ネタBOX   作:ヤン・デ・レェ

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チェンソーマンで速攻思いついたけど、なんかモヤモヤしてしっくりこんかったからヤメタ。宦官になるよう迫られる話。


「愛ゆえに殺意」チェンソーマン

 

 

 

「私は君のことを心から愛している。朝も昼も夜も関係がない。君と出会ってから今日で丁度一年だ。この一年間私は片時も君のことを忘れたことがないと断言できる。四六時中頭の中で君を想っている。今だってそうだ。だからこうして君を壁に追い詰めて息がかかるほどに近くで話しかけているんだ。私の顔を見ろ。私の瞳には君しか写ってないだろう?そうだろう?私は君が欲しくて欲しくてたまらないんだ。君だって分かっていたから私と一緒についてきてくれたんだろう?」

 

首元にヒヤリとした切れ味を感じる。偃月刀に類するようなナタのような刃物が首の薄皮を切ったからだ。

 

壁に押し付けられた体はガッチリと彼女の手で抑えられている。ひ弱な僕の膂力を遥かに上回る彼女の力が伝わってきて、どうしようもないと諦観を抱きそうになる。まだ目覚めてから1時間もたっていない。今日は最悪の日だ。

 

 

 

 

朝起きてすぐに同棲中の彼女からナイフを手渡された。そして彼女は言った。

 

「宦官って知っているかい?私は男が無理なんだ。でも君は欲しい。だから私だけの宦官になってくれ。宦官になると女性的になるらしいからな。あぁ権力欲に塗れてガツガツとした性格に変わっても私は構わないよ。むしろ去勢してそうなった君になら私の体をいくらでも好きにしてほしいくらいだ。」

 

僕は勿論断った。そして、壁に追い詰められて冒頭に戻るというわけだ。

 

夢なら覚めてほしいね。

 

 

「さて…もう一度聞くぞ。君には今二つの選択肢がある。」

 

喉に刀を当てられながら耳元で囁く彼女の瞳は漆黒に満ち満ちている。希望の光など到底期待できそうにない。

 

「一つ目は自力で生殖器を切除して私への愛を示すこと。二つ目は…」

 

二つ目の説明を前に彼女は私の耳元から顔を離すと目と目を合わせて満面の笑みを浮かべながら僕の局部をムギュりと握りしめた。

 

「い"っっっっ!!!!」

 

僕は咄嗟に首に押し当てられた刃の冷たさすら忘れて自由になった両腕で股間に食い込む彼女の手を離そうとした。

 

何をするんだ!という非難の意思を込めて彼女を睨め付けようと眉に力を入れた。だが、僕の怒りは直ぐに消え去ってしまった。

 

「…そして二つ目は、私が代わりに君の生殖器を切除することだ。」

 

何かドロドロとした恐怖が込み上がってきた。怒りは呆然に変わり、呆然は焦りに変わった。

 

逃げなきゃ!!!

 

僕は彼女に勝てない。今こうして首元に刀を押し当てられている状況で何ができるかなんて分からない。足掻いても容易く組み伏せられてしまうだろう。

 

けれどッ…それは自身の分身を愛した女に切り落とされる理由にはならない!!!

 

「さぁ、答えを貰おうか。」

 

僕は答えられない。どうしてこうなってしまったのかと生産性のない現実逃避がチラつく。

 

僕の逡巡を疑問と解釈したのか彼女は僕にいつもの優しい笑みで語りかけてきた。

 

「切り落とした後のことを不安に思っているのかもしれないが何も心配はいらない。私とて刃物の扱いには一流の自負があるし、止血も君より断然得意だ。」

 

全く優しい内容ではなかった。僕たちの間にはいつの間にか埋められない溝が生まれていたようだ。残念でならない。もしも君が僕を人間として愛してくれたなら僕は君と添い遂げたいと心から願っただろう。

 

「………沈黙は肯定と受け取るよ。私が代わりにする。それでいいんだね。」

 

無論、愛のために分身を喪失するのも一つの儀式か何かなのかもしれない。だけど、僕は女でも男でもない存在として君のそばに侍るつもりはないんだ。

 

僕の決心がついた時。彼女は僕のズボンに手をかけると共に刀を一度傍に置いた。僕を押し倒そうというわけだ。

 

だが、僕はこの時を待っていた。

 

「…!!」

 

ガシ!!

 

「………どういうつもりだ?自分で切る気になったのか?」

 

僕はパンツ一丁で彼女の刀を何とか手に取ると彼女に向き直った。彼女とて人の生き死にの判断くらいはできる。だから尚更ハッキリとデモンストレーションしなきゃならない。

 

彼女の言葉は僕の耳に届かないが、僕は彼女に一方的に告げた。これまでの穏やかで幸せな日々をぶち壊してくれた彼女へのほんの少しの怒りも込めて。

 

「…僕は君に僕という人間を愛して欲しかったよ。願わくば添い遂げたいと思ってた。悲しいけど君にそのつもりはなかったみたいだけれど。」

 

「……その刀を下ろせ。君が私に勝てると思っているのか?今なら何かの勘違いだったということにする。」

 

彼女は僕が立ち向かうために凶器を手にしたとでも思っているようだ。たしかに其れだけならまだ良かったな。ただの喧嘩だったなら良かったよ。

 

だが、もう戻れない。さようならだ。

 

「……僕は君に去勢されるくらいなら君の元を去ることを選ぶよ。僕のことを愛してくれる人は他にもいるはずさ。君のことを愛してくれる人もね。だから今日でさようならだ。」

 

僕は深く息を吐くと刀を躊躇なく腹に突き立てた。

 

「グぶっぅぅぅ………」

 

「ッ!!待て!待ってくれ!!」

 

異常を理解した彼女が僕の方に駆け寄るがもう遅い。

 

「死ぬな!!しぬな!!何故!悪かったから!!私が悪かった!!だから死ぬな!!イクサ!!死ぬな!!…そばにいてくれ!!」

 

もう既に彼女の声など耳には届いていない。

 

つぎは故郷の日本にでも行こうかな…そんならことを頭の片隅で考えながら男は最後の力を振り絞り刀を横隔膜に向けて引き上げた。

 

「ざよゔならだ…クァンシ…」

 

 

 

 

「…………」

 

何を間違ったのか私はよく分かっていない。だが、私が間違っていたということだけは明らかだった。

 

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