ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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チームY戦-1

 

第二試合の鑑賞会から、正直微妙な空気感を無理やり跳ね除けて練習に励んだ俺たちは、練習しすぎないようクールダウンの時間を設けて、いよいよ第四試合へ挑む時間になった。

 

試合会場となる『バトルフィールド』には両チームともほぼ同時に到着し、それぞれのコード上で各々が軽くウォーミングアップを済ませていた。

 

 

久遠「相手はすでに一敗していて後がない。死に物狂いで点を取りに来るだろう。

でも、俺たちの『3×3(サザン)オールスター』作戦があれば、勝つことだってきっと難しくないはずだ。

練習の成果を出し切るぞ!チームZ!」

 

全員『『おぉ!』』

 

 

 

さて、結局というか当然のように皆には言わなかったけど、俺には懸念事項がある。

おそらく今回の敵、チームYには俺と同じ転生者がいるということだ。

 

人数はおそらく一人、多ければ二人。

可能性がある選手は7番(二子)9番(大川)だ。

 

最悪の可能性は二人ともが転生者で、互いに素性を明かしていて協力体制をとっていた場合だ。

 

勝ち目がないとは言わないが、今回の俺たちの作戦はあくまで原作知識の域を出ていない。

もし何らかの対策を施されていたら、俺たちにはきつい展開になるだろう。

とはいえ、元々の作戦である『次俺9(つぎおれナイン)』作戦からは変更してるから、最初は意表を突けるんじゃないだろうか?

 

 

そう思って、一番怪しいと思っているDFの二子に視線を向けて見るも、前髪で目が隠れてて表情がうかがえない。

仕方なしに大川へ視線を向けると、何故かちょっと苦々しい表情をしていた。

 

 

いや、なんで?

むしろそんな表情は俺がしたいぐらいだってのに…

 

 

 

…いや、冷静に考えてみれば、俺たちだって負けるはずの試合を引き分けにまで持ち込んだんだ。

相手だって他に転生者がいる可能性を考慮するはず。

それが俺だと特定されているか否かでだいぶ変わるが、大川は俺たち全員を見渡すだけで、俺に視線を向けても他と変わった様子は見られないから、たぶんそこまではばれてないはずだ。

 

まあ、それなら苦々しい表情にも納得がいくってもんだな。

ちょっとは表情を隠せよって思わなくもないけど、俺にとってはありがたいからそのままでいて欲しい。

 

彼自身が転生者か、或いは転生者と接触しているのか…

それを判断するにはまだ早計だが、大川が転生者に近しい存在と言うのは間違いないだろう。

 

 

なんて考えていたら、試合時間のカウンターが0に迫っているのが見えたので、意識を切り替えて試合に集中する。

 

 

 

絶対、勝つ!

 

 

 

TEAM TEAM

Y  Z

0 - 0

 

KICKOFF!

 

 

最初の攻撃は俺たちからで、布陣(フォーメーション)は4-3-3の汎用的な布陣。

一方、相手側の布陣(フォーメーション)は5-4-1と原作通りの守備的布陣。

 

3×3(サザン)オールスター』作戦で前線に出ている三人は、

チームリーダー & FW『潔』

RWG『蜂楽』

LWG『雷市』

 

この三人の作戦は超シンプル!

蜂楽のドリブルで抜きながら、他二人がパスの中継役になってフォローする!以上!

 

蜂楽と言う強力すぎるドリブラーを武器に持つが故の作戦であり、逆に言えば彼を封じられるとどうしようもなくなる危険(リスキー)な作戦でもある。

 

原作だと、蜂楽相手に三人でマークして対処している場面だったが、果たして敵はどんな作戦で塞ぎに来るか?

 

 

敵MF「来たぞ!アイツは常に二対一作ってコース塞げ!」

 

敵DF「分かってる!俺らで止めるぞ!」

 

 

おや?ここは原作を同じ流れを踏襲するか。

なら、おそらく二子…は位置的にまだ遠いから、近くのMFが蜂楽のボールを奪いに行く役目か?

 

 

蜂楽「二人で良いの?抜いちゃうよ?」

 

敵MF「三人だよ!ボールいただき!」

 

蜂楽「おっと、じゃあいったん戻すの巻。」

 

潔「OK!」

 

 

よし、ここまでは原作と同じ流れ。

…ほんとにヨシでいいのかわからないが、まだ予測できる流れだ。

万が一の時はMFの位置にいる俺がフォローに入れば良い。

 

問題は、潔たちの作戦だと敵の防衛網に穴を開けづらいってことだろうか?

一点突破は有効だけど、少しでももたつけば周りがカバーに走ってくるし、あまり時間をかけず手早く突破する必要がある。

 

蜂楽のドリブルはその点有効だけど、敵にガッツリ警戒されてるから簡単には抜かせてもらえない。

そのせいで蜂楽へパスを出すも、すぐに止められてと言う展開が何度か続いた。

 

このままではろくに攻め手がないまま時間ばかりが経過することになる。

 

 

 

潔「仕方ない…雷市!」

 

雷市「来たか!ようやく俺様の出番だぜ!」

 

潔「あぁ、いくぞ!」

 

敵MF「あいつ等なんか仕掛けてくるぞ!」

 

二子「僕がカバーに行きます!8番(蜂楽)から目を離さないでください!」

 

すると潔は、蜂楽ではなく待機していた雷市の方へパスを出した。

どうやら蜂楽に頼り切るだけじゃなく、自分たちでも突破を試みるようだ。

 

だが、二子は素早く雷市の方へ走り出して対応していた。

そして雷市の正面に位置取ると、そのままドリブル突破を塞ぐために間合いを取って足を止めた。

 

二子「君のドリブルも研究済みですが、(蜂楽)ほど警戒は必要じゃない。」

 

雷市「ハッ!そうかよ!なら俺様の華麗なフットボールを魅せてやるぜ!」

 

 

MATCH UP!

二子 一輝 vs 雷市 陣吾

 

そう言うと雷市は、止めに来た二子に対して臆することなく突っ込んで行き、対する二子は警戒を強めて重心を落としている。

簡単には抜けないと判断した雷市は、間合いが近づくと同時にスピードを緩め、左右への揺さぶりをかけ始めた。

 

チームX戦の時は切り返しを意識するあまり上手くできてなかったけど、ドリブルで抜く際はその前後でフェイントをかけるのが基本だ。

別にフェイントと言う技術は吉岡の専売特許と言うわけでもなく、サッカー選手なら誰もが使うありふれたものだ。

 

吉岡はその中でも体の使い方とタイミングが上手かったというだけ。

まあ、それだけでも脅威になるほどの武器に仕上げたといえるか。

 

 

しかし、二子は雷市の揺さぶりに動じることなく、冷静に雷市の動きを観察していた。

揺さぶりに引っかからないと判断した雷市は、一気に距離を詰めながら右側へ抜けようとする。

 

その動きに反応して止めに来た二子、の逆を突いて切り返しによって左側へ抜けようとした雷市だったが…

 

 

二子「言ったはずです。君のドリブルも研究済みだと。」

 

二子は踏み出した足をけり出すようにして右へ飛び、素早く雷市の進路を塞ぎにかかった。

切り返しで抜けようとした雷市は、反応して追いついてきた二子にボールを盗られないよう、切り返した足を軸足に素早くボールを引き戻した。

 

雷市「…チッ!みたいだな。俺様を止たことは褒めてやるよ。でもな…」

 

そう言いながらニヤリと笑った雷市は、ボールを引き戻した足でそのまま潔の方へパスを出した。

 

雷市「別にドリブルで抜くって言ったわけじゃないぜ?」

 

二子「パスですか…まあ想定内ではありますが、前の試合から少しはチームワークを学んだみたいですね。」

 

二子はそれも予想はしていたようだが、下手に奪いに行って抜かれるよりは良いと判断したのか、雷市のパスを無理に止めようとはしなかった。

 

だが…

 

 

 

雷市「まぁ、()()()()()()…な?」

 

二子「?……っ!?」

 

そう言った雷市は、パスを出してすぐさま全力疾走に切り替え、二子を置き去りに敵陣へ侵入を試みた。

驚きからか一瞬反応が遅れた二子も、何とか雷市を止めようと食らいつく。

 

 

二子「その人(雷市)、がむしゃらに突破する気です!カバーお願いします!」

 

敵DF「あぁ、任せろ!」

 

敵DF「バカだなアイツ。あんなんでスタミナが持つかよ。」

 

しかし、試合はまだ前半の10分もたっていない場面で全力で走り続ける雷市に対し、スタミナの消耗を押さえておきたい二子は数秒ほどで追いすがるのを諦めた。

 

その代わり、チームメイトに指示を出して雷市を止めようとしてくる。

指示を受けた敵DFが迫ってくるが、雷市は気にしていないと言わんばかりに加速を続けていく。

 

 

雷市「おい潔!俺様にボール寄越せ!」

 

潔「あ、ああ。分かって…っ!」

 

二子「そうはさせません。」

 

だが、雷市の追走を諦めた二子はすぐ思考を切り替えたようで、いつの間にか雷市と潔のパスコースを塞ぐ位置に陣取っていた。

 

それに気付いた潔は出しかけたパスを引っ込めたが、同時にその場で足踏みしてしまう。

 

 

二子「足が止まりました!誰かボールを奪って!」

 

敵MF「俺が行くぜ!」

 

潔「くっ!」

 

蜂楽「潔!こっちこっち!」

 

潔「蜂楽…!OK、行くぞ!」

 

蜂楽「あいよ♪」

 

 

敵に囲まれそうになっている潔の方へ、敵を引き連れながらも蜂楽が助けに入る。

 

そのままでは状況が悪化するだけの状況のはずなのに、潔たちは何かを理解し合ったように互いに頷き合い、そのまま距離を縮めていった。

そして、蜂楽が敵の隙を突いて一瞬抜け出したところへ、潔は間髪入れずにパスを出した。

 

だが、そのボールをトラップで足元に収めるより先に敵の集団が蜂楽を取り囲もうとする。

 

 

敵DF「俺たちがお前から目を話すわけねぇだろ!」

 

敵DF「このまま大人しくボールを渡してもらおうか!」

 

蜂楽「わお♪俺ってば大人気♪ね?潔!」

 

ところが、蜂楽は潔からのパスをそのままトラップせずにワンタッチで潔へパスを返した。

そのパスを受ける潔は、少し目を離した隙に敵陣へ深く侵入しようとしており、二子とほぼ同じラインまで駆け上がっていた。

 

 

敵DF「なっ!?いつの間に!?」

 

二子「その二人の狙いはワンツーパスです!11番()から9番(蜂楽)へのパスコースを塞いで!」

 

敵DF「そういうことか!わかった!」

 

今の動きは二子の言う通りワンツーパスの動きだ。

本来、パスを受ける方はフリーなのが望ましいが、敵が蜂楽のドリブルを警戒するあまり間合いを取っていることが功を奏した。

そして、視線が蜂楽へ集中する隙に潔は加速して敵陣への侵入を成功させた。

 

 

まさか、今のを計算して?

…いや、おそらくまだ無意識下での判断だろう。

でも、無意識にも有効な手段を模索する頭脳があることは明白だ。

流石は原作主人公と言ったところか。

 

しかし、その動きを二子に見られていたことで二人の間でのパスが警戒されてしまった。

同じ手はもう通用しないだろう。

 

でも、今の動きで潔はよりボールを前に運ぶことができた。

そこまでいけば…

 

 

潔「待たせたけど、頼んだ雷市!」

 

雷市「ハッ!全くだぜ!でもよくやったヘタクソ!」

 

二子「くっ!しまった!」

 

先に前線で待機する形になっていた雷市へのパスが可能になる。

空いたスペースへ出された潔のパスは、すぐさま雷市によって拾われ、再び雷市はゴールへ向かって一直線に走り出した。

 

 

敵DF「任せろ!俺が止める!」

 

雷市「一人で俺様を止められるかよ凡人が!」

 

何とか止めに入った敵DFだったが、進路を塞いでも嬉々として突進してくる雷市を相手に戸惑いを隠しきれず、僅かに身構えたことで動きが硬くなってしまった。

その一瞬を見逃さず、雷市は更に加速して二子の時同様に右から抜きにかかった。

 

それに反応した敵は、やや反応が遅れながらもなんとか雷市の侵入コースを塞いだ。

しかし、同時に二子とのマッチアップ時に見せた切り返しも警戒するように雷市の足元を凝視していた。

 

すると、てっきり切り返しをすると思っていた敵の裏をかくように、雷市はボールを一瞬追い越して両足でひっかけてから右足の踵に乗せ、そのまま右足を後ろに振り上げてボールを上空へ跳ね上げた。

 

 

敵DF「ひ、踵球上(ヒールリフト)!?」

 

俺「ナイスだ雷市!練習通り!」

 

雷市「しゃあオラァ!このままゴールまで一直線!」

 

 

敵は守備を前面に押し出した布陣(フォーメーション)だったが、蜂楽や今村のようにドリブル特化の選手を止めるための戦術だったはずだ。

しかし、雷市というノーマークの選手が予想外のドリブル能力を見せたことで、鉄壁のような布陣(フォーメーション)が食い破られてしまった。

こうなってはもう雷市を止める手段は残されていないだろう。

 

実際、敵DFを抜き去った雷市の前には敵GKの姿しかなく、潔へのパスコースを塞ぎながらも距離を縮めようとする二子も、決して速いとは言えない彼の足では間に合いそうもない。

 

 

雷市「よっしゃぁ!このままゴール決めてやるぜ!見てろよお前ら!これが…雷市スペシャルだぁ!」

 

PAに侵入した雷市は、そう叫びながら左足を踏み込み、破竹の勢いで猛進していた姿からは想像もつかないほど綺麗な動きでシュートを放った。

そのシュートは馬狼のような鋭く荒々しいものとは異なり優しく柔らかい放物線を描き、ゴール右上角へ侵入したボールはゴールネットに優しく受け止められた。

 

 

 

GOAL!

 

TEAM TEAM

Y  Z

0 - 1

 

 

雷市「八ッハー!どーだ!これが俺様のセクシーフットボールだ!」

 

國神「なるほど…伊達に名乗ってるわけじゃなかったってとこか。」

 

イガグリ「マジかよ…アイツあんなシュートできたのか?」

 

潔「す、すげぇ…」

 

蜂楽「へぇ、思ったよりやるじゃん♪」

 

 

雷市の放ったシュートが予想外だったのか、チームZからは感嘆の声が所々から聞こえてくる。

俺も徹夜練習の時に初めて知ったけど、同じような反応してたから気持ちはわかる。

 

何はともあれ、これで守備を固めるチームYを相手に点を奪えたんだ。

ひとまずはこちらが優位に立つことができるな。

 

 

そんなことを考えながら敵チームを見た俺は、言い知れぬ不穏な空気が流れていたことに初めて気づいた。

 

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