実況パワフルプロ野球恋恋アナザー&レ・リーグアナザー 作:向日 葵
――二月一日、ハワイ。
レリーグのチームはすべてがハワイでキャンプインをする。無論、カイザースもだ。
そして、新人自主トレを終えた新人たちも合流する。
カイザースは四人の新人を指名した。
その中で最も注目を集めているといってもいいのは、やはり一位の葉波だ。
各社記者がインタビューをすべく集まり、新人自主トレから葉波の事を追うが、当の葉波はそれを笑ってスルーしてしまうので、各種記者はなんとか話題を見つけようと必死に目を凝らしてカイザースのキャンプに注目する。
普段とは違う、異様な雰囲気の中で監督である神下はふぅ、と息を吐き、
「全員揃ったな! 今年の目標は各自言わなくてもわかっているだろう!! ――ペナントフラッグを私達に! それが目標だ! このキャンプは六勤一休で行うが――初週は七勤で行う!」
ざわっ、と記者席がざわつく。
プロ野球においてキャンプはおおよそ五~六クールに分けられる。つまり、四、五日練習した後は休みを挟むのだ。
一度の休日をはさみ、次のクールとなるわけだ。
そうして二月末まで徹底して身体をつくり、オープン戦を得て、三月三〇日の開幕を迎えるわけである。
だが、カイザースが行うのはそういった一般的なキャンプではない。シーズンを想定した月曜日が休み、残りはすべて練習という過酷なキャンプだ。
しかも初週は七勤だ。
月曜日、週の頭に二月一日が来てしまったので、その月曜日もキャンプを行い、翌週の月曜日まで休み無し。類を見ないほど厳しい日程だ。
「めちゃくちゃだと想う選手もいるだろう! だが、Bクラスに沈んだ我々が優勝するためにはそういった無理も必要だ! 身体は自主トレで作って来たはず。そうすれば怪我などしない! 我がチームには最高の施設が揃っている。スタッフも最高峰なものを用意してもらっている。それを使ってもなお怪我をするというのなら、それは己の管理の不十分と言わざるを得ない! そういった選手は使うつもりはないからな!」
「「「「「「「はい!!!」」」」」」
神下監督の檄に、選手達が大声で返事をする。
その返事を受けて、神下はにや、と笑った。
「そして、忘れないようにな。一軍と二軍の紅白戦のことを」
うっ、と新人を除いた選手達の顔色が変わる。
何がなんだか分からない葉波を含む新人たちを見て、神下は笑ったままの表情で、
「我がカイザースでは各クールの終了……つまり日曜日に、一軍と二軍の選抜メンバー……無論そのメンバーは私と二軍監督が選ぶが、その選抜メンバーと紅白戦を試合してもらい、活躍した二軍選手を一軍、活躍出来なかった一軍選手を二軍に送っている」
「つまり……俺達新人が、いきなり一軍抜擢もありえる、ってことですか?」
「……そうだ、葉波。活躍できたなら、の話だがな。お前は話題性もあるようだ。その話題性を買って、紅白戦の最初の一イニング、三番キャッチャーで使う」
「――つまり、一イニング、投手をリードし、一打席で結果を残せ、と、そういうことですか?」
「察しがいいな。そうだ。捕手として被安打〇、打撃も必ず出塁しろ。そうすればその後もその試合で出場させる事を約束する」
ざわつく選手たちの中、神下監督と葉波を視線を交わらせる。
葉波は挑発的な神下監督の言動を受けた上で、彼の目を見据え。
「使わせて見せます」
そう、言い切った。
「ふ、では解散! 新人は全員二軍、その他は事前に告知したように移動!」
こうして、神下監督が率いるカイザースのキャンプが幕を開けた。
猪狩、久遠、友沢、一ノ瀬、蛇島はちらり、とパワプロを見た後、一軍グラウンドへと歩いて行く。
そんな彼らに葉波は軽く手を振った後、二軍グラウンドへと歩みを進めた。
(――すぐに追いつく、だから待ってろよ)
目指すは一軍、目標は日曜日の紅白戦。
そこで結果を出し、一軍に乗り込む。
青色のユニフォームに袖を通し、葉波のプロ野球人生がスタートした。
☆
俺に対して二軍監督は静かにメニューの後は好きにしろ、と語った。
二軍のメニューはそう多く組まれていない。
他の球団は恐らく二軍選手の方が大量にメニューを組まれているだろうが、カイザースは逆だ。むしろ二軍選手のほうが、メニューの指定は少ない。
――故に、厳しい。
自分で自制し、自分を客観的に見つめ苦手な所を克服し得意な所を伸ばす、もちろんコーチ陣は相談には乗ってくれるが、基本的に自分で考えて行動しなきゃならない。
カイザースに入ったからといって慢心していく選手はあっという間にコーチからも見切られるし、野球も上手くならない。そして速攻クビになる。
カイザースは名門で金銭力も有る分選手の入れ替わりが激しいからな、こういうシステムなのも納得だ。
グラウンド二〇周の後、キャッチボールを挟みノックを行う。その後野手は素振り、投手はブルペンがあって、その後は基本的に自由だ。
二軍のバッティングピッチャーには待ち時間が出来、コーチ陣はノックバットを離す暇のない程ノックの依頼がある。
こうして軽く見ていても分かるくらい、カイザースの選手は切磋琢磨しあってるんだ。
負けらんねぇ。こういう選手が頑張ってやっともらえるチャンスを、俺は話題性で貰ったんだ。……活かさねぇとな。
とりあえず捕手としてはピッチャーの球を受けとかないとな。
「すみません、二軍ブルペンどこですか?」
「おお、葉波くんか。カイザースには二軍のブルペンは無いんだよ。ブルペンは基本的に一軍と合同なんだ」
「え?」
「昔はバラバラだったんだが……捕手と投手の技術をいい選手から見て学ばせるために、ブルペンを合同にしたのだよ」
「なるほど、んじゃブルペンはどこですか?」
「ブルペンならあっちだよ」
「ありがとうございます」
お礼を言って、俺はゆびさされた方向に走っていく。
……ん? 今のひげの人、どっかで見たことがあるな。どこだっけ……?
まあ良いか。カイザースの球団ロゴの入った手帳持ってたしカイザースの人だろう。
「――頑張れよ、パワプロくん、ずっとキミを待っていたんだ。スカウトとして心を震わせてくれたキミを」
何か呟くような声が聞こえたような気がするけど、まあまずはブルペンに入らなきゃな。
備え付けられたマスクとレガース、プロテクターを着用してブルペンに一歩、足を踏み入れる。
――その瞬間、空気が変わった。
ズパァンッ!! と響く快音。
良い球を芯で取らなきゃしない、あの乾いた音だ。
「ナイボー!! 良いですねぇ佐伯さん!! もう今日シーズン入りでもいいくらいじゃないですか!」
「ナイスボール猪狩!」
「スライダー! 行きます!!」
すげぇ熱気。初日ブルペン入り、ってニュースに出るくらいだから珍しいかと思ってたけど、カイザースは一味ちがう。初日からサバイバル……七勤という過酷な日程なのにもう投げてら。
肘に怪我したことのある一ノ瀬も投げてるし。
「すみません、近平さん。きたかパワプロ」
「おう、猪狩。早速ブルペンキャッチャーやりにきたぜ?」
「ブルペンキャッチャーもなかなかに競争率が高いぞ。投手から指名されるか、投手にブルペンキャッチャーさせてもらえるようにお願いしないといけないからな。……まぁ、二軍投手相手にでも良いならいくらでも座れるだろうが」
「あー、たしかに」
カイザースは俺を含めて六人キャッチャーがいるが、俺を除いたキャッチャーは皆一軍メインとなる投手のボールを受けている。
猪狩は去年のレギュラーの近平さん、一ノ瀬は中堅で二軍の正捕手の工藤さん、久遠は六年目の大谷さんで、山口は高卒二年目の俺の二個下、森山と同期の北田、で、去年セットアッパーとして六〇試合を投げたベテランの佐伯さんが同じくベテラン捕手の日村さん相手に投げている。
他のメンバーはまだブルペン入りしてないしなぁ。
「どうしてもというのなら僕がお前相手に投げてやってもいいが」
「……魅力的な提案だなぁ」
「ふむ、ならば――」
「でもいいよ、近平さんに悪いし、どうせ週末の紅白戦で投げんのお前だろ。お前の球を一番近い所で見て打てそうにないって思ったら困るし」
「そうか?」
「ああ、まずは現有戦力のチェックかな」
俺と組む二軍の投手たちの球も見ておきたい。一軍投手の球を取るのは一軍入りしてからでも遅くないし。
猪狩と離れ、捕手と探している二軍の投手たちの元に歩く。
ブルペンキャッチャーの方と投げてる二軍選手も多いが、十数人は相手が見つからず、お互いにキャッチボールをして肩を作っている状態だ。
……その中で、キャッチボールもせずにボールをじっと見つめる選手がいる。
「どうも、どうかしましたか?」
「ッ、お前は……葉波か。ふん」
童顔でイケメンな奴だ。
くせっ毛が印象的、アホ毛ってやつだな。それがみょん、と頭の先から伸びてる。背は小さく、俺の胸程までしかない。
その選手は俺をまるで親の仇のように睨みつけ、つーんとそっぽを向いた。
「えーと……」
「ふん、オレはお前の二個下だ。森山と同期」
「あー、森山とね。じゃ北田と一緒か」
「……あいつ、ドラ二」
「へー、じゃあドラ一は?」
「オレだ! 悪かったな見えなくて! っていうか知っとけよっ! プロでは一応先輩だし、森山のハズレだったけど一位だったんだぞっ」
「あいつカイザースに一位指名されたんだ」
えーと……確かあおいの手紙によると森山がパワフルズで北前がキャットハンズだっけ。なんというか、世間って狭いよな。一ノ瀬カイザースだしさ。
と、俺が思い出から頭を戻すと二個下の年下のアホ毛選手はまだ俺を睨んでいた。
「えーと、で、名前は?」
「敬語使えよっ、オレのがプロとして先輩だぞっ。……稲村、稲村ゆたかだ」
「稲村」
「呼び捨てすなっ」
「悪かったって。……で、ドラ一の稲村さんはどうして投げてないんだよ?」
俺が尋ねると、稲村はうっ、と顔をしかめ、うつむいてしまった。
ドラ一ならばそれなりの期待度があるはず。二年前のドラ一だし三年目の高卒だろう。
グローブを右手にしている所から見てこいつは左腕。左腕はかなり重宝される上にドラ一とくれば首脳陣も注目しているはずだ。
それがキャッチボールもせずボールを見つめているなんておかしな話。
背丈が低い所から見て軟投派、それが左腕だといえ一位指名されるということは、相当完成度が高い投球をしてたんだろうな。……アメリカ行ってて見てないけど。
「……それ、は」
「それは?」
「…………オレは怪我明けだから」
「怪我明け? ……もしかして、なんか大きな怪我で、メスとか入れたのか?」
「………………」
俺の問いに何も答えず、稲村はだっ、と走って行ってしまった。
……身体的にポテンシャルの低い奴が選手生命を左右するほどの大怪我をすると、そのまま引退することが多い。
才能がないわけじゃない、大投手の中には身長が低い奴なんて何人もいる。
でも、そういう選手が大怪我をしてからの復帰は難しい。身体のアドバンテージが無いのを乗り越える程の投球も、怪我によって劣化してしまうからだ。
それを高卒したてほやほやの選手が経験したとしたら。
しかもドラ一で入って期待されていた選手がそんな目に合ったとしたら。
「……やれやれ」
放っておけねぇんだよな、ああいうタイプ。
それになんだかんだ言ってキャッチボールもしないのに首脳陣が注意も何もしない、ということは首脳陣も待ってるんだ。
稲村がもう一度輝きを取り戻すことを、きっと。
でもま、明日だな。とりあえず今日は誰かのボールを受けねぇとなー……。
「パワプロ」
「んおっ。……山口!?」
「ああ、こうして話すのは初めてだな……北田は俺のフォークをまだ取れないから。どうだ。俺のボールを受けてみないか」
「……上等。お願いするぜ」
「ああ」
山口はにっ、と笑ってマウンドに立つ。
俺はマスクをかぶり直し、ざ、とホームベースの後ろに座った。
その瞬間、フラッシュが焚かれ――猪狩、久遠、一ノ瀬が投球をやめた。
そのまま三人はじっと俺を見つめる。
そんなに注目されると緊張すんだけどな。まあこなしてみますか。
「行くぞ。ストレートからだ」
マサカリ投法。足を大きく上げて、山口が腕をスライドさせる。
構えた所より僅かに高くボールが飛んできた。
それを捕球する。
ズパンッ!! と重い感触。……良いボールだ。
「ナイスボール! 二球目行こうか!」
「ああ、カーブだ」
シュンッ、と山口が投げたボールが途中で軌道を変化させる。
高校で見た時よりも遥かに良いカーブだ。変化量キレ両方プロレベルに進化してる。……ちょっと腕のフリが緩んだけどな。
「ナイボ! ただ腕のふり緩んだぞ! 左腕の引きを意識して投げてみろ!」
「む……」
「カーブの時に抜くことを意識しすぎてるんだ。腕の振りで強弱をつけるんじゃなく、左腕の引く引かないのイメージで良いぜ。もちろんグローブは抱えろよ」
「分かった」
スパンッ!! とカーブが低めに決まる。
よし、今度はいい球だ。
数球カーブとストレートを投げた後、
「次、フォーク」
「おっしゃ来い!」
山口の決め球、フォーク。
帝王実業の時もエグかったけど、プロに入ってどんな風になったかな。
山口がフォークを投じる。
高さは俺の目線の高さ。
そこから、ホームベースの手前で急激に落下する。
「っ」
バンッ! とミットが音を立てる。
フォークなのに大した球威、甘く入っても打つのは楽じゃないな。こりゃ。
「ナイボー!」
「……流石だな」
パシッ、と受け取り、山口は不敵に微笑む。
捕球できた事に気を良くしたようで、山口はそこから三球連続フォークを投げ込んできた。
やっぱ打者がいない分高めに来がちだが、それでも取るのには苦労するな。
三〇球程投げ、山口が軽いキャッチボールを要求してきたのでそれに付き合う。クールダウンってやつだ。
「まさか初見で取るとはな」
「一応ビデオで研究はしたかんな?」
「ふふ、いや、やっぱりお前はこうでなくては、な」
「あん?」
「なんでもないさ。一軍でも頼むぞ」
ぽん、と山口とグラブをあわせ、山口は帰っていく。
……一軍に来いってさ。やれやれ、プレッシャーをかけてくれるぜ。
その後二軍選手のボールを三、四人受け、フリーバッティングをして一日目は終了。
神童さんに組まれていたプロ仕様のメニューのおかげで肉体的にはそこまできつくはなかったけど、やっぱり気を使う事が多くて疲れたぜ。
夕食(ガッツリメニューだけど野菜中心、酢の物もあって疲労回復メニューが中心)の後は入浴、入浴の後は専属マッサージ師のマッサージで疲れを取り、三十分のリラックスタイムで就寝だ。
うーむ、至れり尽くせりだな。こりゃ確かに七勤でも頑張れそうだ。流石猪狩スポーツジムの大本。
リラックスタイムは好きなことをしていいらしいので、チームメイトのことを調べておく。
データ室の二年前の四月の新聞……えーと……お、あった、稲村全治六ヶ月……靭帯の再建手術、か。
トミー・ジョン手術、と呼ばれる靭帯を移植し、傷ついた靭帯を再生させる手術を稲村は行なっている。
全治に六ヶ月、リハビリを入れて一年、ボールが握れないという野球選手おいて最も重いといっていい怪我の一つ。
それがドラ一で入ってきた一年目にいきなり肘を壊し、その手術のせいで今まで全く登板がない。
そりゃキャッチボールもためらうか。“また壊れたら”。そんな恐怖感が拭えないなんて、そんな手術が必要な大怪我を体験したことのない俺でも安易に想像出来る。
怪我をする前の情報に目を通す。
マックス一三五キロのキレのある直球に、落ちるスライダーが武器の左腕。
特にスライダーのコントロールは天下一品。本人曰く狙った所に投げれるという。
コントロールは殆ど感覚だ。一年間、その感覚を養うどころか投げることすら出来なかったとしたら、本人が自信を失うのも仕方ないかも知れない。
……なら、嫌でも自信を取り戻してもらわないと。
明日の朝からあいつに張り付いて話してみるか。本人の話を聞かないとなんにも始まらないからな。
「自信がない、か。……思い出すな」
そういえば、高校生の時もこうやって始まったっけ。
自信の無い投手に自信をつけて貰う。
――恋恋高校に入った時のことを思い出して、俺は一人笑った。
あいつら、元気かな。
☆
翌日。
朝の散歩メニューの前、朝食の時間に俺は稲村を探す。
「お、いたいた、おはよっす」
「げっ、……なんだよ」
「いや別に。一緒にくおうかなって」
「パワプロ。一緒に食べないか?」
「おう猪狩、お前も座れよ」
「パワプロ、隣いいか」
「友沢ー、マジ久々だな」
「ああ、だから喋りにきたんだ」
「僕も仲間外れにしないでよ。久しぶりパワプロくん!」
「久遠! よろしくな。お前の球とるの楽しみにしてるぜ!」
「僕も受けてもらうのが楽しみだよ」
「よう一ノ瀬」
「俺も混ぜてくれないかな?」
「山口も座れ座れ」
「う、わ、わ……」
あ、稲村がテンパってる。
そりゃそうか。カイザースの主力は誰? とカイザースファンに聞けばまず間違いなく猪狩と友沢と久遠と山口、一ノ瀬の名前は出てくる。そんなチームを引っ張る代表メンバーが同じ席に座ってるんだ。一軍登板どころか二軍登板すらしたことのない選手にとっては肩身が狭いだろうな。俺なんか新人だけど。
「稲村。肘の調子はどうなんだ?」
「ひえっ! え、えと、オレは、その、も、もう大丈夫だって、医者には言われてますけど……」
「肘の怪我は怖いよね……ね、友沢」
「そういやお前も肘壊したんだったな。どんな感じだ?」
「痛みでボールが投げれなかったな。俺の場合は肘の手術をしても変化球は投げれないだろうと言われた。靭帯では無く関節の炎症だからな」
「そりゃ手術してもしょうがないよな」
「ああ、結局手術などはせずに投手を断念だ。まあ誰かさんに誘われて打者転向したんだが」
「うっせ、どうせ自分で立ち上げただろお前は」
「ふっ……」
「そういやお前登録内野手になってるな。どうしたんだ?」
「ショートに再コンバートされたんだ。蛇島と二遊間を組んでいる」
「蛇島と! へぇ、どこだよ蛇島」
「パワプロとは顔を合わせたくないからさっさと食べて散歩にいったよ」
「おい山口そこまで聴きだしたなら止めろよ……なんか俺傷つくじゃん……」
「はは、一軍に上がってきてから自分で話しかけるといいさ」
「むぅ……一ノ瀬はどうだった?」
「僕かい? 僕は手術をしたよ。でも怪我をする前より丈夫になった気がするね。というか、ケアをちゃんとするようになったかな。四連投した後とかも時間をかけてマッサージすれば、痛みも違和感も何も無く翌日は好調さ」
「なーるほどな、たしかに怪我をするとそこ気遣うもんなぁ」
そうか、俺が居ない間に色々あったんだなぁ。
友沢がショートか……矢部くんが外野に戻ったりしたのかな。そこら辺も調べとかないとな。……今度は矢部くん、敵だし。
「……あ、あの、オレ、もう行くからさ……」
「まあ、待てよ稲村」
「ぅわぁ!?」
立ち上がろうとした稲村の手を掴み、その場に座らせる。
うわ、こいつめっちゃ華奢だな。女みたいだ。
「どうしたパワプロ、やけに入れ込んでいるが、まさかお前……」
「猪狩、言わないほうがいい。本気で気づいていないからなこいつの場合」
「? なんだよ?」
「……いや、友沢がそういうなら僕は黙ってるさ。好きにするといいと想うよ」
「ああ、ま、こいつはチームにとって必要だろうしな。まあそうギクシャクするなよ稲村。ちょっと聞きたいことがあるだけだ」
「き、聞きたいこと……?」
「そうだ。カイザースのメニューは朝と夜は固定だが、昼はバイキングだったろ。……昨日のメニューを教えてくれねぇか?」
「な、何だよ。……えっと……大豆のハンバーグだろ。スクランブルエッグに、トマトサラダ、野菜ジュースにおにぎり三つだ」
「……それ、自分でバランス考えて食ったのか? 管理栄養士のプロ並に徹底したバランスメニューだな」
俺がそう問いかけた瞬間、ピクリ、と稲村の肩が震えた。
やべ、なんか地雷踏んだかも知れねぇ。
稲村はわなわなと肩を震わせながら、目の前に新人の俺だけじゃない、チームの主力がいる前で俺を睨みつける
「んだよ、悪いかよ……! オレだってプロのピッチャーだ! 投げれなくたってプロの投手選手なんだよ! 悪いのかよ、投げることを考えて飯食っちゃ! 投げれないのに投げるときの事考えて色々やっちゃいけないのかよ!!」
稲村はふーっふーっと息を荒げながら俺の胸ぐらを掴んできた。
……そうか。こいつ、俺が思っている以上に投げるのが大好きなんだな。
けれど、怪我で投げれない時期が続いて、傷ついて、自暴自棄になって――それでも、あきらめなかった。
よくよく見ればこいつの手は豆だらけだ。キャッチボールすら出来ないのに。
それはきっと、食事だけじゃなく、投げるために必要な事は全部やったんだ。
チューブトレ、トレーニングマシーンを使った肘の補強運動、インナーマッスルを鍛える筋トレ、下半身強化の走り込み……多分、俺がアメリカで勉強した以上に調べて、試してきたんだろう。
だからこそ悔しいんだ。投げれないことが。
努力しているのに理不尽な大怪我を追って、
その大怪我から復活するために全身全霊をつくしているのに報われなくて、
その結果やっと復帰できたのに、投げれると分かっても怖くて投げれなくて、
その気持ちを、何処にぶつければいいか分からないんだ。
なのに何も知らない俺に脳天気な食事メニューの指摘をされて、そりゃこうやってキレたくもなるだろう。
――でも。
「誰も悪いなんて言ってねぇだろ」
「……ッ」
「安心しな、稲村」
この騒ぎのせいか、食堂の視線が全部こちらに集まってるな。
猪狩と友沢は俺のことをよく知っている所為かわざとらしくため息を吐き、一ノ瀬はなぜか楽しそうににこにこと笑っている。
ええい、構うこたぁない。言ってやれ。
「俺がお前を一軍に連れてってやる」
「な……ば、バカだろお前っ! オレはキャッチボールすら……!」
「やれることはやってきたんだろうが」
稲村が口を挟もうとするのを、俺はピシャリといって黙らせる。
そうさ。怪我はたしかに遠回りかもしれないけど、止まってる訳じゃない。
怪我をした後立ち止まる奴も居るだろうが、稲村はそんな奴じゃないんだ。
一ノ瀬や友沢のように必死にやれることをやってる。ただ後一歩勇気が足りないだけだ。
それなら、俺がその背中を押してやればいい。
――あの時の、あおいのように。
「それなら、俺がお前を一軍に連れてってやる。連れてけなかったら俺のせいだ。だからお前は俺を信じて投げてりゃいい。一軍に行けなかったら俺のせいだ。どうだ。楽だろ?」
「……っ、そんな、ことっ……!」
「稲村、安心するといい。こいつのアホさには救われることまちがいなしだぞ?」
「ひでっ、おいこら猪狩! その言い方はあんまりだろ!?」
「ふ、実際に救われた僕が言ってあげれば稲村も安心出来るだろう? ……先輩として一つアドバイスしよう、稲村。……たまには責任を捕手に押し付けることも必要だぞ? 特にお前は責任感が強そうだからな。敗戦の責任を背負うのは僕のようなエースになってからでいい」
猪狩は食事を終え、立ち上がる。
野郎……俺の見せ場とっていきやがった……!
けど、ま、あいつの言ってることも正しいよな。
二つしか違わないとは言え、あいつはエースで、稲村はまだ実績の無いルーキーみたいなものだ。
反省することはいいことだけど、それを抱え込むのはよくない。それならばいっそ、他人のせいにしたほうがまだマシだ。
「……ふふ、本当に楽しみだ。待っているぞ、パワプロ。お前が取れないようなフォークを投げてみたいものだな」
「ああ、パワプロくんの株は上がるのは良いが困ったものだね」
「あん?」
「試合前のブルペンにキミを専属にしたいのに人気が出たら困るじゃないか?」
「あはは、たしかにそうですね一ノ瀬さん。……僕も、出来ればパワプロくんに受けて欲しくなりました」
「おお、久遠にそう言われると悪い気はしねーな」
「だって調子悪かったらパワプロさんのせいに出来るでしょう?」
「そういう意味か!?」
「あはは、冗談ですよ。頼みましたよ、パワプロくん。……僕達も、後輩は心配なんですから」
笑いながら、一ノ瀬と久遠は歩いて行った。
友沢はふ、と笑みをこぼし、軽く俺の肩に手をおいて、何も言わずに去っていく。
……分かったよ、ちゃんとこいつも連れて行くって。
猪狩達が居なくなった所為か、全員が朝食後の散歩に出る為に食堂を後にする。
結局、残ったのは俺と稲村だけになってしまった。
「……怖いだろうさ。怪我は。またやっちまったらどうしよう、なんて悩むのも分かる。……けどな。それじゃダメだろ?」
がらん、とした食堂に俺の声が響く。
今こいつに必要なのは、理解することだ。
こいつがどうしてそんなに頑張っているのか、どうして、何故――それを理解した上で、接してやらなきゃいけない。
それが本当のバッテリーになるために必要なことなんだ。
「だ、ダメって……」
「あ、言い方が悪かったな。悪い悪い。投げなきゃ――つまんねぇだろ?」
「え……?」
「お前が投げるのが大好きだって昨日今日の付き合いの俺でも分かる。だったら投げなきゃダメだろ。食ってく為に。そして何よりも――楽しむ為にさ」
「……っ!」
稲村が俯く。
怖い、怖い、怖い――
でも、
投げたいんだ。
もう一度、あの高いマウンドから。
自分の為に構えられたミットに向けて、
自分の身体を目一杯使って、
そうして投じたボールで、
相手が空振って、
打ち損じて、
完璧に打たれて、
自分が投げたボールで、試合が動き出す。
その結果で、一喜一憂する。
その感覚を、もう一度味わいたい。
――もう一度、投げたい。
「ぅ……、……そ、その、オレっ……な、投げるのが好きで……」
「……分かるさ」
「で、でも、こわ、怖く、て……」
「解るよ。でももう怖がらなくていい」
「っ……でも、怖いんだ……っ! また、壊れたら、って想うと……! 打者を全く抑えることが出来なかったらって想うと……!!」
「大丈夫さ。打たれない」
「そ、そんなこと、分からないじゃないか……」
「いや、打たれない。――打たせない」
「な、え……?」
「仮にお前の投球が打者を抑える事が出来ないものでも、俺が打者を抑えるのに足りない分、全力で埋める。だからお前は今やれる分を全力でぶつければいい。そうすれば通じるさ、どんな打者にだってさ」
「な、何いってるんだ。お前……お、オレは二軍戦も出たこと無いんだぞ? それなのにお前は、力を合わせれば通じるなんて本当に思ってるのか?」
「ああ、そうだ」
「な、ぅ……根拠! 根拠を言ってみろよ!」
「根拠なんてねぇよ」
「は、はぁ!?」
「捕手が投げる為に全力を尽くしてる投手を信じるのに、理由なんて要らないだろ」
「……」
怪我をしても、投げるためにやれることを全力でやる。
そんな努力に、報いてやりたい。
その努力を、結果という形にしてやりたい。
そう思った。思わせるような投手だった。
だったら、そいつを信じる理由なんて、必要(いら)ない。必要ともしたくない。
「行こうぜ稲村。あと、今日のブルペンよろしくな?」
「……ぐす……う、ぅぅ、うっ……ううっ……」
「ど、どうした!?」
「う、うわぁああーん!」
俺にしがみつくようにして、稲村は泣く。
一年間投げれなかった辛さや恐怖を、全て流すように。
……結局、俺と稲村が散歩をすることができたのは、遅れに遅れた三〇分後だった。
☆
「だ、ぁぁ……やっと終わった……」
散歩をするのに遅れた理由は二軍監督に許してもらえたものの、示しがつかないとかいう理由でメニューを三倍にされた。
自主性の高いカイザースの軽度メニューでも三倍にすれば話は別だぜ。
あー、疲れた。
「葉波先輩!」
ぴょこ、とアホ毛が揺れるのが見える。
どうやら投手の三倍メニューを終えた稲村が俺を迎えに来てくれたようだ。
……泣き終わった後、ちょっと恥ずかしそうにしていた稲村だったが、散歩を終える頃にはすっかりその恥ずかしさも取れて今や素直な可愛い後輩だ。啖呵切った甲斐があったぜ。
「三倍メニュー終わりましたか?」
「おう、終わったぜ。んじゃまブルペン行くか」
「はいっ! お願いします!」
くぅ、やっぱり後輩はこうでなきゃな! 進といい後輩は可愛いぜ。
二人で連れ立ってブルペンに入る。
プロテクター、レガース、マスクをつけてホームベース後ろに立ち、辺りを見回す。
今日もブルペンには猪狩達が入って居たようだが、俺と稲村のメニューの消化が遅かったせいかすでにブルペンには人が殆ど居ない。記者陣に至ってはお目当ての猪狩辺りを収め終えたらしく、すでにブルペンにはいなかった。
ここに居るのは二軍の監督、投手コーチと稲村、俺と同期の高卒ルーキーとそれを受けるブルペン捕手くらいのものだ。……ま、これくらいの方が稲村も固くならなくていいかな。
「んじゃ稲村。まずは小手調べにストレートからな」
「……っ、は、はい!」
「落ち着け、試合じゃねぇんだぞ? 最初は俺も座らねぇから、軽くな、肩を作るぞ」
「分かりました! いきます!」
ゆらり、と稲村が足を上げ、ぴゅっ、と腕を軽く振るう。
パシッ! と小気味の良い音をミットが立てた。
良いボールだ。
そのボールを稲村に返す。
「全然良いぞ。これで肩を温めるんだ。肘とかに違和感はないな?」
「はい! 大丈夫です!」
それを二〇球程繰り返し、肩を作っていく。
どうやら稲村の肩も温まってきたようだ。
「うっし、大分良くなったな。……座るぞ」
「……っふぅ、はい、お願いします」
稲村の同意を得て、俺は腰を下ろす。
稲村は深く息を吐いて、緊張した面持ちでボールを見つめた。
ブルペンで投げるのも、多分一年ぶりだ。
様々な想いが稲村の中をかけめぐっているのだろう。その中には多分、不安とか、怖いとか、そういう気持ちもあるはずだ。
それでももう、怯まない。
「行きます! 葉波先輩!」
「ああ、来い」
ゆらり、と稲村が足を上げた。
ゆったりとしたフォーム、相当タイミングが掴みづらいだろう柔らかな、それでいて力感を感じるフォームで稲村が腕をふるう。
オーバースロー。関節が柔らかく出所の見辛い投球フォーム。
そこから投じられた、回転の良い直球を、俺はミットの真芯で捕球した。
スパァンッ!! と音が響く。
「……ぁ……」
ふるる、と稲村が身体を震わせた。
嬉しさか、興奮か――稲村は嬉しそうにぎゅ、と拳を握って、表情をほころばせる。
……こんな顔をさせてやれて、本当によかった。
にしても良いフォームだ。ゆったりと足を上げてから、一度ボールを持った手ごと身体を下ろし体重をしっかりと軸足に載せてから、グローブを抱えて足を踏み込み滑らかに体重移動させ、更に柔らかな関節を生かした出所の見えないフォームからキレ味の良いボールを投げ込む。
ドラ一なのが納得出来る素晴らしいフォームとボールだった。これで左腕ならたしかに一位の器だな。
「あ、あのっ、葉波先輩っ、お、オレのボール、どうでした?」
「ん? キャッチャー冥利につきる、っつーのかな」
「え?」
「最高の球だった。もう一球同じ球を頼むぜ?」
「――! はい! 幾らでも!」
にこっ! とひまわりのような満面の笑顔を咲かせ俺からボールを受け取り、稲村が再び腕を振るう。
パァンッ!! と再びブルペン内に快音が響く。
ストレートを何球か受けてみるが、本当に怪我をしたのか怪しい程良い直球だ。
恐らくスピードガンで見ても一二〇キロ後半程度しか出ていないのだろうが、打者の目から見れば恐らく一四〇キロの後半に感じる程の球持ちの良さとキレと球威だ。
特に球威が凄い。オーバースローで振り下ろすように投げるお陰か回転数が有って、ボールが重いのだ。
「さて、次は縦スラ行ってみるか」
「えっ、オレの決め球知ってるんですか?」
「当たり前だろ。調べたんだからさ。さ、来い!」
「先輩がオレの事をわざわざ……行きます!」
何か感激したらしく、嬉しそうにしながら稲村はぐっと足を上げる。
ストレートと同じフォームから投じられる縦のスライダー――それがドッ! と地面をえぐった。
「……っ」
「キレてるぞ! もう一球!」
「っ、はっ!」
ビュッ! と稲村がスライダーを投げるが、今度は大きく浮き上がり、立ってやっと捕球出来る場所にまで抜けてしまった。
稲村の顔がとたんに曇る。
……ストレートは怪我する前と同じ感覚で投げれてるが、縦スラはそうはいかないらしい。
この後スライダーを何球か投げてみるが、やはりコントロールが付かず、ストレートは大体七割方構えた所に決まるのに対し、縦スラは二割行けばいい方程度だ。
その後稲村が持つカーブやら、チェンジアップなどを試させて貰ったが、お世辞にも決め球としては使えそうもない。
「ラスト、ストレート!」
「――ふっ!!」
パンッ! とストレートを捕球し、稲村の復帰後初の、六〇球のブルペンは幕を閉じた。
軽くクールダウンのキャッチボールをしながら、稲村と話す。
「ストレートは行けるな」
「ありがとうございます!」
「お前も分かってると思うけど、スライダーがな」
「はい……上手くコントロールできなくて」
「ま、初現場復帰っつーことで、一四〇点だな。そのうち六〇点がストレートな」
「後の八〇点はなんですか?」
「お前が頑張って投げた勇気、ってところだな」
「……先輩のお陰です」
「はは、そういうことにしといてやるよ。明日も頼むぜ?」
手を差し出す。
稲村は少し迷った後、俺の手にその手を重ねた。
「さて、んじゃ俺はバッティングやってくるな。お前はアイシングしたストレッチとマッサージ、その後風呂入って飯食って、もう一度マッサージして疲れ残さないようにしろよ。んじゃな!」
「は、はい、頑張ってください!」
稲村に細かに指示を出して俺はバッティング練習しているグラウンドに急ぐ。
今日はブルペンに入るのが遅かったからなぁ。まだやっててくれよ。
そんなことを願いながら、俺はグラウンドに走るのだった。
☆
ぴちょん、とシャワールームに水滴が落ちる音が響く。
先輩に言われた通り、オレはあの後アイシングをしストレッチをしマッサージをし――今、自分の部屋の備え付けの風呂で入浴している。
先輩は凄い。ストレッチをした後マッサージを受けに行ったらマッサージ師の人に話が通してあったし、オレが欲しい言葉をいつも選んで言ってくれる。
失敗したボールを投げてしまった時も悪い所を説明しつつ決して萎縮しないように優しく。
良いボールが行った時は大声を出して、
そして何よりも、オレが投げることが好きだと、気づいてくれた。
怖がっているって気づいてくれた。
それだけで一人でずっと暗闇の中に居たような、あの感覚が嘘のように消えてる。
痛々しく残る左肘の手術痕。
これを気にして昨日まであんなに投げるのが怖かったのが嘘みたいだ。
「せんぱい……風路、せんぱい」
口に先輩の名を出す。
それだけで、ちくりと胸が傷んだ。
オレは単純だ。
あんなに話題性だけで騒がれていると毛嫌いしていたのに。
――今はこんなにも、信頼している。敬愛している。
……その他にも、えっと、色々、して、いる。……して、しまった。
「……せんぱい、まだ早川さんの事、好きなのかな?」
葉波風路は早川あおいの恋人である。
ちょっと高校野球に詳しい人なら誰しもがそんな話は知っている。高校時代付き合ってたとか腐る程雑誌で読んだし。
でも、そんな情報、嘘だったらいいのにな。
……本当にオレって単純だなぁ。
ぴちょんぴちょん、と水滴がシャワーノズルから落ちる。
膨らんだ自分の胸元をお湯が流れていく。
「せんぱい……せんぱい……」
先輩、ごめんなさい。
多分先輩はオレのことを、チームメイトとして心配してくれてただけなのに。
「……オレ……せんぱいのこと、好きになっちゃったよ……」
顔半分を湯船のお湯に沈めてお湯をぶくぶく言わせながら、オレは目を瞑り、先輩の事を考える。
……早く明日にならないかな。そうしたらまた、先輩にボールを受けて貰えるのに。
――稲村ゆたか。
白薔薇かしまし学園大付属高校卒業。
性別、女性。