ブルーロック -淡い一等星- 作:埋もれたエゴイスト
絵心「これはサッカーを0から作るための戦いだ。第一試合は2時間後…チームX vs チームZ」
いきなり対戦カードを発表された俺たちは、時間がない中でポジション決めをどうするかでちょっと揉めたが、最終的にジャンケンで決めることになった。
そしてそこはやはりと言うか、原作通りの流れで潔を攻撃の中心としたフォーメーションを組むことになった。
FW
雷市 國神
成早 五十嵐
こういう時に原作知識を活かし、チームをまとめたりすることができれば勝つ可能性は高くなるだろう。
けれど、たかだか三、四日程度の時間を過ごしただけの間柄に過ぎない俺たちは、未だにチームになり切れていない。
それに俺は、このメンバーの中で大きな発言権を持っているわけでもない。
どちらかと言うと自分の意見をまっすぐに主張する雷市や、みんなの仲を取り持つことの多い久遠の方が発言力を持っている。
そんな中で俺が原作知識を「未来予知」したかのようにひけらかしたところで、痛い妄想家か何かと思われるのが関の山だろう。
かといって、人を言いくるめられるほどに口達者なわけでもない以上、ほとんどできることがなかった。
もうここからは『
その隙を見つけてどうにかするしかない。…DFだけど。
一抹の不安を覚えつつも、俺たちは棟内に敷設されたフィールドへ向かった。
…
國神「来たぞ、チームX。」
ウォームアップをしているとそんな声が聞こえ、俺はストレッチをしながらも反対側のゲートへ視線を向けた。
ば、馬狼 照英だぁぁ!思った以上に強面だけど、そこがまた良い!佇むだけで滲み出る王者の貫禄!カッケェ!
なんて考えながら見ていると、チームXの中の一人が俺に手を振っているのが見えた。
…って
俺「吉岡ぁ!?」
國神「ん?知り合いか?」
俺「あ、うん。俺の高校の先輩…」
國神「そっか。知り合いが相手ってのはやりにくそうだな。」
え?あれ?吉岡ってブルーロックに登場してたんだっけ?全然覚えがないんだけど…
いや、まあ正直言ってチームXは馬狼以外のモブキャラまで覚えてないから、もしかしたらいたのかもしれない。
でも、再開のシーンとか描かれてないから違うと思うんだよなぁ。
思いながら俺も吉岡に向かって手を振り返し、自分のポジションへ付く。
そして、動揺した心を落ち着けるように深呼吸し、再び前を向いたあたりで試合が開始された。
X Z
0 - 0
KICKOFF!
だが…
潔「は!?ちょ…!」
雷市「どけオラ!」
國神「お前がどけ!」
敵「ラッキーいただき!」
敵「あ!?コラ!点取るのは俺だ!」
試合開始直後に目にしたのは惨めになるほど子供染みたお団子サッカーだった。
味方同士でボールを奪い合い、そこに敵も混ざって状況はより混沌へと傾いていく。
それもこれも、絵心の話にあった『得点王』というシステムが関係していた。
二次選考に勝ち上がることができるのは勝ち点上位2チームだけだが、救済措置としてチーム内得点王だけは二次選考へ進むことができる。
つまり、チームとして勝とうが負けようが、一番得点をとることさえできれば絶対に勝ち上がれるということだ。
その結果何が起こるかと言えば、誰も彼もが「自分だけでも生き残る」ために味方すらも出し抜いて点を狙いに行くという状況になるというわけだ。
しかし、その展開を知っていた俺の目から見ても、目の前で行われているボールの奪い合いは結構醜い争いだと思った。
こんなものをサッカーとは呼ばない。
そんな集団を遠くから観察していると、敵陣から一人すごいスピードで突っ込んで行く人影が見えた。
本来なら人込みに紛れる結果に終わるが、その男は人の波にのまれるどころか、逆に押し寄せる肉の圧を撥ね返しながら、人の海を割ってボールをかっさらっていった。
おぉ!馬狼!流石です!
いや、状況は俺のほうが不利になってるんだけど、やっぱキャラが活躍するシーンは心躍るじゃん?
本当ならあの集団の近くまで行って、その迫力を間近で観察したかったのに~。
…っと、原作シーンを喜ぶのはこれぐらいにして、真面目にディフェンスするとしますか。
このままだと馬狼がそのままゴールを決めてしまう流れ。
それが起点となってチームXは一致団結を始め、逆にチームZは焦りからチーム崩壊へ至って敗北してしまう。
原作では負けたからこその学びもあったし、そこからの逆転劇があってこそ熱いストーリーが展開されている。
けれど、俺はこの先もブルーロックで生き残るため、遅かれ早かれ原作の
そうなると、あの奇跡的な逆転劇の数々が起こらず、最悪チームZが敗退するという可能性まで見えてくる。
なら、確実な生き残りを達成するため、この試合に勝利して勝ち点を確保しておきたい。
そんな俺の思惑を知るはずのない馬狼は、正面にいた潔を
ゴール前に残っているのは俺とGKの伊右衛門のみ。
未来を変えるには、俺がここで食い止めるしかないってわけだ。
馬狼「てめぇもどけ、
俺「そう簡単に、こっちの
馬狼 照英 vs 成早 朝日
王様が俺の正面からスピードも緩めず突っ込んでくる。大柄の馬狼が近づいてくる様はなかなか迫力がすごい!
ファンとしてはたまらん光景だな、うっへっへ。
ちょっと顔がにやけるものの、すぐ気を引き締めて馬狼の動きを注意深く観察する。
こっちに走ってくる馬狼はスピードを緩める気配がなく、俺を他のメンバーと同じく抜き去るつもりなんだろう。
だから、俺はボールを奪うことより足止めすることを主軸に、馬狼の正面に立った俺は進路を妨害しつつ足を止める。
突っ込んでこないと悟った馬狼は若干スピードを落とし、僅かに右へ進行方向を変えた。
俺はそれを追って左へ身体を寄せていくが、その動きを先読みした馬狼が重心を反転させつつ、左足でチョンとボールを逆サイドへ弾いた。
切り返しによって俺を抜くつもりだ。
でも、俺もその動きを追って飛び出しかけていた身体に力を込め、馬狼の体が左へ飛び出すタイミングで右へ飛び出した。
馬狼「!」
俺「止める!」
けれど、馬狼はそこで一度ボールを戻して止まると思いきや、逆にスピードアップして俺に体を当ててきた。
恵まれた
そして
初のGKということもあって、伊右衛門はこのシュートに身体が反応できず…
TEAM TEAM
X Z
1 - 0
原作の通り、俺たちチームZは馬狼によって
馬狼「フン…思ったより脆い城門だったな。いいか、覚えとけ下手糞ども。ピッチの上じゃあ、俺が
やべぇ、カッコい…不味い、このままじゃ負けるな。
俺は馬狼の実力を間近で感じられたことに興奮しつつも、
それにしても、馬狼の突進力を前にしてわかったが、あれは1on1でまともに戦っても勝ち目がない。
俺に國神並みの
それはつまり、チームワークを発揮して二人以上で馬狼に付かないと止められないってことだ。
けど、まあ…
雷市「お前ら全員俺にパス回してりゃいいんだよ!」
イガグリ「フザけんな俺にパスしろ!」
國神「いや俺だ!」
この喧騒具合じゃチームワークは望むべくもないな…
さて、どうする?
初手で馬狼からボールを奪うのは失敗した。せめて足を止めてくれれば
けど、せめて一点取ってチームとして協力するきっかけを作らないと、俺一人じゃ対策のしようもない。
本当は1on1で勝ちたかったけど仕方ない。安全策で行こう。
試合再開を促すアナウンスの声を聴き、各自がポジションに向かっていくのを見ながらそう決意した。
潔「蜂楽!俺たちだけでもパスつないでこー!」
蜂楽「おっけ!」
イガグリ「よっ!」
潔「ちょ、イガグリ!?お前ポジション!」
イガグリ「バカかよ潔!?点取った奴が生き残るんだよ!」
再開早々、潔が蜂楽へパスしたボールを、ポジションを無視して走り出したイガグリが横取りした。
イガグリはこの選考が『個人の得点能力を追求する戦い』と解釈したようだが、そのせいで何が何でも自分がゴールを決めてやると躍起になっている。
確かに、最初の得点はそれでもよかった。
寄せ集めのメンバー同士で、得点王と言うシステムによって最低限のチームワークも無くなれば、もう後に残るのは完全に個人の力。
必要なのは突出した『個』による圧倒的な一点だった。
けれど、一点を獲得したチームXと、今だ無得点のままのチームZ。
この僅か一点と言う差が生まれた瞬間、試合の流れは大きく変わってしまう。
敵「ショボいな!もらうぜ!」
イガグリ「あば!?」
無計画に敵陣へ突っ込んだイガグリは簡単にボールを奪われ、それを奪った敵同士でまたボールの奪い合いなる…はずだった。無得点のままなら。
敵「おい!馬狼にボール回して、俺らはサポートに回ろうぜ!」
敵「え!?」
敵「
敵「…そうだな。」
だが、馬狼によって得られた一点という
敵FW「よし、サイドは任せろ!」
敵MF「俺たちは中盤でカットするぞ!」
敵DF「DFライン揃えろ!」
あっという間に自分のポジションでの役割を理解し始め、互いに声を掛け合ってチームとしてのまとまりを見せ始めた。
急場凌ぎとはいえチームとしての意識が芽生えれば、攻守問わず戦術に
それに引き換え…
雷市「奪られんなよ、マジ殺す!」
久遠「だから行くなって!全員戻れ!」
久遠や潔、蜂楽など一部の者を除いて、チームZのメンバーは無得点というチームとしての勝算が薄い現状に焦り、余計に個人で得点を得て生き残ろうという思考に囚われていた。
こんな意識のままでは勝てるはずもない。
そして、原作同様にボールを持った馬狼が再びゴールを狙って自陣へ突っ込んできた。
これに対して俺たちは、ポジションを守って守備をするのではなく、ボールを追いかける犬のように馬狼の元へ大人数が群がって行った。
いくら馬狼とはいえ、4~5人という通常のサッカーでは考えられない人数を単独突破するのは不可能だろう。
馬狼「いいのか?俺一人に下手糞どもがそんなに集まっても?」
けれど、馬狼だってそれを承知の上で暴走するほど馬鹿じゃない。
自分に群がってきたメンバーをあざ笑うように、自分の後方でサポートに回っていた味方へパスした。
そうなると、馬狼一人に人数をかけていた俺たちに守備する手段など無く、後はゴールまで敵がボールを運ぶ様を指をくわえて見ることしかできない。
だからこそ、ここが
俺「もらった!」
馬狼「!?」
久遠「な、ナイスだ成早!」
ここまで原作通りの展開だったから、馬狼の行動を何歩も先読みできた俺だけ、このパスは容易に
馬狼との1on1で勝てない俺が、馬狼からボールを安全かつ確実に奪える機会は、正直言ってここを残して他になかった。
馬狼「チッ!貧弱な門番が猪口才な!」
俺「うっへっへ…次からは護衛を付けてはいかがですか?王様?」
始めての会話に心躍らせつつも敵陣へ走り出す。
俺たちチームZが確実に勝ち上がるために、チームとしてまとまるための起点を作り出すために。
さあ!反撃開始だ!