ブルーロック -淡い一等星- 作:埋もれたエゴイスト
絵心「やあやあ才能の原石共よ。さっき第三試合『チームX vs チームW』が終了した。次の第四試合はお前らがやってもらう。」
チーム練習を始めて僅かに形になってきた頃、休憩時間に絵心からの連絡が入った俺たちは、練習の疲れを取りながら話を聞いていた。
早くも次の試合か。まだ各々のチームとしての完成度は高くないから、試合までに何とか連携を高めておきたいところだけど…
絵心「あーそうそう、第三試合のスコアだが…チームWが3ー2でチームXに勝利した。」
イガグリ「え!?アイツら相手に勝ったのか!?」
今村「マジかー!」
伊右衛門「これは…一筋縄に行きそうにないな。」
…えーっと。たしか原作だとチームXは俺たちチームZ以外全敗してたはずだが、点数までは覚えてないな。
あの馬狼が率いるチームが初戦除いて全敗ってやばいと思うんだけど、まあ完全に独りよがりのワンマンプレイじゃそのあたりが限界ってことだな。
にしても、そっか…吉岡、負けたんだな。
アイツの能力があれば、何とか勝つかもしれないなんてちょっと思ってたけど、現実はそううまくは運ばないってことか。
でもまあ、一点差ってことはかなりの接戦を演じるとこまでは食らいつけたってとこだろう。
敵ながらそんなことを考えてしまうのは、元チームメイトだからだろうか?
絵心「で、肝心のお前らの対戦相手だが…第四試合はチームY vs チームZ。試合は今から24時間後だ。
才能の原石共よ。お前らの持つ武器を試すときが来たぞ?せいぜい存分に振るうと良い。
如何なる武器だろうと、その性能を活かすも殺すもお前ら次第だ。健闘を祈る。」
24:00
俺「もう次の試合か~。」
久遠「うん。ぐずぐずしてる暇はないってことだね。よし皆、休憩終わり!チーム練始めるぞ!」
我牙丸「おー。」
潔「わかった。」
國神「うっす。」
久遠の号令で皆がそれぞれのチームに分かれて練習を始める。
チーム練習は、各チームリーダーと同じチームになった三人一組で、連携のパターンを話し合ったり研究して、三人の間で完成度を高める練習のことだ。
いきなり全体のチームワークを合わせようとしても時間が足りないから、攻撃に参加するチームメイト同士で結束力を高めようという算段だ。
全体の練習も一応やっているが、今は各々の武器を活かすためにこちらへ注力する時間配分になっている。
さて、俺のチームは…
今村「んじゃ、パスワークの続きからやる?」
我牙丸「俺はゴール前のシュート練習がしたい…かな?」
俺「いいね。じゃあゴール前までパスでつないで、そのままフィニッシュまで持っていこうか?」
今村「異議な~し。」
我牙丸「うん、それでいく。」
俺「よし、じゃあチーム我牙丸。練習再開!」
我牙丸&今村「「おぉ!」」
俺、我牙丸、今村の三人だ。
チーム決めの時に、我牙丸が真っ先に手を上げて俺たち二人を指名してきたときはちょっと驚いたけど、たしかに前の試合どころか食堂での一件からつるんでる三人だから、我牙丸的にも組みやすかったんだろうな。
俺たち我牙丸チームの中心はまさかの
俺がセンターの位置に陣取って、
攻めの起点となるのはやはり今村のスピードで、そのままドリブルでこじ開けてシュートを決めるもよし、クロスを上げて我牙丸がねじ込むもよしという戦術になっている。
そして俺はと言うと、万が一にも二人がシュートを決められなかった場合の保険的なポジションになる。
左右への揺さぶりが肝となるこのチームは、俺が左右のどちらを使って責め立てるかを見極められるかが重要になる。
敵の位置、味方の位置、互いの距離感、いろんな要素を考慮してパスする相手を的確に選択しなくてはいけない。
潔はそう言った頭脳プレーが得意な選手へ覚醒していくけど、俺も同じことができるかと言われれば正直イメージ沸かないな。
とはいっても、自信がないからと言ってやらないわけにもいかない。
ただ、他にも不安要素がある。
俺たちのチームは前半終了までと後半開始の時間帯でFWを担うことになる。
そうなると当然、前半の間に動きを研究する時間を与えてしまい、休憩時間を挟んで後半には何か対策を施されることになる。
…その場合が少し危険だな。
…
俺「あ、あった。
伊右衛門「これは使えるな!他のチームも研究して対策がとれる!」
イガグリ「この部屋見つけた時は映画とか見れなくて残念だったけど、こんな使い方できるなんてな!
千切マジでナイスだぜ!南無三!」
千切「別に。ただ、施設あるのに使わないのはもったいないと思っただけ…」
チーム練習は各々がある程度形になってきたところでいったん切り上げ、俺たちは相手チームYの研究をするために『モニタールーム』へ集まっていた。
発案者…というか、会話の流れで提案を出したのは千切だった。
練習も見る限りでは無理しない程度に真面目にこなしてるし、やっぱりサッカーが好きなんだなって感じる。
原作から乖離してしまったこの世界でも、過去の負債を克服してくれれば良いんだが…
っと、今はチームYの映像研究だな!
そう思いながら再生されたモニターには、第二試合のチームV vs チームYの試合映像が映し出されていた。
ほえーーー!ホンモノだ!本物の凪がいる!玲央もいる!斬鉄もいる!まあ当然なんだけど?うっへっへ…
じゃなーい!そうじゃないだろ!
今はチームYの研究なのに、その対戦相手チームVの選手を見てどうする!?
と、自分を戒めつつも俺は皆と一緒に試合映像へ目を通し始めた。
第二試合は俺たちの第一試合とほぼ同時並行で進められた試合だ。
故に、試合条件は俺たちとほぼ同じと言うことで、試合開始直後は敵味方が入り乱れる『お団子サッカー』が開幕していた。
蜂楽「ありゃりゃ!やっぱ最初はどこも同じ感じなんだ~。」
久遠「まあ、得点王ってシステムがあるからね。一度冷静にならないとこうなるのは仕方ないと思う。」
雷市「ハッ!ガキみてぇに幼稚な光景だな。」
國神「俺もお前も、あの中にいたってこと忘れんなよ。」
我牙丸「あ、集団からボールがこぼれた。」
俺「それを…あ!二子がとった!」
イガグリ「え?二個?なにが?」
今村「成早、あの
俺「え゛!?…あはは、ちょっとだけな。」
ボロが出そうになったのを取り繕いながら映像に視線を戻す。
原作の第四試合で潔たちチームZを見事に作戦で追い込むとこまで成功させた影の立役者『
能力的には潔と酷似していて、身体能力では他の選手に劣るけど、優れた眼と脳を持つ選手であり、
なんて二子のプロフィールを思い出しながらプレイ映像を見ていた俺だったが、集団からこぼれたボールを捕った直後、二子はシュートにも近い勢いで前線へパスを出した。
久遠「え?速攻で前線へパス!?その先には…あ。」
國神「なんでもうそんな位置にいるんだ!?」
潔「…最初の一点は、あの9番か。」
イガグリ「あ!コイツ知ってる!たしか熊本県大会で得点王だった奴だ。名前は…」
各々の独り言がざわめきとなる部屋のモニターには、得点したことに喜ぶ一人の選手が映し出されていた。
洗濃高校のエースにして、イガグリの言う通り『熊本県大会得点王』という肩書を持つストライカー『
原作では卓越したシュートテクニックでチームZから一点をもぎ取ったが、その後はこれと言った活躍も描かれずに退場したキャラだ。
それにしても、まさかイレギュラーな一点が
正確には、次の第四試合で見せる守備的布陣からの縦パス
そんな風に、敵チーム研究のため試合映像を見始めた俺たちだったが、試合が進むごとに研究対象はチームYではなく、徐々にチームVの方へシフトしていった。
何故なら…
今村「なんだよ、こいつら。この映像…マジなの?」
伊右衛門「これは、予想してたより、だいぶ…」
國神「完全に、勝負あったな。」
久遠「これが、チームYが一点しか獲得できなかった相手…これがチームV…」
そこにはチームYが、圧倒的な敵を前に蹂躙される映像が映し出されていたのだから。
まず、身体能力のパラメータが高水準でまとまっている
突出した武器がない反面、並みの選手相手なら十分通用する技の数々で敵を突破しゴールを奪っていく。
次に、爆発的初速を持つスピードに特化した
驚異的な速度のドリブルは阻止が難しく、精度の高いカーブシュートで確実にゴールを狙える。
そして、残酷なほど華麗なトラップとシュート技術を持つ
実のところサッカー素人のはずなのに、天性のセンスと発想でどんなパスさえもゴールに変える。
この三人が試合のほとんどを支配していて、言ってしまえば見どころのなかったチームYに焦点を当て辛く、結局のところ映像鑑賞はチームVの強さを目の当たりにする結果に終わった。
映像が終わった直後、彼らの強さに誰もが閉口し、モニタールームには異様な沈黙が漂っていた。
無理もない。
原作知識を持つ俺ですら、知っているはずの彼らの強さに衝撃を受けたんだからな。
俺「………よし!次はチームYに焦点を当てて見ていこう!」
久遠「あ、あぁ…そうだな。皆、気持ち切り替えていこう!」
全員『『お、おぉ…』』
そんなこんなで見始めた二回目の映像鑑賞だったが、俺はここにきてようやく違和感を発見することができた。
俺「なんか、やけに大川の位置が前だな。」
イガグリ「え!?どこどこ!?」
伊右衛門「確かに他に比べて前に突出してるな。」
久遠「そうだね。…不自然なくらいに。」
今村「そうぉ?集団からあぶれてるだけじゃね?」
潔「いや、確かにあの位置はあぶれたっていうより、意図的にそこに陣取ってる感じがする。」
國神「それは流石に考えすぎじゃ…って、あの
俺「やっぱり、この二人…連携してる?」
まるで、試合開始直後に混戦になることを読んで、そのうえでこぼれ球を二子が速攻で前線の大川へ供給し、考える暇も与えずに大川がシュートを決めている。
だが、大川は試合開始直後からボールではなく相手ゴールへ走り、集団から一定の距離を取って待機していた。
一次選考の得点王システムの話を聞いた人間が最初にとる選択肢としては異様だ。
…いや、待てよ。
この動き方ができる奴を、俺はあと一人だけ知ってる。
他ならぬ
未来予知と呼べる原作知識の塊を知っている俺なら、流石に勝てる自信まではないものの、あの大川や二子と同じようにチームV相手に一点取ることは可能だったかもしれない。
事実として、あの馬狼からのパスをピンポイントでカットして見せたのは、原作を見て馬狼がパスを出すことを知っていたからだ。
つまり、あれがもし予測の上に成り立つ行動じゃなくて、俺のように
正直、前者だった場合も相当怖いが、今回の試合結果から考えておそらくは後者であり、なおかつそれを成し得るための可能性は一つしかない。
俺の他にも、
他のメンバーが違和感を覚えつつも戦術を研究する中、俺だけはその可能性を秘めた映像の二人を目で追い続けていた。