ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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チームX戦-2

 

馬狼から味方へ出されたパスを横取りし、そのまま敵陣へ向けて走り出す俺を、敵だって黙って見ているわけじゃない。

 

 

敵MF「やばい!俺たちで止めるぞ!」

 

敵MF「お、おう!」

 

敵FW「いけぇ!囲んで潰せ!」

 

雷市「おいチビ!俺にボール寄越せ!」

 

イガグリ「いやいや!俺のほうがフリーだぜ!」

 

久遠「だから!お前らポジションを!」

 

潔「こっちだ成早!俺たちでカウンター仕掛けよう!」

 

 

攻勢が転じて守備をすることになったチームXだったが、咄嗟の反撃に狼狽えつつもすぐさま気持ちを切り替え、前線に出ている全員で俺を潰しに来た。

たぶん、俺もさっきのイガグリ同様に他へパスを出さないと踏んでのことだろう。

 

一方のチームZは相変わらず個々でゴールを狙う状況に変わりなかったが、潔だけは状況の危険性を理解して協力を持ちかけてきた。

確かに、ここで奪われれば俺たちは再びピンチに陥る。そうなる前にチームになるのが理想的だ。

 

でも、そんな潔のことも今だけは無視する。

何故なら、俺のボールを狙って人が集まったことで開くスペースがあるからだ。

 

 

敵DF「!?まずい!お前ら戻れぇ!」

 

俺「もう遅って!」

 

敵の必死の叫びに意地の悪い笑みを返しつつ、俺は敵陣へ向けて()()()()()を放った。

 

 

俺「ほら!約束のパスだ!」

 

雷市「な!?てめぇどこに出して…!?」

 

イガグリ「はぁ!?なんでアイツあんなとこまで走って!?」

 

一気にコート上を横断した俺のパスは、敵コートの中間辺りまで走っていた()()の元に転がり込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

今村「うおぉ!餃子と引き換えで手に入れたこのチャンス!無駄にしねぇ!」

 

そう叫び声をあげながら、今村は敵ゴールへ向かって広大なフィールドを駆け上がって行った。

 

 

実は試合が開始される少し前、ポジション決めが何とか終わってフィールドへ向かう準備を整えていたころ、俺は今村に声をかけ取引を持ち掛けた。

その内容は『チャンスと見たらパスするから、代わりに餃子をもらう』と言うものだ。

 

 

俺には初っ端の馬狼のように()()でチームXに勝利する目途が立たなかった。

おまけに、俺の武器は仲間がいて初めて有効に働く類の代物なのに、肝心の味方までもが敵になりかねない状況ではどうしようもない。

 

そこで、ある程度は信頼できる仲間として選んだのが今村だ。

原作では『スピードとテクニック』を武器と自称していた彼だが、事実としてチームZでの()()最速を誇るのは確かに今村だった。

そんな彼の足を利用してカウンターを叩きこめば、チームX相手に速攻で点を取り返せると考えた。

 

加えて、昼食の一件から俺は今村と会話する機会が増え、それなりに仲も深まっていた。

流石に何の見返りもなくパスすると言っても怪しまれると思い、昼食の一件を思い出して取引すれば乗ってくると踏んだ。

 

その思惑は見事にハマってくれたようで、俺からのパスを期待した今村は馬狼を追わずに、逆に敵陣へ向かって走っていた。

後は敵が集中する俺から一気に前線へ走り込んだ今村へパスすれば秒殺カウンターの完成だ。

 

 

敵DF「こいつ、速ぇぞ!」

 

敵DF「見りゃわかる!俺らで止めるぞ!」

 

今村「二人かぁ、女の子なら喜んで相手するんだけど…」

 

そんな事を言いながら、今村は直進していたコースを外れ、進路を塞ごうとするDFを避けるように左へ進路を取る。

DFはもちろんそれを追いかけるが、今村は一瞬急ブレーキをかけるように重心を入れ替えつつ、前に出した左足でボールを右へ軽く弾いた。

だが、その動作にDFが食いついて足を止めようとした瞬間、今度は右足で再び左側へボールを弾きながら、走る勢いを殺しきる前に再び加速した。

 

今村「野郎二人の相手なんて御免こうむるぜ!」

 

敵DF「しまった!?やばい!?」

 

敵DF「GK(キーパー)止めろぉ!」

 

ダブルタッチだ。上手い。

敵を完全に抜き去るほどのスピードじゃないけど、ボールタッチで敵を惑わした隙を突くテクニックを持ってる。

テクニックに特化せず、スピードに特化せず、故に両方のいいところをバランス良く取り入れている。

これが原作で目立てなかった逸材、『今村 遊大』の実力というわけか。

 

そしてディフェンス二枚を躱した今村はそのままシュートモーションに入り、ゴールに向かってボールを蹴り出した。

 

 

 

敵DF「ぅらあ!」

 

今村「はぁ!?三人とかマジィ!?」

 

だが、サイドを警戒していたはずの敵DFの一人が今村のシュートにギリギリ追いつき、ボールはふわっと浮遊しながら敵ゴールへ弱弱しく飛んでいった。

敵味方共に欺くカウンターだったことで、一人突出した今村だけにマークが集中してしまった結果か?

 

やばい、完全に誤算だ!

このカウンターで一点を取らないといよいよ逆転の目が無くなる!

そんな俺の気持ちなど知ったことはないと、ゆっくりとボールは敵GKの手前に落下しようとしている。

そのままこっちまでボールを蹴り返されると、今度はこっちが速攻のカウンターを喰らう羽目に…

 

そんな気持ちでボールばかりを目で追っていたからだろうか?

そのボールが地面に接触する直前まで、俺はボールを追い続けた()を視界に捉えるのが遅れてしまった。

 

 

 

 

我牙丸「ナイスガッツだ。今村。」

 

今村「え!?我牙丸!?」

 

今村と共にフィールをを駆け上がっていたのか?

我牙丸はゴール手前に落下するボールに追いつき、がら空きのゴール左側へ向かって右足でシュートを叩き込んだ。

 

 

GOAL!

 

TEAM TEAM

X  Z

1 - 1

 

 

我牙丸の得点に歓喜の声をあげるチームZ、逆に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるチームXの様子を横目に、俺は得点を決めた我牙丸の元へ走って行った。

 

俺「ナイスだ我牙丸!っていうか、なんであんなにゴール前まで走り込んでたんだ?」

 

今村「だよな~。おかげで俺の餃子が…いや、無駄にはならなかったんだけど、ちょっと横取りされた気分?」

 

我牙丸「…それは悪かった。」

 

今村「いやいや、文句あるとかじゃなくってさ。それよか、なんで俺とほぼ一緒くらいで走ってたんかな~って…」

 

我牙丸「二人の話聞こえてて、チャンスかなって思って…」

 

俺「あぁ~。」

 

取引の会話を聞かれてたとは…結果的にはうれしい誤算だったけど。

しかし、俺たちが連携することを理解したうえで、今村とのロングカウンターに合わせて一気に駆け上がったってことか。そういうイメージなかったけど、思ってたより思考するタイプなのかもしれない。

 

今村「なるほど、おいしいとこ持ってかれたって感じだな。」

 

我牙丸「…俺のサラダ、いるか?」

 

今村「え?…ははっ!いいよいいよ、決められなかった俺が悪いんだし。」

 

俺「だな。まあ今村の餃子はありがたくもらうけど。」

 

今村「え゛!?マジィ?…せめて餃子半分ってわけには…」

 

俺「駄目だね。「決められなかった俺が悪い」んだろ?」

 

今村「くぅぅ~!じゃあ次は決めるからもっかいパスくれよな!」

 

俺「おう!我牙丸も今みたいな感じで得点してくれよな。」

 

我牙丸「任せろ。」

 

これで何とか同点に持ち込めた。後はチームZがチームとしてまとまり始めるかどうかにかかってる。

そのために自分には何ができるかを改めて考えつつ、俺たちは自分のポジションへ戻って行った。

 

 

KICKOFF!

 

 

今度はチームXがマイボールのリスタートだ。

ここから逆転するためには、まずは相手からボールを奪わないと始まらない。

さてどうするか?

 

 

敵FW「よし、いけ馬狼!」

 

とまぁ、こう来るわな。

味方からのパスを受けて、馬狼が中央から勢いよく突き崩そうと迫ってくる。

 

 

雷市「てめぇは行かせっかよ!」

 

國神「おい!あんま突っ込むな!」

 

敵FW「馬狼、パスこっち!」

 

そんな馬狼に対して、体格の良い國神と雷市の二人がマークについた。

雷市の方はともかく、國神は一人では止められないと悟ったのか、単独で突っ込もうとする雷市に合わせてプレスをかけに行く。

流石の馬狼もガタイの良い二人を無理に突破しようとはせず、一度足を止めて二人と対峙した。

 

こうなるとパスをするのが普通だけど、原作で馬狼の性格を考えるとおそらく…強引に一人で突破しに来る。

 

 

そう考えるとほぼ同時に、馬狼は二人の間を突っ切るように走り出した。

まさか本当に来るとは思ってなかったのか、後ろから見てても二人は明らかに動揺したが、すぐに持ち直したのか開いているスペースを消しにかかる。

その動きを読んでいたのか、馬狼は切り返しからのペースアップで雷市の方から抜こうとした。

 

だが、雷市は國神を押しのけるように勢いをつけて飛び出し、何とか馬狼に追いついた。

抜ききれなかった馬狼はボールを一旦戻して再び距離を取る。

 

馬狼「チッ!下民の分際で小賢しい真似しやがって…」

 

雷市「俺のこと言ってんのかよ?あぁ゛!?」

 

國神「挑発に乗んな!つぅか俺のこと突き飛ばそうとしただろ!?」

 

雷市「うっせぇ!止めてやってんだから文句言うな!」

 

俺はポジション的に動けなかったが、馬狼の背後から潔と蜂楽がボールを奪いに走ってる。

このままいけばボールを奪える!そう思ったが…

 

 

吉岡「馬狼!無理せずパス出せ!」

 

馬狼「…あぁ!くそっ!」

 

馬狼は後方から走り込んできた吉岡に、悪態を吐きながらも普通にパスを出した。

 

あれぇ?おかしいな?

原作で馬狼がパスするところなんて、さっき俺が遮ったパス以外ではなかったと思うんだけど…

まあいい、というか原作改変したばかりなんだ。その付けが回ってきたと考えるとしよう。

 

そんな思考をしている間にも、ボールを受け取った吉岡の方へ久遠が駆け出していった。

なれない守備で動きはちょっとぎこちないが、まあ普通の選手ならいったん様子を見るところだろう。

 

普通の選手なら…だけど。

 

 

吉岡「へっ、あいつ(馬狼)はすごいけど、俺だって負けてないってとこ見せてやる!」

 

久遠「俺が足止めするから、他はパスコース塞いで!」

 

まだチームとして完成していない中でもしっかり指示出しをするあたり、久遠も良い選手と言えるが、今回ばかりは相手が悪い。

だから、俺は久遠の指示を無視して二人の方へ走り出した。

 

 

吉岡は久遠と相対しても止まらず、そのままサイドから抜き去るようにスピードを上げた。

久遠も馬狼みたく突進してくる吉岡を止めようと進路を塞ぎにかかる。

 

だが、二人の間合いが1mに迫ろうとした瞬間、吉岡の身体は急に左へ進路を変更するような動きを見せた。

その進路の先にいた久遠は向かってくると身構えて一瞬だけ足を止めてしまう。

その隙を突いて吉岡は狭いサイドエリアを強引に走り込み、久遠が苦し紛れに伸ばした手ごと躱して見せた。

 

 

俺「相変わらず()()()()()のクオリティが高いよなぁ、吉岡。」

 

吉岡「だろう?このままお前のことも抜き去ってやるよ!」

 

 

MATCH UP!

吉岡 喜亮 vs 成早 朝日

 

 

吉岡のフェイントの特徴は、左右へ激しく揺さぶりをかける動きだ。

上半身の動きだけで相手に動きを錯覚させるこの技術は、難しいボールタッチを必要としないため初心者が最初に覚えやすい動きで、同時に経験者になってくるとタイミングを見極めないと使い物にならなくなる。

 

吉岡はこのタイミングの見極めが完璧で、ボールを直接奪える範囲まで敵を引き付けてからフェイントをかけることによって、相手の注意力や思考を散漫にさせる技術に特化してる。

だから、ボールを奪い合う超近距離戦(インファイトデュエル)においてはかなりの実力を誇っている。

 

現にサッカー部に所属してから一年未満ではあるが、俺は吉岡との1on1において()()()()()()()()()()()

だから、俺が吉岡と勝負するために採るべき手段は一つだけだ。

 

 

吉岡「っく…相変わらず消極的だな?そんなんじゃ俺からボールは奪えないぞ?」

 

俺「奪えないボール狙うほど、俺は貪欲じゃないからな。」

 

吉岡「ったく、相も変わらずやりにくいな。」

 

突っ込んでくる吉岡と対峙しつつ、ボールを奪い合う距離に近づいたら、深く考えずに半歩後ろへ飛び退く。

そうすると、吉岡の得意とする間合いのギリギリ外に逃げることができ、フェイントを仕掛けようとした隙をカバーしようと吉岡は足を止める。

再び攻めてきては俺も同じことを繰り返し、吉岡も攻め手に困って足を止める時間が積み重なっていく。

 

これが吉岡相手に何とか勝てないかと考えて導き出した足止め戦法だ。

僅かずつ後退する関係でどちらかと言うと負け気味なんだけど、足止めできればそれだけで選択肢を狭められる。

 

その証拠に、吉岡は俺を抜こうとして失敗してを繰り返し、その顔には点を取りたいという焦りが見え始めていた。

でも、ここで隙を見て奪おうなんて思っちゃいけない。

下手に奪おうとこちらから動けば逆にフェイントで躱されかねない。

 

 

久遠「成早!そのまま足止めしててくれ!」

 

俺「あぁ!任せろ!」

 

吉岡「だぁ!男の勝負は一対一(タイマン)が相場と決まってるだろうに!」

 

俺「そりゃ決闘の作法だろう、よ!」

 

でも、俺は変に吉岡からボールを奪いに行く必要もなく、一度抜かれた久遠の到着を待てばいい。

たとえ1on1で強くても、2on1で勝てるわけじゃないからな。

でまあ、ここでパスコースを完全に潰せば楽なんだけど…

 

 

馬狼「出せ!こっちだ!」

 

俺「あ、やべっ!?」

 

吉岡「へっ、ウチのキングは血の気が多いようで…はいはいどうぞ!」

 

吉岡の動きを注視してたから他選手の動き、特に馬狼の動きまで把握できてなかった。

馬狼は後ろに國神と雷市を引き連れていたが、得意の突進力に物を言わせてここまで走ってきたんだろう。

 

それを確認した吉岡は間髪入れずに馬狼へパスを出し、受け取った馬狼はそのままゴールへ向かって走って行った。

一応、イガグリが馬狼を止めようと奮闘するも体格差で押し込まれ、そのままPAに入ることもなく馬狼のシュートは放たれた。

 

 

GOAL!

 

TEAM TEAM

X  Z

2 - 1

 

 

吉岡「あ~あ、最近はこんな引き分けばっかだな。…次は抜いてやる。」

 

俺「上等だ。今日こそあんたに勝ってやる。」

 

吉岡「へっ、やれるもんならな?」

 

吉岡と軽口を叩きつつ、俺はゴールを決めた馬狼の姿を見ながら思った。

 

 

 

 

 

 

いや、これどうやって止めんの?

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