ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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チームX戦-9

吉岡へ勝つ算段が立ったところで、俺はドリブルでボールを敵陣へ運んでいく。

この試合でずっと俺を足止めしていた吉岡は俺より後ろにいるから、今のうちに前進できるところまで前進しておきたい。

 

そう考えて、今村ほどじゃないが速めの脚を活かしてドリブルで切り込む。

 

敵DF「どうする?」

 

敵MF「俺が止める!8番(蜂楽)へのパスコース塞げ!」

 

吉岡が間に合わないと判断して、敵も俺の足止めに人員を回してきた。

流石に吉岡からの指示を待つだけの人間だけじゃないってことか。

 

けど、今の俺を止める方法はない。

何故なら…

 

 

俺「國神!よろしく!」

 

國神「おう!」

 

こっちは二体一の状況で戦うことができるからだ。

吉岡を抜いてからずっと俺に並走してくれている國神へパスを出し、俺の進路を塞ぎに来た敵MFの死角へ潜り込んで敵を抜き去る。

 

敵MF「はや!?っていうか消え…」

 

俺「このまま突撃!」

 

國神「よっしゃ!行くぜ!」

 

敵DF「アイツにシュートはさせるな!」

 

敵DF「分かってる!コース塞ぐぞ!」

 

國神のミドルシュートを恐れて、敵DFは二人掛かりでシュートコースを塞ぎにいった。

それを見た國神は、シュートを狙うためにやや落としていたスピードを戻してドリブルへ移行した。

 

 

馬狼「真直ぐ撃つしかできねぇくせに、シュート狙うなんざ脳が足りてねぇんだよ!」

 

國神「くっ、馬狼…!」

 

だが、スピードを落としていたことで後方にいた馬狼が國神に追いつき、再び國神は足を止めることになってしまう。

咄嗟に、俺は國神の方へ寄ってパスをもらおうとするが、馬狼は俺の方を一瞬目視すると、俺へのパスコースを塞ぐように立ち位置を少し変えた。

 

あれじゃあ俺へパスを出すコースがない。

パスもシュートも、ドリブルも封じられた國神は、どうすべきか必死に悩んでいる。

 

そんな時、視界の端から國神の方へ走り込んでいく人影が写り込んだ。

 

 

蜂楽「俺にパスして!」

 

敵MF「くそっ!いきなり進路変えたと思ったら…!」

 

俺「國神!蜂楽だ!」

 

國神「っし、頼んだ!」

 

馬狼「チッ!邪魔しやがって…」

 

敵の裏をかいて國神の方へ駆け出してきた蜂楽がパスの受け取りに来たため、國神も迷わず蜂楽の方へパスを出した。

パスを受け取った蜂楽はすぐさま進路を変更し、止めに入った敵MFを軽く躱して前進を開始した。

 

 

敵MF「くそ!?待ちやがれ!」

 

敵DF「俺も出る!二人で挟むぞ!」

 

蜂楽「二人なら抜けなくもないけど…ま、今回はこっちかな?」

 

前後から敵が迫る中、蜂楽は特に焦った様子もなく、冷静にフリーになった人物へパスを出した。

てっきりドリブルで抜き去りにかかると思っていた敵二人は、蜂楽の予想外な行動にあっけにとられ、空中を浮遊するボールをあんぐりとした表情でただ眺めていた。

 

 

今村「よっしゃ!三度目の正直ってやつだぜ!」

 

敵DF「やばい!お前ら戻ってこい!」

 

敵MF「っ!?んなこと言われても間に合うかよ!」

 

密かに右サイドのギリギリから攻めあがっていた今村が、蜂楽からのパスを受け取り加速を開始した。

瞬く間にPA付近まで内側へ侵入していく今村に対応できている敵DFはたったの一人。

スピードに乗った今ならテクニックを活かして敵を抜きされるかもしれない。

 

 

でも、俺はボールをもらいにゴール前へ駆け出した。

俺だって、俺だってこんな熱い試合で、好きな原作の世界で、この青い監獄(ブルーロック)で点を決めたい!

そんな自分勝手な…いや、エゴにまみれた思いからの行動だった。

 

肝心の今村は、まだ俺の存在に気が付いていないようで、どうやって抜こうかと挑戦的な目で敵を見据えていた。

そして、いざ勝負しようと仕掛けに逝った瞬間、敵のDFが今村の方へ不意に飛び出していった。

 

その動きは、今村の攻撃のタイミングを見極めて、それを潰しに行くというより、なんというか焦って体が動いてしまったという感じが否めなかった。

だが、幸か不幸か今村が攻撃を仕掛けるタイミングにもろ被りしていたようだった。

これによりタイミングを逃した今村は思わず足を止めてしまい、敵DFも取り乱しつつ今村の正面へ立ちふさがった。

 

今村「え!?ちょ!?そのタイミングで出てくるかよぉ!?」

 

得意のスピードを不運な事故で殺されてしまった今村は、馬狼とは違って敵に怒るというより、うまくいかなくて悲し気な表情を浮かべていた。

 

 

今だ!

 

 

俺「今村ぁ!」

 

今村「!?三度あるの方だったかぁ。ほら、よ!」

 

全員の視線が右サイドへ集中してたであろうタイミングで、ゴール前へ走り続けた俺はすでにPAまで目前の位置についており、後は今村からのパスを待つだけになっていた。

そして、俺の声に反応して今村がクロスを上げたとほぼ同時に、俺は正面に誰もいないPAへ侵入を成功させた。

 

走っている俺の速度や進路を考慮して飛んできたパスは、ゴールから約16m手前の地点に落下する。

俺の速度ならワンバンした直後辺りで辿り着いてシュートを狙えるはずだ。

 

 

吉岡「させねえって!俺が止める!」

 

俺「あぁ、ちょうどいい。勝負だ吉岡!」

 

 

MATCH UP!

吉岡 喜亮 vs 成早 朝日

 

おそらく、俺が一瞬國神の方へ寄って行ったあの瞬間に俺へ追いついた吉岡が、ゴールを直接狙いに行った俺の横へ並走してきた。

おまけに、俺の左側から走ってきてたはずなのに、この土壇場で抜け目なくボールが来る右側へ来ている。

ここで足止めを喰らったら、せっかくの今村からのパスが完全に無駄になり、時間的に引き分けに終わる可能性が高い。

 

ここで吉岡より前に出るには、どうにかして吉岡の裏を取るしかない。

吉岡さえ抜き去れば、後はボールをゴールへ流し込むだけの簡単な仕事だ。

 

問題は、どうやって死角を潰してくる吉岡相手に裏を取るかだ。

 

俺の武器は死角を利用したオフザボールの動きだ。

でも、吉岡は死角を意識的にカバーする視線の動きだったり、逆に死角をわざと作り出すことで動きを誘ったりなど、俺の武器を殺すのに特化した技術を会得している。

 

よりによって成早()の持つ最大の武器を完封しかねない対策法を手にしたのだ。

かといって、今の俺にはチャンスを作り出す武器はこれ以外に存在しない。

土壇場で新技を編み出すなんて言う、まさしく漫画のような展開を望んだところで時間を無駄にするだけだろう。

 

なら、今俺にできる最大限で、吉岡の死角を突く動きをしなければならない。

かといって、吉岡がこの状況で無意識に視線を移すなんてことはないだろう。

偶発的に生まれた死角を期待するのは無駄だということだ。

 

吉岡の意識する死角という罠から逃れることは、おそらく不可能。

だから、俺は…

 

 

 

 

あえて罠にかかる!

 

吉岡が一瞬だけ未だ宙に浮いているボールへ意識を向けた瞬間、俺は吉岡の()()()()()死角を利用して吉岡の背後から逆側へ回り込もうとする。

だが、その動きを予測していた吉岡が一瞬足を止めて俺の進路を塞ぎにかかった。

これによって、俺たちは互いに足を止め合い、俺へのパスは無情にも敵の手に渡ってしまう。

 

はずだった。

 

 

吉岡「…は?」

 

俺「へへっ。」

 

だが、俺は吉岡の死角を突いて背後から入れ替わる振り(フェイク)をして、実際は足を止めずにそのまま正面から堂々と抜き去りにかかった。

俺の動きを捉えたつもりで足を止めた吉岡が、全力で走り続ける俺を止められるはずもなく、俺は初めて正面から、正々堂々と吉岡を抜くことに成功した。

 

 

吉岡の攻略法。

それは、吉岡が張った罠にあえてかかることで、吉岡の次に起こす行動を予測して、その行動を遮ったり、もしくは欺くような動きをすることで、逆に罠を食い破るというものだった。

 

ずっと一年間。

練習や試合の間、ずっと近くで吉岡の動きを見たり、考えを聞いたりし続けた、俺だからこそ、吉岡の武器であるフェイントを織り交ぜた、俺ならではの攻略方法だ。

 

 

そして、念願の勝利に先にあったのは、この試合で望んだ俺の得点に結びつく絶好球(チャンスボール)

後はこれをそのまま蹴ってしまえば、俺は自分の得点でチームZを勝利に導くことができる。

 

これで、俺たちの勝ちだ!

一瞬だけ感慨に浸りながら、俺はワンバンして落下してくるボールへ照準を合わせて右足を振り上げる。

 

そして、そのままボールに狙いを定めて『直撃(ダイレクト)

 

 

 

馬狼「させるかチビィ!」

 

俺「!?」

 

正面から聞こえてきた声に反応し、俺は思わず声の主に視線を向けた。

その瞬間、俺は()()を視界に映してしまった。

 

まるで肉食獣のような、自分の勝利のために敵を屠るという殺意に満ちた威圧感のようなものを放つ眼光。

 

直後、俺の体は金縛りにでもあったかのような錯覚に陥った。

いや、まるで時間が止まったように、まるで走馬灯を見るような時間感覚でその強烈な視線を見せられ続けるような感じだろうか?

 

見続けていると気が狂いそうな瞳と視線を交わし続け、ハッとしたように意識を取り戻した時には、俺は足元まで迫っていたボールを()()()()していた。

しかも、足に力が籠りすぎて初心者がやるような、無駄にボールが浮いてしまうような下手糞なトラップだった。

 

そんなトラップを前にして、馬狼ほどの男が反応できないわけもなく、一瞬で間合いを詰めてボールクリアする姿を、俺はまるで他人事のように呆然とした視界で捉えていた。

 

 

 

馬狼「……てめぇ…!俺様を舐めてんのか!?あぁ!?」

 

俺「…えっ、いや、俺、なんで…」

 

馬狼「あんだけ俺様の邪魔してくれた癖しやがって、なんて無様晒してやがる!やる気あんのか糞チビ!」

 

頭の中が真っ白になりそうな俺を、馬狼はまるで鬼の形相で怒りながら詰め寄り、罵詈雑言を放ってくる。

でも、それに応えるような言葉も見つからずに馬狼の言葉をただ聞いていると、試合終了のブザーが響き渡った。

 

 

馬狼「…チッ!クソが!…おい糞チビ、二度と俺様の前に姿見せんな。もうその面は拝みたくねぇからな!」

 

馬狼はそう言い放って俺から離れていった。

 

 

コート上の選手たちの反応もまちまちで、困惑する者、不安そうに周囲を窺うもの、不機嫌さを隠そうともしない者等…

ただ、誰一人として『喜ぶ者』はいなかった。

 

…そりゃそうか。

だって、俺たちは…いや、相手だってそうだ。

 

誰一人、勝てなかったのだから。

 

こうして、チームX vs チームZの試合は、3-3の同点に終わるという、なんとも不完全燃焼な結果に終わることになった。

 

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