ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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青い監獄

 

俺は今、猛烈に緊張している。

たぶん、前世含めてもここまで緊張したことはないだろう。

 

場所は日本フットボール連合

目の前にはやや重厚な扉

手には招待状の入った封筒

 

長旅の果てにようやくたどり着いたこの場所は、いよいよ俺が原作との邂逅を果たす場となる。

元々ブルーロックと言う作品のファンだった俺が、登場人物たちが一堂に会する会場に足を踏み入れようとしているのだ。

緊張するなと言うほうが無理だろう。

 

俺「ふぅ…落ち着け、相手は高校生なんだ。あんまり肩肘張らず普通に…いや、でも年齢的に俺って年下の方なんだよな?じゃあ下手に行ったほうが良いか?いやいや、ここじゃ我の強奴が生き残るんだから、多少は生意気な態度の方がよかったりするかもしれない…ん?リアルに出会える原作キャラ達に向かって?それはファンとして失礼なんじゃ…

 

あぁ、駄目だ!興奮と不安で頭がいっぱいになって視界がグルグルしてきた!

 

今すぐ会いたい!

でも粗相しそうで会うのが怖い!

それでも会いたい!

でもやっぱ怖い!

いや、ファンとして会わないわけには!

 

 

?「君、大丈夫?」

 

俺「ひゃい!?だいじょうぶ…です。」

 

いきなり背後から声を掛けられ慌てて振り返った俺は、二人の御姿を見て呼吸することも忘れて魅入ってしまった。

 

 

?「あ、ごめんね。いきなりで驚かせちゃったかな?君もここに呼ばれた選手だよね?

……あれ?聞こえてる?」

 

?「なんか固まってるみたいだね。…もしかして!吉良くんのファンだったりして!なんたって日本サッカー界の宝なんだし。」

 

吉良「えぇ?そういう言い方はやめてよ潔くん。まあ自慢には思ってるけどさぁ。」

 

潔「あはは!ごめんごめん!」

 

 

 

 

スゥー

 

やべぇ!潔だぁ!吉良も隣にいるぅ!二人とも本物だぁ!ひょえぇ!神様ぁ!この世界に転生させてくれてありがとうぅ!

 

爆発しそうな感情を何とか内に押し留めつつ、俺は目の前で行われる尊い光景を眺めていた。

いやぁ、これだけでも人生の運を根こそぎ使っちまったのでは?ってくらい幸せなのに、これから更に他のキャラにも会えると思うと…うっへっへ♪

 

潔「…なんか、ほんとに動かないね。おーい!」

 

俺「…ハッ!?ダ、ダイジョウブデス!オキニナサラズ!」

 

潔「えぇ!?めっちゃ片言だけど!?ほんとに大丈夫?なんか顔も赤いし…」

 

吉良「そうだね。休憩室みたいなところがあれば休ませてもらったほうが…」

 

俺「イエ、オカマイ…ん゛んっ、お構いなく、大丈夫なんで…

 

いけないいけない。御二人に心配をかけさせてしまった。逸る気持ちを静めて冷静に、冷静に対応しなくては………………ヨシ!

 

吉良「そうかい?君自身が大丈夫って言うならいいけど…君、名前は?」

 

俺「あ!その…成早 朝日って言うです!」

 

吉良「成早くんだね?知ってるかもしれないけど、俺は『吉良(きら) 涼介(りょうすけ)』、よろしくね。」

 

俺「よ、よろしく!…で、その」

 

潔「…あ!俺は『(いさぎ) 世一(よいち)』ね。よろしく。」

 

俺「はい!よろしくです!…あの、良かったら握手してください!」

 

潔「え?…えぇ!?」

 

…しまった!?何言ってんだ俺は!

考えなしのお願いなんてして潔が困ってるじゃないか!

いや、正直言うとめっちゃ握手したい!

だって潔だぜ!

『原作の主人公』なんだぜ!

そんなスーパースター並みの人物が目の前に立ってるんだぞ!

そりゃぁ握手したくもなるだろう!?

 

だけど、俺は決して厄介なファンになって原作キャラたちを困らせたいわけじゃない。ここはいったん謝って引き下がるべきだな。

 

 

俺「あ!?ごめん!いきなり迷惑になるようなこと言って…」

 

潔「いや、迷惑ってわけじゃ…はい、握手。」

 

俺「…え?いいんすか?」

 

潔「え?…プッ!ははっ!そっちが言ってきたんじゃん!もちろんいいよ。」

 

潔は俺のお願いに若干戸惑って吉良へ視線を向けたつつ、笑顔で俺のお願いに応えてくれた。

Oh、神よ…あなた様はここにいらしたのですね。

 

俺は差し出された潔の手を握り返そうとして、ふと手汗が心配になり服で軽く汗を拭った後、ちょっと遠慮気味に彼の手を握った。

 

うっへっへ…原作キャラと話すだけじゃなくて握手までしてもらえた♪転生サイコー!

 

 

吉良「…成早くん、僕とも握手しない?」

 

俺「え!?ぜひお願いします!」

 

潔との握手に感銘を受けていると、隣で見守っていた吉良からも握手の申し出があった。

しかも吉良の方から!

今日はなんて幸運なんだろうか?

ふっ、自分の境遇が幸福すぎて辛いぜ。

 

吉良「それで、扉の前で立ち止まってどうしたの?」

 

俺「え?あぁ…ちょっと、緊張しちゃって…」

 

潔「緊張?…まあ、確かに意味不明な招待だったしね。まあ、変に気にせず行こうよ。」

 

吉良「そうだよ。それに、もし書かれてることが本当なら、俺たちはすごい選手ってことなんだから、堂々としてればいいさ。」

 

俺「そう、だね!…よーっし!おかげで調子出てきた!二人ともありがとう!」

 

御二人から激励を頂いたおかげで、さっきまで抱えていた不安はどこかへ吹っ飛んでしまった。

まあ、代わりにすんごい興奮してるのを抑え込むのが大変だけど!

 

でも、これ以上心配をかけるのはファンとして申し訳ないからな。

何とかいつもの口調に戻しつつ、御二人にお礼を告げることができた。

 

 

吉良「で、この扉の向こうが会場みたいだね。」

 

そう言いながら吉良が会場の扉に手をかけた。

その後ろに潔と並び立ちながら、ゆっくり開け放たれた扉の向こうの景色を目に映した。

 

 

あぁ、まさに桃源郷…

 

あれは、蟻生!その後ろには時光!あっ!あっちにいるのは大川!剣城もいた!おぉ!流石No1高身長の石狩!他にもあの人!えっと…三次セレクションまで進出した……名前わかんないけどいた!ちょっと見まわすだけでこんなに知ってるキャラがいるなんて、この場所まじで聖域かよ!

 

潔「うわー、めっちゃいる…」

 

吉良「なーんか見たことある奴いるなぁ。」

 

原作キャラの数々をこの目で見れて感動に打ち震える俺だったが、話しながら会場の中へ入って行く御二人の姿に気付いて、後を追いかけるように会場に入る。

 

俺には推しと呼べるキャラはいないが、言うなればブルーロックのキャラ全員を推している。

だって、誰も彼もが熱くてかっこいいんだもん!

そして今、彼らと同じ空気を吸っている。

これ、俺以上にガチのファンだったら卒倒するレベルの出来事ではないだろうか?

 

なんて考えながら周囲をキョロキョロしていると、突然会場の照明が落ちてあたりを暗闇が包み込んだ。

そして突然の出来事で一瞬シーンとした会場に、壇上を歩く足音が鳴り響いた。

 

?「えーあー、あーあー。おめでとう、才能の原石共よ。お前らは俺の独断と偏見で選ばれた、優秀な18歳以下のストライカー 300名です。

そして俺は『絵心(えご) 甚八(じんぱち)』、日本をW杯(ワールドカップ)優勝させるために雇われた人間だ。」

 

キター!この展開を待ってました!

 

スピーカーからの声が会場中に響き渡り、壇上中央に立つ細身で眼鏡の男性を照らすようにスポットライトが当たった。

周囲が困惑しているのを尻目に、俺は初めて見る生の絵心に感情が昂り、口を塞ぎつつ心中で絶叫した。

 

絵心「単刀直入に言おう。日本サッカーが世界一になるために必要なのはただひとつ、革命的なストライカーの誕生です。

俺はここにいる300人の中から世界一のストライカーを作る実験をする。これがそのための施設

青い監獄(ブルーロック)

 

 

はい来ました!タイトル回収!

確かに監獄みたいな閉鎖空間で共同生活を強いられるわけだしな。

その例えで行くなら、絵心はノルマを課す看守長で、俺たち高校生ストライカーは働かされる囚人と言ったところか。

 

 

吉良「あの、すみません。今の説明では同意できません。」

 

ちょっと自分の世界に浸っているうちに、気付けば会場の照明が戻って明るくなっていた。

そして声の主に視線を向けると、説明に納得できなかった吉良が絵心にかみついていた。

 

吉良がチームの大切さを重視して絵心へ反論するのに対し、絵心は『献身性』そのものは否定しなかったものの、それだけでは勝てないということを強調した。

それでもなお吉良が、実際に活躍する日本代表選手を擁護する声をあげれば、今度はW杯優勝できていないという事実を突きつけ、絵心は自身が掲げる理論の正当性を語った。

更に絵心は、追い打ちをかけるように世界的有名なストライカーの名と、彼らが残した傲慢なまでの発言の数々を口にし、その考え方こそが日本サッカーに足りないんだと主張した。

 

 

一方の俺は、ここにきて自分が『ブルーロックの世界に生まれた』ことを強く実感した。

 

この会場に漂う張り詰めた緊張感も、吉良の声から感じる熱量も、それを感情ではなく理論で返す絵心の静かな想いも…

どんなに巨大で高画質なスクリーンが用意され、高音質なスピーカーがあって、音響設計まで完璧に設計・建築された映画館があったとしても、今俺が感じてる現実(リアル)には遠く及ばないだろう。

 

アニメや原作で知っている台詞の数々が、そのまま本人の口から発せられる様を間近で見られるこの空間は、俺にとっての極楽浄土(パラダイス)だった。

 

 

 

そして、興奮の絶頂に溺れそうな俺の目の前で、この会場に集った300人のストライカーへ発破をかけた絵心の背後にある重厚な扉が…ブルーロックへの扉が開かれた。

 

絵心「常識を捨てろ。ピッチの上ではお前が主役だ。

己のゴールを何よりの喜びとし、その瞬間のためだけに生きろ。」

 

来るぞ…彼が。

展開を知っている俺は、主人公()の瞳を横からこっそり覗き込んだ。

 

絵心「それが〝ストライカー〟だろ?」

 

 

 

 

 

ドクンッ

 

 

絵心の言葉が終わって一拍、潔は周りの呆然としているストライカーたちを置き去り、ただ一人だけ反射的に扉へ向かって走り出していた。

 

けど、彼が走り出す瞬間を見ていた俺は…彼に謎の()()を感じていた。

 

 

俺はただ、潔が扉へ走り出す瞬間をこの目で見ていたかっただけだ。

けれどそこには、俺が望んでいた『尊さ』なんて欠片もなくて…

なにかこう、ねっとりと重く、それでいて見ている側が飲み込まれそうな、不気味なほどギラギラした()()が瞳に宿っていた。

 

なんだよ、アレ。あんなの知らない。

まるで猛獣みたいな、あるいは殺気みたいな恐ろしい目…

 

 

もしかして、あれが()()

 

 

 

 

 

へへっ

 

もっと知りたい

 

読むだけじゃ真に伝わらなかった彼らの本気を、その熱量を、もっと間近で感じていたい!

そして、俺もいつか彼らのようなエゴイストに…

 

 

呆然としている間に、世界一を目指して周囲の高校生(ストライカー)たちもブルーロックへの扉に群がって行く。

そして俺もまた、気付けば扉へ向かって走り出していた。

 

気だるげな天才も、世話焼き大富豪も、扉の前に立つ絵心にすら視線を向けず、ただひたすらに…

 

 

フットボールの熱い場所を目指して

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