ブルーロック -淡い一等星-   作:甘小豆

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入寮テスト

 ブルーロックに参加するため、ゲートを潜った先でバスに乗せられ、到着した先(青い監獄)で貴重品とユニフォームを交換された。

 

 受け取ったユニフォームには個人の番号と、配属先のチーム名が書かれている。

 

297

 

 まあ、こんなものだろう

 正直、各個人の番号までは正確に覚えていないが、原作でも上の方ではなかったと記憶している。

 むしろ一年近いブランク(立て直しに奔走した時期)があって尚、ここに参加できているだけ上出来だろう。

 

 チームZに割り当てられた(原作と同じチームだった)ことに安堵と興奮を覚えつつ、いざ扉を開けば既に数人到着しているようだった。

 一方的ながら見知った顔が、部屋に入った私に視線を向けてくるので少しドキッとするが、まずは軽く挨拶してみる。

 

「どうも、失礼しまーす!」

 

 返事は無い。だが不快感は与えなかったようで、軽く会釈を返してくれる人もいた。

 その後はロッカーで着替えて、後から部屋に入ってきた人にも挨拶してみた。

 おおよそ悪くない印象を与えることには成功したと思う。

 

 そして最後に、我らがチームZの主役となる潔が入室してきた。

 同じ部屋に配属された顔見知りの吉良が声をかけに行き、國神の服が飛んでムキムキボディを拝見できたり、イガグリ*1が潔たちに自分の事情(寺の息子)を語って交流を図ったり

 

 まさに原作通りの光景が目の前で繰り広げられ、私は内心ホクホク笑顔でその光景を見守っていると、部屋の上部に設置されたモニターが起動する。

 

「着替えは終わりましたか?才能の原石共よ…」

 

 全員の注目を集めた先で「やぁやぁ」と語り掛ける絵心は、そのまま簡単な説明を始める。

 

1.この部屋にいる者たちはチームメイト(ライバル)

2.ユニフォームの数値は絵心の独断と偏見でランキングされた順位

3.ランキングの上位五名はU-20W杯(20歳以下ワールドカップ)FW(フォワード)登録選手になれる

4."青い監獄"(ブルーロック)で敗れると日本代表への参加資格を"一生"失う

 

 途中までは一喜一憂していた面々も、最後の内容で強烈な不安を感じさせられていた。

 自分の将来を左右する重要な内容が、事前通達もなしに知らされたのだから当然だろう。

 この部分に関してはあまり賛同できないが、予め記載があれば参加率が減りそうなので秘密にしておいた…とひとまず納得しておく。

 

そして、心がかき乱された12人へ「生き残るカギは()()だ」と改めて主張し、それを測る入寮テストの開始を宣言した。

 

「さあ、"オニごっこ"の時間だ。

 制限時間は136秒。ボールに当たった奴が"オニ"となり、タイムアップの瞬間に"オニ"だった一人が帰る(LOCK OFF)野郎です」

 

 絵心が最後に「ハンド禁止」とだけ言い残して画面は切り替わる。

 

ONI

RANKING300位

五十嵐(IGARASHI) 栗夢(GURIMU)

02:16

 

オニごっこ開始(キックオフ)

 

「っ…最底辺の俺が最初のオニかよ。やってやんよ、恨みっこなしだぜ」

 

「ちょ…待てよ、絵心(アイツ)の言ってること信じてるのかよ!?」

 

「マジだったらどーすんだよ!?…俺はやるぜ。負けたら一生寺の坊主…」

 

 ついに始まったブルーロック最初の洗礼

 イガグリの覚悟を決めた顔つきを見て、部屋にいる全員が臨戦態勢に入る。

 

 ここで生き残るには、蹴られたボールをしっかり避けるか、或いは狙った場所へ正確にキックできるか、という技術力が必要になる。

 しかし、単純に技術だけでクリアできるほど単純なものではない。

 

 どうすれば、オニから距離を取り続けることができるか?

 どうすれば、逃げる側に逃げる空間を与えず追い込むか?

 相手の能力を封じる状況に持っていくことが出来れば優位を取れるので、少しは頭を使って立ち回る必要がある。

 

 では私はどうするか?

 ブルーロックに備えて鍛えてはみたが、(成早)の身体能力はやはり凡人止まりで、技術面で優位性を取ることは難しい。

 

「悪いな、潔くん!南無三(なむさん)!」

 

うぉっ!?

 

「あ!?くそ!これ意外と(むじ)ぃぞ!?」

 

 だからこそ、取るべき戦略は頭を使った立ち回り(ポジショニング)

 中でも意識するのは死角を突いた潜伏移動(スニーキング)で、オニが狙う候補者から私の存在を除外させる。

 

 成早も原作で生き残っていたとはいえ、原作知識(根拠のない慢心)で手を抜いて無事である保証はない。

 どんなことにも警戒して挑むのは、生存戦略の鉄則なのだ。

 

 

「うらぁ゛!」

 

「フザけんなてめぇ!!」

 

「こんなやり方、絶対に間違ってる!絵心(あんな奴)に俺の未来潰されてたまるかよ!」

 

 …っと意気込んでみたものの、予想以上に原作通りの展開をなぞってくれる様子に思わず安堵しかけたところで

 

 

「!?…はは、コイツ(黄色頭)まだ寝てやがる!もらっt」

ゴシャ

ゴシャ

ゴシャ

 

 ルール説明の時には床で寝ていた「蜂楽(ばちら) (めぐる)」が、油断して近づいたイガグリの顔面目掛けて逆立ち踵蹴り(一発退場の暴行)を浴びせる。

 初見ではインパクトが強く印象に残るシーンだが、実際見ると鼻血より骨にヒビが入っていないか心配になる。

 

 いきなりの攻撃に「あんなん反則(レッドカード)だろ!?」と主張するイガグリに対し、「禁止なのは()()()()()」と蜂楽は眠たげに返す。

 常識的に考えれば暴力がダメなんて当たり前だが、集団無意識をぶち壊すエゴイストを求める絵心が止める理由もないのだろう。

 

 

「おい、卑怯なのは嫌いだ。正々堂々と戦え」

 

「…マジメくんですかぁ?」

 

 しかし、「國神(くにがみ) 錬介(れんすけ)」が危険行為を咎めるように肩を掴み、対する蜂楽は退屈そうな表情で振り返る。

 

ボフッ

「しゃあ!隙ありぃ~!南無三!」

 

ONI

RANKING291位

國神(KUNIGAMI) 錬介(RENSUKE)

01:22

 

 オニから目を離したことで隙を晒した(良い的だった)國神は、イガグリのシュートを避けることが出来なかった。

 一度ならず二度までも卑怯な手段、しかも二度目は自分が狙われたことで堪忍袋の緒が切れたのだろう。

 國神は額に青筋を浮かべながら、足元のボール目掛けてシュートモーションに入った。

 

「イガグリ潰す!」

 

「!? へい!」

 

「ちょっ!?やめ」

 

 力強く撃ち出されたボールは見たことがない速度で飛んでいき、狙われたイガグリ…の盾にされた潔の腹部へ深く突きささった。

 その威力は潔の身体を後方に吹き飛ばすほどで、尻もちをついて座り込んだ潔はしばらく咳き込んでまともに動けない程だった。

 

「あ、わりぃ…お前じゃねぇ」

 

 冷静になった國神が謝罪を口にするも、ボールが当たったのは潔

 

ONI

RANKING299位

(ISAGI) 世一(YOICHI)

01:03

 

 痛みに顔を歪める潔だが、残り時間が回復に努める暇を許さない。

 正直、今すぐ駆け寄って介抱してあげたいが、ここで変に流れ(シナリオ)を切っても良いことは無い。

 故に私は、彼ならきっと生き残れるはずと信じて次に備える。

 

 

 四隅は部屋の中心から一番距離があり、オニから距離を取るため人が固まりやすい。

 なので私は、四隅から少し距離を置いた壁際で待機して潔の行動を待つ。

 

 すると、予想通り近場の角にいた集団へ向かったので、あえてその背後を狙って移動する。

 そしてシュートを放った潔が躱されたボールを拾いに向かう瞬間、潔の位置から部屋を見渡しやすい方向を見極め、その逆側(死角)の壁際に向かって走り込む。

 

 結果的にはオニとの距離が近くなってしまうが、視界の端で見えにくい位置を陣取ることが可能で、仮に狙われても四隅に逃げれば狙いを散らせる。

 そこそこ持久力(スタミナ)を必要とする作戦だが、幸いにも制限時間は短いので(136秒)最後まで持つだろう。

 

 そして潔がこの課題の難しさを理解し、自分(299位)よりランキングが低いイガグリ(300位)に狙いを定め、それを察したイガグリが方向転換から全力で逃げに徹する。

 

 身体能力では潔にも分があったものの、先刻のシュート直撃による痛みやドリブルしながら走っているため距離が縮まらない。

 このままではジリ貧で脱落が確定してしまうだろう。

 

「にゃは♪チャンスだよーん!」

「てめ、コラ!降りろって!」

 

 その時聞こえてきたのは、國神を羽交い絞めしながら楽しそうに呼びかける蜂楽の声だった。

 私も含めて誰もがつい足を止めるほど注目を集めたが、蜂楽をしっかり捕まえた國神が力任せに前方へ放り投げる。

 そのまま落下すると怪我の危険性もあったが、幸か不幸か國神が飛ばした先にはクッション代わりになる人物がいた。

 

どわ!?…ちょ、どけお前!」

「いてて…へへっ」

 

 ぶつかった二人は倒れ込み、下敷きになったイガグリに急かされて蜂楽が悪びれつつ移動し、イガグリもすぐさま逃げ出そうとしたのだが

 

「ぃ!?……ヤベ、ちょ待って(タイム)…」

 

 左足を気にしながら願い出る様子に、全員が事態(負傷)を察しただろう。

 その場の空気が別の緊迫感に変化し、多くの面々はその場で足を止めていた(走る必要が無くなった)

 

「潔くん、当てろ!今のうちに!」

 

 タイムアップまで30秒を切ったが、手負いの標的に焦る理由は無い。

 潔はイガグリの元へゆっくり歩いて近づいていく。

 

 こんな事故(アクシデント)で夢を潰されるなんて恐怖でしかないだろう。

 イガグリは命乞いの言葉(たのむ!やめてくれ!)を口にしながら、少しでも距離を取ろうと後ずさる。

 

 しかし、無情にもボールはイガグリの目の前まで転がされ、運び手(オニ)である潔は少しだけ逡巡していたが、意を決したようにシュートモーションを開始する。

 

 自身の結末に絶望する者、これで終わりと安堵する者、敗者へ憐れみを向ける者…抱く思いはそれぞれだが、誰もが決着を確信した。

 この入寮テストの敗者は…

 

 

 

 

ONI

RANKING299位

(ISAGI) 世一(YOICHI)

00:16

 

「………へ?」

 

 だが全員の予想を裏切ったのは、シュートを止めてせっかくの勝機を手放そうとしている潔だった。

 

 勝って当たり前の状況。そんな勝利を手に入れて何の意味があるのか?強くなるために狙うべきはコイツ(弱者)じゃない!

 誰に語るでもなく声を上げる潔は、自分の理想を追い求めるため動き出した。

 

「いいね、キミ」

 

 その覚悟へ呼応するように立ちふさがったのは、ここまで自由気ままに行動し続けた蜂楽。

 再び理解不能な行動で振り回されるのかと警戒したのか、動きが止まった潔と交錯する瞬間、蜂楽はその足元からボールを奪い去った。

 

「狙うなら、一番強い奴っしょ!」

 

ONI

RANKING299位

蜂楽(BACHIRA) (MEGURU)

00:09

 

 ここで"オニ"になったら間違いなく脱落が確定する。

 それを感じ取った他のメンバーは、困惑する気持ちを切り替えて一斉に逃げ出した。

 

00:08

 

 そして、栄誉ある強者(ターゲット)に選ばれたのは、この部屋で最もランキングの高い人間(289位)

 

「!? 俺かよ!?」

「吉良くん!?」

 

00:07

 

 不意を突かれて少しもたついた吉良に、狂気的な笑みを浮かべる蜂楽が肉薄する。

 そして流れるようにボールを吉良へキックするが、軌道を見切った吉良がジャンプでボールを躱す。

 

00:06

 

 だが蜂楽は、そのまま吉良へ向かって走り込み、勢いのままジャンプと同時に吉良の頭部へ蹴りを放った。

 しかし、吉良も咄嗟に屈んだことで蜂楽の攻撃は空を切り、直後の隙を突いて蜂楽から距離を取る。

 

00:05

 

 蜂楽がもう一度吉良を追いかけるには時間が足りず、他を狙うかシュートを直撃させるしかない。

 どちらにせよ、次こそが間違いなく最後の行動(ラストアクション)になるだろう。

 周囲がそう思い身構える中、蜂楽は壁から跳ね返ったボールを柔らかく蹴り出す。

 

00:04

 

 この瞬間を観たかった!

 吉良には悪いが、彼が狙われることは分かっていたので、吉良の背後から潔を正面から見れる位置に移動する。

 最も強い人間に勝利(ジャイアントキリング)するこのシーンを最適な位置(ベストポジション)で見守るために!

 

00:03

 

 蜂楽の放った浮き球が、吉良の頭上を越えて潔の元へ落ちてきた。

 その目は誰より先にブルーロックを目指した時と同じく、荒ぶるような熱を帯び、勝者を屠らんとシュートモーションに入る。

 

「潔くん…」

 

「一番、強い奴…」

 

 

潔と目が合った

潔と目が合った

 

00:02

 

 振りぬいた右脚が落下するボールに着地を許さず、高速でこちらに飛来する。

 だがボールの軌道は吉良ではなく、明らかに(成早)を狙っていた。

 

 

なぜ?私が狙われた?吉良が脱落するはずじゃ…回避しないと、このままじゃぶつかる!でも避けたら潔は?そもそも避けられるか?もう目の前まで来てる!なんとかしないと!

 でないと私は…

もう、サッカーができなくなる

嫌だ!!!

 

00:01

 

 瞬間、身体の奥底から感じた熱い衝動に突き動かされて動きだす。

 予備動作を省いて無理やり足を上げ、ボールを弾き返そうとしたが時間が足りず、ボールは右足に当たってあらぬ方向へ飛んでいく。

 

 その行方を目で追おうとするが、激突する痛みと衝撃を感じて視界がブレる。

 混乱した脳が着地し損ねた結果だと気付いた時には、入寮テスト終了のブザーが鳴り響いていた。

 

 

 

 終わった?

 (オレ)のサッカー人生が、こんなところで?

 

 絶望が重くのしかかり、顔を上げて部屋のモニター(敗者の名前)を見ることが出来ない。

 もしそれを見たら、現実を受け止めなくてはいけなくなるのが怖かった。

 

パチパチパチ

 けれど、そんな私の耳に届いたのは、勝者たちを称える拍手の音だった。

 

「才能の原石共よ、ここでは結果が全てだ」

 

 あぁ…クソ、こんなところで

 

「敗れた者は出ていけ!」

 

 イヤだ……認めたくない!まだ、サッカーを!!

 

 内心に渦巻く激情(怒り)を堪えきれず、絵心を睨みつけてやろうと見上げた視線の先

 部屋のモニターは声の主ではなく、敗北者の名を晒し上げていた。

 

 

 

 

ONI

RANKING293位

久遠(KUON) (WATARU)

00:00

LOSE

*1
五十嵐 栗夢のあだ名。原作で國神が呼び始めてそのまま定着。むしろ名前で呼ぶ人がいない




原作ルートの一部崩壊をお伝えします。
私は久遠の理想を「仲間たちと本気のサッカー」と解釈しているため、個人的にチームZで最もブルーロックに合わないと思っています。
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