ブルーロック -淡い一等星- 作:埋もれたエゴイスト
雷市「いいか!後半からは
久遠「いやいや!?誰もがそれ望んだからじゃんけんして決めたポジションじゃないか!?今から変えるなんて無理だ!」
イガグリ「お前まだ点取れるポジションにいるからいいじゃん!むしろ俺と潔を変えてくれよ…」
今村「っていうか、ポジション変更しなきゃいけないわけ?今のままでも戦えてるんだし、わざわざ変える意味なくね?」
雷市「あ゛ぁ!?それはてめぇが点とるチャンスがあるから言えるんだろうが!?役に立たないヘタクソで前固めるより俺が前に出たほうが良いんだよ!」
今村「んなこと言って、潔からパスもらえなかった雑魚のくせに~。」
雷市「!?…てめぇ、ぶっ殺されてぇのか!?」
久遠「喧嘩するなって!今村も変な煽り方するなよ!」
今村「へいへ~い。」
前半終了して控室。
何やら雷市が興奮して騒ぎ立てているのを宥めたり便乗したりと言った雰囲気が流れている。
ひとまず点数不利の状態で後半を迎えずに済んだのは、原作改変の甲斐があったというものだが油断はできない。
原作では最後の一矢報いるまで何もできずに5-1で完敗するという結末だったが、今のところ完膚なきまでに負けるという未来を回避したに過ぎないからだ。
この試合で必要な結果は『負けない』ことで、次に『勝利する』ことが目標になる。
同じに聞こえるかもしれないけど、負けないというのは『引き分け』も妥協するという意味が含まれている。
個人的には、ここから逆転する流れで勝利するのが
そのためには、まず相手チームの得点源たる馬狼の突進を、ある程度抑制できる人材が必要になってくる。
けど…無理じゃね?
國神や雷市なら馬狼の
とするとDFの中でも
と言うか負けた。
つまり、このままだとゴール前で馬狼にボールが渡った場合、俺たちにはそれを止める手立てがないということに他ならない。
一応、裏技がないこともない。
原作知識によれば、馬狼が奪ったゴールのほとんどは『右上角』へのシュートによるものだ。
このことをGKの伊右衛門に伝えれば、意識的にコースを絞ることでゴール一回分は防ぐことができる可能性が高い。
けれど、GK未経験の俺が伊右衛門にアドバイスを送るっていうのもおかしな話だし、何よりGKに慣れてない伊右衛門が塞ぐコースを意識すれば、動きで右側を警戒されてると馬狼に悟られる危険もある。
下手に知識だけ原作に頼ったところで成功するとは限らない以上、闇雲に原作知識を広げるのはかえって
他の手立てを何か考えるしかない。
…とはいっても、俺にはもう残された手が一つしかなかった。
というか、これしか思いつかなかった。
断られるだろうな…なんて憂鬱な気分になりながらも、俺は協力を仰ぐため
俺「なあ、ちょっとお願いがあるんだけど、聞いてもらってもいいか?
我牙丸「?どうした成早?」
俺「その…言いにくいんだけどさ………頼む!俺とポジション変わってくれ!」
俺からのお願いに疑問符を浮かべる我牙丸へ、俺は畳みかけるように理由を説明した。
守備の面で不安があるなら、馬狼と相対することができる人選に入れ替えれば良い。
それがまあ普通に考えて適切な判断だろうし、今回は効率も何も度外視してじゃんけんで決めたポジションだからこその結論でもある。
肝心の馬狼を抑えることができる人選だが、このチームZにおいて対峙できる人間は限られてくる。
俺が思うに適任者は4人。
まず、言わずもがなチームZで最も優れた
この二人は特に自分のゴールに固執している節があるため、間違ってもDFに下がるということはないだろう。
何より、國神のシュート力と雷市のスタミナはMFでも充分活躍できる可能性を秘めている。DFに引っ込ませるには惜しい才能だ。
次に、体格の良さなら二人をも上回り、
彼の場合はもっと単純な理由で、俺と交代するにしてもこのチームで最も身長が低い俺がGKをするのはどう考えても不安しかない。
それに、もし仮に馬狼を止められたとしても、そこからボールを奪う算段が思いつかなかった。
最後に、何気にチーム内で最も高身長を誇り、
俺が彼を交代の人材に抜擢したのは、文字通り馬狼とゴール前でバチバチにボールを競ってほしいからだ。
彼の武器は肉体のバネという特徴を活かしたもので、この能力を持ってすれば馬狼と対峙してもある程度は突進を食い止めてくれると思う。
そして、俺は伊右衛門との交代と違ってMFになる関係上、馬狼相手にボールを奪うという選択肢も視野に入ってくる。
そういうわけで、我牙丸こそが俺の望む理想的な人材なわけだ。
ただし、当然のことながら俺と交代するということは、我牙丸にDFへ下がれと言っているのと同義だ。
DFは自陣のゴールを守ることが主な仕事となるポジション。
我牙丸自身がゴールを決めることを望んでいるにもかかわらず、シュートチャンスをほぼ完全に失うDFへのポジション変更はとても受け入れられないだろう。
それでも、俺の脳ではこれ以外に馬狼を止める方法を思いつかなかった。
俺「だから頼む!この通り!」
今の俺が差し出せるものなんて『誠意』という気持ち以外に存在しない。
だから俺は土下座まではしなかったものの、勢いよく腰を90度曲げて精一杯のお願いをした。
気付けば、俺たちの会話の動向を気にしてか周囲の視線が集まっていたが、前世で仕事を失敗した時に頭を下げた時に比べれば何のことはなかった。
それから何秒、いや何分経っただろうか?体感でしかないが、かなり長い間沈黙があったように感じる。
ただ、今は顔が見えない我牙丸がどんな顔をして、何を考えて、そしてどんな答えが返ってくるのか、それを考えるのだけが少し怖かった。
そんな俺の不安を知ってか知らずか、我牙丸の「ん~…」と間延びしたような声が聞こえた後
我牙丸「分かった。交代しても良いぞ。」
俺「へ?」
思ったよりあっさりと了承の答えが返ってきた。
雷市「おい、何言ってんだお前?自分が得点するチャンスを棒に振るとか、正気かてめぇ?」
イガグリ「そうだぜ!っつうか交代すんなら俺と代わってくれよ!」
我牙丸「それは嫌だ。俺は
イガグリ「なぁ!?友達だからってことかよ!?」
雷市「ハッ!そのオトモダチだって自分の点が欲しいからって理由で交代したがってるだけかもしれねぇだろ!
それともあれか?自分はもう一点取ったから余裕ひけらかしてるだけかぁ!?」
我牙丸「…あの一点は、俺の力だけじゃ取れなかった。成早の提案があって、今村がそれに乗って、俺もそれに便乗した。だから得られた得点だ。
その成早が勝つために考えて俺を頼ってくれたんなら、俺は成早を信じたいと思う。」
…やば、なんか、泣きそうかも。
前世ではこれと言って親友みたいな人間もなく、職場の同僚たちも仕事仲間でしかない関係しか築けなかった寂しいおじさんに、少年故の真直ぐな想いは感情を揺さぶってくるなぁ。
その後も雷市は特に文句を言っていたが、それ以上我牙丸が取り合わなかったことと、久遠や國神が宥めたこともあってひとまずその場は収まり、俺のポジション変更も全員に了承をもらった。
今村「それにしても雷市のやつ、ちょっと周りに当たりすぎじゃね?」
俺「まあ得点王ってシステムもあるんだし、やっぱり自分の点にこだわりたいって気持ちはわかるから…」
我牙丸「そうだな、俺も正直言うならもっと点取りたかったし。」
俺「それは…ごめんとしか…」
我牙丸「いや、気にしなくていい。」
今村「そうそう!我牙丸だって、そんなことは分かったうえでお前の提案受けてくれただろうしな。」
俺「…そっか。そうだよな。あぁ我牙丸言うの忘れてたけど。」
我牙丸「ん?」
俺「ありがと。」
我牙丸「…ん。」
今村「ひゅーひゅー!男同士の友情だね~!」
俺「っ、茶化すなよ。ったく…じゃあ改めて、勝とうぜ!」
今村&我牙丸「「おう!」」
FW
雷市 國神
我牙丸 五十嵐
俺は変更した
吉岡だ。
吉岡「成早~!お前前半DFじゃなかったっけ?」
俺「おう!我牙丸…向こうにいる6番と場所代わってもらった。」
吉岡「マジで!?アイツってゴール決めた奴だろ!?よく代わってもらえたなぁ。」
俺「まあな。良い奴なんだよ。」
吉岡「…まあいいや。おかげでお前とマッチアップせずに済むからな。こっからはおれもバンバン点とるぜ?」
俺「へへっ、やってみろよ!俺だってバンバン点取ってやるからな!」
吉岡「へっ!上等だ!なら後半はどっちが点とれるか勝負しようぜ!」
俺「望むところだ!」
そこまで話したあたりで試合開始が近づいていたため、吉岡は急いで自分のポジションへ戻って行った。
確かに、今のチームXの攻撃力は下手すれば原作より強力なものになってるかもしれない。
馬狼の突進力。
更に吉岡のフェイント。
そしてパス交換。
サッカーの攻撃は
けれど、逆に言うとそれさえ凌げばチームXに得点を得るチャンスはなくなる。
対策が上手くいくことを祈りつつ前を見据える俺の耳に、後半開始の音がフィールドに響き渡った。
X Z
2 - 2
後半は相手ボールからのスタートだ。
まずはこのボールを奪うことから始めなくてはいけない。
で、相手の攻撃パターンはおそらく前半同様に馬狼へ渡してからスタートするだろう。
敵FW「よっしゃ頼んだ
ほら来た。
その攻撃は何度も見ているから、最前線にいる潔と蜂楽がボールを奪いに2on1を仕掛けに行く。
馬狼「っ…」
すると、馬狼は最初にボールを持っていた敵FWに一旦ボールを戻して、二人を
二人もなんとかその強行を止めようとするが、二人の圧力をものともしない馬狼はそのまま突破し、再び敵FWからパスを受け取るという強引なワンツーで抜いて見せた。
だが、その先には体格の良い國神と雷市がいる。さっきみたいなやり方だと通じないはずだ。
それを理解している馬狼は周囲を見渡してパスコースを探る。
馬狼「!…チッ!」
けれど、その動きは唐突に停止した。なぜなら…
吉岡「ちょ!?お前ほんと邪魔だな!」
俺「今ならまだお前とマッチアップできるぜ?」
敵FW「くそっ!?コイツ!?」
蜂楽「にゃはは♪行かせない!」
攻撃に出ているFWのメンバー一人一人を徹底マークしているからだ。
それも、自陣方向へ向かうパスコースを重点的に潰すような動きを意識している。
まあ、俺だけは例外的にMFの吉岡をマークしてるんだけど。
単純な作戦だが、こうすることで馬狼とその周囲のパス連動を防ぐことが狙いだ。
自身の突進力を利用して前へ前へ出たがる馬狼は、自分と同じように前方へ向かうパスを好むと考えた。
そこで、ポジション交代の騒ぎがひと段落した後にそのことを話した結果、こういう動きをすればいいんじゃないかと結論が出たのだ。
そして実践してみれば効果覿面だったようで、馬狼は強引に抜くこともできず、かといって攻撃的なパスを出すこともできずに怒りの表情を浮かべていた。
敵MF「
だけど、この作戦は敵全員をマークする物じゃないから、当然ながら敵陣側へのパスに関しては防ぐ方法がない。
そして馬狼も、苛立ちを隠しもせず悪態を吐きながら後ろへパスを出した。
すると、馬狼はパスを出した次の瞬間にはもう動き出し、素早く國神と雷市の間に空いた空間へ走り込んだ。
意表を突かれた二人は馬狼を止めようと動くも、僅かに一歩分動くのが早かった馬狼が二人を突破した。
なるほど。
前半で吉岡にパスした後で馬狼がどうやって二人を抜いたのか気になってたけど、パス直後の動きだしの速さで二人の意表をついていたのか。
そんな馬狼の様子を見ていたのか、パスを受けた敵MFは再び馬狼へパスを出した。
今村「うぉらあぁぁ!」
敵MF「俺へのパスを!?」
けど、
これはなんと潔の案だった。
完全にパスコースを塞ぐんじゃなくて、あえてパスコースを開けておくことでボールを誘導できないかと提案してきたのだ。
結果は御覧の通りで、パスカットに成功した今村自身もできたことに驚いていたようだった。
流石、頭脳派系の主人公様様だな!
何はともあれ、
次は、俺たちの