百合を愛でたかっただけなのに   作:悠牙

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評価オレンジ色になっとる・・・
うせやろ?まだ一話だけだし、なんなら百合の間に男という大罪犯してるのに・・・
皆様、感想・評価ありがとうございます。
みんなの感想見て赤べこになってた。




アニス 自覚した恋心

「・・・こんなはずじゃなかったんだけどなぁ」

 

パレッティア王国の第一王女、アニスフィア・ウィン・パレッティアは自室の窓から空を眺めながら、ため息をつく様に呟いた。

 

本当に―――どうしてこうなったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は可愛い女の子が好きだ(断言)

結婚して子供を産むなんて嫌、恋愛や結婚も面倒くさい。私は美少女を侍らせるんだ。

幼い頃から父上や周りの人たち、もちろん彼にもそう伝えてた。

 

別に私の国は同性愛が禁じられてる訳じゃ無いんだけど、私の『王女』としての立場や、魔力めっちゃあるのに魔法が使えないとか、魔学の事とか諸々の事情が重なって周りの人達、特に魔法省の連中には好き勝手言われてた。

 

やれ『王国を潰す気か』だの『魔法も使えないうつけものが何を』とか好き勝手言われてた。

 

昔、弟のアル君とは仲が良かったけど、家族でも相談できる事と出来ない事はあるもので。

それに私は、自分の夢でアル君の足を引っ張りたくなかった。

 

彼と、ゼロと出会うまで私はひとりぼっちだった。

 

そうだ、この機会に少し思い出してみよう。そうすればなんでこうなったのかわかるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜・・・」

 

11年前、私は魔法省貴族主催のパーティに出席していた。

当時はまだ王位継承権を放棄していなかったし、『せめて顔見せくらいは』と父上から強制参加の命令を下された。

その時にはもう前世の記憶ーーーというか知識か。はもう思い出していたし、空を飛ぶという前世からの夢を叶えるため、研究を進めたかったのだが、父上からこう言われたら仕方が無い。

・・・と無理矢理自分を納得させても不満は出て来るわけで。

 

(あ〜この視線、本当嫌だなぁ・・・)

 

先ほどから私を見る視線がとても多い。

まるで品定めする様な、私をトロフィーか何かとしか考えてない様な視線。

鳥肌が立つ。

それに、パーティに出たくなかった理由は他にもある。

 

「おい、あの方が?」

「そうらしい、『あの』アニスフィア王女だとよ」

「アレがあの…膨大な魔力を持っているだけの出来損ない王女か」

「まったく嘆かわしい…あの様な者が王族として産まれてくるとは」

「しかも『魔学』などという変なことまでおっしゃっている始末とは・・・」

 

おーいそこー、ヒソヒソ話してるつもりなんだろうけど、丸聞こえだぞー。

 

さっき言った理由の一つがコレ、周りの貴族の声がすっっっごい聞こえてくる。

私がちょっと離れた離宮にいるのも、こういう周囲の貴族の悪意から少しでも遠ざけようという父上や母上の意向だ。

 

後で聞いた話だが、今回のパーティは父上も私を参加させるつもりは無かったらしい。なんせ一番王位に近いのは弟のアル君だ。わざわざ私を出席させる必要は無かった。

しかし、今回は事情が事情だった。

なんと主催者側の貴族から『ぜひアニスフィア様もご参加頂けるよう』と名指しで私を指名してきたのだ。

王族なんだから突っぱねればいいじゃないかーって思うかもしれないけど、父上は貴族に頭が上がらない。

なんでかっていうと、先代の王様が結果を残した平民にも権威を与えようとした事があった。

しかしその結果、父上の兄上を旗印に反乱が起きた。貴族としては見下してた平民が自分と同じ立場になるなんて許容しがたかったんだろう。

それに対して、当時の父上が日和見してた貴族を味方につけて鎮圧した過去がある。

だから今も生きてる貴族には父上は大きな貸しがあるためこういう時に強く出れない。

仮病で誤魔化す事も考えたけど、私が中庭でアル君と遊んでる所をその貴族にバッチリ見られちゃってたみたいで・・・

 

そんな事もあり、私は今回のパーティに出席せざるを得なくなってしまった。

 

あと、私が出席したく無かったもう一つの理由が―――

 

 

「―――まぁ魔法を使えずとも、王女には魔力がある。お世継ぎを産ませれば良い」

 

コレだ。

 

「そうですなぁ、今も健やかに育っているようですし」

「子を産ませるなら相手は誰だって良い、魔力だけ子に遺伝すれば――――」

 

もう聞きたく無い。

魔法が使えない私に用が無いのはわかるけど、せめて聞こえないところでやってほしい。ジロジロ身体を見るな。値踏みするな。ロリコンかキミたちは。

あぁ、くそ、吐き気がする。寒気も酷い。

もう顔も見せたし、挨拶もした。

義理は果たしただろう。もう行こう、離宮に帰りたい。

 

そうやって足早に会場を離れようとすると――――

 

 

「申し訳ありませんアニスフィア王女殿下、少々宜しいですかな?」

 

「えっ」

 

唐突に、同じ様な年齢の正装を纏った太った貴族に止められた。

顔は知ってる。今回のパーティの主催者の息子だ。

さっきから私の事をジロジロ見ていた一人だ。

 

「アニスフィア王女殿下、宜しければ私と一曲、踊ってはくださいませんか?」

 

「えっ、いや、私そろそろお暇しようかな〜と・・・この華やかな空気に酔ってしまいまして・・・」

 

やんわりと、相手が傷つかない様に拒否する。

自分に邪な視線を向けてきた相手と笑顔で踊れるほど、私は人間が出来ていない。プラスで言うと本当に体調が悪くなってきたので早く出たい。いや本当に。

 

「そんな事言わずに、さっ、私の手を取って・・・」

 

「いえ、申し訳ありませんが・・・」

 

「…チッ、そんなご謙遜なさらずに、さぁ!」

 

「ひっ・・・!」

 

そう言いながら貴族が私の手を無理矢理引っ掴んで来た。

コイツの手の脂がにちゃっと私の手を覆う。

その感触と思ってたより力があった為、口から恐怖があふれ出した。

 

「さぁ共に踊りましょう、アニスフィア様!」

 

「いっ嫌っ!離して!」

 

貴族は無理矢理引きずる様に私を出口から遠ざける。

嫌だ、こんなヤツの思い通りになるのなんて、やだ。

気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!

必死にもがく、けれど腕は動かないし、周りの貴族も遠巻きで見てるだけで誰も助けてくれない。

イリアも今は離宮だし、アル君も、父上もいない。

だれもたすけてくれない。

涙が出てくる。

嫌だ。

いやだ

やだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――オイ、そこまでにしとけよブタ貴族」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、がぁっ!?」

 

唐突に貴族の動きが止まる。

伏せていた顔を上げると黒いローブを羽織った、これまた私と同年代の男の子が貴族の腕を思いっきりひねり上げていた。

相当な握力だったのだろう。痛みに耐えきれなくなった貴族は私の腕を離し、後ずさる。

ここで貴族と私の間に彼が入ることになった。

 

「貴様、私が誰だかわかっているのか!?不敬だぞ!」

 

「テメェが誰だろうがどうでも良い。嫌がるレディに対して無理矢理ダンスせがむのが悪いんだろうが」

 

「私は貴族だぞ!」

 

「だからなんだっての、マナーがなってねーような奴が貴族名乗んなよ」

 

「貴様・・・!」

 

そう言葉を貴族に投げかけると、少年は私に顔を向ける。

 

「腕、見せて」

 

「えっ」

 

「怪我、無いか確かめるから」

 

「あっ、うん・・・」

 

呆気に取られた私は彼の言うがままにさっきまで掴まれてた腕を見せる。

 

「・・・骨は平気か、動かした時痛みはある?」

 

「・・・うぅん、平気」

 

「そっか」

 

慣れた手際で少年が私の腕を診察する。

彼の手は柔らかく、優しい手だった。

その時、ローブで隠れていた顔がチラリと見えた。

炎の様な赤い髪に中性的な顔立ち、瞳はサファイアの様に青く、鋭い目をしていた。

 

「貴様、何者だ!私に手を上げよって!許さんぞ!」

 

「ん?オレ?今回のパーティに呼ばれた薬師。そんだけ」

 

「薬師だと・・・!?平民が何故パーティにいる!?盗みにでも入ったか!」

 

「うるっせぇなぁ、オレを呼んだのはお前のパパだぜ?文句ならパパに言えよ・・・よし、これなら薬は必要無いな」

 

貴族の言う事を軽く流しながら、私の腕の診察を終わらせ、貴族と向き合う。

彼が身体を動かすたびに、ローブからカチカチとガラスが触れ合う様な音がする。

 

「あとお前はもう一つ勘違いしてる」

 

「勘違い・・・?」

 

「手ぇ上げるってのはこういうのを言うんだよ!」

 

「ガバァ!?!?」

 

彼が貴族と向き合ったと思った次の瞬間。

彼の右手が貴族の顔面に突き刺さり、間抜けな叫びを上げながら吹っ飛んでいった。

 

「キャァーッ!」

「なんだ!?なんの騒ぎだ!!」

「公子が殴られた!」

「やったのは誰だ!」

「そこにいる黒ローブだ!衛兵!衛兵!」

 

 

 

「・・・やっべ、ついやっちまった」

 

吹っ飛んでいったふとっちょ貴族はテーブルに突っ込み、周りの大人たちが悲鳴を上げる。

やっと衛兵が部屋に入ってくる。私の時は来なかったくせに。

私はざまぁみろ、と思いながら彼の手を取った。

 

「んぁ?」

 

「こっち!来て!」

 

私は彼の腕を引っ張りながら、混乱のパーティ会場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ。ここまでくれば、もう大丈夫」

 

「ぜぇ、はぁ、はぁ・・・」

 

私は彼の腕を引っ張りながら、離宮近くの庭まで来ていた。

ここまで来れば衛兵も来ないだろう。

それにしても疲れた。こんなに走ったのは怒った母上から逃げた時以来だ。

その時は捕まったけど。

 

「はぁ、はぁ、えーっと、ありがとうな。あそこから逃がしてくれて」

 

「はぁ、はぁ、良いよ、私の事、助けてくれたでしょ?それのお返し」

 

お互いに呼吸整えながら、礼を言う。

庭にある噴水に腰掛け、休憩しながら口を開く。

 

「そういやまだ名乗ってすらいなかったな。オレはゼロ、ゼロ・アウケラス。この国にお師さんと弟弟子との三人で来た、薬師だ」

 

薬師、薬師か。

そう言えば父上が『今度私の友人の薬師が来訪するから、騒ぎは起こすんじゃ無いぞ』って言ってたっけ。

もう遅いけども。

 

「おおう、これはご丁寧に・・・私はアニス、アニスフィア・ウィン・パレッティアって言います」

 

「パレッティア・・・って事はまさか王族様か!?」

 

「そうとも言うね〜あぁでも良いよ。そのままで、私もそっちの方が喋りやすいし」

 

「そ、そうか・・・じゃあこのまま」

 

うん、それでいい。

王族だから敬われるってのはなんか違う気がするし。

そんなことよりも、

 

「あ、ねぇねぇ、この流れで一つ聞きたいんだけどさ、そのローブって何で出来てるの!?普通の素材じゃ無いよね!?コレ!あと、カチャカチャ中に何があるの!?見せて見せて!お願い!」

 

「ンォオ!?」

 

私は彼に思い切り近づき、ローブを手に取った。

薬草の香りがする。青臭いわけでは無い。

お日様の様な、良い香りだ。

ローブの裏側には液体や薬の素になるのであろう素材が入った試験管が何本か入っていた。

一つ一つベルトの様なポケットに入っており、液体は赤や青、様々な色をしており、素材も薬草や光る石など様々だ。

私が揺らすたびに試験管の中身も揺れる。

 

「なっ、なぁ、ちょっと待ってくれアニス!いや、アニス様!そんなとこ手ぇ突っ込んじゃダメだって!ちょいちょい!!」

 

「ふんふん?コレは黒い森にある薬草だよね、私も見た事ある。ん?この薬草は知らないな・・・西の方の物かな?ッ!?待って、コレ魔獣の血!?研究に使えそう――――」

 

彼が何か叫んでいたが、私はそれどころじゃなかった。

見たことないものが所狭しと並んでいる。

私を魅了するにはそれだけで十分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァハァ・・・落ち着いたか?」

 

「ハイ・・・スミマセンデシタ・・・」

 

夢中になった私は、ゼロのローブを無理矢理剥ぎ取ろうとしてしまい、堪忍袋の緒が切れたゼロから「いい加減にせぇ!」と顔に試験管に入った水を掛けられてようやく正気を取り戻した。

うーん私の悪い癖。気になったらすーぐ周り見えなくなっちゃう。

治す気はあんま無いんだけど。

 

「んえぇと、ごめんね?試験管とか割れたりしなかった?」

 

「大丈夫、コレ、特製の試験管でかなり丈夫だから」

 

試験管を一つ一つ確認しながらゼロが言う。

 

「そう言えばなんでこんなに素材持ってるの?薬作るため?」

 

「それもある。ただメインは『魔剤』を作るためのもんだ」

 

「魔剤?」

 

聞いたことの無い単語ね。

違う国の技術なのかしら。

 

「薬や素材に魔力を注いだりしてな、全く新しい薬に変質させたりするんだよ。その変質した薬をオレは魔剤って呼んでる。飲んだだけで魔力が回復するモノとか、効果は様々なんだ」

 

「へぇ・・・!」

 

「にしてもこんな素材に目ぇ輝かせるなんて、アニスはなんか研究でもしてんのか?見たところオレとあんま歳変わんなそうだけど」

 

「よくぞ聞いてくれました!!!」

 

そう言うと私は座っていた状態から飛び上がり、噴水の周りにある石に立つ。

まるで演説でもするかのように。

 

「私はね、魔道具が作りたいんだ」

 

「魔道具?」

 

「そう、精霊が見えなくて魔法が使えない人でもお湯をすぐに沸かしたり、そういう事が当たり前に出来る物」

 

「精霊ってのは・・・」

 

「魔法を行使するのに必要な存在だよ。魔法を使える人はその自分に適合する精霊を感知し、魔力を代償に形にすることが出来る・・・ってのは知ってるよね?」

 

「悪い、魔法使えるけど初耳だった」

 

「マジか」

 

いやホントにマジか。

魔法使えるなら皆知ってる事だと思ってた。

というかキミ魔法使えたのか。それこそ初耳だよ。

 

「まぁそういう事なんだよ。魔道具っていうのは、まさにそういう人たちに向けた道具なんだ!今は魔法が使えるのは貴族だけって事になってるけど―――私はそうじゃない、誰もが魔法を使えるようにしたい。そして空を飛ぶことが私の夢なんだ!!!」

 

声高々に叫ぶ。私の思いを。私の夢を。

 

人には翼が無い。だから飛べない。そんな固定概念をぶっ壊して、空を飛びたいと思ったあの時。

魔法なんだから色々出来た方がいいじゃないか。そこにあるのに使わないなんて勿体ない。

そんな思いを、私は彼にぶつけた。

 

 

 

 

――――正直、メチャクチャ怖い。

貴族たちがこの演説を聞いた時の反応を思い出す。

 

 

 

出来損ないが何を言う――――――――

その様な異端の力など――――――――

その様な考えは王族にふさわしく無い―――――

精霊信仰を覆すような事をおっしゃる等――――

 

 

 

直接言葉にされたわけじゃないけど、目は口ほどに物を言う。

そんな失望の視線を私に向けて来たのを思い出す。

 

でもここまで言ったんだ。思いを伝えたんだ。

せめて、彼がどんな反応を示すのか見てみたい。

失望でも、異端を見る様な目でも、受け入れよう。

 

 

私は恐る恐る彼に顔を向けた。

するとそこには――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっげぇ・・・!!!」

 

「えっ・・・?」

 

目を星の様にキラキラさせながら、両のこぶしを握り締め、笑顔を向けているゼロがいた。

 

「空、飛べるんだよな?オレでも、空飛べるようになるんだよな?」

 

「う、うん・・・その人の魔力を使って、飛ばす感じにしようかなって・・・」

 

「っ~~~!!!すっげぇ!スゲェよアニス!!」

 

「えっ、えぇ?」

 

私は困惑した。

魔法を使える人たちから、信仰の冒涜と言われ、否定された考えを『肯定』された。

 

 

初めてだった。

 

「空飛べるって事は馬いらずになるって事だよな、ってことは馬車待つ必要もなくなるわけで―――」

 

私の考えを、夢を、喜んでくれる人に出会ったのは。

 

「なぁアニス!他にも―――っておい!?大丈夫か!?」

 

「・・・え?」

 

気づいたら、私の目から涙が止まらなくなっていた。

 

「どうした!?やっぱりさっき掴まれた場所が痛むのか?」

 

「エッグ、ち、ちがうのぉ、ヒック、そうじゃなくてぇ・・・」

 

掴まれた腕なんてとっくに痛くない事を伝えようとしても、涙が溢れてきて言葉にならない。

嬉しかった。私の想いは無駄じゃなかった。

 

そうやって泣いていると彼が困惑しながらも抱きしめてくれた。私はそれに甘え、彼の肩に顔を埋め、さらに泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・大丈夫か?」

 

「スンッ、うん、もう大丈夫」

 

あの後何分か泣いた私は、ようやく落ち着きを取り戻すことが出来た。

うぅ、こんなに泣くのなんて初めて。

父上からアイアンクロー食らった時もこんなには泣かなかった。

 

「えっと、ゼロはさ、変、だと思わないの?」

 

「何が?」

 

「私の言ってる事、私の夢の事とか」

 

「なんで変だなんて思うんだ?空を飛ぶことが出来るなんて、それこそロマンの塊じゃあないか。夢見た事はあっても、魔法でそれを為そうなんて誰も考えなかった。革新的な考えだぜ、こりゃあ」

 

あ、ヤバイ、また泣きそう。

 

「・・・否定しないの?イカれてるって、思わないの?」

 

「思うかよ。これはオレの師匠が言ってた事なんだが、『夢を見る事は誰でも出来る。しかしそれを叶える為に動ける者はそうそういない。』ってな、んで、お前は夢を叶えようとしてる。尊敬しかできねぇよ、誇って良いと思うぜ?にしてもそうかぁ、空かぁ・・・!」

 

ゼロはあの日の私の様に目をキラキラさせて、夜空を見上げる。

ここまで喜んでくれると、今度は嬉しさより恥ずかしさが増してくる。

いや、とんでもなく嬉しいんだけどね?

こうやって言われるのは、慣れてないと言うか・・・

 

「あぁっと、ゼロは?ゼロは何か夢とか無いの?」

 

「オレの夢?」

 

「そうそう、私も言ったんだし、ゼロの夢も聞かせてよ」

 

私は顔が赤くなるのを隠しながら、話題を変える。

このままじゃゆでだこになりそうだ。

 

「オレの夢、かぁ・・・」

 

「魔剤で何かする〜とかそういうのは?」

 

「魔剤は別に夢とかじゃ無いからなぁ・・・あっ、あったわ。夢」

 

「えっ、なになに?聞かせて聞かせて?」

 

「オレの夢は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美女が女の子侍らせてイチャイチャしてる所が見たい」

 

「え、私それやりたい」

 

「「・・・・・・」」

 

私達は、無言で手を取り合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって王室。

ここではアニスの父である現国王、オルファンス・イル・パレッティアに対し、ゼロの師匠であるリーゲンが薬の調合を行っていた。主に胃の。

 

「は〜・・・」

 

「でかいため息じゃのうオルファンス。よほど色々溜め込んでいると見える」

 

「やはり、そう思うか」

 

「応、およそグランツと同じ歳には見えぬお主を見ればな」

 

「気にしておる事を・・・」

 

まるで旧友と話す様に薬師リーゲンは言う。

口調こそ老人のそれだが、体躯と顔は青年のそれだ。

髪色は白く、伸ばした髪を飾りで肩辺りに留めている。

 

「して、その原因はやはり」

 

「・・・アニスフィアだ」

 

「やはり、あのお転婆姫じゃったか」

 

「あやつめ、一年前からいきなり『私は魔法で空を飛ぶ』などと言い出しおって、それから魔法省との関係がさらに拗れてな・・・」

 

「ほう?空を飛ぶとな。それは中々夢がある。しかしアニスフィア王女は―――」

 

「そうだ、知っての通りあいつは魔力はあるが魔法が使えぬ。一体何をしでかすつもりなのか・・・あぁ、胃が痛い・・・」

 

「今回は血圧の薬も出しといた方がよさそうじゃの」

 

「是非そうしてくれ。このままでは私の身体が保たん」

 

「承知した。では、この薬とこの薬草と―――――

 

自分の娘に対する想いを吐露しながらオルファンスは窓の外に目を向ける。

 

アニスのやる事に反対なわけではない。しかし、今は時期が悪すぎる。

アニスは生まれながらにして、周りの貴族から良い目で見られてはいなかった。

まるで子供を作る道具扱いだった。

そんな男性貴族からアニスを守る為、私とシルフィーヌは離宮へアニスを避難させた。

それが悪かったのだろうか・・・・・

 

今の王国で魔法を否定するような考えは危険すぎる。

なりふり構わない魔法省の連中がアニスを狙いに来るかもしれん。

誰か、イリア以外にもアニスのそばにいてくれれば――――

 

 

 

                  ドバァァァァァァン!!!!!!

 

 

 

その時、思い切り部屋のドアが開かれた。

 

「ほ?なんじゃ、敵襲か?」

 

「何だいきなり!?誰だ!」

 

「私です!父上!」

 

「失礼しま~す・・・」

 

ドアの方に目を向けるとそこにはアニスと見覚えのない少年がいた。

 

「アニス!?お前、夜会はどうした!?」

 

「おやゼロ、お前には儂の代わりに夜会に出席するように言っておいたはずじゃが」

 

「あー、まぁ色々あったんすよ。お師さん」

 

「パーティなんてどうでもいいんです!父上、それよりも私たちは伝えることがあってここに来たんです!」

 

アニスがゼロに目配せし、ゼロがそれに笑顔で応じる。

 

「「我々は此処に――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「『女性愛で隊』を結成しまぁす!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・は?」

 

「くっ、クハハハハハハ!!!コイツは愉快じゃわい!」

 

リーゲンが腹を抱えて笑っているが、私には何が起こったのか理解できなかった。

え、なに?女性愛で隊?

夜会は?何があったんだ?

 

「あ、あとついでに私、王位継承権、破棄しますね。男性との結婚なんてごめんです!どうせ愛でるなら私は男性より女性を愛でたいです!!!」

 

「オレはアニスが女性とイチャイチャしてるのを遠くから眺めたいです!!!」

 

「やっと理解者と出会えたんです!私は彼と共に、夢を叶えます!」

 

「ギャハハハハ!!!おぬし等ワシを笑い殺すつもりか、ハハハハハ!!」

 

リーゲンが腹を抱え、椅子から転げ落ちる。

今何と言った?継承権を破棄する?

愛でるなら女性が良い?

頭が追い付かない。

取りあえず――――

 

 

「・・・何を勝手なこと言っとるんだお前はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

「えっ、ちょ、父上待ってギャー!!!!」

 

「アニスゥゥゥゥゥ!!!」

 

アイアンクローをアニスに食らわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「・・・・・」」

 

「で、じゃ、夜会で何が起こったのかは理解はしたし」

 

「何処で仲が良くなったのかもわかった」

 

アニスとゼロは王室の床に正座させられていた。

アニスは顔にアイアンクローの跡が、ゼロはリーゲンにチョップを食らいたんこぶが出来ていた。

 

「だが、先ほどの世迷言はなんだ!王位継承権を破棄するなど、冗談では済まされんぞ!」

 

「冗談ではありません父上!私は本気で女性を侍らせたいと思ってるんです!」

 

「ゼロは・・・前々からこうじゃったな、おぬしは」

 

「お師さん、呆れの表情向けないでください。せめて怒ってくれた方が心に優しい」

 

呆れの表情をリーゲンはゼロに向ける。

ゼロは今までの旅でもこのような事を言っていた。

やれ『女性同士というのは美しい』だの『障害がある百合、いいじゃない(ニコ…)』などだ。

別に男が好きとか、女性に興味が無いわけではないらしいのだが・・・

 

「――――えぇい!もうわかったわ!お前のいう事はわかった!!!」

 

「父上!それじゃあ―――」

 

「お前の王位継承権は破棄、次の王はアルガルドだ・・・!」

 

「イェーイ!やったー!」

 

「ただし!これからは王位のアレコレに口を出すのは許さんぞ!」

 

「わーかってますよ~父上~」

 

「・・・よいのか?オルファンス」

 

「あぁ。いや、良くは無いが・・・元々アルガルドの方が王位には近かったからな。アニスの王位を破棄してもまぁそこまで問題にはならんだろう・・・」

 

思わずオルファンスが腹を抑える。

まだ痛みは無いが、これから痛くなるのだろう。

 

「そう言うのであれば、ワシもとやかくは言うまい・・・ゼロ、おぬしの今回の行動は不問とする」

 

「やったー・・・アレ、オレ殴られ損じゃね?」

 

「アニス嬢だけ罰を受けるのは不平等じゃろう。おぬしも罰を受けるのは当然と言えよう」

 

「ぬぅん・・・」

 

「それよりも、じゃ」

 

リーゲンが不服そうなゼロに向けて問いを投げかける。

 

「おぬし、アニス嬢のそばで夢を叶えるとか言っておったが・・・どうするつもりじゃ?」

 

「・・・あ~」

 

「えっ、ゼロ、一緒に居られないの?」

 

「アニス嬢、こやつから聞いておるかもしれぬが、こやつはワシの弟子じゃ。こやつ一人好き勝手させるのをワシはまだ許しておらん。そもそもパレッティア王国にはオルファンスに薬を届けに来ただけでの。明日にはここを出立する予定だったのじゃ」

 

「あーっと、お師さん、弟子ならアトラの奴もいるし俺ここで抜けても・・・」

 

「アトラのやつは王国に残る事を決めたぞ。おぬしより先に、な。就職先も見つけたらしい」

 

「うそぉん・・・ちなみになんて言ってたんです?」

 

「『ある令嬢に一目ぼれしたからここに骨を埋めます』と」

 

「アイツもそんなにオレと変わんねーじゃねーか!!」

 

「そもそも彼にはこの国での権利が無い。平民ですらない旅人では・・・」

 

「そんな・・・」

 

私は絶望する。

せっかく会えた私の理解者なのに、たった一夜の夢で終わってしまうのだろうか。

そんなの嫌だ。

考えろ、どうすればいいのか―――

 

その時、風に運ばれて薬の香りがした。

そうだ、これだ!

 

「リーゲン殿、父上、私に一つ提案がございます!」

 

「なんだ次は・・・!」

 

「ほう・・・?」

 

「アニス・・・?」

 

皆が私に顔を向ける。

 

「ゼロを、私が住む離宮の専属薬師にしていただきたい!」

 

沈黙が部屋を満たしていく。

ゼロはハトが豆鉄砲食らったような顔をしている。

 

「先ほどのお話を聞く限りですと、どこかに所属さえ出来ていればこの国にいても、問題は無い。とのことですよね?」

 

「・・・まぁのう」

 

「でしたら話が早い、彼、ゼロ・アウケラスを私の離宮専属薬師になってもらえばいいのです!」

 

「因みにその間にある色々な障害は・・・」

 

「父上、お願いします♡」

 

「・・・ぐふぅ」

 

「あーっ!父上が倒れた!」

 

「胃が限界を迎えたんじゃのう」

 

「言ってる場合ですかお師さん!早く薬を―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

うーん、そうだ、こんな感じの出会いだった。

その後父上が目を覚ました後、正式にゼロを離宮勤めにする事と、王位継承権の破棄を認めてくれたんだっけ。

 

今思い出すと凄い王子様ムーブやってるなぁゼロ、当人は意識してやってるわけじゃなかったんだろうけど。

 

そこからは日々を楽しく生きて行った。たまにアル君も誘って、三人で素材集めに出かけたりもした。泥だらけになってまとめてお風呂にポイってイリアにやられたりもした。

研究費とか素材集めのために冒険者ギルドに行ったりもしたし、魔道具の研究もゼロと一緒に進めてた。

 

 

・・・当時はこんなことになるなんて思ってもみなかった。

少なくとも、この時は本当に心の底から気の合う友達が出来たって感じだったし、恋なんて面倒だって思ってたのは本当だ。

 

ユフィが来て、ある程度経つまでは。

 

ある時、ゼロに声を掛けようとしたらユフィと話していたところを見てしまった。

仲がよさそうに、ユフィも笑顔をゼロに向けながら。

 

その時からなんか胸の奥がチクチクするようになった。

最初は『ユフィと仲良く話してるゼロに嫉妬したのかな?』とかベタに『病気か?』なんて考えたりしたんだけど、ゼロがいるんだから病気だったら気付いてくれるし、ユフィが他の人と話しているのを見ても、チクチクは来なかった。

 

 

このチクチクの原因に気付いたのは、ゼロと話してる時だった。

ゼロと今度新しく作る魔道具の事について話しているとき、

 

ユフィがゼロに相談したいことがある。と部屋に入ってきた。

 

ゼロは私に許可を取り、少しなら良いぞ。とユフィと話す。

魔剤に込める魔力の性質についての相談だった。

あくまで二人は魔剤についての話をしているだけだったのだが、私はどうも落ち着かなかった。

 

胸のチクチクがまた出て来た。さっきまでは無かったのに。

自分の胸を押さえながら、二人を見る。チクチクが強まる。

その時だった。私が自分の想いに気づいた、いや、気づいてしまったのは。

 

(・・・噓、まさか―――)

 

あれだけ自分は女性を愛でたいと言っていたのに。

恋愛は面倒だと言っていたのに。

 

(まさか私・・・・・嫉妬してるの?ゼロじゃなくて、ユフィに?)

 

ドクン、と心臓の鼓動が聞こえた。

私は胸を押さえながら、ちょっと気分悪くなっちゃったから休憩してくるね。と二人に伝え、自室に戻り、今に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁもう、本当にこんなはずじゃなかったのに。

 

壁に掛けてある、ゼロが小さい頃使ってたお古のローブを外し、抱きしめる。

これはローブを新調する際、捨てるのは勿体無いから記念に頂戴とゼロにねだったものだ。

 

かなり薄くなっちゃったけど、まだお日様のような、あの日私を助けてくれた時の香りがする。

 

心臓がうるさい。

 

顔が熱い。

 

もう、これは確定だ。

 

 

「ゼロ・・・好きぃ・・・」

 

 

思いを口にする。もうこの想いは止まらない。




みんな離れろ!早く!国王陛下の胃が爆発する!!

オルファンス「ほわぁぁぁぁぁぁぁl!!!!!」



つかれた。
めっちゃ長くなっちゃった。文字数前の話の10倍だぞ10倍。
三点リーダーと伸ばし棒と文と文の間を開けるの多用しすぎてる気がする。

一つ読者の皆様にお聞きしたいのですが、パレッティア王国が建国してから何年~みたいな記述って原作にありましたっけ。
ある、ないでちょっとだけ物語変わりそう。

誤字、脱字等ございましたら指摘お願いします。
引き続き、感想・評価・質問お待ちしております。

Q.ゼロはどのタイミングで前世を思い出したの?
A.物心ついた時には既に「自分はどっかから転生してきた存在である」という事は自覚してました。
アニスと違うのは、その転生したという事実と百合というものの概念以外何も持って来なかったという点です。(アニスは現代の機械の知識だとかそういうのも持ってこれてる。ゼロはなんもない。)

Q.なんかゼロの奴積極的に百合の間に挟まりに行ってない?アニスとの距離がそもそも近いやんけ。
A.ゼロは自分の行動が大きな結果をもたらす。なんて一切考えてないからです。「アニスは同性が好きって言ってたし、まぁオレが何やっても大して影響出ないだろ。」程度にしか考えていません。自分は道端の石ころ程度って言う認識なんです。自分がいなくなっても大して変わりゃしねぇだろって思ってます。

Q.ゼロがアニスに触れても恐怖感じないのは何故?
A.ゼロがスキンケアガチ勢だからです。
 嘘です、本当は『男っぽく無いから』です。すらりとした体躯に中世的な顔立ち、柔らかな手、そんでローブで身体隠してる。ぱっと見幼少期のゼロは女の子に見られても不思議では無いほどです。それがアニスにはぶっ刺さった感じです。
声とかやってる事は普通に男の子なんですがね。

Q.こやつ不敬・・・かなり不敬じゃない?礼儀はどうした礼儀は。
A.礼儀は師匠のリーゲンにマナーとして教えられてはいます。ただ、それはそれとして彼は「なんで産まれだけで優劣が決まらにゃならんのだ」って思ってるので、基本的にどんな貴族相手でもタメ口です。アニスは勿論、ユフィ・レイニ・イリア・ティルティにもタメ口で話します。
ただ、TPOは弁えているのでパーティとか王の御前とか、年上の貴族の前では普通に敬語で話します。今回はかなりイラついてたのでタメ口で貴族に接してました。

Q.アトラって誰?
A.一話でゼロが話していた、リーゲンの弟子のひとりです。男です。
愛に生きる男で、パレッティア王国の『ある令嬢に』一目ぼれしてしまい、その日のうちにその令嬢家の専属薬師になる事を決めました。彼はかなり優秀なので令嬢家の試験に一発合格しました。

Q.年齢はどんな感じ?
A.ゼロはアニスの2歳年上。アトラはアニスと同じ歳です。

Q.リーゲンは一体どういう立ち位置なんじゃい
A.パレッティア王専属薬師・・・といった感じですかね。
ただパレッティア王国にずっといるわけではなく、あくまでたまに立ち寄る宿り木みたいな感じです。
そこら辺は追々・・・
取りあえずゼロの師匠だと覚えてくれればいいです。
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