒達がアムト目掛けて群がって来る。
男子生徒は「おっぱいがデカい」だの「何カップくらいなんだろう」だの、開幕セクハラ発言の嵐だ。
女子生徒も大半は「可愛い」だの「一緒に写真撮りたい」など友好的な発言だが、中には「胸が大きすぎて羨ましい!」「制服の着こなしがエッチすぎる!」と、妬みの感情を抱いてしまう者まで……
「ミョホホホッ♪ 妬め妬めっ! わらわの糧となるがよい! 思わぬ収穫じゃなぁ! これだけ人数が多ければそれだけ妬みの感情を抱く者がおる、はぁぁ……~~♪ 美味いのじゃぁ……♪ 学園とやらも悪くないなぁ♪」
「アムトくん……私怖いかも……アムトくん以外の男の子と何かするの……嫌……」
堂々と胸を揺らしながら高笑いするシャルル。
基本ダウナーかつ姉とアムト以外には、強く出ることの無いメイユィは人だかりに参ってしまい、アムトの背に隠れながらビクビクする。
「あっ! カザナちゃんだー! ねぇねぇ後で勝負しようよー!」
「Aiさんも来てくれたんだ! 私もお手合わせお願いしたいです!」
アムトの最古参メンバーにして、パルデアを救った英雄の手持ちとして、カザナの名も世に知れ渡っている。
元より「世界を旅する」を目標にし、パルデアのみならずカントーやホウエンの地へ降りたった経験があるのも、アムトのお陰なのだ。
Aiは希少種、パラドックスポケモンという話題性があり、一時期よりはマシだがやはり人気が高い。
(今日はそのつもりじゃなかったんだけど……まぁいっか! シャルルちゃんとメイユィちゃんは、マスターに任せれば大丈夫かな?)
「望むところでゴザイマスデス! お夕飯の仕込みは出来ておりマスので、夜通しお相手フィーバーしちゃいまショウ!」
「夜まではいないからねっ!? 夕方までだからねっ!?」
もみくちゃにされている中でも、愛嬌を欠かさないAiは他の未来ポケモンと決定的に違う。
(私らが戦ったテツノブジン、Aiとかけ離れてる残虐性の高い子だったのに)
色違いでもあるし彼女は何かとイレギュラーの中のイレギュラーなのだろう。
学園で争いごとが怒れば、教師や生徒会が速やかに出陣してくれるし、イーユイ姉妹はアムトから離れたがらないので、誘われるままカザナとAiはアムトに許可を取って、ここからは別行動となった。
(進みづらい、シャルルとメイユィが人気なのは喜ばしいけど、ここまで集まって来るとは……一人ずつ登校にすれば良かったかな)
ボールに戻って貰う事も提案したが、シャルルは「あの中は嫌じゃ!」と拒否し、メイユィも「アムトくんに腕を組んで貰いたい」と拒否したので、どうにか人混みをサバいて教室へ辿り着く必要がある。
女子はともかくとして、男子生徒は隙あらばおっぱいに手を伸ばそうとする。
気持ちは大いに理解できるが、やはりセクハラ行為なのでアムトが身を挺してガードする義務がある。
まあ、触れたら触れたで消し炭にされてしまいそうだが……そのくらいの力は二人に残されているのだし。
制服姿の姉妹とエッチをするイベントはないと思います