ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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チームY戦-3

 

俺「しゃああああ!」

 

二人のサポートの甲斐もあって、俺は『青い監獄(ブルーロック)』に来て初ゴールを決めることができた。

ゴールの感覚は久々だったけど、やっぱり気持ちいいなぁ!

 

 

今村「イエーイ!ナイス成早!」

 

我牙丸「いいとこいたな、お前。」

 

俺「だろ~?ああいうの得意技なんだよね~!」

 

同じチームの二人が駆け寄ってきて俺にねぎらいの言葉をかけてくれる。

やっぱゴールした時の快感を味わってるときに、仲間からの言葉も合わさると、相乗効果っていうか余計にうれしく感じるから好きなんだよなぁ。

 

後ろを振り返れば、國神チームの面々も俺たちの方へ駆け寄ってきていて、その後ろにいる潔チームは駆け寄るまではなかったけど、なんかおめでとうとでも言いたげに手を振っていた。

 

そんな気のいい連中に迎えられながら、俺は再び自陣コート内へと戻って行った。

 

 

 

 

 

KICKOFF!

 

さて、続いては相手ボールからのスタートだ。

まずは点を取られないように立ち回りつつ、欲を言えば隙を見てボールを奪ってそのままさらに点差を広げたい。

 

そんなことを考えていたが、敵チームの中で動きがあった。

 

 

敵DF「なっ!?おい!どこ行く気だよ!」

 

大川「うっせぇ!このままじゃ負けんだろうが!てめぇらもチンタラしてねぇで攻めあがれ!」

 

敵MF「んなこと言っても、作戦も何もねぇぞ…」

 

二子「……皆さん!今は大川くんの言う通り攻めに転じましょう!」

 

大川「分かってんじゃねぇか二子!おっしゃお前ら続けぇ!」

 

 

って、作戦捨ててノープランで攻めるんかい!?

 

俺は大川の突然の暴走に困惑しつつも、何とか平静に努めて突っ込んできた大川の正面を塞いだ。

 

 

大川「てめぇ…よくも俺のゴールを奪ってくれたなぁ!ぶっ殺してやる!」

 

俺「うわ、こわっ!っていうか俺のせいにするのやめてくんない?」

 

 

MATCH UP!

大川 響鬼 vs 成早 朝日

 

 

俺は八つ当たりされたことに少しモヤッとしつつ、そのまま俺を抜き去ろうとしている大川の動きに注目する。

すると大川は、左手で俺の体を制しつつ右足でボールを引いた。

 

この動き…前の試合で見せてた技だ。

右足で引いたボールを後ろに転がして、同時に自分の体も反転させて抜き去る技。

 

何だろう?回転突破(ルーレット)系統の技の一種だろうか?

 

まあ、映像とは言え一度見た動きなら十分対応可能だ。

何なら、映像の中で御影には止められてたわけだし…

同じように転がされたボールを刈り取るように右足を出せばいいだけだ。

 

そう思って右足を出してボールを捉えようとしたが、大川はその動きを察したのか、或いは読んでいたのか、転がそうとした足を止めて反対方向、自分の正面にボールを転がした。

 

大川「ハッ!前の試合と同じようには」

 

俺「あ、そっちなんだ。」

 

大川「っ!?」

 

一瞬虚をつかれたのは事実だけど、大川の動きに若干ぎこちなさがあったおかげで、右側に出した足をけり出し、俺を左から躱そうとした大川へ追いつくことに成功した。

 

 

大川「なんで追いついてきやがる!?」

 

俺「え?だって一瞬動き詰まってたじゃん。」

 

大川「くそ、マジかよ!?」

 

 

悪態を吐きながらも、大川は再びさっきと同じ体制を取ろうとしたので、今度は左右どっちでも反応できるように全体的な動きを注視しておく。

すると、俺を相手にどう立ち回るべきか思考しているのか、数秒ほど右足を引いた体制のまま止まってしまった。

 

 

 

敵MF「大川!こっちだ!」

 

大川「!でかした、俺につなげ!」

 

だが、大川の後方から近付いてきた敵がパスを要求し、大川もこれ幸いとボールを敵MFへ渡した。

 

隙を見て大川から奪うつもりだったけど、こうなったら仕方ない。

俺は何故か得意げな笑みを浮かべている大川を尻目に、さらに後ろからやってきた敵MFをマーキングすることにする。

 

 

もうちょっとでとれたんだけどなぁ…

 

 

 

そんなことを考えつつも、ふと二子の動きが気になって探してみると、何やら近くの選手と会話しているのが見えた。

流石に会話内容までは聞こえなかったが、相手選手が納得して頷いているところを見るに、何らかの指示を送ったのかもしれない。

 

位置的に警戒するのは難しいけど、どんな戦術を組み立ててくるか注視しておくのは悪くないだろう。

 

 

そのまま視線を後ろに向ければ、パスを返してもらった大川が國神とマッチアップしようと突っ込んでいた。

 

 

 

大川「さっきの雪辱、晴らさせてもらうぜ!國神!」

 

國神「大川、だったな?いいぜ、来いよ!」

 

 

 

MATCH UP!

大川 響鬼 vs 國神 練介

 

すると、大川は先ほどまで見せていた体制とは異なり、國神の右側から単純なドリブルで突破しようとする動きを見せた。

 

國神「そいつは単純すぎるだろ。舐めやがって。」

 

対する國神は、自慢の体格で進路を塞ぎつつ大川の方へ寄ってプレッシャーをかけに行く。

だが、大川は一瞬ボールをまたいで左脚を軸に、右足でボールをそっと左に押し出した。

 

しかし、それに反応した國神は少し体制を崩しながらも右へ体を滑り込ませて再び進路を妨害する。

それを見た大川は忌々し気に悪態を吐いたが、体を反転させて國神の正面を塞ぐ形でボールキープした。

 

大川「くっ…」

 

國神「今のは少しヒヤッとしたぜ。」

 

 

大川もなかなか上手い方だと思うけど、蜂楽と比べてしまうとどうしても見劣りしてしまう。

彼のようなドリブルのスペシャリストと練習する機会があると、並みのドリブル相手に多少のことでは慌てることも少なくなる。

結果的に1on1のディフェンス側のレベルが少しだけ向上しているのが幸いした。

 

再び大川は回転突破(ルーレット)の亜種を用いて國神突破を試みたが、國神はあえて前に出ることで体を押し付け、大川の動きを大幅に制限することでこれを制した。

 

 

國神「さあ、これならどうする?」

 

大川「くっそ…この……おい!さっさとカバーに来い!」

 

敵MF「今行ってる!」

 

 

國神に距離を詰められた大川は、いよいよ打つ手が無くなったのか近くの味方に助けを求めた。

國神を抜けないと見た敵MFはいち早くカバーに向かっていたが、それでも待ちきれないのか大川は声を荒げた。

 

その隙に國神は大川からボールを奪おうと仕掛けたが、流石にやや強引なボール奪取は叶わず大川は辛くも敵MFへパスを出した。

 

「へっ、次こそはぜってぇ抜いてやるからな!」

 

「やってみろよ。何度でも止めてやる。」

 

大川はそのまま俺たちの自陣深くへ侵入し、敵MFも大川へ追従…することはなかった。

何故かここにきて敵MFは後ろへパスして攻撃を中断した。

 

 

 

なんだ?なんでこのタイミングで攻撃を中止したんだ?

不思議に思っていると、チームYは再び自チーム内でパス回しを再開し始めた。

 

久遠「?どういう作戦だ、これは?」

 

雷市「何ぼさっとしてやがる前線!さっさとあいつらからボール奪ってこい!」

 

今村「そうは言うけどさぁ~…」

 

我牙丸「これボール盗るのムズイな。」

 

俺も今村たちと同じことを考えつつ、敵の懐へ潜行してボールを奪いに行くが、こっちが近づく前に別の敵にパスを回すというシンプルさ坑道を前に、何度もボールを追いかけて走り回る羽目になった。

 

 

俺はスタミナお化けたる雷市に次ぐスタミナを活かして一番走り回ることにしたが、広いコート上を何度も往復することで流石に少し疲れが出始めた。

周りを見ると今村や我牙丸は見るからに疲弊してボールを追う足が鈍っている。

 

…もしかして、こうやって前線を疲弊させることで攻撃力を衰えさせるのが狙いか?

現に俺たちは疲れてスピードが落ちてきてる。

 

中でも今村のスピードダウンはけっこう痛いな。

彼の長所が潰されれば、万が一こっちにボールが渡っても反撃に転じるための武器が一つない状態で戦わなくちゃいけなくなる。

 

 

大川「何やってるてめぇら!もうとっくに前半5分切ってるんだぞ!さっさと上がってこい!」

 

何故か大川は前線に張り付いたまま動かないけど、それ以外のチームYのメンバーはまるで統率されたようにパスと言う同じ動きだけを繰り返し続けている。

 

ほんとに何が狙いなんだ?

 

 

二子「さっきのゴールは見事でした。正直予想外でしたよ。あんなに良い位置に潜んでいたなんて気づきませんでしたから。」

 

俺「え?…あぁ、それはどうも。そっちもやるじゃん。こっちを疲弊させる作戦とはね。」

 

すると、いつの間にか近くまで来ていた二子が俺に話しかけてきた。

その声色は冷静そうでいて、どこか隠しきれていない俺への敵意を感じるものだった。

 

 

二子「おや?気付いていたんですか。…やはり、君は()と違って頭が切れるようだ。」

 

俺「彼?」

 

二子「いえ、お気になさらず。…ただ、君はなかなか目が良いようですが、僕の方が賢いようです。」

 

俺「え、何それ?俺もしかして知能マウント取られてる?」

 

二子「そうですね。僕の発想(アイデア)は決して単純なものではない、と言うことです。」

 

 

二子の意味深な発言に脳内を?で埋め尽くされつつ、俺はその真意を探ろうと口を開きかけて一つの違和感に気付いた。

 

 

 

あれ?なんで俺、二子と会話してるんだろう?

 

二子の守備位置はDFという後方のはずで、俺も前線にいるとはいえディフェンス中に会話できるような位置取りじゃないはずだ。

それなのに、なんで二子はこんな前線まで突出してきてるんだ?

 

不思議に思って俺は周囲を見渡す。

すると、信じられない光景が俺の目に入ってきた。

 

 

 

 

 

え?()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?

 

あり得ない!

いくら責め立てると言っても、自陣内に選手が誰もいないなんて異常事態だ。

万が一にもボールを奪われてカウンターを受けるようなことがあったら一発アウトだから。

 

にもかかわらず、事実として相手コートにはGK以外の人間はなく、全ての選手が俺たちのコート内に密集している。

 

 

 

俺「!?」

 

二子「気付いたようですね。でも、もう遅い。」

 

ようやく敵の作戦に気付いた俺をあざ笑うように、二子は俺の横を通り抜けてそのまま前線へとあがって行った。

 

同時に敵DF三人が二子に追従するように走り出し、他の敵MFが保持していたボールを二子たちの方へ蹴り出した。

 

 

 

二子の作戦は、パス回しでFW三人のスタミナを徐々に削りつつ、本命は徐々に最終ラインを上げて攻撃のチャンスを狙うことにあったんだ。

 

目の前でパス回しばかりされていると、そちらにばかり目がいってしまう。

そしておそらく、チームYの面々は二子から徐々に前線を上げるように指示を受けていたんだろう。

 

俺たちは自分の優位を保つために守備的な姿勢を見せていた。

そこでパス回しを中心とした動きを見せても、積極的に攻めることはなく、前線の三人のみで対処しようとしていた。

 

それを逆手に取り、パス回しに視線を集中させつつ少しずつ距離を詰めることで、相手との距離感を保とうとした俺たちは徐々に戦線を下げてしまっていたんだ。

そうして気付いた時にはこれ以上引けないところまで押されてしまい、逆にチームYは敵DFの最終ラインがFWの俺たちと重なる位置まで上がってきた。

 

 

俺「くそっ!やられた!」

 

俺は悪態を吐きつつも、急いで二子を追って走り出した。

ただ、疲れが出始めているせいかいつもほど全力で走れなくなっている。

今村や我牙丸の負担を少しでも減らそうと走り回ったのが徒になったらしい。

 

 

イガグリ「おい、なんかこいつら距離近くね?」

 

久遠「やばい!いつの間にか自陣内まで侵入されてる!」

 

蜂楽「ありゃ、ほんとだ!」

 

雷市「はぁ!?くそ、なんとしても止めろ!」

 

 

遅れて事態の異常性に気付き始めたメンバーも焦り始め、急いで二子たちの進路を塞ぎにかかるが、それを敵MFの面々が邪魔しにきた。

それによって二子たちの攻撃が通りやすくなってしまい、あっという間に中盤まで侵入されてしまった。

 

 

 

不味い!俺は思ったよりスピードが出ないせいで二子たちに追いつけない。

けどこのままだと確実に点を決められる!

 

そんな俺の目に入ってきたのは、ゴール前へ向かって走り出していた大川だった。

 

 

 

俺「狙いは大川だ!誰か止めて!」

 

二子たちの攻撃に視線が集中してしまったことで、逆に最前線でボールを待っていた大川の存在が皆の頭から抜け落ちていたんだろう。

大川はフリーの状態でゴール前まで走り出していた。

 

俺はたぶん、二子たちの後ろから追いかける形で自チームを敵目線から見ることができたから気付くことができたけど、今の位置からは出来ることがない。

 

 

誰か!

 

 

 

 

潔「俺がついてる!」

 

大川「!?てめぇ!いつから!?」

 

だが、俺の声に反応して声を上げたのは潔だった。

いつの間にやら大川の方へ走り出していて、数秒もすれば大川のマークにつける位置にいた。

 

けれど、タイミング的に俺が注意を促すより先に大川をマークしていないとおかしい位置取りだ。

 

 

…もしかして、二子たちの攻撃に反応して走り出した大川を捉えていた?

そうかもしれない。

なにせ本人は無自覚だが、潔の武器は『空間認識能力』に基づく()()()()なんだから。

 

 

俺「ナイス潔!他はボール持ってる四人を止めてくれ!」

 

 

俺は声を出しつつボールを持っている集団を追いかける。

すると、ボールを持っている敵DFが前線に向かってパスしようとしている光景が見えた。

 

まさか、この状況でなお大川にボールを託すのか?

確かに潔は現時点で警戒するほど脅威のある選手でもないし、身体(フィジカル)的にも大川のほうが有利ではあるが、そのまま四人で攻めたほうが良いんじゃ…

 

 

雷市「四人!?ボール持ってるのは()()だろ!?」

 

 

 

 

 

へ?

 

雷市の言葉に困惑しつつもボールを保持している人数を数える。

1,2,3…三人しか、いない?

 

確かに四人いたはずの集団が、気付けば三人に減っているという事実に、思わず呆然としてしまった俺の前で敵DFのパスは送り出された。

 

そしてそれは、最前線で潔とポジショニング争いを仕掛けようとした大川がいるゴール右サイド…ではなくその逆サイド。

ボールの落下地点へ走り込んでいた一人の人影に向かって落下していった。

 

落下してきたボールを左足で丁寧にトラップし、すぐさまトラップした左脚を地につけ、それを軸足にシュートモーションへ入る。

 

反応したGKの伊右衛門が思わずと言った感じで右へ飛んだが、そいつはそれを読んでいたかのように逆を突いてゴール右側へシュートを放った。

 

 

 

 

GOAL!

 

TEAM TEAM

Y  Z

1 - 2

 

 

二子「ふぅ…11番()の動きは想定外でしたが、いい感じに決まりましたね。」

 

ゴールを決めたチームYの救世主(二子)が、ただ静かに自分のゴールを…いや、そこに至るまでの作戦を評したところで前半終了の合図が鳴り響いた。

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