ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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チームY戦-4

二子による得点で一点を返されるという状況に、俺は思わず頭を抱えた。

まさか特に覚醒の兆しを見せていなかった二子が、自分からゴールを狙いに行くなんて完全に予想外だった。

 

…いや、これは言い訳だな。

原作から乖離し始めていたのはとっくに気付いていたこと。

それに、二子も転生者である可能性を考慮していながら、そのことが咄嗟に頭から抜け落ちていた。

二子がとっくに自分のゴールに執着している可能性を見落としていたのが現実だ。

反省しないと。

 

 

っと、コート上で脳内反省会を行っていた俺の耳に、大川の怒号が聞こえてきたのは間もなくのことだった。

 

 

 

大川「お゛い!なんで俺じゃなく二子にパス出したんだてめぇ!?」

 

敵DF「も、文句は二子に言えよ!?俺はあいつの指示通り動いただけだ!?お前もそうしろって言ってただろ!?」

 

大川「はぁ!?…二子ぉ!」

 

二子「そんな大声出さなくても聞こえてますよ。なんですか大川くん?」

 

大川「なんですか?じゃねぇよ!?なんでお前にパスするよう指示出したんだ!?あ゛あ!?」

 

二子「なんでって…そのほうが点を取れる確率が高いと判断したからですよ。」

 

大川「なんだと!?俺の方がシュートテクニックがあるっててめぇも認めてたじゃねぇか!?」

 

二子「それは認めてますが、今回はゴールを奪える状況(シチュエーション)的に僕の方が可能性があると思っただけです。

現に、僕はきっちり点を取りました。それが結果ですよ。違いますか?」

 

大川「なんだとてめぇ!?」

 

キレる大川に対して、あくまでも冷静に言葉で説明する二子だったが、それが皮肉に聞こえたんだろう。

大川は二子の村蔵を掴み、右手で拳を作って思い切り振りかぶった。

 

 

敵MF「ちょ、大川!?それ不味いって!?」

 

敵DF「そうだぜ、次点取ればいいじゃん!?」

 

大川「うっせぇ!こいつはその点を取るチャンスを俺から奪ったんだぞ!?こいつは!」

 

アンリ『両チーム!早く控室へ戻りなさい!』

 

大川「!?……チッ!」

 

慌てる俺たちの耳へ、コートのスピーカーからアンリさんの注意喚起が鳴り響いた。」

それを聞いた大川も一旦冷静さを取り戻したんだろう。構えていた拳を下げ、二子を突き放すようにして乱暴に手を離した。

 

それを見た俺も、ひとまず暴力沙汰でけが人が出なくてよかったと思いつつ控室へ戻って行った。

 

 

 

 

 

雷市「で?なんで俺ら点とられたんだ?」

 

今村「ぜんっぜんわかんね!気付いたらめっちゃ攻められてたし。」

 

伊右衛門「後ろから見てると、なんか全体的に下がってきてる気はしてたんだけど、あそこまで侵入されてるとは思ってなくて…すまん。俺が声掛けしていれば。」

 

久遠「気にしないで、気付けなかった俺たちにも責任はあるし、まだ俺たちの方が点差的に有利だ。」

 

國神「そうはいっても、なんで詰められてたのか判明しないと、また同じようにやられるぞ。」

 

 

控室へ戻った俺たちは、点を取られたことに対する反省を早々に終わらせ、何故点を取られるに至ったかを話し合うことになった。

俺は一応理由を理解したけど、他のメンバーの内で気付いてる奴はいるだろうか?

 

 

蜂楽「…潔、何かわかる?」

 

潔「え?あぁ、まあこうかなっていうのは分かったけど…」

 

イガグリ「え?マジで!?」

 

俺「千切は?」

 

千切「…まあ、途中まではなんとなく。」

 

おそらくそうだろうと察してはいたけど、どうやら潔は俺と同じ答えにたどり着いたらしい。

実際に走り回らされてる現場にいた俺が実感付きでようやく手にした回答にたどり着くとは、流石は主人公だ。

それに、原作では目の付け所が良いと思っていた千切も違和感は感じていたようだ。

 

 

雷市「てめぇら、じゃあなんで試合中に声出さなかった!?」

 

潔「いや、ごめん!試合中はまだぼんやりとしかわかって無くて、後で考えて見たらわかったから…」

 

千切「俺もそんな感じ。てか、未だにどうなってっていう部分は言葉で説明できないし。」

 

雷市「なんだそりゃ…」

 

久遠「まあまあ…それじゃあ潔くん、聞かせてくれ。なんであんな状況に追い込まれたのか?」

 

潔「あぁ。まず、俺たちは終盤で点差をキープしようと守備的な姿勢になってただろ?それに対して、後がないチームYは攻撃的な姿勢に出た。

この時、チームYでは攻撃しようっていう意識が強く出過ぎたんだと思う。」

 

久遠「攻撃しようとする意識?」

 

潔「簡単に言えば、点を取りたいっていう意識かな?そのせいで自然と全体のポジションが前へ前へ上がって行ったんだと思う。」

 

我牙丸「あー。」

 

今村「確かに、点が欲しい時って気持ちが前に出ていきがちだもんなぁ。女の子を口説くときもがっつくとよくないし。」

 

 

 

ん?

 

潔「…まあつまり、相手チームは全体的にポジションが少しづつ上がって行ったんだよ。たぶん自分たちでも気付かないくらい少しづつ。

それが結果的に、いつの間にか奥深くまで攻められてるって状況に繋がったんだと思う。」

 

雷市「それでも、あんなに突出して攻められてたら普通気付くだろ?なんで最後まで誰も気付かなかったんだ?」

 

潔「それは、俺たちが守備的な姿勢だったからだよ。」

 

國神「それの何処が駄目だったんだ?」

 

潔「駄目ってほどじゃないけど、守備的姿勢だから相手との距離感を常に一定に保とうとしたんだと思う。」

 

イガグリ「そういや、確かに相手との距離を見て、自分が前に出てると思って何度か位置を下げてたかも…」

 

潔「うん。たぶんそれが今回の攻撃に繋がった要因で、相手が全体的に戦線を押し上げるのに対して、こっちが引いて守ろうとしたから、自分のコート内まで敵が流れ込んじゃったんだ。」

 

伊右衛門「普通、そこまで突出すると誰か止めるもんだと思うが、今回はその引き留め役(ストッパー)がいなかったってことか…」

 

潔「そう。それで最後、敵との距離が近くなってることに気付いた敵がドリブルで突破にかかって、そこに数人が乗っかって生まれたのが最後の攻撃だと思う。」

 

蜂楽「なるほどね。」

 

久遠「たしかに、そう考えるのが妥当かもね。」

 

 

 

 

…なるほど。

 

雷市「フンッ!まあ理屈は分かったけどよぉ…最後の攻撃はどうなんだ?大川に来ると思ってたのに、実際にはあの7番(二子)にボールが渡って決められたんだぞ。」

 

潔「それは…」

 

俺「…それについて説明する前に、皆に共有しておきたいことがあるんだ。」

 

我牙丸「成早?」

 

千切「お前もなんか気付いてたんだな。」

 

雷市「どういうことだ?言ってみろよ。」

 

俺「うん。まず今回の敵の攻撃に関してだけど…」

 

 

潔は敵チームの攻撃そのものが偶発的に発生した産物だと思っているようだけど、二子と実際に会話を交わした俺からすればわかる。

あの攻撃は決して偶然生まれたチャンスなんかじゃない。

二子によって統率されたメンバーたちによる作戦だった。

 

俺は、事前に見た二子と相手選手が会話を交わしていたことと、試合中に二子に話しかけられたことを話した。

そのうえで、今回の攻撃が全て二子によって仕組まれていたことを強調して皆に説明した。

 

 

最初は俺の言葉に半信半疑になっていた皆だったけど、馬狼みたく優秀な選手はいると付け加えると、各々が苦悶の表情を浮かべつつ真剣に検討し始めた。

 

 

 

 

雷市「なるほどな。で?最後の攻撃にはどうつながる?」

 

蜂楽「聞かせてよ、成早の考え♪」

 

潔「あぁ、聞かせてくれ。」

 

まだ半信半疑の者もいるだろうけど、みんな一応、俺の意見に耳を傾けてくれている。

俺もこのチームの中で信頼を勝ち取れ始めているんだな。

 

そう考えると、思わず涙腺が緩みそうになるが、意味不明に泣いても困惑させるだけだから急いで涙を引っ込め、最後の攻撃に関する説明に移ることにした。

 

 

 

俺「まず皆に聞きたいんだけど、最後に攻撃に出た敵は何人だった?」

 

雷市「あ?三人だろ?」

 

蜂楽「だよね?」

 

今村「え?いや四人っしょ?」

 

我牙丸「俺も四人だと思う。」

 

イガグリ「俺は三人だったような…いや、四人だったかも?」

 

國神「なんかみんなバラバラだな…」

 

潔「俺は四人だったと思う。成早、この違いってもしかして…」

 

俺「あぁ、どのタイミングであの敵集団を数えたかだな。今村や我牙丸の言う通り、最初は敵が四人で攻めてたんだ。」

 

潔「あぁ、それは俺も見えてたからわかる。でも、じゃあなんで三人に減ったんだ?」

 

俺「簡単だよ。()()()()()()()()()()()()()()んだ。」

 

久遠「進路を変えた?」

 

俺「うん。敵は元々四人で攻めてきてた。単純に、数を動員することでゴールへ辿り着く確率を上げるために。

で、ここからは憶測も交じってるんだけど、途中で一人がその輪から抜け出したんだ。シュートが狙える最高の位置に。」

 

潔「っ!?それってもしかして。」

 

俺「あぁ、その抜けた選手っていうのが二子だ。」

 

今村「でも、抜けるって言っても、そんなに固まって移動してたら一人ぬけるところなんて絶対目立つと思うけど…」

 

國神「でも、人数の数え間違いが起こってるってことは、実際に集団から抜けた奴が一人いるってことだろ。」

 

俺「考えられるとしたら、大川がゴール前に走って行ったのに対して、俺が声を出して警戒を促した時だな。」

 

そう、あの時しか考えられない。

なにせ、俺が二子から目を話したのはあの瞬間からなんだからな。

 

 

千切「…なるほど、確かにあの瞬間なら視線はお前か大川に集中してた。その瞬間を狙ったとしたら、確かに誰の目にも映らなかったかもな。」

 

イガグリ「言われてみれば、あの時俺も大川の方見てたしなぁ。」

 

伊右衛門「でも、成早が言ってくれなきゃ大川はフリーだったろうし、大川にシュートをさせないよう声を出したのは正解だったと思うぞ。」

 

俺「ありがと伊右衛門。まあ、潔は俺が言う前から大川にマークしようとしてたみたいだけど。」

 

國神「何?」

 

蜂楽「そうなの?潔?」

 

潔「え?まあ…大川が今フリーになってるっていうのがあの時は見えたし、なんていうか、一番ゴールの匂いがしたっていうか…」

 

蜂楽「へ~、やるじゃん♪」

 

潔「まあ、途中からゴールの匂いが変わったんだけど…」

 

俺「…二子にか?」

 

潔「あぁ、なんでかっていうのは説明できないんだけど…」

 

 

たぶん、無意識に目で追えていたんだろうな。

今ここでは言わないけど、俺は潔の持つ視野の広さを知っている。

けれど、その理由について潔が納得できる説明ができない以上、俺がここで『お前の武器は空間認識能力だ』と告げることはできない。

 

或いは、千切が何か潔に伝えてくれないかと期待したりもしてるんだけど…

 

 

俺「まあともかく、そうやって一人抜け出した二子は、大川が潔にマークされてるから、自分でゴールを決めたんだろう。」

 

久遠「でも、どっちにパス出すかはわからなかったんじゃない?」

 

俺「だから、でも()()()()()()()()()んじゃないかって思う。大川があのままフリーだったら大川に出してただろうし、そうじゃなかったから二子に出したんだろう。」

 

久遠「なるほどね…確かに話の辻褄は合うか……OK、俺も成早くんの説を信じよう。」

 

潔「俺も信じる。そのほうが可能性が高く思えてきたし。」

 

國神「俺もだ。」

 

今村「はいは~い。俺も俺も!」

 

我牙丸「俺も成早を信じる。」

 

雷市「信じるのは良いとして…この後どうする気だ?相手ボールからだぞ。」

 

俺「そこ、何だよなぁ…」

 

 

もうぶっちゃけ『ポジショニングを保ちましょう』みたいに単純な意識改善しか思いつかない。

こんな単純なことでも、意識すれば一定の効果は得られるだろうし、さっきの二の舞にはならずに済むとは思うが…

 

 

 

 

久遠「……なら、こういうのはどうだろう?」

 

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