ブルーロック -淡い一等星- 作:埋もれたエゴイスト
さてさて、点を決めたと言ってもまだ同点、この一次
そのためには、まず
まあ、おそらく最初のボール保持者は馬狼になるだろうけど…
吉岡「お前ら!やるぞ!」
敵FW「「おう!」」
敵MF「「おう!」」
そんなことを考えていると、吉岡の号令で敵チームが謎の一体感を見せていた。
何事かと観察していると、敵FWは今までのように馬狼へパスを出すんじゃなく、他の敵FWや敵MFとパスを繋いで攻撃してきた。
今村「!?なんだ?アイツらパス回しを中心に?」
久遠「やばい!相手攻め方変えてきたぞ!」
まさか、ここまでで馬狼の突進が止められているのを見て修正してきたのか?
気になって馬狼へ目を向けて見ると、突然行われたチームメイトの連携を聞かされていなかったのか、驚きと怒りをごちゃまぜにしたような表情を浮かべていた。
まずいな、馬狼を止めるためだけにマンマークをしていたから、空いたスペースへのパス回しを中心に攻められると対応が遅れる。
マンマークは本来、相手のエースを自由にさせないために行われる戦術で、エースを補佐する他の選手に対して行うべきものじゃない。
今までは、馬狼にあえて突進させることで味方陣営の中核まで誘い込んで、パスコースを制限する目的だったから成立しただけだ。
ここは『
パスが出されるエリアを可能な限り潰せば、今のパスワークを中心とした攻撃をある程度抑制できる。
…よく考えると、馬狼からのパスが無くなった今となっては、マンマークで守備する目的はもう意味がないな。
俺「みんな!ここからは
潔「え?でも馬狼はどうするんだ?」
俺「見てる感じ馬狼以外へパス出してる。たぶんゴール前までは他のメンツでパスを回す気だ!」
イガグリ「言われてみれば、確かに馬狼へパス出してねぇぞ!」
伊右衛門「だな…よし!切り替えて守備位置意識しながら守れ!」
俺の一声をきっかけに、チームZがまとまりを見せて守備の
すると、俺たちが守備を変更したことでパスコースが狭まり、敵チームの攻撃進度に少し遅れが生じ始めてきた。
後はあわよくばボールを奪うきっかけになればいいが…
吉岡「あ~あ、意外と対応早いなぁ…ってことで、後はよろしく!」
だが、吉岡はその変化に動揺することもなく、パスで回ってきたボールを間髪入れずに前線へ蹴り出した。
それは俺たちの自陣中央よりゴール側のエリアまで飛んでいく縦の
馬狼「フン!最初からそうしてりゃよかったんだ。」
吉岡「へっ!そいつは失礼。」
イガグリ「ギャッ!いつの間に!?」
我牙丸「っ、やば…!」
やられた!?
てっきり味方へパスを出さなくなった馬狼の変化を感じ取って、吉岡あたりが馬狼を除いてパスを回しているものだと思ってたけど、本命はあくまで馬狼のままだったか。
しかも、俺たちが守備の
まずい!
イガグリと我牙丸だと足止めはできるかもしれないけど、おそらく今度は強引にシュートを決められる可能性が高い。
しかも、今俺は吉岡の動きを邪魔する位置にいて自陣でも前側にいるから、今から戻ってもカバーが間に合わない。
くそ!完全に裏をかかれた!
せめてあと一人、誰かがディフェンスに入ってくれれば間に合うかもしれないのに!
誰か!
雷市「待てよ独裁王が!」
馬狼「あぁ?粋がるなよガキ大将が。」
慌てて馬狼の方へ駆け出した俺の視界に、一人抜け出していたはずの馬狼に付いていたらしい雷市の姿が映った。
おそらく本人にチームを助ける意思などと言うものはないだろうけど、その足止めはかなり大きな意味を持つ。
上手く足止めができれば、俺の脚でも何とか割り込める!
全力で駆け出した俺の視線の先で、雷市と馬狼との1on1が繰り広げられていた。
馬狼は得意の切り返しで最初、雷市の右側から抜こうとしたが、素早く反応した雷市も左へ身を乗り出して進路を塞ぐ。
だが、その動きを引き出した馬狼は足先でボールを引き戻し、今度は左へ重心を移動させた。
その動きに何とか対応しようと雷市は
しかし、その瞬間に馬狼は重心移動を止めて再び右側から突破を試み、完全に重心を移動させてしまった雷市は置き去りにされてしまった。
我牙丸「まだ、俺がいる!」
馬狼「なめんなよ。そう何度も俺様を止められると思うな!」
そういうや否や馬狼は我牙丸の方へ躊躇わずに走り出し、やはり切り返しでもって左から我牙丸を抜き去ろうとする。
でも、我牙丸も超人的な反射神経と肉体のバネで馬狼の動きについていく。
けれど、ここで馬狼は右足の先でボールを左から右へ進路を変えるようにタッチし、そのまま急激に右側へと進路を取った。
完全に右へ飛んでいた我牙丸はその動きに対応できずに馬狼を横目に捉えることしかできなかった。
っていうか、
あんな技まで隠し持ってたのかよ!
いや、でも俺がギリギリ追いつけた!
ここで後ろからボールを奪えば、まだ俺たちにも逆転のチャンスが回ってくる!
そう思って俺は我牙丸を右から抜き去ろうとする馬狼の足元、彼の進路上に転がって行くボール目掛けてスライディングをかます。
だが、馬狼は一瞬チラッとこちらを見ると、ボールの下側を優しく蹴ってふわっと浮かせた。
俺「!?」
馬狼「そう何度も俺様が同じ轍を踏むかよ!」
くそっ!まさか反応されるとは!
そりゃあ俺だって何度も同じ手が通じるなんて虫が良い話とは思っていたが、他にこいつを止める手段が思いつかなかった。
このままじゃ、馬狼に点を決められて…そうなったら。
我牙丸「させるか!」
ところが、馬狼に抜かれたはずの我牙丸が、後ろに飛びながら身を捩って反転させ、器用に後ろ右回し蹴りのような態勢で馬狼が浮かせたボールを弾いた。
俺「へ?」
馬狼「な!?」
我牙丸「おー…マジで届いた。」
…っていうか、どんな動きだよ!予想外が過ぎるわ!
でも、おかげで馬狼がシュートして得点を奪われるっていう展開は回避できた。
視線をずらしてみれば、馬狼もボールを盗られたことで苦悶の表情を浮かべていた。
まあ、この人数差まで一人で強引に突破できること自体やばいんだけどな。
俺「すげぇ!我牙丸ナイス!」
我牙丸「誰かクリアしろ!」
久遠「OK!俺がやる!ナイスだ我牙丸!」
何とか我牙丸が弾いた
その先にはフリーで待機している國神の姿があった。
國神「よし!このままある程度前線まで運んで…」
吉岡「よお!いい筋肉してる兄ちゃん!俺と遊んでこうぜ?」
だが、目敏くパスのポイントを見極めていた吉岡が國神の元へカバーに入った。
吉岡 喜亮 vs 國神 練介
國神「…挑発には乗らねぇよ。もう自分勝手なプレーじゃ足引っ張るだけってわかってるからな。」
吉岡「それは同意。じゃあパス出してみなよ?」
國神「…っ。」
國神は吉岡の挑発に乗らなかったが、続く吉岡の言葉には何も返せずにいた。
まあ仕方ない。
相手は最初からディフェンスでは今の俺たちと同じ『
そのせいでパスコースが狭い上、前線へパスを出したいのに俺や雷市が下がったことで、左サイドは致命的にがら空き、右サイドへのパスは吉岡が塞いでいる。
これによって國神はパスが出しづらい状況に陥っていた。
こうなっては、もう狭いコースへ正確にパスを出すか、個人技で吉岡を抜き去るしかない。
潔「國神!俺フリー!」
國神「潔…!」
吉岡「お?例の
すると、その状況を見かねた潔が國神の方へ走って行った。
これによって潔へのパスコースが格段に広がり、声につられた吉岡も後方にいる潔の方へ一瞬視線を向けていた。
國神はその一瞬の隙を見逃さず、潔へパス…ではなく逆サイドからドリブルで抜こうとした。
たぶん、残り時間の少なさから焦りもあったろうけど、まだ胸の内に『自分でゴールを奪いたい』という想いが強かったんだろう。
だが吉岡は、まるでその瞬間を待っていたかのように、國神のドリブルへ素早く対応して見せた。
吉岡「死角を意識し出してからさ、視界の端で動く相手を素早く目で捉えられるようになったんだよ。誰かさんのおかげでな?」
國神「く、そ!すまん!」
そのままボールを奪われた國神は謝意を口にするが、状況は再び最悪な方向へ傾きかけていた。
せっかく三人がかりで馬狼から奪ったボールが、よりによって再び相手に渡ったんだ。
國神の心中は穏やかじゃなかっただろう。
でも、そう心配する必要はない。
お前が少しの間吉岡を引き付けてくれたおかげで…
俺がギリギリで追いつく!
俺「それはまた、誰のおかげなのかな~?」
吉岡「っ、ほんっと!お前は良いところで出てくるなぁ!」
吉岡 喜亮 vs 成早 朝日
さて、もう何度目の1on1になるだろうか?
意外と広いコート上で何度も戦いあっているが、はてさてどういう因果関係でこんな何度も戦うことになっているんだろうか?
まあ、たぶん互いに手の内を知っているから警戒し合ってるだけなのかもしれないけど。
何はともあれ、逆転を許しかねない危機的状況を何とか止められたんだからそれでいい。
ここで俺が突破されたら正直、もう後はないが…
吉岡「…まあ、これも
俺「あぁ、望むところだ!」
そう言った吉岡は好戦的な笑みを浮かべて、俺の方へ踏み込んできた。
前に踏み出そうとした右足が地面に付く前に、俺は自分の体を僅かに浮かせて半歩分だけ後ろに下がる。
俺の身体と吉岡の踏み出した足がほぼ同時に地を踏み、次の行動を警戒する俺を見て、吉岡は無理に仕掛けに行くのを中断する。
そして、今度は上半身の重心移動で左右への揺さぶりをかけてくるが、足元の動きが小さいのを見切って下手な
俺の様子にじれったさを覚えた吉岡は、すぐに思考を切り替えて再び踏み込んできたが、俺は先ほど同様に半歩下がって相手との間合いを一定に保つ。
そうこうしていると、吉岡の背後から國神が迫ってくるのを視界に捉えた。
國神「成早!助かる!このまま二人で挟むぞ!」
そんな國神の声に反応してか、吉岡も声の主がいる方向へ視線を向けていた。
…時間もない、ここは直接奪ってやるか!
幸い、吉岡の視線は一瞬國神の方へ向いている。
この死角を利用して吉岡へ急接近すれば密着状態から二人掛かりでボールを奪えるかもしれない。
そう思って踏み込んだ俺の目に、吉岡の姿が映り込む。
視線と逆側へ捻り始めた上半身
振り上げられ始めた右足
僅かに口角の上がった口元
何度も吉岡の動きを一番近くで見てきたからこそわかる。
あれは、あの動きは…
そう直感した俺は、なんとなく体の動きから予測したパスコースを塞ぐように右足を出した。
そして、無意識的に反応した体とは別に、俺は視線を予測したパスコースの先へと向けていた。
そこには、荒ぶった内心を隠すことなくイラつきを見せている馬狼の姿があった。
トンッと、不意に右足へ謎の衝撃を感じた。
驚いて視線を向けると、いつの間にかサッカーボールが俺の右足へ吸い付くように収まっていて、俺はそのまま右足から地面に着地した。
そして無心でボールを蹴りだしながらドリブルを開始する時、視界の端で吉岡が驚愕の表情を浮かべているのが目に入った。
國神「ナイスだ成早!」
イガグリ「うぉおお!カウンター!」
今村「よっしゃぁ!前線上げるぞぉ!」
チームZの声援や鼓舞の声を耳にしながら、ドリブルで突き進む俺は一つの可能性を見出していた。
これだ!
これこそが、吉岡に勝てる俺だけの
高校で同じチームになってから一年間、ほぼほぼ勝てなかった吉岡を下す方法を思いついた俺は、気付かぬうちに笑みを浮かべていた。