ネタBOX   作:ヤン・デ・レェ

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これ書いたら満足する程度だった我が侘びしきドイツ欲よ…。


「ドイツ満喫するやつ」東京喰種

 

 

「俺、ドイツ行ってくるわ。」

 

「……へ?」

 

突然の彼からの言葉に気の抜けた声が出てしまった。

 

彼はいつものように年季の入った黒革のトレンチコートを羽織るとデスクの上の私物を纏めて何の迷いもなくその場を出て行ってしまった。

 

私、真戸呉緒は、他の同僚達と共に驚きの余り口をあんぐりと開けたまま男の背中を見送ったのだった。

 

 

 

 

 

突然のことで悪いのだが、俺は仕事が嫌いだ。

 

どのくらい嫌いなのかと言うと、仕事をサボるためなら何の迷いもなくドイツへの高飛びを実行する位には仕事が嫌いだ。

 

例え、俺がカタコトの、しかも英語しか話せないような語学の素養を誇っていたとしても、である。

 

うちの職場では事務仕事が無事非常時関係なく職務の基本だ。

 

調査やら、報告書やら、感謝状やら、告別式への参加不参加の提出、不参加なら理由を提出やら…あとは…えーと…まぁ事務仕事だな。

 

告別式とか何とかって出てるからわかるかもしれないが、あんまり平和な職場ってわけでも無い。ついでに福利厚生も微妙だ、だけど給料はいい感じだ。

 

…言っちゃ公務員だな。憲法に書いてるだろ、ほら、全体への奉仕者って奴だ。とはいえ、俺の職場が相手にするのは災害でも、人災でも無い、ついでに火事でもない。

 

相手にするのはグール…喰種だ。

 

害獣駆除かなんかだと考えてくれ、捜査捜査の果てに討伐ってやつでな、俺は基本的に討伐係というやつだ。

 

普通を俺は知らないから、正直何でも良いのだが、基本的には一人で討伐担当にされることが多い。

 

だが、これだけの理由ならば、俺は何も海外に高飛びしようなんて考えないのだ。

 

俺は今年で20回目になる。

 

所謂、「昇進勧告」だな。

 

俺は仕事が嫌だ、だからひたすらに事務仕事は良き隣人という名の同僚にお願い(気迫強め)する。俺は事務仕事が嫌いだからな。だけど、仕事をしなければ食べていけないのも事実だ。

 

そこで俺が考えだしたのが、究極の労働…名付けて"謙虚に横盗り戦法"だ!!

 

これは究極の労働形態である、内容は単純、天才の俺でも理解できるくらいだからな!

 

手順その1…ターゲットとなる喰種の調査を押し付ける!!

 

手順その2…押し付けた調査対象のいそうなところを俺一人で探す!!

 

手順その3…俺が探すと見つかるので討伐する!!

 

手順その4…喰種の残骸を提出して定時帰宅する!!

 

手順その5…月末に通帳の明細を確認すると振り込まれてる!!

 

終了!!

 

どうだ!!完璧だろう!!

 

…おっと、一つだけ手順が抜けたな。これが最後の手順だ。

 

手順その6…昇進勧告が来たら断る。断っても勧告されたら海外に逃げる。

 

よし!これで完璧だろう…俺が嫌いな言葉は「努力」そして「責任」だ。俺はこの二つを回避するためならば例えドイツにでも行ってやる!!ブランデンブルク門が今から楽しみだ!!ワハハハハハ!!!

 

 

 

 

 

私は彼の噂が本当なのだということを今日知った。

 

CCGのミフネダ…といえば大抵の喰種は寒気を覚えるだろう。

 

彼はここ、喰種に対する人類の盾であり矛でもあるCCG本部において正に生きる伝説だといえる。

 

彼の本名は誰も知らないし、彼がいつから対喰種の最前線に立ち続けているのかもわからない。少なくとも私は知らない者の一人だ。

 

彼の活躍を始めて耳にしたのは私がCCGにおいて一捜査官として認められる遥か昔だった。

 

彼はその時から既に伝説だった。そして、他ならぬ人類の希望だった。

 

当初、私の耳に入ってくる情報は限られていて、しかし話題にこと欠かない彼の活躍は半人前の捜査官見習い達の好奇心を燻り、喰種殲滅への決意を強固にしていったことは紛れもない事実だった。

 

毎日のように入ってくる彼の、所謂「単身討伐記録」の更新について一喜一憂し、時間を見つけて彼の今後と自身の将来の栄達について語り合うのは今も昔も変わらない養成校の名物風景となった。

 

かくいう私も彼への尊敬の念を日に日に強めており、悪く言えば同窓の者達の熱狂をもろに受けていたと言えよう。

 

復讐に燃える者、正義感に燃える者、単に高収入だからと目指す者、各々の事情の隔て無く、若人達の絶大な人気を男女問わず一身に集めていく彼の姿は正にヒーローのように映ったのはいうまでもない。

 

私が期待に胸を膨らませて、同窓の仲間達と共に任官もとい卒業式に望んだその日、私達ははじめて生きる伝説と邂逅した。

 

彼は来賓として、未来のCCGを支える者達への激励の言葉を期待されてその場へ招待されたのであった。彼はトリを飾るクライマックスに、遂に壇上へと上がった。

 

彼が大きく息を吸い込む音が聞こえたような気がした。

 

「卒業おめでとう!!!がんばれ!!…それじゃ、俺は仕事だから!」

 

スピーチ開始から1分もしないうちに彼の姿は式場から消えた。式場が静寂に包まれた。式に参加した私たちは主催者である校長の顔を見つめたが、校長は驚くことなく次の手順へと指示を出し始めるのだった。

 

余りにも衝撃的な出会いだった。そして、私たち青臭い新米達からすれば、彼の振る舞いはあまりにも熾烈に映った。

 

その後、何の滞りも無く式は終了。私たちは晴れて捜査官となった。

 

ふと腕時計を見てみれば、式の終了予定時刻よりも30分も早く終わっていたことに気づいた。

 

今思えば、校長は念のため彼に30分の時間を用意してみたものの、案の定彼は賛辞を一言述べると足早に退場してしまったために、想定内だとばかりの円滑な式終了に漕ぎ着けたのだろう。その方が私たちの混乱も小さかっただろうことは現に実証済みである。

 

 

捜査官としての私の最初の仕事は最低限の上司同僚の名前やプロフィールを覚えることだった。把握するのも一朝一夕とは行かない。だが、やはり鮮烈な印象の人物についつは簡単に記憶されるもので、上司の黒磐さんなどの外見的にもハッキリとした人たちから覚えて行ったのは懐かしい思い出だ。

 

そんな些細な思い出の中でも、彼の記憶は一際鮮やかであった。

 

同僚と共に世に言う彼の公式プロフィールに当たる部分を資料に求め、そして見つけた日を覚えている。彼のプロフィールは実に、実に鮮烈だった。

 

 

「真戸!あった、あった!!見つけたぞ!あの人の資料だ!」

 

「本当か!?私にも見せてくれ!」

 

当時の仲間と共に資料庫から引っ張り出した職員便覧の表記を指で追えば、確かにそこには何とも穏やかな表情の男の肖像と共に、その肖像とは裏腹に苛烈極まる経歴が刻まれていた。

 

「あぁっ…この人はやっぱり桁違いだってわかっちまうな…」

 

「…ゴクリ…あぁ。こんなのが公式の資料だとは恐れ入るよ…」

 

当時の私にとって彼は憧れであったが、この日から彼は私の中で伝説と成った。

 

「…憧れるには、余りにも高すぎる壁だな…ハハっ…」

 

隣で資料から顔を上げた同僚の額には薄らと冷や汗が垂れており、私もおそらく同じだった。

 

彼の呟いた言葉は私の中から退去することなく、彼の掠れた笑いは私の気持ちを代弁していた。

 

私は彼が、ミフネダ三等捜査官が、本当に同じ人間なのか、という疑問に翻弄されるほどに、彼のたかだか紙面上経歴にすら圧倒されていた。

 

 

彼が私の中で伝説へと駆け昇った日から早くも数年が経った、私は今、その伝説と机を隣り合わせにして日夜人々の安寧を守るために職務に励む身の上となっていた。

 

 

 

実物の彼は私の想像を遥かに超えて常識外の人であった。

 

誰もが疑問に思うように、彼は恐ろしいほどに有能であるにもかかわらず決して三等捜査官から昇進しなかった。

 

本来ならば私が養成校から卒業する前に特等捜査官になっていても誰も文句をつけることは無かったはずだ。

 

しかし、現にこの一年間の同僚生活において、彼はどれだけ夥しい戦果を積み上げ、その結果として然るべき昇進を何度打診されようと、決して、決して昇進を受け入れなかった。

 

かといって、報奨金の請求をするといった、当然の権利であるはずの代替措置を申請することもなかったのである。

 

彼は決して人前で捜査や調査の資料整理や報告書作成を行わないことで有名だった。

 

それもそのはず、彼は自身で報告書を提出したことは一度もなく、また、調査資料の提出も一度として行ってこなかったのだから。

 

時には彼の態度に対して、その職務怠慢を叫ぶ者や、将又成果の横盗りを訴える者もいた。

 

これらは確かに一部では事実だったかもしれないし、他ならぬ現パートナーである私に彼は自身の代わりに報告書やら調査書の制作と提出を頼むことが常であることは私自身が身をもって経験済みだ。

 

しかし、何の憚りもなく断言して仕舞えば、調査書の提出を彼に義務づけ、彼の行動力を奪うことは、それこそ救うべき命を、引いては救えた命を見捨てることと同じであると私は思うのだ。

 

一般的に、私たちは各班に分かれてそれぞれの分担区や事案を扱うのだが、各班が他の班との連携を取ることが禁じられているわけではなく、時として重大な懸念が見つかった場合は協力して同時並行的に、多面的に事に当たることも決して少なくないのが実状といえる。

 

その上で、班を総動員して行われた捜査と、彼単体によるフィールドワーク型の捜査による達成率を比較した場合、後者の方が圧倒的に理想的な形で、かつ高確率で達成できているのもまた実状である。

 

私は彼に頼み込んで、彼の言うフィールドワーク型捜査に随伴させてもらったことがある。

 

その日の行程を少し説明しよう。

 

午前…彼に同行して調査対象の目撃情報が特に多い地域の飲食店に聞き込みを行った。彼曰く、朝は空いているので都合がいいとのこと。店主や店員、常連客達との壁の感じられない会話から前々からこの店に通い詰めては情報収集や協力者の確保に努めていたことがわかる。

 

彼は私に奢りだからと好きなものを頼むよう指示、私は彼に倣って'豚骨ラーメン大盛りネギ増しニンニク増し々"を注文。この味が俺をこの店へと導いた、と彼は言っていた。

 

その後は彼と共に若者に人気のスイーツ店、トレーディングカードの中古市場を回った。

 

午後…午後になる頃に彼と共に今度は蕎麦屋に入店した。彼は前述の飲食店と同様に私に奢りだといって注文を指示した。彼はスタンダードな盛り蕎麦を頼み、私は肉蕎麦を注文した。彼と店主の会話に耳を澄ませば、如何に彼が情報収集に務めているかがよくわかる。彼は午前中はラーメンを食べたからお昼は蕎麦にしようと思ってきたんだ、という言葉を皮切りに、店主と会話を広げていった。話は徐々に最近の近隣の状況に移っていく、私が箸を置く頃には、彼は店主と共に近所のパチンコ屋の景気が良いという話と、今度麻雀をしないかという話にまで広がっていた。

 

結局、彼はパチンコも麻雀もしないからとそこで見切りをつけて店を発ち、「そろそろ締めと行こう」という言葉と共に話にあったパチンコ店の隣に位置する酒類を扱うバーへと入っていった。バーカウンターに行く事はなく、窓辺に陣取った彼は店主にウイスキーのロックを注文すると、私にも注文を指示した。私はミルクを注文したが、出てきたのは何かの牛乳割りであった。

 

 

30分でボトルの半分を開けた彼の視線は左右に揺れ、しかし鋭い眼光は窓の外を虎視眈々と睨んでいるように見えた。

 

さらに十分後、500mlのボトルが空になった彼は懐から皺のついた紙幣を置くと、私を連れて足早に店を出た。

 

彼の視線の先を追えば、パチンコ店から出て来たであろうガラの悪い男の一団が向かいの店舗の間にある薄暗い路地裏へと入っていくのが確認できた。

 

彼らより先に女が一人路地裏へと入っていくのを彼は見逃さなかったようだ。

 

腕時計の針は18時半を指しており、夜の闇は少しづつ街を覆い始めていた。

 

 

あれから30分。

 

時計の針が7時に回った頃、全てが終わろうとしていた。

 

五人組の柄の悪い男たちは小便を漏らしながら後悔の言葉と感謝の意を縋りつく勢いで私のパートナーであるミフネダ三等に訴えていた。

 

結果のみを言えば先に路地裏に入った女は喰種であった。

 

身なりがいい、いかにもマダムといった様相の女は、路地裏に入っていく自分を目当てに小遣い稼ぎを目的とした不良青年達がまんまと路地裏へと足を踏み入れる時を待っていたのだ。

 

彼らが完全にビルの陰に身を沈めた時、彼女は振り返ると同時に赫子を操り五人組のうち一閃で三人を気絶させた。残りの二人が逃げようと振り向くのと、ミフネダ三等が勢いよく頭から突貫していったのは同時だった。

 

一見すれば千鳥足で足がもつれた挙句勢いよく転んだようにも見えるその走法は誰にとっても想定外であり、格闘、戦闘などの面から考えても常識外甚しかった。

 

しかし、逃げようとした二人をミフネダ三等がタックルする形でコンクリートの上に押し倒したことで背後から殺意を持って迫ってきていた赫子により二つの命が刈り取られることはなかった。

 

一時の静寂の後、正に眠りから目覚めたかのように目を見開いたミフネダ三等は私が差し出したクインケの箱を受け取ることなく再び突進、眼光鋭く、しかして物腰は柔らかに右の拳で女喰種の顎を強烈に殴打したのだった。

 

無論、人間の膂力による殴打を一撃お見舞いしたところで喰種の闘争心が消えることはなく、赫子による息つく暇も無い速攻がミフネダ三等に集中した。

 

しかし、どれだけの速攻が繰り出されてもミフネダ三等は冷や汗ひとつかかずに一撃一撃を同じく生身の拳の一撃一撃で振り払っては応戦していた。

 

彼のトレードマークと言われ春夏秋冬変わらず羽織っている、年季の入った革のトレンチコートには少しのかすり傷もついてない。

 

ミフネダの前にミフネダ無く、ミフネダの後にミフネダ無し。そう言われる通り、彼は常識外の存在であった。

 

彼は少しずつ距離を詰めては先程と同様に、狂いなく精緻極まる顎への殴打をお見舞いした。お見舞いしてはその都度距離を取りまた繰り出される速攻に対応し、1分ほどでまた一撃を喰らわせる。このやりとりが10回目に差しかかった時、遂に女喰種が膝を折った。

 

ミフネダはトドメとばかりにガツンという金属音と共に女喰種の意識を右フックで吹き飛ばすと、君の出番だとミフネダ三等と喰種の攻防に見入っていた私に捕縛の指示を出した。

 

その後は五人組の事情聴取と矯正、女喰種の収容とで私は忙殺され、気がつけば次の日になっていた。

 

コクリアに収監された喰種は特別な情報こそ持っていなかったものの、Aレート相当かつ、頻繁な捕食行動をとっていたことが判明し、まもなく処分された。

 

こうして私の初めてのフィールドワーク型捜査体験は終わった。私は包み隠さず真実を報告書及び調査書にできる限り克明に刻み提出した。

 

案の定、彼の伝説はまた一つ増えることとなった。Aレート喰種を徒手空拳で完封。殴り合いの根比べで完勝などなど……やはりというか何というか、世の中には嘘のような真のことが実際にあるのだと体感した。

 

ただ一つ疑問を抱くとすれば、この時捕縛した喰種の行動パターンをどうやって捜査開始からたったの数日で割り出し、よもや捕食の場に出くわし、これを防ぐことができたのかが全くの謎であった。何度振り返っても彼と店主の会話や行動の一つ一つから喰種の行動パターンの割り出しに有益だと感じられる情報は見つからなかった。

 

私の非才、或いは未熟故の無理解であるとしても、ミフネダ三等は全てにおいて極めて稀有な人物であることを再確認することができた。

 

あの後、彼が完封した喰種のクインケは初仕事のお祝いとして私に譲られた。ミフネダ三等から手渡された時は、感激のあまりこのクインケばかりは壊すまいと誓ったものである。

 

 

 

そうして、今日、改めてミフネダ三等の非凡さをしかと見せつけられるに至ったのである。

 

あれからさらに数年が経ち、私は微と結婚していた。

 

近いうちにドイツにおいて名のある喰種の一族の掃討作戦が計画されており、その増援と情報交換、ドイツ本部への牽制などなど…さまざまな理由から捜査官の派遣が考えられているとのことだった。最近実力を伸ばしつつあった私はこの遠征に誘われていたが、今さっき誘ってくれた同僚に丁重にお断りさせていただいた。

 

時間が経つのは本当に早いものであり、私には目に入れても痛くない娘も生まれた。たとえ臨時手当がつくと言われても家族から遠く離れてドイツに行きたいとは考えられなかったのだ。

 

同僚の残念そうな顔に申し訳なさを抱いていると、ミフネダ三等がいらっしゃった。いつも通り、1時間遅めの出勤であったが、皆もう慣れたものだった。

 

私が同僚と話していたドイツ遠征についてミフネダ三等が興味を示されたかと思えば、詳細や日時、志願者の受付手続きなどを説明する前に「あぁ、いつものか。なら俺も行く。」と言われ、足早に空港に向かわれたのだ。

 

私たちはあまりの即決即実行に驚き、口をあんぐりと開けてしまっていた。

 

私たちが驚いているのはその苛烈とも言える行動力にもあるのはもちろんだが、それ以上にこの場において驚きを増長させている理由はミフネダ三等がまたもや「休みを蹴った」ことだった。

 

ミフネダ三等のスケジュールは端的にいって丸々一週間が彼の持ち味であるフィールドワーク型捜査、つまりはプライベートはなく、常時仕事に身を置いていると言っていい状態なのだ。

 

先日ミフネダ三等とお昼をご一緒させていただいた際に、私は家族と休日を過ごしたことについて随分と長々と話してしまったのだが、私がお休みの日について尋ねてもミフネダ三等の口から紡がれるのは私が体験したフィールドワーク型捜査の内容と大差ない内容であった。

 

家族はいないのか、と尋ねてもミフネダ三等は残念ながらいないな、とのこと。この際だからと踏み込んだことをいくつか聞いてみたものの、収穫を吟味したところで彼について深く知ることができたとは言えないものだった。

 

ミフネダ三等いわく、「自分は淡々と過ごしている、常に大きな波のない、落差のない生活を心がけている」というのだ。

 

そんなミフネダ三等が、なぜ波風立ちまくりの海外渡航を自腹で断行したのかについて、さまざまな意見はあろうが、上記のように常に現場に身を置く姿からも捜査官の鑑とも言える人物であることは間違いなく、私が考察するにドイツの人々に対するあふれんばかりの正義感によるところなのだと思う。

 

私はこの考えに至った時、改めてミフネダ三等の非凡さに驚かされたのである。

 

ミフネダ三等は私たちをぐんぐん突き放すように、けれど決して見捨てることなく前進し続ける、正に我々の希望とも言える人物なのだろう。

 

最近は家族との会話の中にミフネダ三等の話題が多くなってきている気がするが、妻も私と同じく捜査官として働く関係からかミフネダ三等への尊敬に共感を示してくれており、意外と意気投合してしまう時が多々あるのでむしろ良いことなのかもしれない。

 

単身しかも自腹での電撃的なドイツ遠征…またもや伝説の予感がするのは私だけだろうか。

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