ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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チームY戦-6

イガグリ「うおぉぉ!ナイスだ成早!」

 

伊右衛門「成早!すまん、助かった!」

 

潔「成早…すっげぇ!」

 

蜂楽「ナイスシュートブロック!」

 

 

俺が状況を理解するのに一拍時間を要する間に、他の皆は俺へ歓喜の声を上げた。

一瞬自分へ向けられた称賛と言うことにも気付かなかったが、徐々に実感がわいてきた俺は胸の内にちょっとした達成感を感じていた。

 

俺「……っしゃあ!」

 

 

思わずと言った感じで歓喜の言葉が口から洩れたが、状況的にはまだ不味い状況を脱していない。

なにせ、あくまでゴールを奪われなかっただけで、まだコーナーキックと言うピンチに変わりはないんだ。

 

アンリ『チームY、コーナーキック。』

 

それを自覚させるアナウンスがスピーカーから聞こえてくると、喝采を送っていたチームZの面々も真剣な表情に戻った。

まだピンチを完全に切り抜けたわけじゃない。

むしろ、ここからが本番だ。

 

 

 

 

大川「くそっ!くそっ!クソがぁ!」

 

そんな空気の中、大川はゴールを決められなかった悔しさを隠そうともせず、言葉にして感情を吐き出していた。

そして、まるで俺のことを仇と言わんばかりに睨みつけてくる。

 

そんな殺気立った目で見られても怖いんだけど…

なんて考えつつも、コーナーキックを行うために両チームともにゴール付近へ密集し始めた。

 

俺は少しでも反撃(カウンター)を決めやすいようにゴールから離れた少し位置で待機することにしたが、何故か点取り屋の大川までもがこっちについてきて、俺の邪魔をするかのように体を当ててきた。

どんだけ根に持ってんだよ。

 

 

大川「あんまり調子に乗んなよ、途中退場するザコの分際で!」

 

俺「!?……どういう意味だ?」

 

大川「そのままの意味だよ。てめぇはこの先の選考で脱落するモブキャラに過ぎないんだよ。だから俺の邪魔なんてしないで大人しくしてやがれ!」

 

 

 

 

コイツ……自分から転生者ってことバラしてやがる!?

或いは、二子が転生者で俺の情報を聞いたという可能性もあるが、強い選手の情報を話すならともかく、退場する選手をピックアップして話す必要を感じない。

 

だからおそらく、大川は俺と同じ転生者だ。

正直言って子供っぽい短慮さが目立つものの、確かな原作知識を持っているってことはほぼ間違いないだろう。

 

 

かといって『俺も転生者だよ』だなんて話してやる義理もない。

バラしてしまえば大川の中で俺の警戒度が跳ね上がるだけだ。

そんな意味のないどころか不利益しかこうむらない行動をとる理由がない。

…目の前に良い反面教師もいることだしな。

 

 

そうこうしているうちに、コーナーキックの準備が整ったようで、敵MFがコーナーから勢いよく走り出してボールを蹴り上げた。

高軌道のパスはゴール前に落ちるように調整されていて、肝心のゴール前は選手同士で密集状態となっていた。

しかも、チームYはここで確実に一点が欲しいのか、DFの半数をゴール前に投入していた。

 

正直、ボールの奪い合いは五分五分と言ったところだが、空中戦が肝となるこの場面で身長の低い俺に出番はない。

だからこそ、仲間たちがゴールを死守して反撃(カウンター)に転じる隙をひたすらに待ち続ける。

 

そして、一番最初にボールに触ったのは…

 

 

 

久遠「このくらいの高さなら!」

 

久遠だった。

彼のジャンプ力はチームZの中で最高峰。

身長差を鑑みてもトップクラスの空中制圧能力を誇っていた。

 

そんな久遠は、ボールがジャンプヘディングが届くギリギリを狙って飛びあがり、ワンタッチでボールをゴールから遠ざけた。

 

だが、まだピンチは終わっていない。

そのボールの落下地点には我牙丸と敵DFがポジション争いを繰り広げていて、どっちがとってもおかしくない状況だったからだ。

 

我牙丸「成早が作ったチャンス。無駄にしない!」

 

しかし、そこは我牙丸が得意とする肉弾戦に持ち込むことで敵DFを押しのけ、落ちてきたボールをトラップしていた。

 

 

 

俺は、それが見えた瞬間には敵陣へ向かって走り出し、我牙丸からのパスを待った。

そんな俺をちゃんと見てくれていたのか、我牙丸は俺の名を呼びながらパスを出してくれた。

 

 

二子「くっ!反撃(カウンター)きます!急いで戻ってください!」

 

大川「クソッ!今のが決まってれば同点に持ち込めたのに!」

 

雷市「いけぇ!点とってこい成早!」

 

國神「頼むぞ!」

 

蜂楽「行っちゃえ~♪」

 

俺「おう!任せろ!」

 

俺の走り出しに合わせてFWの三人が飛び出してくる。

右側にほぼ並走する形で今村、左からはやや遅れつつも我牙丸が、そして俺たちの後方からは大量の敵が押し寄せ、正面には二人しかいない。

 

この大好機(ビッグチャンス)。逃すわけにはいかない!

 

 

俺「今村!最高速で敵を振り切るぞ!」

 

今村「良いけど、正直一回だけだぞ走れるの!いいんだな!」

 

俺「あぁ、どのみち時間もない!」

 

そう、なんだかんだで試合開始からすでに10分以上が経過していた。

時間的にもこれがおそらく我牙丸チーム最後の攻撃となるだろう。

 

今村「了解!俺の脚に乗り遅れるなよ!」

 

俺「そっちこそ、最後までバテるなよ!」

 

我牙丸には悪いが、俺は今村と二人で突破する道を選んだ。

敵が後ろで固まっている以上、ここはスピードで勝負するのが得策だからだ。

 

だが、そんな俺がスピードを上げようとしたとき、後ろから何かに掴まれて体勢を崩しそうになる。

 

 

大川「だから、大人しくしてろって言ったろうが!」

 

俺「大川!?っく、今村、頼んだ!」

 

今村「OK!乗り遅れるなって言ったばっかなのにな!じゃあ、お先に!」

 

だが、ここでファウルをもらっても全然うれしくない。

だから俺は大川がファウルを取られる前に今村へパスを出した。

 

焦ってパスを出したからやや雑なパスになってしまったけど、今村はそれをうまくトラップして再び加速を始める。

 

 

敵DF「大川のおかげで7番(今村)だけになった!俺ら二人で止めるぞ!」

 

敵DF「あぁ、この先は死守だ!」

 

今村「ようやくこぎつけたデートチャンス…絶対に最後は抱いて見せる!」

 

 

意気揚々と意味不明な単語を口にする今村だが、その眼差しは真剣そのものだった。

それを受けて敵DFも今村への警戒度を上げ、両側から挟み込むようにして待ち受ける。

 

対する今村は、あえてそれに挑みかかるように二人の方へ向かっていった。

 

今村「本気になった俺は、二人の相手くらいお茶の子さいさいだぜ!」

 

そして、さて次はどうするのかと全員の注目が集まる中、今村は唐突にシュートモーションに入った。

敵DFの二人は自分たちと、ましてやゴールからも距離がある場面でその体制に移行する意味を理解できずに一瞬足が止まった。

 

しかし、今村はそんな敵DFには構わず振り上げた足をそのまま前に蹴り出し、それに触れたボールはかなり高い軌道で二人の後方の広大な空きスペースに向かって飛翔していった。

 

すると、今村はそれを追いかけるように再び加速を始め、間もなく全速力(トップスピード)に乗っていった。

 

…まさか、二人の後ろに誰もいない状況を活かして、自分の脚でパスに追いつく気か!?

原作でも足の速い()が使っていた戦法ではあったが、確かに今の状況なら広々とした空間で自由に走れる。

今村の脚なら、或いは…

 

 

だが、その狙いに敵も気づいたようで、一瞬だけ飛んでいくボールを呆けて見ていた敵DF二人も、すぐさま反転してボールを追いかけ始めた。

 

三人が敵コート中央付近へ落下するボールを追って走る。

明らかに今村のスピードは速く、もし『よーい、ドン』を仕掛けたら敵DF二人を置き去っただろうが、それは同じ位置からスタートした時の話。

 

相手に距離と言う有利(ハンデ)を与えた状態で勝てるほど、決して簡単なことではない。

それでも、今村は勝負に出た。

 

絶対に、ここでゴールを決めるために。

 

 

俺「いっけぇ!今村ぁ!」

 

今村「任されたぁ!」

 

敵DF「くっそ!こいつ、ほんとに速い!」

 

 

そして、三人で行われた短距離走は、後方からスタートしたはずの今村が一位通過したことで、ボールを手にする権利を得た。

 

俺の声援にこたえる今村は走りながら雄たけびを上げ、そのまま敵DFを置き去りにしてゴールへと向かう。

 

 

前半の終わりに走り回って、後半も中盤に差し掛かってきたこのタイミング。

体力的には本人が言っていた通り、もうこの辺りが限界だろう。

 

それでも、今村は決してスピードを緩めることなく走り続けた。

絶対誰にも追いつかせないように。

 

そんな覚悟で走り続けたんだろう今村は、あっという間にPAに侵入した。

そして、敵GKとの一対一になってようやくスピードを緩め、渾身のシュートを放つべくモーションに入る。

 

対峙する敵GKがどのコースを狙っているのか見極めようとする中、今村は渾身の力を込めてシュートを放った。

放たれたボールはゴール左側を狙ったもので、速度もコースのなかなかのものだった。

 

 

だが、読みが良かったのか、勘が良かったのか、敵GKも今村のシュートと同時に右へ飛んだことで、今村のシュートと同じ方向へブロックにかかっていた。

 

苦々しい可能性に悲観する俺たち、最高の結果に喜んだであろう敵たちを他所に、敵GKは見事に今村のシュートを弾いて見せた。

 

 

 

 

 

今村「俺は!一度振られたくらいじゃ、諦めねぇ!」

 

ところが、今村は諦めずに走り続けていた。

既にシュートを打って、後は神に祈るだけでも罰は当たらなかっただろうに、ボールの行方を傍観するのではなく、自らのシュートを追うようにして。

 

そんな今村の執念の走りは実を結び、敵GKが弾いて前にこぼれたボールへすぐさま追いつき、乱雑になりながらも追い打ちでシュートを放つ。

そして、地面に倒れ伏した敵GKにそれを止める余力など残っているはずもなかった。

 

 

 

 

GOAL!

 

TEAM TEAM

Y  Z

1 - 3

 

 

俺「い、今村ー!」

 

我牙丸「おぉ!すげぇぞ今村!」

 

國神「っしゃあ!」

 

イガグリ「やった、これで追加点だぁ!」

 

俺は今村へ称賛の声を上げながら今村の方へと駆け寄って行く。

すると、まるで全てを出し切ったかのように今村は敵ゴールの前でコートに体を預けた。

 

俺「今村お疲れ!大丈夫か!?」

 

倒れ込むようなその姿に俺は焦ってスピードを速め、急いで傍まで駆け寄った。

すると、完全に息が上がった今村は苦しそうにしながらも、笑顔でサムズアップを決めて見せた。

 

 

俺「ったく、ぶっ倒れるまで走るとか、根性ありすぎ。」

 

今村「これくらいしねぇと、点とれないって思ったんだよ…あ~しんど!」

 

我牙丸「やったな今村。初ゴールおめでと。」

 

今村「おう!これでお前らとも並んだな…ふぅ…」

 

俺「…ほんとに大丈夫か?今村?」

 

今村「…はぁ、悪い。ちょっと脚にキてる。今日はもう走れんかも…」

 

我牙丸「いや、もう十分走った。お疲れ今村。」

 

今村「…おう!」

 

俺と我牙丸は、疲労困憊になっている今村を二人で支えながら立たせ、とりあえず自陣内に戻るまで肩を貸してやった。

そして、時間的にはあと2分くらい残ってたけど、今村の状態(コンディション)を加味してポジション変更を願い出た。

 

今村の雄姿を見届けた皆もそのほうが良いと、すぐさまポジション変更が行われた。

前半のポジション変更時は結果的にチャンスにつながったけど、あれは本来ピンチを招きやすいものだから、こういう一旦試合が止まった時とかに変更するのが一番安全だ。

 

最後のポジション変更でFWになったのは國神チームの國神、久遠、イガグリだ。

このチームも分かりやすく、國神のシュート力に賭けた構成になっていて、他の二人がそれをサポートする形になっている。

 

さて、この試合もいよいよ残すところ30分と少し、このままいけば勝てるけど、油断したらあっという間に点を取られかねない。

 

俺「皆、今村のくれたこの追加点を無駄にしないためにも、残りの時間も全力で戦おう!」

 

全員『『おう!』』

 

 

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