ネタBOX   作:ヤン・デ・レェ

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ミカサの血の始祖になるやつ。


「ヒイズル国ルート」進撃の巨人

 

 

「ハァっ…ハァッ…ハァっ……」

 

ガサガサガサッ!

 

「いたぞっ!!こっちだ!!」

 

「おいおい!あの獲物は早い者勝ちだぞ!!」

 

「おっと教えなきゃよかったぜ…まぁ、もう虫の息だ!生捕にすれば使いまわせるから問題ねぇよっ」

 

「ギャハハ!ちげぇねぇ!!ほらほら!逃げろ逃げろ!」

 

「…ッグゥ!…ハァっ!ハァっ!……」

 

海沿いの岩場を一人の女が走っていた。

 

少しでも早く走れるようにと手足を千切れるほど必死に振って。

 

何日も寝ていないのがわかる乾き切り血走った瞳を一杯に見開いて。

 

肺が潰れかけ、喉が擦り切れて血が口元を垂れた。

 

喉まで伝って乾いた血がささくれ立ち、また血が口から溢れた。

 

裸足の裏は真っ黒に汚れている。赤黒い血豆や鋭利な石に引き裂かれた足の裏は見るに耐えないほど化膿し醜く爛れている。

 

涙を搾りきり、いや、涙に使う水分すら惜しいほどに体は干あがっている。

 

心臓の鼓動は不規則で弱々しく、しかし激しく打ち鳴らされている。

 

身体中が汗と泥と垢に塗れ、排泄物は垂れ流している。

 

だが、女は美しかった。

 

もはや左右を判断する余裕すらない女は、死んでいてもおかしくない距離を駆け抜け、幾度とない悪路を越え、尚も進み続けていた。

 

女に帰る場所はない。全て奪われてしまった。

 

だが、女は走った。逃げた。駆けた。進んだ。向かった。

 

止まらなかった。立ち上がった。諦めなかった。

 

女はどうしても見たかった。全て奪われてしまっても、全てが終わってしまったとしても。そこで全てが失われるとしても。何も持たないこの身を汚されることになろうと、その先に誇りも尊厳も、心すらも踏み荒らされて奪われてしまったとしても。

 

それでもいい、だからどうか見せて欲しい。

 

あの青い、一面に広がる果てなき群青を。

 

ガクリと足に感じる違和感、足の骨に岩場の岩が突き刺さったらしい。肉を穿たれた女の表情に苦痛はない。

 

ずぶりと波に削られて出来た石の穂先が神経を伝って計り知れない痛覚を脳に訴えるが、女の表情は動かない。

 

即座、力任せに腿を上げて足裏の肉から石を抜き取ると傷を気遣うこともなくまた進む。

 

後ろから迫る罵声やガチャガチャとした人殺しの道具の奏でる金属音など気にならない。前へ、前へ。

 

「ヒュー……ヒュー……ぁぁ…やっと…つい…た」

 

女の脚が止まった。

 

か細い呟きが落ちた先は崖の上。後一歩でも進めば真っ逆さまに堕ちるだけだ。

 

「ハァハァ…手こずらせやがって…?おい!アイツを見てみろよ!」

 

「ぜーぜー…へへへっ!どうやら堪忍したようだな…」

 

「いぃや、あいつあそこから堕ちて死ぬつもりじゃねぇか?」

 

女は崩れ落ちるように震えながら立つ両足から力を抜いた。

ぼんやりと波の音が聞こえる。

 

追っ手の声など聞こえない。追っ手が女を逃さぬよう囲みながらジリジリと女に近づいてきても何も感じない。

 

恐れも、悲しみも、怒りも、喜びも…。

 

女は涙を流していた。

 

「……ぁ…き…れ…い…だ」

 

女はただ、美しいと思った。

 

女の乾き切った瞳からは止めどのない涙があふれていた。

 

夕陽が沈む、地平線の先は何があるのだろう。

 

女にはひとつだけ夢があった。それも、逃げている内に生まれ夢だ。

 

「……わたし…は…うみ…の…む…こう…を…みた…ぃ…」

 

だが、その夢ももう叶わない。

 

「へへへ!おい!もう逃げられねぇぞ〜」

 

「オラァ!死にたくなけりゃさっさとこっち来いや!!」

 

「おい!こいつみてみろ!クッセェなぁ…へへへ…だけど顔とカラダはいいモン持ってやがる!」

 

「おうよ!俺が先に見つけたんだかんな!さっさと洗って死ぬ前にイッパツくらいやっちまおう!」

 

すぐ真後ろまで来ていた男たちが両脇から女を捕まえる。無理やりに立たせられるが、もう足にも、どこにも力が入らない。

 

「………」

 

女の顔はもう何色も映さなかった。いや、映さないはずだった。

 

「……?おい!なんだぁ?その顔はよぉ!?」

 

「!?ップ!こいつ!今更睨みつけてきやがったぞ!」

 

「おぉ!やる気になったんじゃねえか!いいぞいいぞ!やれるもんならやってみろや!」

 

「ッッゥゥゥゥウッ!!」

 

言いたいことがあるなら言ってみろ、両脇から体を玩具のように揺さぶられながら女は最期の力を振り絞る。

 

「……ッッ!!わたしは!お前達なんかに怒ってるんじゃないんだよ!!わたしは!!!」

 

女の声がビリビリと岩に反響した。

 

「わたしには夢があるんだ!!あの海のむこうに何があるのか!!見たいんだ!!なのに!!この世界ときたらわたしから奪ってばかりじゃないか!!!」

 

喉から出るはずのなかった言葉が、死んでいたはずの心から怒りが、乾いた瞳からは涙が、何も映さなかった顔には怒りが。女は死の際に生き返ったように、失ったものを、奪われたものを取り戻すようにもてる全てを解き放った。

 

「世界は残酷だッ…私に与えるだけあたえて全てを奪っていくッ!!!」

 

「わたしはもうこの世界を愛さないと決めたんだ!!!」

 

「この世界に望まないと決めたんだ!!!」

 

「この世界を信じないと決めたんだ!!!」

 

女の怒りの覇気はいつしか悲しみと嗚咽と困惑と歓喜に震えていた。

 

「なのに…なのに…なのにッッ!!!」

 

女の瞳には理性の光が灯っていた。輝かしい光だ。

 

「どうして今更になって私に美しいと思わせるんだ!!!」

 

「唖々ッッッ!!!この世界は残酷だ!!」

 

「残酷なほど美しいよ!!!!」

 

女は自分から全てを奪った世界を、最後の最後で憎みきれなかった。

 

「………ほんとうに…綺麗だ」

 

女の潤んだ瞳には夕日に照らされてチラチラと燃える海の斜光が眩んで見えた。

 

もう悔いはない。

 

女は自分でこの崖から落ちて死ぬのも悪くないが、最後まで抗ってやろうと心に決めた。

 

力の入らない手足に文字通りなけなしの命を吹きこんで。

 

愛おしく美しいこの残酷な世界を私の死骸で汚すのは勿体ない…。

 

女は瞳を閉じて生まれてからこれまでの事を思い出していた。

 

意識がハッキリとしている。自分から走馬灯を観ようだなんて思う奴もわたしくらいだろう。

 

小さな集落で生まれ、生まれつきの不思議な力で人を癒したりしていたら巫女として村を治めることになった。

 

家族は優しい両親。兄弟はいなかった。自然が友達だった。

 

幸せな日々はあっけなく崩れ去る。西から来た蛮人が私から全てを奪った。暴力を持たない私の小さな村は驚くほど呆気なく燃え滓になった。昨日まで仲良く暮らしてきた家族や村の人々はみんな動かない肉の塊になっていた。

 

一人隠れていた私の目の前で父と母が最も簡単に殺された。頭がおかしくなりそうだった。そして直ぐに私は壊れた。

 

火がチロチロと揺れていたっけ。生まれ育った家も、手入れをした畑も…ヒトも。全部真っ黒になってゴロゴロと転がっていた。

 

なにか悪いことでもしたのかな。

 

なにも悪いことなんかしてない。

 

あぁ、懐かしいなぁ。しあわせだった。つまらない毎日があんなにも幸せだった。

 

跡形もなく壊れ切った私は逃げた。逃げて逃げて逃げて逃げて逃げた。

 

走って、休まずに進んだ。

 

朝とか昼とか夜とか…そんなのはもう関係なかった。

 

女の声も男の声も関係なかった。音がすれば飛び起きてただひたすら東へ、東へ。

 

故郷からさらに東へ。私の全てを壊した奴らは皆んな西からやってきたから。離れたかった。

 

誰か…誰でもいい。

 

誰でもいい!誰か私を助けて!!

 

世界は残酷だ!!私はフラフラと退屈そうに空を舞う蝶のままでいたかった…。あのまま死ねたらどれだけ楽だったろう!!

 

いつか見た蜘蛛の巣に囚われた蝶が少しずつ貪られていく様子が脳裏にこびり付いてる。

 

なんの変哲もない自然のありよう。あれが普通。

 

だから…私が全て奪われたこともただの普通なの、かな。

 

残酷な世界だ…でも、海を見れた。

 

あぁ…綺麗だった。

 

…さようならは済んだ。さぁ、今度はいってらっしゃいの番だ。

 

「……この世界は残酷だッ!!」

 

女は今一度駆け出そうとした。

 

そして駆け出すことはなかった。

 

 

 

 

 

 

ニョキリ

 

 

「へ?」

 

私のことを囲っていた男の一人が宙を待っていた。

 

鳥の羽がフワフワと空を浮遊するみたいに軽やかに。軽やかに、男の体は私の視界の外れへと消えていく。声を出す間も無く男は崖から海へ真っ逆さまに落ちていった。男の断末魔はか細く息を呑むような音だったろう。ぽちゃん。小石を深い水溜りに投げ入れるみたいなゾンザイな音が響いた。

 

「!?!?だッ!誰だテメェぇぇ……うぁぁ?!!」

 

「……」

 

次の瞬間に起こったことも私の理解の外のことだった。男が崖の下から這い上がってきたのだ。そして、男は私の両脇の男を片手にひとりの要領でそれぞれ持ち上げると、あの日目の前の男達が私の家族にしたように、いとも容易くその命を奪ったのだ。

 

簡単なことのように。人2人を片手間に、ほんの瞬きする内にあの綺麗な海に放ってしまった。

 

ああぁぁぁァァァ………

 

男達の声を一際大きな波の音が飲み込んだ。煩いぞ。静かにしろ。お前達はそんなこともできないのか。と、責め立てるみたいに。怒っていないのに、けど煩わしそうに、呆れた様子で男達の小さい命を飲み込んでしまった。

 

何てことだ。私はどうすれば。

 

振り上げた拳を落とすところを見失った私はヨロヨロと今度こそ座り込んでしまって立ち上がれそうになかった。

 

「…俺はドラコ…旅の者だ。海の向こうから来た。」

 

「……?!」

 

突然の一方的自己紹介と海の向こうから来たという夢のような言葉にただでさえ力が入らないのに今度こそ気を失いそうになった。

 

そういえばどれだけ寝てないんだろう…。

 

「……満身創痍だな…俺が背負うから少し休んでいなさい。」

 

「…ぅ、ぅえ?!」

 

気が抜けた私の体は軽々と男に背負われてしまった。

 

私の父は私が巫女として村のために働くようになってからあまり会いに来てくれなくなったっけ…。

 

今はもういない家族の事を思い出しながら私は微睡に身を任せた。

 

 

 

 

「……ん…あぁ!……痛い」

 

がばりと勢いよく体を起こした私はあたりを見回した。身体中に突き抜けるような痛みが目を覚ましてくれた。足の裏からの痛みが特にひどい。

 

ふと目を落とすと汚れの落ちた身体がそこにあった。

いつの間にかご丁寧に髪の毛まで小綺麗になっていた。

 

…そういえば、あの男はどこにいるのだろう。私の疑問に答えるように、上半身を起こした私の正面から影が近づいてきた。

 

「目が覚めたか?」

 

あの男だ。…どうして私の体を綺麗にしたのか分からない。さっきの男達のように私を汚すことが目的なのかもしれない…だが、それにしたって私が起きるのを待つだろうか…。

 

私は頭の中がグルングルンとごちゃ混ぜになってしまった。ふと男の顔を見上げると体がカッと熱くなるのを感じた。

 

な、な、なっ!わ、わたしはなにを感じているんだ!!

 

得体の知れない男に感じた安心感故の高揚というかなんというか。そんな頼りがいのある何かに縋りたいという衝動的な思いに体が勝手に動きそうになってしまった。

得体の知れない男だ。おまけに海の向こうから来たというではないか。

 

「………」

 

「………何か傷口を覆えるものを持ってきた。水で冷やした葉だが…まぁ無いよりは良いと思う。」

 

無言の私に構わず脱力した私の腕や足に瑞々しい葉を被せていく男。ひんやりとした清涼感が過熱気味の思考と体を冷ましてくれた。

 

「………」

 

「……無理に話さなくてもいい。…何があったのかは分からないけれど、何かあったのは理解できるから…。その、さっきの男達とは戯れていただけだったというなら申し訳ない事をした…」

 

「違う!!」

 

尚も無言の私に男が言ったことは私の命を救ったことに対しての謝罪のように聞こえた。もちろんそんな事はないのだけれど、なんというか兎に角謝られるのは嫌だった。彼が私の命を救ったという事実は揺るぎないのだから。

 

「……そ、そうか。なら、よかった。」

 

強く言いすぎたかもしれない。彼は目を丸くすると安堵の表情を浮かべた。

 

「……こちらこそ…ありがとう…アナタのおかげで私は今も生きていられる……」

 

私も彼の反応に警戒心を緩めて素直にお礼を伝えられた。彼のこれまでの言動には敵意も下心も感じられない。心配が過ぎたのかもしれない。少し気恥ずかしかった。

 

「…そうか…。俺のことも話すから、少しだけ君のことも教えてくれないかな?」

 

「……」

 

私の警戒が緩んでいたのも束の間、彼の口から出てきたのは少し性急なお願いだった。勿論、彼の言いたいこともわかったが、私はまだ混乱の中で右往左往している気分なのだった。だから少し待って欲しい、そんな気持ちもあって言葉が出なかった。

 

「……もちろん今すぐにじゃなくていい。君が十分回復して、心も体も落ち着いてからでいい…そのぅ、俺もここに着いたのは今日が初めてでね…何もわからないんだ…なにせさっきの岩場の真下に漂着したもんだから…」

 

…彼は私を思い遣りつつも申し訳なさそうに最低限の信頼を互いの間に交わそうと努力してくれたのだと、そう今わかった。それはそうだ。確かに性急にもなるだろう。彼の事情を聞いた私の頭の中の片付きようと言ったらあっという間の言が正にピッタリなほどだった。わたしは彼へ勤めて穏やかにハッキリと告げた。

 

「ミソギ」

 

「…え?」

 

えっ…それは私の台詞だった。…まさかこんなにも簡単に自分の名前が出てくるなんて私の方が驚きだった。久しく言葉らしい言葉も碌に発していなかったのに…私は会話と、普通の何かに飢えていたらしい。私は自分の思っている以上にこの男を受け入れているらしかった。

 

「…私の名前。ミソギと呼んで。」

 

…自分の名前を呼んでくれ。そう言ったのは初めてかもしれない。村でも同年代の女はほとんどいなかった。…男もいない事はなかったが、碌に目も合わせてくれなかった。…それでも大切な毎日だった。

 

「…あ、あぁ!俺はドラコ。ドラコと呼んでくれ!」

 

もう戻らない時間を頭の中で慰めるように思い出してしまった。そんな私の沈んだ気持ちを払う様に、彼、ドラコは微笑を浮かべて名前を教えてくれた。

…名前を呼んで欲しいと言われたのもアナタが初めてなんだ、としみじみと感じてしまった。

普通の会話。心が弾む様な落ち着かない気持ちだ。

でも…悪くない。

 

「うん。わかったわ…どら、こ…であってる?」

 

カタコトに近い、聴き慣れない名前をすぐに口に出す。それだけでも私は心の深い部分ですっかりドラコに気を許してしまっている。…あ、またドラコと心の中で呼んでしまった…まぁいい。

 

「あぁ!みそぎ…であってるか?」

 

ドラコは私の名前をカタコトというよりは味わう様なゆったりとした音調で口に出してくれた。私は素直に嬉しかった。他の言葉は無粋だろう。

 

「……えぇ…これからよろしくね?」

 

よろしくね。アナタはきっとこの残酷な世界が私に唯一与えてくれた存在なのだから。

 

「あぁ。よろしく。」

 

ドラコは私に手を差し出し、私はその手を今出せる全力で握った。離すまいと、そう心から願って。出逢ってから一日も経っていないのに私の中にはすでにドラコという存在が棲みついていて離れなくなっていた。私の全力の握力を前にしてもドラコの表情は涼しいままだ。いや、何処か嬉しそうに微笑んでいる。…笑みの表情は何とも言えない、言葉にできないほど魅力的だ。…私も案外コロッと堕ちてしまうような女なのかも知れない。それはそれでドラコとの出会いが私の知らない私を私に教えてくれたという事だろう。

 

…さはあれ、私の前途は今までにないくらいに意気揚々と希望に満ち満ち溢れるのであった。

 

 

 

02 没

 

 

堆く積み上げた屍に火をつける。パチパチなんて生やさしい焼けかたではなくて、耐え難い悪臭を発しながらごうごうと燃えていくのだ。

 

私がドラコを連れて故郷へ帰ってきた時すでに亡骸の群は醜く腐敗していた。あんまりなことだと思う一方でちっぽけな存在であることを再認識させられるようで胸の奥が痒くなった。目を背けたくても、目を隠すよりも先に反射的に鼻を押さえてしまった。

 

ふと隣の男に目を向けた。人の死に直面したというのにドラコはただ口元を一の字にきつく結んで動じてはいなかった。

 

腐乱し焼け焦げた故郷を前にして呆然とするのは仕方がなかった。ただ血を流して倒れた体や苦悶に喘ぐ顔はまだ良い。跡形もない骨だけならばそれもまだマシだと思う。

 

肉が残っているとそこにウジがわいて卵をうみつける。土の下から這い上がってくる小さな生き物たちもわらわらと群がってくる。そうして土に戻される。

 

そういうものが世界の循環の一つだと頭で理解していたからといって納得できないのが人間だ。私もそうだった。

 

早く焼くなりしなければならないとわかっていても、単純な感情が邪魔をする。臭い、汚い、気持ち悪い…。どうして痛い目を見た上にこんなことの始末までしなければならないのか…。文化的な、人間的な、理性的な判断や行動の前に本能や咄嗟の激しい感情が分厚い壁となって立ち塞がっている。

 

立ち尽くしている私を置いて、ドラコは黙って前へ進んでいった。

 

ただ黙って、時折顔を顰めながらも腐った死体の中を探索しては燃え残った木材なんかをもってきてそれを何とか組み合わせて台状にした。

 

朝日が登っていたから臭気はより濃くなり、羽虫がうるさい。ドラコが三つ目の遺体を持ち上げようとした時やっと折り合いをつけた私も彼の元へ走った。

 

崩れ落ちそうな体を慎重に運び台の上に置く。その間にも燃えそうなものを探してきては積み上げていく。

 

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