ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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次の試合に向けて

 

雷市「俺様の武器は華麗なシュートテクニックだ!」

 

蜂楽「俺の武器はドリブル。」

 

我牙丸「俺は肉弾戦かな。」

 

俺「俺は裏への飛び出し!」

 

伊右衛門「オールラウンドなところかな。」

 

イガグリ「俺は諦めない心!」

 

國神「左足のシュート力。」

 

今村「スピード&テクニック!」

 

久遠「俺はジャンプ力で…次、潔くんは?」

 

潔「…えーっと、武器、何だろう?」

 

絵心の演説後、ひとしきり考えたところで久遠が号令を出して、とりあえずシャワーを浴びてから意見をまとめようという話になった。

で、今は各々が自分の武器を順番に挙げて行ってるところ、なんだけど…

 

 

イガグリ「…パスとか?」

 

潔「いや、それストライカーとして駄目じゃね?」

 

今村「なんで点とった奴が自分の武器言えないのさ~。」

 

 

まあ、この頃の潔はまだ武器の自覚がないからな。

俺からすると原作初期ならではの初々しさがあって面白いけど、こんな大人しそうな人が将来的にめっちゃ強くなるんだから、本当に『青い監獄(ブルーロック)』って面白い作品だよ。

 

 

俺「ま、まあまあ、とりあえず次いこ次!」

 

潔「あ、ちょっと待って!今考えるから…」

 

我牙丸「時間切れー。」

 

久遠「じゃあ潔くんは後で考えるとして、次。千切くんは?」

 

千切「…言いたくない。」

 

 

…ですよねー。

俺は理由も含めて全部知ってるから良いんだけど、そのうえで言わないって堂々と宣言しちゃう辺りは流石だと思うわ。

 

イガグリ「はあ!?それぞれの武器言っていこうって話だろうがよ!」

 

千切「分かってる、ごめん。でも言いたくない。」

 

久遠「…仕方ない。とりあえずストライカーには強力な武器が必要で、それを基盤にしてチームを作れ。これが勝つ方法だって絵心は俺たちに言った。

つまり、それぞれの武器をどう使うかが何より大事なんだと思う。」

 

伊右衛門「でも、全員がやりたいことやったら前の試合みたくばらばらになるんじゃないか?」

 

我牙丸「絵心の言ってる通りにやって本当に勝てるのか?」

 

今村「たしかに、武器があったところでバラバラじゃあなぁ~。」

 

潔「…何か方法はないかな?例えばみんなが輝ける作戦とか。」

 

久遠「……ちょっと待った。いや、行けるかも。これなら全員平等にチャンスが…これなら、勝てるかも?」

 

そんな言葉と共に久遠が俺たちに提案したのは、各々の武器を平等に活かすために考案された超攻撃型の案だった。

まず、各々の武器を個々で振り回してもチームとしては成立しない。

そこで、チームを代表して一人が武器を使い、その間は周りが全力でサポートに徹する。

それを11人で交代して回しながら責め立てるというものだ。

攻撃の順番はランキング順、交代するポジションは時計回りに一つずつズレていく。

この方法であれば、確かにメンバー全員の武器を存分に使える布陣が完成する。

そして、GKを名乗り出てくれた伊右衛門と、武器を隠してDFに徹すると宣言した二人の発言によって、久遠命名『俺次9』作戦が完成しようとしていた。

 

 

さて、ここが新たな分岐点だな。

確かに久遠の言う通り、この作戦には全員が平等に武器を使用できるというメリットがある。

原作では終盤でしか点を奪えていなかったが、それでもこの作戦が相手の意表を突いたのは間違いないだろう。

 

でも、この作戦で勝てるという算段はない。

流れが原作から乖離し始めた今となっては、この『作戦で勝てていたから』と言う安易な理由で戦うのは危険すぎる。

もちろん、逆に原作以上に作戦がはまって勝てる未来だって想像はできる。

 

まだ原作の流れにのっとった展開になってはいるが、もはや原作の流れを壊したほうが良いのか、或いは踏襲したほうが良いのかは全く分からない。

 

 

けど…

 

俺「ごめん、俺は反対。」

 

久遠「え?」

 

イガグリ「ちょ!?ハァ!?」

 

雷市「てめぇ…俺様が仕方なく賛同してやろうと思ってたのに、なんで反対なんだ?あぁ!?」

 

今村「あーはいはい。そう熱くなんなって。…で、なんで反対?」

 

俺「確かに良い作戦だと思う。これならみんなが活躍できる可能性がある。

でも、俺はデメリットも大きいと思うんだ。」

 

潔「デメリット?」

 

俺「まず試合時間は90分だから、この作戦だと一人に付き持ち時間10分だよな?」

 

伊右衛門「まあ、普通に考えてそうなるな。」

 

俺「でも、常に俺たちがボールを保持してるわけじゃない。相手チームに渡ってる間も時間は進む。

つまり、一人当たりの時間は相手チームのボール保持時間を考えて、良くても5分かそれ以下だと思う。」

 

作戦を聞いただけだと、まるで10分間の自己アピールタイムがあるように錯覚するが、実際は攻防の中で自分の武器を証明するという過酷な条件だ。

 

加えて、入寮テスト時に絵心が語った『一人あたりの一試合ボール保持平均時間は136秒(2分16秒)』という言葉を例に出せば、1~2分でも自分の武器を存分に使えれば万々歳だろう。

 

 

イガグリ「言われてみれば、たしかに…」

 

俺「それに、全員の武器を活かすための戦術を今から話し合って組み立てるのは、正直かなり難しいと思う。」

 

國神「そうだな。みんなの武器を知ってても、それを理解して活かすには連携が必要になるしな。」

 

我牙丸「でも仕方ないんじゃないか?みんなの武器を活かそうとしてるんだし。」

 

俺「そうだけど、だからと言って中途半端なことはしたくないんだ。

他に作戦がなかったら諦めもつくけど、他に何か互いの武器を活かす方法について話し合ってみない?」

 

久遠「う~ん…そうはいっても他に何かあるかな?実際、さっきのは結構いいアイデアだと思ったんだけど…」

 

今村「だな~。俺も成早の話聞くまで最高じゃん!とか思ってたのになぁ。」

 

伊右衛門「俺もGKやるからって言って深く考えてなかったな。そういう考え方もあるのか。」

 

潔「そう考えると、成早って意外と現実的っていうか、否定的な意見もちゃんと言うって意外かも。」

 

俺「意外とは余計だ!けど、こういうことはちゃんと言わないと、後からだと手遅れになるかもしれないからな。」

 

雷市「…フンッ!つっても、他になんかやり方なんかあんのか?言い出しっぺがなんかアイデア出せよ。」

 

久遠「雷市くん、そんな言い方は…」

 

俺「アイデアってほどでじゃないけど、考えてることは一応…」

 

我牙丸「おぉー。それってどんなだ?」

 

俺「えっと、例えばなんだけど、今回の試合で得点した人がいるじゃん?」

 

國神「あぁ、俺と我牙丸、あと潔だな。」

 

俺「その三人を仮のリーダーとして、三人一組を組んでみる、とか?」

 

 

この作戦は、原作で久遠が()()()()で提示した物をいじった作戦だ。

元々は『相性の良い三人』で組んでいたけど、今回はちょうど点を取った人が三人いるから、その三人を起点として得点を取るための連携を組めば、より得点率が高くなるんじゃないかって思っている。

 

そんな考え方から出た案だけど…

 

 

イガグリ「國神と我牙丸は良いとして、潔は大丈夫なのか?自分で自分の武器分かってない奴なんだぞ?」

 

潔「うっ…」

 

雷市「あんなのたまたまのラッキーゴールだろ?どうせなら俺様にリーダーやらせろよ。」

 

今村「それ言い始めたらまた揉めるからってことだろ?俺は良いと思うぜ。」

 

伊右衛門「俺もその案は良いと思う。三チームならさっきの案と合わせれば1チーム30分も時間があるし。」

 

國神「そっか。三チーム作って固定ってわけじゃないのか。なら俺も賛成だ。」

 

我牙丸「おれもー。」

 

俺「ありがとう。他にも良い案がないかもうちょっと考えてみよう。」

 

久遠「そうだね。僕も案は良いと思うから、その方向で進めてみよう。そうだな…よし!作戦名は『3×3(サザン)オールスター』作戦!でいこう!」

 

イガグリ「うわっ!ダサ!」

 

今村「そのネーミングセンスはどうにかならないの?」

 

我牙丸「え?いいと思うけど。俺もサザン好きだし。」

 

久遠「が、我牙丸!」

 

 

とまあ、そんな感じで話し合いは進んでいき、最終的にフォーメーションはこんな感じになった。

 

第一フォーメーション(前半30分)

FW

雷市    蜂楽

MF
我牙丸      今村

成早

DF
久遠       五十嵐

千切  國神

GK
伊右衛門

 

第二フォーメーション(前半15分、後半15分)

FW

我牙丸    今村

成早

MF
久遠      五十嵐

國神

DF
雷市       蜂楽

千切  潔

GK
伊右衛門

 

第三フォーメーション(後半30分)

FW

久遠    五十嵐

國神

MF
雷市      蜂楽

DF
我牙丸       今村

千切  成早

GK
伊右衛門

 

 

 

 

 

久遠「よし!じゃあこんな感じで、明日から連携を取る練習をしていこう!」

 

全員?『『おぉ!』』

 

今村「じゃ、おやすみ~。」

 

我牙丸「おやすみー。」

 

潔「おやすみ。」

 

俺「ん?雷市、どこ行くんだ?」

 

雷市「あ?ション便だよ。」

 

 

各々が床に就く中、雷市だけはトイレに行くと言って部屋を出ていった。

皆が疲れで早々に寝静まる中、気になった俺は雷市の帰りを待っていたが、その時はなかなか来なかった。

 

30分くらい経った頃だろうか?待つのに飽きた俺は雷市を探しに部屋を出ていた。

そして案の定と言うか、予想した通りの部屋で、これまた予想通りの雷市を発見した。

 

 

俺「一人で自主練?元気が有り余ってるな。」

 

雷市「…なんだよ?文句でもあんのかクソチビ。」

 

サッカーコートになっている『トレーニングフィールド』と呼ばれるフロアで、雷市はドリブルやらシュートやらを練習しているようだった。

籠一杯に入っていたはずのボールは、既にその半数以上がフィールド上に転がってるから、後片付けも大変そうだ。

 

俺「いや、どうせなら手伝おうと思って。」

 

雷市「てめぇみたいな弱虫に手伝ってもらうことなんざ何もねぇよ。」

 

俺「そう言うなって。…あの試合の最後は自分でも駄目だったと思うけど、だからこそ今はサッカーに打ち込んでいたいんだ。」

 

雷市「そのほうが気にしなくて済むからか?そんな自分勝手な理由で押し掛けてくんなよ。」

 

俺「それはお互い様じゃない?」

 

雷市「あぁ?どういう意味でいってんだ?」

 

俺「敵を抜こうとしたときの動き…あれって()()()()()()()の動きだろ?」

 

雷市「!?」

 

雷市の表情を見て、俺は自分の予想が当たっていたことを確信する。

 

雷市はたぶん、馬狼へ憧れに近い感情を抱いたんだろう。

 

俺も馬狼の凄さを素直に尊敬している部分はある。

その分、あの気性難はなかなかにもったいないとは思うんだけど、それも馬狼の個性なんだから仕方ないことだ。

 

 

俺「馬狼みたく戦場を一人で駆け回れるような選手になりたかったのか?」

 

雷市「…チッ!てめぇには関係ねぇだろ!」

 

俺「そうかもね。でも、二人して共通することはある。」

 

雷市「はぁ?」

 

俺「俺も、雷市も、馬狼には正面から挑んで負けてるってこと。」

 

雷市「…」

 

俺「俺もさ、日和ったことは自分でも残念だって感じてるけど、それ以上に悔しいって気持ちもあるんだ。だから雷市の気持ちも…ちょっとはわかるつもり。

 

雷市「…お前に分かるかよ。」

 

俺「え?」

 

雷市「俺は…俺はここに来るまで、自分がすげぇサッカー選手だと思ってた。っていうか今でもそう思ってるけどな!…けど、今すぐプロになれるとかまでは考えてなかった。」

 

俺「まあ、口で言うのは簡単でも、サッカーのこと知るほど難しいってわかるしな。」

 

雷市「それでも、俺もいつかはプロになって、俺が憧れたテレビの向こう側の世界で活躍して、そんで本当にすげぇ選手として世に羽ばたいてやるって、そんなことばっか考えてた。」

 

俺「うん。」

 

雷市「けど、アイツ(馬狼)を見て思っちまった。本当に俺は凄い選手なのかって…」

 

俺「…」

 

雷市「自信はある。誰よりも練習してるし、才能だってあると思ってる。実際、周りと比べても俺はサッカーが上手かったからな。けど、そんな自信のすべてが、アイツのプレー一つで崩れ去りそうになった。」

 

俺「…雷市。」

 

雷市「切り返しの上手いドリブルに、正確で強力なシュート技術、体格も俺より恵まれてて、一人で場を支配できるような存在感だった。それと比べて、俺には何があるのかって考えちまうくらいにはな。」

 

…なるほど、雷市は憧れたこと自体を悔やんでるんじゃない。

憧れてしまうほど自分との差を感じてしまったことに悔しさを感じて、その差を少しでも埋めるためにここにいるんだ。

あの試合で無様を晒したことを忘れたいと思ってる俺とは違って、雷市は本気で強くなろうと努力してるんだ。

 

だったら、俺がかけるべき言葉はなんだ?

こんな自信喪失気味な雷市なんて、ファンとしては悲しすぎて見てられない。

なんとか立ち直って、いつもの調子に戻ってもらいたい。

 

 

 

俺「なら、なおさら俺も練習させてよ。」

 

雷市「だから、てめぇみたいな弱虫に…」

 

俺「イメージでしかない仮想敵より、実際に妨害される実体のある敵の方が練習効率も違うと思うけど?」

 

雷市「…疲れた敵なんか相手にしてもしょうがねぇだろ?」

 

俺「なめてもらっちゃあ困るね。これでも俺、チーム内でお前の次にスタミナあるって実証済みだから。お前がいけるなら、俺もいける。」

 

雷市「お前にメリットなんてないだろ?」

 

俺「いいや、俺もお前と同じ速度で強くなれる。」

 

雷市「…ハッ!クソチビごときが多少強くなったところで役に立たねぇだろうがよ。」

 

俺「なにを~!試合の最後はともかく、途中までは俺だって活躍してましたー!雷市こそどこで活躍したんですかー?」

 

雷市「アァ!?馬狼さえこなきゃ俺一人で敵なんざ何枚も躱してたっつうの!」

 

俺「でもそんなの口ではなんとでもいえるし~?実は馬狼のおかげで酷い醜態がまあ仕方ないレベルで収まったのかも?」

 

雷市「このクソチビ…いい度胸だなコラァ!そこまで言うなら俺様の実力、今ここでしっかり教えてやるから覚悟しろ!」

 

俺「へへっ!そう来なくっちゃ!さっきまでの練習で疲れてるんからって言い訳すんなよ?」

 

雷市「ハッ!こんなのウォーミングアップだ!てめぇこそ、後から来たくせして先にくたばんなよクソチビ!」

 

俺「上等!…っていうかいい加減言おうと思ってたけどクソチビ止めろ!成早って呼べ!」

 

 

そんなこんなで開始した追加練習だったが、お互いの熱が入りすぎたせいであっという間に時間が過ぎ、気付けばみんなが起き上がってくる直前まで練習を続けていた。

 

当然、翌日の練習に寝不足で参加したのは言うまでもない。

 

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