驚いたことに、俺の暮らすここロアナプラは世界で最も危険な悪徳の巣窟だと呼ばれているらしい。
ロアナプラは確かに先進国の首都レベルのスーパーハイテク都市ではない。酷く言葉を選ばずに言えば、東南アジアの蒸し暑い島である。ゲリラ豪雨はしょっちゅうだし、人種も言語もごちゃ混ぜである。ついでに言えばたまに見た目はおっかない黒尽くめの集団に出くわすこともあるだろう。だが、俺から言わせてもらえればその程度だ。
俺とて結婚こそしていないもののこう見えて一国一城の主人である。俺がここに家を建てたのは20年は前のことだが、それにしてもよくもこんなにいい土地を買えたものだと思う。俺が家を建てたときは周囲に家らしい家もなくて寂しい孤島暮らしかと思いきや、ご近所さんは意外とすぐにできた。ご近所さんは驚くべきことに俺の知り合いが多かった。俺を追ってきたとか
何とか言っていたがまぁそれは良いだろう。とにかく、お隣さんができたことが嬉しかった。
お隣さんはなんと会社をこの島に作ったらしく、俺だけじゃ輸入することもできなかった生活を便利にする品々を格安で下ろしてくれたり、たまに不用品だからと車やテレビをくれるようになってお陰様で俺の生活水準は加速度的に向上した。
お隣さんの会社の他に、お向かいさんが建てたという会社のおかげで街も賑わうようになってきた。俺は特に何もしていないのに感謝されることもあったがお隣さんのお姉さんからお酒を奢ってもらって良い気分だったので適当に聞き流してしまってよく覚えていない。
お向かいさんからご挨拶に伺うと言われてご丁寧にと驚いたが、会ってみたら知り合いだった。未だに俺が先輩風を吹かせるために見栄張ってプレゼントに送ったグラサンをかけていることに驚いた。相変わらずグラサンを外すと可愛い顔をしてた。
後から話を聞いたところによるとお隣さんとお向かいさんは実業家同士で競争していたらしい。どんな感じだったんだ?と聞いたところ、ドンパチだったらしい。確かに、言われてみれば花火の音が頻繁に聞こえるようになったのは彼らの消費者サービス競争の音だったらしい。たまに家の屋根らしきものが吹き飛ぶことがあって何事かと思ったが花火だったらしい。安全対策にも気を配って欲しいものだ。
さて、話が逸れてしまったが俺が住んでいるここはどうやらロアナプラ一番地一号と呼ばれているらしい。自分で言うのも何だがハードな人生を送ってきた俺としてはこうして定住できたことにはとても嬉しく思っている。これからもロアナプラでの生活が穏やかに続くことを願うばかりだ。