ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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チームY戦-7

DFに移動した俺たちは今村の回復を少しでも早めるため、今村を一旦ディフェンスに置くだけにして、残りの俺、我牙丸、後は固定でDFの千切の三人で主に守備をすることにした。

 

次の攻撃はチームYからになるが、さてどんな作戦で攻めてくるのだろうか?

 

 

 

KICKOFF!

 

 

大川「行くぞお前らぁ!なんとしても点とってやる!」

 

敵MF「お、おぉ…」

 

敵MF「分かった…」

 

 

 

あれ?

なんていうか、大川以外のテンション低くね?

怖がってたはずの大川相手に生返事で返してるし、見るからにやる気が失われてる。

 

 

…まあ、あれだけ危険な賭けをして攻めあがったのに、結果としては逆に点を取られる結果になったんだから、確かに落ち込むのも無理はないな。

そう考えると、単純そうな大川の諦めないガッツは見習わなくちゃいけないかもしれない。

もう少し思慮深く動いたほうが良いとも思うが…

 

そんなことを考えつつも、攻撃人数を確認すると僅か三人しかなく、本気で点を取ろうとしているのは大川だけだった。

 

大川はドリブルしながら、敵MFの二人にもっと近づいて三角形(トライアングル)を作るよう指示を出し、彼に付いていった二人がそれに従う。

対する國神チームは、パスワークを中心に組み立てるチームY相手に、そのままでは1on1でボールを奪うのは難しいと判断したのか、飛び出してきた敵MFと大川の間にイガグリと久遠が位置取り、大川と國神の強制的な一対一を作り出そうとしていた。

 

 

大川「今度こそ抜いてやるぞ、國神ぃ!」

 

國神「やってみろ大川!今度はボールをもらうぜ!」

 

 

MATCH UP!

大川 響鬼 vs 國神 練介

 

國神とマッチアップした大川は、体格的な不利からもう接近したくないと考えたのか、前半に仕掛けた時に比べてやや距離を開けていた。

 

それを見た國神は、逆に大川との距離感を縮めようと少しづつプレスで詰めていき、その動きに伴って大川も徐々に位置を下げていく。

何度か周囲のパスコースを確認した大川だったが、もれなく敵MFへのパスコースをイガグリと久遠が塞いでいたため、パスを出すこともままならず悔し気に表情を歪ませる。

 

ところが、これ以上は引けないと思ったのか、大川は逆に國神の方へ唐突に突っ込んで行った。

流石に正面からぶつかってくるとは思っていなかったのか、國神は一瞬動揺を見せたものの、素早く切り替えて大川へ向かっていく。

 

体格勝負になると大川の方が不利なはずだが、それでもあえて挑みに行ったのは、自分が点を取るという強い意志の元か?

もしくは、ただやけくそになって暴走しているだけなのか?

 

 

その答えはすぐに明かされた。

 

大川は正面から迫ってきた國神に背を向けるようにボールキープの態勢に入り、それを見た國神も更に距離を詰めに行く。

そんな國神との距離感を目で測っていた大川は、國神が間合いに近づいたのを確認すると同時に、足の爪先にボールを乗せると、そのまま上に高く放り上げて自分の頭上と、すぐ後ろにいた國神の頭上をも超える軌道でボールを放った。

 

國神から見れば、いきなり大川の頭上からボールが出現するというわけのわからない事態が起こったことだろう。

ボールを見送るように國神は、その場で動きを止めてしまった。

 

 

その隙を見逃すほど大川は甘い選手ではない。

動けなくなった國神の横を通り抜けて、大川は自分で上げたボールを追って走り出した。

 

完全に出遅れた國神はその場で取り残され、大川は國神とのマッチアップを見事に制した。

 

 

 

…はずだった。

 

ところが、大川が自分へ送り出したはずのボールは、國神のさらに後ろから迫ってきた人影によって奪われた。

 

 

 

大川「い、潔!?」

 

潔「行け國神!走れ!」

 

國神「!?おう!助かった潔!」

 

何故か國神のフォローへと回っていた潔によって前線へ出されたボールを、そのまま國神が拾う形でチームZの反撃(カウンター)が開始された。

 

國神「けど、なんであんな場所まで走ってきてたんだ、潔?」

 

潔「え?あ~…自分でもよくわかんないけど、なんか()()()()()()がしたから走ってきたんだ!」

 

イガグリ「またそのよくわかんない感覚かよ~。でもナイス潔、南無三!」

 

久遠「うん。すごく助かったよ!」

 

 

…たぶん、今のは敵が三人しかいない状態に対して、万が一にも國神が抜かれるという可能性を潰すために動いてたんだろう。

さっきみたいに浮いたボールが降ってくるかどうかは分からないが、もし大川がボールを保持したまま國神を抜いたとしても、あの位置で潔に足を止められれば國神と二人で挟撃されてただろうからな。

 

それを一瞬で判断してあの場所まで走り込んだんだ。

やっぱり潔、自覚はなくても直感的に自分の武器を使うことができてる。

 

後はそれを使いこなすことができれば、もっと…

 

 

 

そんなことを考えている間にも、國神たちは敵コートの中盤まで侵入に成功し、後は何としてもPAまで到達できればと言うところまで近づいていたのだが…

 

 

國神「くそ、やっぱこいつらの守備は人数多くてやりにきぃな…」

 

イガグリ「全然攻めるとこないんだけど!?」

 

久遠「落ち着いて!まだ攻めるチャンスは俺たちにある!確実に攻められるタイミングを待つんだ!」

 

雷市「おい潔!俺たちも攻撃に行くぞ!このままもう一点奪ってやる!」

 

潔「え?でも…いや、そうだな!蜂楽!上がるぞ!」

 

蜂楽「はいよ!」

 

 

たった三人じゃなかなか攻め崩せないチームYの7人守備を前に、雷市の発言で潔たち3人が加わることで数手不利をある程度覆すことにしたらしい。

 

それも大川たち前線組が戻ってくれば再び数的不利になるが、6対10ならまだ幾分かマシだろう。

 

 

だが…

 

二子「9番(國神)は常に二人以上で前のスペースを潰しにかかって!それ以外の選手からのパスコースも塞ぐことも意識して!」

 

國神「チッ!やっぱ俺のミドルシュートは警戒されてるか…」

 

前の試合で見せたミドルシュートの危険性を分かっているんだろう。二子は國神のミドルシュートの領域(レンジ)に人を入れることでシュートの範囲を狭めようとしている。

おまけに、國神自身にシュートをそもそも撃たせないよう、周りの選手からのパスコースを塞ぐという手段も用いてきた。

 

これでは、國神の得意とするパターンに持っていくことは難しい。

こうなってくると、なんとしても國神にボールを預ける方法を模索するか、或いは國神以外の人間が点を狙うかしないと追加点は厳しいだろう。

 

國神「久遠!頼んだ!」

 

久遠「分かった!イガグリくん!」

 

イガグリ「南無三!俺にお任せ!」

 

 

どうやら、國神チームはあくまで國神のシュート力に賭けることにしたらしい。

國神から久遠へ通されたパスは、そのまま逆サイドのイガグリへ送られた。

それをトラップしてドリブルでイガグリが攻めあがる。

 

 

敵MF「こいつ、前の試合で簡単にボール盗られてた奴だろ?楽勝楽勝。」

 

イガグリ「あぁん!?やんのかコラ!」

 

國神「イガグリ!」

 

イガグリ「分かってる分かってる!ちょっとムカついただけ、だ!」

 

 

敵からの挑発に若干イラつきながらも、イガグリは再び逆サイドにいる久遠へ、今度は高軌道のパスを出した。

しかし、久遠の位置は國神の近くまで移動しており、その動きを警戒した敵DF二人が詰め寄ってきていた。

 

久遠「よし、いい感じに集まってくれたね。」

 

だが、久遠は持ち前のジャンプ力で敵DFより高く跳ぶと、ヘディングでもって國神へのパスを通して見せた。

 

 

久遠「行け!」

 

國神「あざっす!」

 

これによってパスが通った國神は、そのまま左足から得意のミドルシュートを撃った。

第一試合で見せたような弾丸シュートが飛翔していき、それはゴール右側のゴールネットを揺らす

 

 

敵DF「させるか!」

 

敵DF「うらぁ!」

 

國神「あぁ、くそ!」

 

…はずだったボールは、國神のミドルシュートの領域(レンジ)を狭めていた二人によってシュートブロックされてしまった。

たとえミドルシュートと言う強烈なシュートであろうと、人の壁に阻まれてしまえばその勢いを失い宙を舞う。

 

そして、こぼれ球(セカンドボール)となったボールは、國神や敵DFの近くにいた二子の元へ舞い降りた。

すると二子は、そのボールをトラップした直後、すぐさまタメを作って前線へ向けてのロングパスを放った。

 

そうなると、当然その先にいるのは…

 

 

 

大川「次こそ決める!」

 

二子からのロングパスを受け取った大川は、そのままゴールに向かって走ってきたが…

 

 

俺「俺が大川に付く!」

 

我牙丸「え?俺が付いたほうがいいんじゃ…」

 

今村「うわぁ、ほんとスタミナあるなぁ。」

 

千切「?」

 

 

そんな大川に対して、俺も一人で迎え撃ちに行く。

我牙丸の言う通り、守備位置的には俺より我牙丸が向かうのが適任だったが、万が一ボール奪取に時間がかかると、敵の攻撃人数が増えてより厄介になるかもしれない。

一度マッチアップした俺が素早くボールを奪うのが適任だと思った。

 

 

大川「またてめぇかモブ野郎!しつこい奴だな!」

 

俺「モブじゃない、成早だ!國神とか潔は名前呼びなのになんなのさ!」

 

 

MATCH UP!

大川 響鬼 vs 成早 朝日

 

とはいっても、國神を一度は抜いて見せた大川の実力も本物だ。

充分才能がある人間といえる。

ただ、さっきから動きを見てると一つだけわかったことがある。

 

 

俺「あと気付いたことあるんだけど、お前フェイント苦手だろ?」

 

大川「あ゛あ?」

 

さっきから大川の抜き方はボールの扱いこそ上手いんだけど、フェイントを仕掛けるタイミングが微妙に下手だった。

たぶん、ボールタッチ技術の高さで補ってるだけで、フェイント技術を鍛えるのをおろそかにしていたんじゃなかろうか?

 

なんにせよ、大川の動きは性格と同様で素直すぎる。

だからこうやって挑発してやれば…

 

 

大川「てめぇ…俺を馬鹿にしてんのか!?モブ野郎の分際でぇ!」

 

思った通り、味方が攻めあがってくるのを待つんじゃなく、自分で突破しようと向かってきた。

 

そして挑発したからか、大川は一瞬だけシザーズを挟んできたが、俺は蜂楽との練習で見慣れているのもあって動揺はしなかった。

 

その反応を見て大川は早々に諦めつつも、今度は距離を詰めてフェイントを仕掛けてきた。

左から抜こうとした大川に俺が反応した瞬間を狙って、ボールを右へ運びつつ自身も方向転換を仕掛ける。

ただ、そのタイミングがやはり微妙に外れていて、俺は冷静に大川の進路を再び塞ぎにかかった。

 

だが、挑発に乗ったフリをしただろう大川は、蹴り出したボールを引き戻そうと右足を伸ばそうとしたが、俺はそれより一歩速く攻撃を仕掛けることにした。

とはいっても、ボールとの距離的には大川の方が近く、どれだけ体を素早く動かそうとしても、俺の最高速度では今の大川からボールを奪うことはできない。

 

 

 

俺「()()()()()()()()()()()()。」

 

大川「…は?」

 

だから俺は、言葉による攻撃を仕掛けた。

音は耳を塞がない限り防ぐ手段が存在せず、言葉は内容如何によって精神を揺さぶれる。

 

脱落するなどという言葉は、いまこの環境に身を置いてる人間が聞くと煽り文句になるかもしれないが、原作知識を持っているとすれば、大川にとってこの言葉は全く違う意味を持つ。

 

つまり、俺もお前と同じ転生者だという意味を暗に込めたメッセージになるのだ。

 

 

現に、大川は俺の言葉に反応して動きを完全に停止してしまった。

俺はその隙に難なくボールを奪い、前線に向かってボールをクリアする。

 

クリアしたボールを蜂楽が受け取ったことを確認して、ひとまず安心した俺が守備位置へ戻ろうとすると、大川が今までにない困惑した表情で近づいてきた。

 

大川「おま、今なんて…」

 

俺「ん?ん~…俺たち似た者同士だねって話?」

 

大川「!?そうか、お前も俺と同じ…なら、原作と流れが違ってるのはお前が原因か!?」

 

俺「かもね?でもそっちもやってることでしょ。」

 

 

前の試合、第二試合の一点先取がまさに良い例だ。

俺はその異常性にいち早く気付けたから作戦(原作)を変えるという賭けに出た。

 

それに対して、大川(転生者)は俺と言う異常(イレギュラー)に気付けず、基本的な原作の流れを踏襲することを選んだ。

本当なら2-1で惜しくもチームYが負けるという展開になるはずだが、そこは後半戦のチームZから受ける反撃を防ぎきる構想を立てていたんだろう。

 

何故、原作の展開から外れた俺たちの試合を見て、それでも原作通りになると思っていたかはわからないが、発想自体は決して悪いことじゃない。

俺だって、最初の第一試合は原作通りの展開をわざと作り出してボール奪取に成功したから。

 

 

 

大川「くっ!お前のせいで俺のゴールが台無しだ!挙句には二子にゴールまで持っていかれるし…全部お前のせいだ!」

 

俺「癇癪起こさないでよ。…それに、君にだって落ち度はあるんじゃない?」

 

大川「なんだと!」

 

俺「君が俺の存在に気付いていれば、さっきのシュートは決まってたかもしれない。あれだって原作のオマージュでしょ?」

 

大川「な!?それは…」

 

 

大川にとって誤算があったとすれば、原作知識を持つ転生者が自分以外にいるという可能性にたどり着けなかったことだろう。

もし、あれがループシュートでなければ、俺は絶対に追いつけなかったはずだ。

 

あの瞬間、まさに原作を再現できる状況(シチュエーション)だったからこそ、原作再現を選択した大川は、同じ光景を見た俺にシュートを止められたんだ。

 

あの奇跡的なスーパーブロックは、そんな馬鹿馬鹿しい理由で生まれた必然でしかない。

 

 

俺「まあ、もうこの試合に君らが勝つのは不可能だよ。」

 

大川「あ゛!?まだ試合は」

 

俺「終わるよ。もう数分後には、ね。君の諦めない心は美徳かもしれないけど、現実はちゃんと見ないと。」

 

大川「っ!?くそが!?」

 

俺が試合終了が迫る時計を目配せしながら言うと、大川は悪態を吐きながら自陣の守備に参加しに行った。

 

…まあ、本当に見なくちゃいけないものは、もっと他にもあるはずなんだけどね。

なんて言葉は胸にしまいつつ、おそらくチームZの攻撃は()()するだろうと踏んで、チームYからのラストアタックにどう対策すべきか思考を切り替えた。

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