ブルーロック -淡い一等星- 作:埋もれたエゴイスト
扉を潜った先で、俺たちストライカーはバスに乗車させられ、振動に揺られながら山を越えたその先で、一つの巨大施設を目にした。
BLUE LOCK
でかでかと側面に書かれた施設名と共に、五つの棟に分けられたサッカーのための箱庭、もとい〝
帝襟「次、成早 朝日くん。」
俺「はい」
バスを降りた先で、名前を呼ばれた俺は巨に…女性からボディスーツを手渡された。
ちなみに、現時点で名乗りはなかったが、原作知識を持つ俺は彼女のことも当然知っている。
『帝襟 アンリ』
ブルーロックプロジェクトをサポートするのが彼女の役目であり、心無い絵心のダメ出しに耐えながらサポートしている。
まあそんなことより、今は俺の順位とかチームが原作と同じかどうかのほうが重要だ。
さてさて、書かれている番号は…
Z
おぉ!よかった!知ってるチームZだ!
順位は…原作の順位をよく覚えてないけど、多分変わらないだろう!
そして俺は、裏で頑張ってる帝襟に敬意を表して「ありがとうございます。」と感謝を述べながら、そのままブルーロックの内部へ入って行った。
…でかかったなぁ
…
その後、迷路みたいに入り組んでいる壁面とにらめっこしながら、俺はようやく見つけたチームZの扉を開けた。
あぁ、まさに桃源郷…
うわぁ!チームZだ!チームZのメンバーが部屋中に!
お!?我牙丸がこっち見てる!雷市はガラ悪ぅ!今村はなんか落ち込んでる。なんで?久遠は優しく微笑んでくれてる!伊右衛門は実際に見るとごついな!っていうか、遠くで座ってるの千切か!近くにいるのは…
ドドド、どうしよう!?ここにきて最初何してたっけ?そうだ!入寮テストがあって…ってまだ着替えてないだろ!バカか俺は!?えっと着替えは…
久遠「あ~、君もこの部屋の人?ロッカーはそこだからね。」
俺「へ?…あ!ありがとうございます!」
俺に優しく教えてくれた久遠は、そのまま俺に微笑みを返してから視線を外した。
良い人だぁ!やっぱ久遠はこういう人間なんだ!
そんなことを考えつつ、俺はロッカーを開けて手渡されたボディスーツに袖を通す。
…でもこれ、確か
と、ちょっと不安になりつつ着替えを終えたタイミングで扉が開く音がした。
そこに立っていたのは…
吉良「やあ!成早くんも一緒の部屋だったんだね。知ってる人がいて良かったよ。」
俺「うん!吉良、くんも!俺もちょっと安心したよ。」
あっぶね!キャラのこと呼ぶみたいなノリで呼び捨てしかけたわ!
落ち着け成早…と言うか俺。
作品のキャラにくんとかさんとか付けないのはまあ仕方ないとして、実際に人として接するならいきなり呼び捨ては失礼だ。
あくまで彼らも普段は普通の高校生、俺自身も同じ高校生であるという自覚を持て。
冷静になりつつ吉良にロッカーを指さして着替えるように伝えて、しばらくすると再び部屋の扉が開き、同じチームの國神が入ってきた。
そこで、俺も久遠に倣ってロッカーの方を指さし着替えるよう促したら「うっす」と軽く返事が返ってきた。うっへっへ…
そして吉良が着替えを終え、國神が着替え始めたタイミングで、最後のチームメイトが姿を現した。
吉良「潔くん!君も個々の部屋だったんだね。」
潔「吉良くん…はは、俺も安心する。…ていうか、成早くんも同じ部屋なんだ。」
俺「う、うん。お互い知ってる人がいて良かったな!」
三人で笑いあっていると、突如として國神の服が潔の方へ飛んでくる珍事件が発生したり、意外とコミュ力高いイガグリが吉良や潔に握手を求めたり、原作通りの展開が続いた。
いやぁ、この光景は何度見ても飽きない自信があるなぁ…うっへっへ。
イガグリ「君も吉良くんたちの友達?よろしくな。」
俺「お、うん。よろしく。」
おい、精神年齢40歳超えのおっさん。何どもってんだ?もうちょい大人の余裕みせろよ。
絵心「着替えは終わりましたか?才能の原石共よ。」
ちょいと自己嫌悪していると、設置されたモニターに絵心の姿が映し出された。
そして、この部屋にいる者同士がルームメイトであること
ボディスーツに書かれた番号は300人のストライカーたちの中で自分の順位であること
ランキング上位5名は
逆に脱落者は日本代表入りへの権利を永遠に失うことが説明された。
…
と言うわけで!入寮テスト〝オニごっこ〟の時間だぁ!
ルールは簡単!
1.制限時間は136秒
2.ボールに当たった者が〝オニ〟
3.タイムアップ時に〝オニ〟の人が
4.ハンド禁止
以上!
ルール説明を終えた絵心がモニターから消え、代わりにこの部屋の中で最下位の者が〝オニ〟であるとわかる画面が映し出された。
RANKING 300
02:16
さて、ここからのムーブだが…ひたすら目立たないこと!これこそ俺が生き残る最善の道だ!
原作でもオニごっこの時に成早へスポット当たってなかったし、原作通りに事が運べば俺は確実に生き残れるってわけだ。
…脱落するだろう
現に目の前では、原作の通りイガグリがボールに足をかけながら、周囲のメンバーに対して勝負しに行くことを宣言している。
目立つことだけは極力避けて、できれば一度も狙われない動きをするのがベストだな。
イガグリ「うぉらぁぁ!」
雄たけびを上げながら、イガグリは俺がいる方向に走ってきた。
…ん?何故に?
疑問に思いつつ彼の視線の先を辿ってみると、俺の隣には潔が立っていることに気付いた。
あぁ!そういえばイガグリが潔狙いだとわかる直前に、誰かが「来るな」的なこと言ってたけど…もしかして言ったの
そうと分かれば黙ってられない!ここは原作を再現するために言わねば無作法と言うもの!
俺「ちょ、コッチくんなヨ!」
イガグリ「悪いな潔くん!299位のアンタ狙いだ!」
潔「え!?」
イガグリ「南無三!」
潔「うぉ!?」
い、言えたぁ!うっへっへ!
俺は心中で狂喜乱舞しながら潔とは逆方向へボールを避け、そのまま
このまま
着替えを終えた時点である程度の目星をつけていた
イガグリは雷市を狙ってキックするが外し、跳ね返ったボールが転がった先で
そして狡猾な笑みを浮かべながら無遠慮に近づき…
その顔面へ踵蹴りが浴びせられた。
うぉぉおおおお!暴力的な蜂楽だぁ!イガグリ痛そぉ!
こんなの未成年とは言え暴力沙汰で大騒ぎになっちゃうような一幕だからな!現実じゃそうそう見られるものじゃないぜ!
そしてそして!そんなアウトロー気味の展開に待ったをかける我らが
國神「おい。汚いやり方は嫌いだ。正々堂々と戦え。」
蜂楽「…マジメくんですかぁ?」
はわわぁ、國神カッケェ!それでこそヒーロー!そしてちょっと嫌そうな蜂楽も良い!
そこへ抜け目なく、蹴られた蜂楽ではなく國神にボールを当てるイガグリ!流石は狡猾なストライカーだぜぇ!
RANKING 291
01:07
國神「…にゃろう……イガグリ潰す…!」
うひょぇぇ!怒ってる國神もまた良きです!ていうか左足のキック力えげつない!生で見る迫力は違うなぁ。
目に見えて強烈なボールが真直ぐ飛んでいき、ぶつけてきたイガグリ…ではなく潔に命中する!
後方に吹き飛ぶ潔、そんな彼を盾に使ったイガグリが「南無三!」と謝意を示す。うん、酷いな!
RANKING 299
01:03
まあ、なんにせよボールに当たったのでこうなるわけです。はい。
國神は潔へ申し訳なさそうに謝ったが、〝オニ〟になった彼に近寄るわけにもいかず歯がゆそうだった。
残念な境遇に追い込まれた潔は、よほどのダメージがあったのか腹部をさすりながらえずいていた。
しかし、その目には諦めないっていう強い闘志が宿っていて、それを見た俺は僅かに身体が身震いした。
でも現実はそう甘くない。
全国から集められたストライカーである他のメンバーは、潔の放つシュートを躱し、潔のドリブルで追いつけない速度で逃げ回った。
斯く言う俺も、手当たり次第に狙えそうな相手を探す、そんな潔の視界を意識して死角に回り込むように動き回った。
おかげで俺はほとんど狙われることなく時間が経過していき、やがて潔も闇雲では当たらないと悟ったのか、自分より順位の低いイガグリを狙いに行った。
そんな折、いきなり蜂楽が國神のこと捕まえて潔へ当てるよう促し、國神は得意の筋力で蜂楽を前方へと放り投げた。
飛ばされた蜂楽はイガグリにぶつかって倒れ込み、イガグリはその拍子に左足首を捻ってその場から動けなくなった。
よし、
そう考えながら観戦する俺の目の前では、潔がイガグリの前で止まってシュートモーションに入ろうとしていた。
そのままボールを蹴り出そうとして…その足をピタッと止めた。
潔「違うな……人生変えにきてんだよ…世界一になりにきてんだよ…俺は…」
キタァ!これだよ!ここで動けないイガグリではなく、他の奴を狙いに行こうとする熱いシーン!これが生で見れて本当によかっ
ギロッ
その視線に捕まったことを自覚した時、俺は原作を楽しむことを忘れた。
またあの
俺に謎の恐怖を与える恐ろしい目。
そして、彼が俺の方へ方向転換する様を見て、俺は無意識に悟った。
あぁ、ここで終わるかも。と
蜂楽「いいね、キミ」
RANKING 290
00:11
しかし、そんな俺を蚊帳の外へやるように、俺と潔の間に蜂楽が割って入った。
そしてやはりと言うか、蜂楽は楽しそうに潔からボールを奪い取り、そのまま吉良の方へ猛然と駆け出していった。
蜂楽は低弾道のボールを放ちざま、飛び上がって左足で吉良の頭部を蹴りに行き、吉良はその攻撃を紙一重で躱して距離を取る。
だが蜂楽は、逆立ちしながらふわっと浮くパスを出し、それを受けた潔が吉良へ向かってそのままシュートする。
完全に意表つかれた吉良は動けず、ボールはその顔面へ吸い込まれるように飛んでいき、痛々しいほどの顔面ショットが決まった。
RANKING 289
00:02
無情にも倒れ込んだ吉良だが、突然の事態に訳もわからず放心している。しかし、タイマーは残酷に時を刻み続け、そして…
RANKING 289
00:00
テスト終了のブザーと共に、
その名は『吉良 涼介』
原作でも敗退する運命にあったキャラの名がモニターには映し出されていた。
そして原作通り、吉良がモニターに映った絵心に対して反論を述べ、それに対して一つ一つ正論を振りかざす光景が目の前に広がっていた。
だが、俺は不思議と潔から視線を外すことができなかった。
もし、あのまま蜂楽が来ずに、俺が潔に狙われていたら…
そんなことを考えていたからだろうか?
かの有名な
その後の絵心の言葉の数々も
俺にとってただ耳を通り過ぎるだけの雑音に成り下がり、俺はただ得体の知れない何かを秘めた