ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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チームY戦-2

不穏な空気が支配している敵チームに違和感を感じた俺は、よくよく敵チームの全員を観察してみた。

すると、点を取られたことに対するショックもあるだろうが、それよりももっと根本的に別の()()を恐れているような…

 

そうだな、まるで恐怖を前にして震えてる草食動物みたいな印象を受ける。

 

 

敵DF「すまん、俺らが止めてれば…」

 

敵MF「いや、気にすんな。こっから巻き返せば…」

 

大川「お前ら何やってる!点とられてんじゃねぇよ!」

 

敵DF「お、大川…いや、それは悪い。けど、アイツ(雷市)にあんな突進力があるなんて…」

 

大川「言い訳なんざどうでもいいんだよ!俺が点とってやるからきっちり守れ!」

 

敵DF[わ、わかった。」

 

 

えぇ!?思ったよりちょっと怖いんだけど!?

これは確かに逆らいたくないって気持ちで怯えるのも無理ないかも…

 

ただ、原作の出番が少なかったから本質的な性格までは知らないけど、大川ってこんな仲間に対して支配的な暴言を発するタイプだったか?

見た目はザ・不良みたいな感じだけど、今みたいに人を下に見るような発言はなかったような気がする。

 

 

 

ん?

っていうか、雰囲気に流されそうになって見逃しかけたが、よく考えると自分が点を取るって発言、カウンター狙いだってことを遠回しに暴露してるのでは?

 

 

ダメダメじゃん!

あぁいや、情報漏洩に見せかけて敵に嘘の情報を与える作戦だったり…流石にそれはないか。

 

とりあえず、転生者と関係があることは多分ほぼ間違いないとみていいだろうな。

 

 

 

KICKOFF!

 

試合開始直後、大川は自陣へパスを出すとすぐさま一人で俺たちのコートへ走ってきた。それも一人で。

そんな大川に反して、チームYの面々は自陣内でパス交換を繋ぐ展開が始まっており、潔チームがボールを追っているも、人数差もあってボールをまるで奪えないでいた。

 

 

いや、もう狙いバレバレですやん。

さっきの大川の発言を皆もしっかり聞いていたのか、攻撃を担う潔チームはともかくとして、他の我牙丸チーム、國神チームは自陣から動かず、敵からのカウンターを警戒していた。

 

 

おそらく、本来の作戦としては原作のようにチームZに自陣内へ誘い出して、そこから一気にカウンターを仕掛けて点を取るというものだろう。

 

点もボールも奪えなければ徐々に焦燥感は高まっていくし、焦りが表面化すればミスや綻びが顕著に表れやすくなる。

その隙を突いて一気に攻勢へ転じ、妨害される前に素早く点を奪う。

そんな風に試合を支配しようとしたんだろう。

 

あくまで雷市が点を奪う前までの想定だろうが。

 

 

 

今村「なんていうか、なかなか悠長な作戦続けるなぁ。」

 

久遠「こっちは一点取ってるんだ!無理せず相手が攻めてくるのを待とう!」

 

伊右衛門「それが良い!攻められても良いよう守備固めとけ!」

 

その作戦が有効なのは、両チームが同点かチームYが優勢の場合だ。

俺たちチームZの方が優勢の場合にその作戦を継続しても、点差による優位性から焦りは生まれず、むしろ点差があるまま時間を使ってもらっているだけの状況に陥ってしまう。

 

つまり、原作通りの展開を続けるだけではチームYに勝ち目がないということになる。

 

 

雷市「ハッ!なんだなんだてめぇら!そんなんで本気で俺らに勝てると思ってんのかぁ?」

 

潔「雷市、あんま煽るなって…」

 

蜂楽「でも確かに、俺らも走り回ってるだけで疲れちゃうよ。」

 

敵MF「くっ!こいつら…」

 

敵DF「ただの挑発だ!乗るんじゃねぇぞ!」

 

敵DF「でも、このままじゃ俺たち…」

 

二子「皆さん!チャンスは必ず来ます!その時まで待ちましょう!」

 

 

これは酷い状況になってきたな。

チームYは自分たちが仕掛けた作戦で、逆に自分の首を絞めてしまってる状態だ。

俺たち(チームZ)が攻めてこなければ反撃に移れないから、いつまでたっても自分たちが点を奪えない。

点を奪えないまま時間が経てば、点数不利なチームYは逆に焦りが生まれてしまう。

もう攻めるしかないんじゃないか?そんな思いでいっぱいになっていることだろう。

 

ここは我慢比べだな。

先に根を上げたほうが一点を奪われる根気の勝負だ。

 

 

 

 

 

我慢比べが始まってから早くも20分が経過しようとしていた。

それまで、チームYは自陣内でボール回しに専念し、潔チームからボールを盗られないようにとパス回しを続けている。

 

よく粘るなぁと感心しながら、俺は敵が攻撃を開始するだろう一番チャンスとなる瞬間が訪れるのを待っていた。

俺たちからすると既知の動きだが、敵からすれば未知の動き。

 

それは…

 

 

 

我牙丸「30分経った!」

 

今村「イエーイ!俺たちの出番だぜ!」

 

雷市「くそ、もうかよ!…まあ、俺様が点とれたし譲ってやるよ。」

 

潔「了解!下がるぞ、蜂楽。」

 

蜂楽「あいあいさー♪」

 

そう、『3×3(サザン)オールスター』作戦の要である、布陣交代(フォーメーションチェンジ)の時間だ。

 

次のFWを担当するのは俺たち我牙丸チームで、

FW『成早()

チームリーダー & LWG『我牙丸』

RWG『今村』

 

となっている。

 

全員にチャンスが回るよう調整するための作戦だが、この作戦にも僅かな欠点が存在する。

それが何かと言えば…

 

 

 

 

大川「…っ!二子ぉ!」

 

二子「!?ええ、わかってますよ!」

 

一瞬だけ、大規模なポジション変更によって陣形に乱れが生じてしまうという点だ。

俺たち我牙丸チームや國神チームはラインを前線へ上げるだけで済むが、潔チームは最前線の位置から最高峰の位置まで一気に戻らなくてはいけない。

 

この瞬間、前に進もうとする俺たちMFの我牙丸チームと、後ろに下がろうとするFWの潔チームが交差する一瞬だけ、守備に割かれる人数が大幅に激減してしまう。

 

俺たちの動きを見て、最初は疑問符を浮かべていた大川もチャンスということは理解したのか、大声で二子の名前を呼んでパスを要求した。

 

その声を聴いた二子は若干()()()()()()()でそれに応え、大川に向けて縦のロングパスを出した。

 

大川の位置は、既にDFからMFの領域へラインを上げようとしていた國神チームのほぼ正面にいる。

このパスが通ったら、シュートテクニックがある大川によって点を取られる危険もあった。

 

だから俺は、二子が大川へパスを出した直後に身体を反転させ、急いで大川の元へ向かうことにした。

後は馬狼にも通用した背後からボールを奪取すれば、再び俺たちのチャンスボールになる。

しかも、次のFWは俺たちからスタートだから、今度は俺も得点の機会があるということだ。

 

だが、俺は転進した視界の先に見つけた大川と、更にその先にいる國神チームの動きを見て足を止め、再度体を反転させて敵陣へ向かうことにした。

 

どうやら、俺まで防御(ディフェンス)に回る必要はなさそうだ。

 

 

走りながらも、頭を横に向けながら後ろの様子を確認していると、ボールを目で追っている大川の正面に、大きな人影が立ち塞がっていた。

 

 

國神「よお、ボールは俺にとらせてもらうぞ。」

 

大川「國神!?マジかよ、クソッ!」

 

國神は大川とほぼ同時にボール落下地点へ辿り着き、大川に覆いかぶさるような形でがっちり守りを固めていた。

國神の身体(フィジカル)でそんなことをされれば、体格が決して大きくはない大川には脅威になっただろう。

 

そんな、大川にとって絶望的な状況でもボールが止まってくれるはずもなく、徐々に二子からのパスは地面との距離が近づきつつあった。

細かいポジション争いを続けた二人は、ボールがもう頭上に振ってくるというタイミングで、國神は咄嗟にボールを奪いに行くのではなく、手で大川のジャンプを妨害する様に制した。

自由に飛ぶことができなくなった大川だったが、それでも諦めずに何とかジャンプして見せる。

 

 

 

だが、待っていたのは非常な現実だけだった。

 

國神「ナイス、久遠。」

 

久遠「そっちこそ、おかげで俺も飛びやすい!」

 

大川「本命は久遠かよ!?くっそが!」

 

 

大川の突出に気付いていたんだろう。

久遠は二子からのパスが出た瞬間に大川の方へ走り始めていて、俺が何もしなくてもすでに二対一の状況が作られていたのだ。

 

それに気付いた國神も久遠がボールを奪いやすいように、多少危険(リスク)のあるボール争いよりジャンプの妨害を選択した。

これによって大川がボールを奪える可能性は限りなく0に近くなり、実際にボールは久遠の元へ転がり込む結果となった。

 

 

先の発言がなければ、完全に油断していた二人が大川を通してしまい、そのまま残すはGKの伊右衛門だけと言う状況に持っていったかもしれない。

そうなれば、おそらく大川であれば一点奪うのは造作もないことだったろう。

 

或いは、パス回しをしている間にもっと俺たちが強気になって攻め手を増やしに行き、その隙を突いてのカウンターがはまったのかもしれない。

 

まあ、どちらにしろ俺が大川の背後からボールを奪うつもりだったから、結果的には変わらなかったかもしれない。

けど、國神と久遠の二人掛かりで潰されたのは、彼自身の発言がきっかけなんだ。

自業自得って奴だろうな。

 

 

久遠「よし、頼んだ成早くん!」

 

俺「OK!一点決めてくるぜ!」

 

ともかく、これで俺たちのチャンスボールになった。

後はこのマイボールで何とか更に追加で一点取っておきたいところだ。

 

既に前半は残り15分を切った。

後半からはチームYからのスタートだし、休憩時間(ハーフタイム)の間に対策を練られると仮定すると、これが俺たち我牙丸チームに残された攻撃時間になるな。

 

考えながらも戦場を見渡し、我牙丸と今村のどちらにパスを出すか考える。

 

今村は、前の試合で活躍したことも相まって警戒されているみたいだ。

一方の我牙丸だけど、こっちは今村に比べて警戒が少ない。

 

うん。我牙丸の線でいったん行ってみるか。

 

 

「よっしゃ、頼んだ我牙丸!」

 

「おっけー。」

 

俺は一旦我牙丸の方へボールを預けて、そのままコート中央からやや左に寄った位置を前進する。

一方のボールをもらった我牙丸は、正面から敵DF、背後から敵MFに挟まれつつもボールを運ぶ。

 

そして、敵との距離が限界まで近づくちょっと手前で俺に再びボールを戻した。

その瞬間、俺は一気に加速して中央突破の姿勢を見せる。

 

 

敵DF「なんだコイツ!?中央突破する気か!?」

 

二子「その人は一人で十分です!それより6番(我牙丸)の進路を塞いでください!」

 

敵DF「なら俺が止めてやる!」

 

二子は俺の動きに素早く反応して周囲の仲間に指示を出していく。

やっぱり指示を出す人間がいるのかいないのかでチームの連動率と言うか、まとまり方に如実に差が出るな。

 

それにしても、一人で十分か…

 

 

 

俺「俺ってばほかの二人に比べてそんなに警戒必要ない?」

 

敵DF「さあな?そうなんじゃねぇの?」

 

俺「そっかぁ…っ、まあ正解なんだけど!」

 

敵DF「はぁ?お前何処出して…」

 

俺は若干自虐を込めた台詞を吐きつつパスを出した。

その方向は我牙丸のいる左サイド、ではなく右サイドのPA手前付近。

 

そんな場所には敵DFを含めて誰もいない。

けれど…

 

 

今村「おまっ、俺じゃなかったら間に合わねぇんじゃね!?」

 

俺「間に合いそうだから出したんだよ!」

 

もし敵の意識が左サイドに集中してしまえば、右サイドにいる今村への警戒が少しは薄まるかもしれない。

俺からのパスを待って待機していた今村はそのチャンスを狙って走り続けていた。

 

一瞬だけ穴の開いたディフェンス網に、今村の持ち前のスピードが掛け合わされば、一見誰もいない場所へのパスも繋ぐことができる。

 

 

今村「ったく、でもこのまま行けば…」

 

二子「ゴールにはいかせませんよ。」

 

今村「なっ!?」

 

だけど、PAに侵入しようとした今村の前に、こっちから見て左サイドにいたはずの二子が立ちふさがった。

 

けど、なんでだ?いつの間に逆サイドまで走り込んでいたんだ?

 

 

…いや、そうか!

我牙丸の方を警戒するよう周りに促した時、二子自身は逆サイドにいる今村の方を警戒していたんだ。

そして俺が右サイドにいる敵の裏へパスを出すのを見て、今村の進路を塞ごうと最短距離を走ってきたんだろう。

 

 

しかも、今村は俺からのパスを受け取るために一旦スピードを緩めてしまっている。

これじゃあ二子を抜き去ることはできない。

 

 

今村「くっそぉ…最近の俺はどうにもゴールに好かれないなぁ。」

 

二子「そうですか。僕にとっては何よりです。」

 

今村「だから、せめて一点追加しろよ我牙丸!」

 

我牙丸「おっしゃ、任せろ!」

 

自分じゃ点を取れないと察した今村は、そのまま逆サイドから走り込んできた我牙丸へ高めのパスを出した。

肉弾戦が得意と言っていた我牙丸は、敵DF二人を相手にしながらもゴール前に飛び出そうとしている。

 

ただ、二人の妨害を受けながらだとスピードが遅く、今村からのパスを見たGKも素早く反応して我牙丸の方へ寄って行った。

ゴール前の大チャンスにして、我牙丸には少々不利な状況に追い込まれつつあった。

 

 

我牙丸「…くっ、そ………成早!」

 

 

しかし、我牙丸は何とか敵二人を出し抜いて頭一つ分抜け出し、今村からのパスへヘディングを当てることに成功した。

 

だが、弾かれたボールの軌道はゴールではなく、その手前のセンター付近に落下した。

 

 

俺「ナイス我牙丸。」

 

敵GK「は?」

 

二子「なんでそこに…」

 

二子たちが驚いているが、別に大したことじゃない。

今までの一連の流れの中で、周囲の状況を把握しつつも俺はゴール前まで走り込んでいた。

それを見つけた我牙丸が俺の方へヘディングでパスを出した。

言葉にすればそれだけのことだ。

 

そして肝心の俺はと言えば、正面に何の障害もない以上、よっぽどのノーコンでもない限りこのチャンスを不意にすることはあり得なかった。

 

 

GOAL!

 

TEAM TEAM

Y  Z

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