ブルーロック -淡い一等星-   作:埋もれたエゴイスト

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チームX戦-3

 

俺は改めて馬狼というキャラの情報を思い出していた。

 

 

馬狼 照英

自分のゴールで勝つことを信条とする利己的な選手で、病的なまでのフィジカルトレーニングを毎日こなし、超が付くほど几帳面で綺麗好きな性格。

 

プレースタイルは突進力を活かしたキレの良いドリブルと、何より射程距離訳27mものミドルレンジから、ゴール右上角への正確なシュート。

体格の良い選手が二人以上付いていれば止められるけど、逆に言うとそうじゃなければまともに止める手段がない。

 

うん、やばい逸材だわ。

それに、原作だとパスを頑なに出さないイメージが抜けなかったが、意外と普通にパスも出すというちょっとした原作との差異がある。

 

パスの有無一つとっても馬狼を封じ込めるかどうかはかなり違いがある。

 

パスがないとわかっていれば、馬狼と対峙した際に警戒する選択肢がドリブルしかなくなるからな。

でもその選択肢を捨てきれない以上、パスかドリブルかの二択を迫られる。

 

俺「くそ、やりにくいなぁ」

 

ぼやきつつも軽く天を仰ぐが、眩しい照明の光以外の情報が入ってくることもなく、仕方なしにポジションへ戻った。

 

 

 

KICKOFF!

 

今度はこっち(チームZ)の攻撃になるわけだけど、俺たちは向こうのチームほど指針になるストライカーがいない。

 

あのゴールは俺、今村、我牙丸の三人の()()によって生まれた得点だ。

馬狼のように混沌としたフィールド上から自力で捥ぎ取った重みある一点とはわけが違う。

俺たちには、チームとして協力体制を築けるほどのきっかけがまだない。

 

さて、どう攻めれば勝てる?

 

 

潔「よしっ、行け蜂楽!」

 

蜂楽「はいよ!」

 

そんなことを考えていると、潔と蜂楽が連携して敵陣へ切り込もうとしていた。

どうやら蜂楽のドリブルテクニックに任せて可能な限り責め立て、危なくなったら潔に戻して、体勢を立て直してからもう一度責め立てるという戦術のようだ。

 

良い方法だと思う。

蜂楽は並みの選手なら二人を相手取っても抜き去れるほどの実力を持っている。

流石に100%抜けるわけじゃないだろうけど、体力と集中力さえあれば何人でも躱せるだろう。

 

実際、潔からパスを受けた蜂楽は敵のFW二人をそれは鮮やかなテクニックで楽々躱して見せた。

でも…

 

 

敵MF「8番(蜂楽)を集中的に囲め!これ以上進ませるな!」

 

蜂楽「うわぁ!めっちゃ俺に人集まってきた!」

 

潔「蜂楽!こっち戻せ!」

 

あくまで蜂楽が普通の選手程度の警戒しかされてなかった場合の話だ。

味方の選手が軽々と抜き去られていれば、自然と警戒は跳ね上がるというもの。

気付けば蜂楽は抜いた二人を含めて計三人に周囲を取り囲まれていた。

 

完全に囲まれる前に潔へパスが渡ったが、完全に警戒された蜂楽にはそのまま二人がマークにつき、一人が潔の方へカバーに走った。

そして、そんな潔の正面からも敵MFが一人迫っている。

 

よりによってこっちがやりたかった複数人でのマークをやられると、その有用性を嫌でも認識させられる。

何とか馬狼へマンツーマンで付いてくれる誰かがいてくれれば楽なのに…

 

 

雷市「おい潔!俺にパスしろぉ!」

 

國神「俺に出せ!俺なら点とれる!」

 

肝心の体格の良い二人があの調子じゃあ難しいかな?

っていうか!俺ってばDFだから攻撃に何も参加できねぇ!

 

潔も二人の様子からパスが返ってくるか確信が持てなくて出し渋ってる。

このままじゃ、前後から挟まれてボールを奪われかねない。

 

 

今村「潔!俺にパス出せ!」

 

我牙丸「俺もいるぞ!」

 

そんなんことを考えていると、潔の近くまで走り込んでた今村と我牙丸が声をあげた。

 

 

いや、そうか!

何も難しいことを考える必要はない。

正常な判断ができる奴がそろえば、サッカーってのは成立するんだ。

 

 

俺「潔!二人にパスしろ!」

 

届くかわからないが、力の限り全力で叫ぶ。

その声に反応したのか、潔は一番近くにいた我牙丸へ素早くパスを出した。

 

 

我牙丸「よし、もっかい同点に!」

 

敵MF「くっ!6番(我牙丸)は俺が付く!誰か11番()についててくれ!」

 

敵FW「誰かって、誰が!?」

 

敵MF「お前で良いだろ!俺はコイツ(蜂楽)抑えてんだから!」

 

相手チームが少し言い合いになりながらもフォーメーションを修正し、我牙丸に残ってたMFの一人がカバーに向かう。が…

 

 

我牙丸「じゃあ、今村!」

 

今村「ほいっす。今度こそ決めてやるぜ!」

 

敵DF「またアイツかよ!誰かとめろぉ!」

 

敵MF「くそ、抜かれる!?おいお前ら!いつまで8番(蜂楽)に引っ付いてんだ!さっさと戻ってこい!」

 

敵FW「だあ!もう!!コイツ抑えりゃ行けると思ったのに!」

 

さっきまで足並みがそろっていたはずのチームXだったが、立て続けに続くパスワークを前に守備のほころびが見え始めた。

 

 

まあ、さっきまでの『強い個人を封じれば勝てる』なんてサッカーは、どう言い繕っても小学生レベル…いや、下手すればそれ以下の球蹴りごっこだからな。

急にこっちが身の丈に合った現代サッカーを開始すれば、意識の違いから対応が遅れてしまうのは自明の理ってやつだ。

 

そうこうしているうちに、今村の足は敵PAに迫ろうとしていた。

だけど、さっきしてやられた守備陣は警戒を強めたようで、同じように二人掛かりの守備で止めようとするが、今度は無理にボールを奪うのではなく足止めを重視した動きを見せていた。

 

敵DF「足止めできればいい!絶対通すな!」

 

敵DF「分かってる!」

 

今村「うわぁ、面倒くせ!めんどくさくても許されるのは女の子だけなんだぜ!?」

 

潔「今村!こっちフリー!」

 

今村「!…今度こそ決めてやるって思ったのになぁ!」

 

敵を抜けずにいた今村だったが、後ろについてきていた潔へパスを出した。

それを受け取った潔は一度ゴールを見て、打てると判断したのかシュートモーションに入ろうとする。

 

 

敵DF「これ以上好きにさせっかよ!」

 

潔「!?やべ!?」

 

しかし、シュート寸前で敵のDFがゴールとの間に割って入り、それを見た潔は動きを止めてボールキープに努める。

 

あぁ!もったいない!

今の場面(シチュエーション)()()()()なら決められたはずなのに!

 

でも、無理もない。

なにせ今の潔は自分の武器が何なのかを明確に自覚できてないんだから…

 

チクショウ!

攻撃には何も参加できないこのDFというポジションが憎いぜ!

 

 

我牙丸「パスだ潔!」

 

敵MF「てめぇは俺が行かせねぇ!」

 

蜂楽「潔!俺いるよ!」

 

潔「ナイスだ蜂楽!」

 

敵FW「なっ!?他に人数割き過ぎたか!」

 

俺があれこれ考えている間にも戦場はどんどん変化し、警戒が薄れたことで身軽になった蜂楽が潔からのパスを受け取った。

 

そして残り時間はあと5分もない。

せめてここで一点決めないと後半に向けて勢いがつけられなくなる。

 

 

敵FW「やっぱお前だけは止める!もっと人数かけろ!」

 

敵DF「焦んな!そのままサイドに釘付けにすりゃいい!」

 

すると、チームXの面々は先の蜂楽のドリブルを思い出してか、蜂楽に対して過剰に警戒する姿勢を見せた。

蜂楽がそのまま中央突破を試みて、最悪そのままゴールを決められるのを予想したのかもしれない。

 

そして、ゴールと言う単語に直結する人間へそれぞれマークについた。

 

今試合でチームX相手に得点した我牙丸。

その得点をアシストする形で貢献した今村。

馬狼のような単独突破を警戒された蜂楽。

 

 

しかし、たった一人だけそのマークから逃れた物がいた。

それは今まで活躍らしい活躍がなく、これと言って警戒される理由がない人物。

 

 

潔 世一。

今だ自身の才に気付かず、されど恐るべき才を秘めていると知っている俺は、未だ隠れた天才が再びフリーになったのを見逃さなかった。

 

その姿は、この数日で仲を深めた友人(蜂楽)の目にも留まったらしい。

 

蜂楽は集まってきた敵を引き付けるように右サイドへ逃げていき、正面に立ちふさがった敵と後ろから迫る敵に見せつけるように、中央のPA前へ向かって高軌道のパスをあげた。

 

ここにきてようやくと言うべきか、敵陣にいた面々のほとんどがそこまで走り込んでいた潔の存在に驚愕の表情を浮かべていた。

一方の潔の表情をうかがい知ることはできなかったが、きっとこれ以上ないチャンスを前に険しい表情をしていたことだろう。

 

 

だが、その表情がまた他と同様に驚愕に染められる未来を、俺は幻視した。

なぜなら…

 

 

 

馬狼「調子こいてんなよ下民どもが!」

 

潔「な!?」

 

敵DF「おぉ!馬狼ナイス!」

 

最前線まで駆け上がっていたはずの馬狼が、守備の最終ライン際まで戻ってきていたのだから。

 

俺自身もその姿を認識したのは数秒前のことだった。

敵陣を一望できる自陣から見ても突然の出現に驚いたんだ。敵陣にいた味方に走った衝撃はそれ以上だったろう。

 

 

馬狼「そら、抜いてみろよ?下手糞。」

 

挑発しながらも、馬狼は潔と相対したまま間合いを詰める。

おそらくそのまま行くと、潔は馬狼にボールを奪われて試合終了だ。

 

そうなると2-1で不利な得点のまま後半へ挑まなくてはならなくなる。

それを理解しているのか、潔は後退するかのように腰が引けていた。

 

だが、心の中で何か吹っ切ったのか、次の瞬間には前に飛び出していきそうな姿勢になり、それを見た馬狼も応えるように潔の方へ突っ込んできた。

そして両者そのまま一対一(タイマン)で戦う距離まで詰めていき…

 

 

 

ボールを奪い合う間合いになる僅かに手前で、潔は唐突に右後ろへパスした。

 

馬狼「!」

 

雷市「あ゛ぁ!?」

 

蜂楽「潔?」

 

 

あぁ、なんてことだ!()()()()()()をこんなところで見られるなんて!

感動する俺の視線の先には、完全フリーでボールを受け取り左脚を振りかぶる()の姿があった。

 

 

國神「ナイボー、潔!」

 

そのまま放たれたシュートは凄まじい炸裂音と共にボールを撃ち出し、先の馬狼のシュートより長い射程28m付近からゴールへ向かって爆進した。

 

 

 

GOAL!

 

TEAM TEAM

X  Z

2 - 2

 

 

國神「しゃあオラァ!」

 

なんてことだ!

てっきり原作改変を起こしたからもう見れないと覚悟していたが、まさに同じような光景をこの目で見ることができるなんて!?

 

最っ高だぁ!

 

 

雷市「てめぇ…なんで國神にパス出した!?俺もフリーだったし、何より明らかにチャンスだったろうが!?」

 

潔「え?…いや、俺もシュート撃とうとしたんだよ。でも気付いたら…」

 

雷市「お前もバカか?バカなのか!?なんであの場面でパスなんてできんだよ!」

 

久遠「おいやめろって!おかげで同点まで追いつけただろ!」

 

雷市「うっせぇ!てめぇも自分以外の奴が点とってるのに、何を呑気に喜んでやがる!?」

 

久遠「負けてないんだからそれでいいじゃないか!?負けたらそれこそ本末転倒だろ!?」

 

雷市「この試合見てわかったろ!俺たちのチームは明らかに相手より弱小チームだ!それこそ、馬狼一人に試合をかき乱されるくらいにな!

もう生き残るには得点王になって勝ち残ったほうが確実なんだよ!それを…」

 

 

あっ、雷市が潔に食って掛かってる。

シュートシーンのみならず、その後の言い合いになるシーンまで再現されるとは!?

 

っと、いうことは!

そんな俺の思考を読んだかのように、馬狼が潔に近づいていった。

 

 

馬狼「おい11番()。ゴール前でビビる人間(ヤツ)にストライカーの資格はねぇぞ。

才能ねぇよ、お前。」

 

 

 

 

 

 

うっへっへ…原作再現、きたぁ…

 

 

 

吉岡「マジかよ…あんな長射程(ロングレンジ)で決めるとか、アイツも結構すげぇ…って!?なんだお前その顔!?」

 

俺「うっへっへ…あぁ吉岡?何?」

 

吉岡「………イヤ、ナニモミテナイ。」

 

俺「?」

 

原作シーンを見れてホックホックの笑顔になった俺は、その僅か数秒後に鳴り響いた前半終了のホイッスルの音に気付くまで、ただ原作シーンをこの目で拝むことができた感動に打ち震えていた。

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